オーディオライター岩井 喬が送る連載企画第2話

連載企画「デスクトップオーディオのススメ」足回りを整えて音質の改善を図る

連載企画「デスクトップオーディオのススメ」足回りを整えて音質の改善を図る

2016/08/11


机の上のパソコンに外付けのスピーカーを加えることでいかにいい音で音楽を楽しめるか」について、様々な実験を行ない、その効果についても解説する連載の第2回目。今回は、スピーカーの足回りの余計な振動を抑えて音質を良くするテクニックを試していこう。

文:岩井 喬

はじめに


前回、リーズナブルなデスクトップ用アクティブスピーカー3種の聴き較べを実施してみたが、いずれも見かけによらず、鳴りっぷりの良い傾向にあった。しかしその反面、スピーカーの胴鳴りを利用した音づくりをしているため、剛性が犠牲になっている面もあるようだ。そこで今回はスピーカーの足回りに着目して、どの程度音質を改善できるかを実験してみたい。実験に使うスピーカーは前回登場したクリエイティブ「GigaWorks T20 SeriesⅡ」を再び用い、その音質改善の効果についてレポートしていく。対策に用いるアイテムはD.I.Y.ショップなど(今回は東急ハンズで揃えた)で比較的手軽に入手できるものを選んでみた。

/「GigaWorks T20 SeriesⅡ」
クリエイティブオンラインストア価格:¥7,600(税抜)
/

今回の実験に使った素材。ウッドブロック(2cm角/3cm角)、10円硬貨、ゴムシート(厚さ3mm)、鉄板(厚さ2mm)


実験&試聴レビュー


/

まず、「GigaWorks T20 SeriesⅡ」の構成について今一度軽くおさらいしておこう。ユニット構成は布製ソフトドームツイーターと温度や湿度の影響を受けにくい素材であるグラスファイバーコーンウーファーによる2ウェイ仕様。設置場所からの反射による影響を受けにくくするためスピーカーが取り付けられているバッフル面にやや上向きに角度をつけるとともに、上からウーファー、ツイーターの順番に配置されている。独自のバスレフポート「BasXPort」をキャビネット背面の上面に装備。前面パネルにはボリュームと低域用と高域用が分離したトーンコントロールを設けており、外部入力はアナログ・ステレオミニが2系統用意されている。

今回の実験では、音源の再生元であるMac book Proに有料のハイレゾファイル対応再生用ソフトウェア「Audirvana Plus」をインストールし、音楽再生を行なった。使用した楽曲は男性ボーカル+ピアノという構成のビリー・ジョエル「And So It Goes」、女性ボーカル+ストリングス+バンドサウンドからなるKalafina「far on the water」を用いた。まずはMac book Proのヘッドホン出力から「GigaWorks T20 SeriesⅡ」のアナログ接続した状態で聴いた。スピーカーを机の上に直接置いた状態でのサウンドは、ベースを中心とした低域がブンブンと太く逞しく響く。男性ボーカルは口元のハリがあって押し出し感は明瞭だが、中域成分がやや混濁して聴こえる。ピアノは重厚に響く一方で、付帯感が伴って音ヌケは今一つ。スピーカーが設置された机も盛大に振動しており、その影響も出ているようだ。女性ボーカルはシャープで、ストリングスもハリ鮮やかに浮かぶ。高域方向の音像はすっきりとした傾向で細身である。音場はやや平面的。

●10円硬貨をスピーカーの下に並べてみる

/

 

いよいよ音質改善に向けた実験開始だ。まずは10円硬貨をインシュレーターとしてスピーカーの足元に置いてみた。10円硬貨は音響的に振動対策などで効果が高い金属として知られる銅を主成分とした青銅製(銅+亜鉛+スズ)である。『GigaWorks T20 SeriesⅡ』の底面には滑り止めのゴムのスペーサーが4か所貼り付けられているので、この下に10円硬貨が当たるように設置してみた。

ゴムスペーサーの下に10円玉を設置

音質変化としては全体的に音像の重心が下がり、落ち着きのある傾向だ。ピアノは重厚感があり、一つ一つのアタックの芯が立ち、余韻も引きずりすぎることなく、高級感も漂ってくるようだ。腰の据わった響きという印象で音像の輪郭も鮮明だ。ボーカルは肉付き感が自然で口元も自然に浮き上がってきた。躍動感良くバランス志向の聴きやすい音質だ。音場は中域の濁り感もなくなってヌケが良い。

