約3年ぶり、“捨て曲なし!”の2ndアルバムが完成
近藤晃央『アイリー』インタビュー
近藤晃央『アイリー』インタビュー
2016/04/27
心に強く訴えかけるメッセージ性の強い歌詞と、多様な音楽性を持った楽曲で支持を集めるシンガーソングライター近藤晃央(こんどう あきひさ)。そんな彼が4月27日(水)に約3年ぶりとなるアルバム『アイリー』をリリースする。ここではアルバムタイトル「アイリー」(ジャマイカ語で“嬉しさ”、“楽しさ”)の由来と、各曲に込めた想いについて聞いてみた。ファン必見のインタビューだ!
取材:村尾悦郎(編集部)
ピュアな「嬉しさ」も、どす黒くて汚い「嬉しさ」も全て表現したかったんです
──まず、アルバムが完成した現在のお気持ちを聞かせてください。
近藤:1stアルバム『ゆえん』の時は、完成して「できたぞ!」って喜びがあったんですが、その後で「作品を作ることで、そこからまた自分が歩む道が開けるんだな」とも学んだんです。だから今は「スタートラインに立ったな」という感覚が大きいですね。
──『アイリー』を完成させた自分が再び、ここから始まるということですね。
近藤:はい。あと、今作はアルバム制作において僕が担う部分が前回よりも圧倒的に多くなっているので、「自分が作った作品」っていう思いが『ゆえん』よりも増してます。
──どういったところでそれを感じますか?
近藤:歌や演奏だけではなくて、色んな人の協力を得ながら、ディレクションをはじめ作品全体について関わりました。だから今回の制作で「責任者は自分だ」という自覚も備わってきたと思います。
──曲や歌詞作りについての変化はありましたか?
近藤:デビュー直後は「人前に立つからにはポジティブなものを発信しなきゃいけない」って気を張っていた部分があったんですが、今は良い意味で開き直れるようになりました。
──“開き直る”とは具体的にどういったことでしょうか?
近藤:無理して “ポジティブな表現” を使わなくていいということですね。例えば、以前は「立ち止まらない」とか、「後ろを振り向かない」っていう言葉を使っていたところを、今は「立ち止まったり振り向いたりしても良いんだ」っていう言葉を選んだりするような。ポジティブではない自分を「受け入れる」ことが僕なりの前向きさなんだと、発想の転換ができるようになりました。そういった心境の変化が曲にうまく反映されていると思います。
──発想の転換のきっかけは何だったのですか?
近藤:それは「心情呼吸」っていう曲ができたことがすごく大きいですね。実は、この曲を作る直前、僕は音楽的にも感情的にもあまりいい状態ではなくて、どちらかというと滅入っていたんですよ。消化できない感情がひたすら積み重なっていって、正直、爆発することもありましたし、それによって壊れてしまった信頼関係もあったんです。「音楽を辞めようかな」とも考えました。
──それはかなり沈んだ状況ですね。
近藤:そうなんです。そんな時にドラマ『ペテロの葬列』の主題歌のオファーが来て、原作を読みながら「本音を伝える」ってことをテーマに曲作りを始めました。“本音”っていうのは全部を人に伝えるものではないですし、むしろ誰にも言うことなく終わっていくものがほとんどだと思うんですけど、「ああ、俺、ホントはこう考えてたんだな」って頭の中にある想いが自覚できるだけで楽になれる“本音”もあるって気づいたんです。
──曲作りを通して自分の考えが整理されたのでしょうか?
近藤:はい。その時の僕は「音楽やってて楽しくない」って思っちゃってたけど、「じゃあ自分の喜びってなんだろう」って考えて。そこから「辛い時は辛いって素直に言えたらそれが一番嬉しいな」って“本音”に行き着きました。
──その「嬉しいな」っていう感情がアルバムタイトル『アイリー(IRIE=嬉々)』につながるのですね。
近藤:そうです。ただ、「嬉しさ」って一口に言ってもいろいろあって、単純に「楽しい」とかもあれば、今話したように辛いことを辛いって言える「素直さ」が嬉しいって時もある。このアルバムには結構ハードな内容の曲も入ってるんですけど、例えば人を憎んだり、背中を突き落してやるような「不幸」が誰かにとっては「嬉しさ」かもしれない。それら全てを含めて描いた「嬉しさ」が『アイリー』のコンセプトなんです。
──人の業みたいなものをアイリーという言葉に込められたのですね。
近藤:はい。ピュアな「嬉しさ」もあれば、形を変えた「嬉しさ」もあって、どす黒くて汚い「嬉しさ」もある。その全てをこのアルバムに込めて表現したかったんです。
──なるほど。ジャケットについてもお伺いしたいのですが、近藤さんはグラフィックデザイナーとしても活動されていて、『アイリー』の初回盤Aと通常版のジャケットもご自身で手がけられたそうですね。
近藤:はい。このジャケットは水中にインクを使って描いて、それを写真に収めたものなんです。「こうしよう」ってイメージはあまり決めずに、撮影する当日に「“嬉しさ”ってこんなんかな?」っていくつか描いていきました。透明度の高い色や、水が濁ってしまうくらい濃い色など様々な色を使って「嬉しい」っていう気持ちの多様さをこの一枚に凝縮しました。
──まさしく『アイリー』のテーマといえそうですね。
近藤:そうなんです。でも、やってみたら中々思い通りにはいかなくて、6枚くらい描きましたね。その中から1番イメージに近いものを選びました。
──シングル以外の収録曲はいつごろ作られたのでしょうか?
近藤:ほとんど2015年の1年間でできたものが多いですね。一番古いものでもデビュー前の作品はないんじゃないかなと思います。
──アルバムの曲順はどういった基準で選ばれたのですか?
近藤:まず、「心情呼吸」が「嬉しさ」というテーマにおいてベースになった曲なので、この曲をどこに配置するかというのが基準になりました。まず、ジャケットが先にできていたので、ジャケットのイメージに合った内容の「グラデーションフライ」を1曲目に入れて、そこから「心情呼吸」につなげていったという感じですね。僕の曲にはシンガーソングライターらしい曲も、バンドっぽい曲も半々であるのでそれぞれのタイプの曲が生きるタイミングで並ぶように意識しました。
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