●ゴムシートを敷いてみる

/

続いて振動を抑えるという点で広く使われているゴム素材のシート(3mm厚)をスピーカーの下に敷いてみた。10円硬貨については一旦外し、ゴムを敷いたことだけによる音質変を試した。スピーカーを直接机の上に置いた状態ではスピーカーの振動で机が揺れていたが、ゴムシートを挟んだことでこれが吸収されて低域の聴こえ方がすっきりとしてきた。中域の濁りも解消されつつあり、ボーカルの口元にも潤いが出てきた。高域にかけての伸びも素直に感じられ、ピアノのボディもすっきりとした表現してくれた。質感についてはやや単調な印象もあるが、細部の見通しが向上している。
 

●鉄板を敷いてみる

/

 

次にスピーカーの足元をタイトに固めて振動を伝わりにくくするために、ゴムシートの代わりに鉄板(2mm厚)に差し替えてみた。これによって音像の輪郭がより引き締まり、低域も密度良く表現。机の振動もほとんど気にならなくなり、定位感も高まってきた。高域にかけてクリアに響く一方で、エッジが硬質に感じられるようになる点は好みが分かれるかもしれない。キックドラムのアタック感は明瞭で、ストリングスもハリ良くウェットに引き立つ。女性ボーカルはボトムを引き締め、クールな描写となり質感もわかりやすくなった。

ここで鉄板の下にもう一度ゴムシートを敷き、振動吸収&抑制のW効果を狙った合わせ技も試してみたところ、高域方向は明るい輝きを持つ硬質傾向で、音像はきっちりと引き締まり、付帯感の少ないすっきりとした音伸びの良いサウンドとなった。スピーカーから発せられる余分な振動を抑え込む力が増し、設置されている机の揺れもほとんどない。女性ボーカルは口元の感じがはっきりわかるようになってクールな輪郭感が強まる。ピアノの音色は硬質なタッチでまとめられ、低域方向の伸びも自然に収束。全体的にスマートなサウンドの傾向だ。鉄とゴムという硬軟真逆の性格を持った素材を組み合わせではスピーカーに直接触れる鉄板がもたらす影響が第一に大きく、そこで取り切れていない僅かな振動をゴムシートで吸収するようなイメージだろうか。組み合わせとしてはバランス良くまとまっているようだ。
 

●ウッドブロックを使ってみる

/

さらに実験を進めてみよう。今度は2cm角のキューブ状のカツラ材のウッドブロックを使ってみた。スピーカースタンドやインシュレーターでも天然系素材として最も広く使われているのが木材である。適度な振動の吸収抑制効果を持たせつつ、誇張が少なく有機的な響きをもたらす木材はサウンドチューニング材として重宝されている。また天然木には年輪・木目が存在するが、音に対しては木目の繊維方向に振動が伝搬しやすいので、ブロックとなっていてもこうした木目も意識したい。まずスピーカーのゴムスペーサー4か所の下に木目の繊維が縦方向となるようにセットしてみた。程よくすっきりと音像がまとまり、ボーカルの潤い感もほんのりと感じられる。ピアノの低域弦の響きは腰高で、落ち着いた音色。続いて木目の繊維を机と並行するよう(木目の向きも左右横方向)置きかえてみると、歪みっぽさが減ったことでより落ち着きが増し、ボーカルのボトムの太さや滑らかさもナチュラルに聴こえてくる。ベースは締まりの良い硬質なタッチとなり、ピアノもゆったりと落ち着き良く、ゆとりを持って響く。リヴァーブの余韻もよりわかりやすく、音像もウェットでスマートな描写となった。木目の繊維が縦方向だと木材を介すことで減衰はするものの、机に対して振動が伝わりやすい。一方、横方向であれば繊維方向が伝搬をさえぎるため、全体の響きにも変化が生じるのである。

平行な机に対しての設置であれば4点支持でも問題ないが、設置面積を減らしつつ、安定度を高めるという方向性から3点支持でスピーカーを支える手法も有効である。そこで、前方2か所は4点支持の時と同じ場所にブロックを設置。後方はゴムスペーサーの中間部の隙間に1個ブロックを置いてみた(いずれも木目の繊維は横方向)。こちらは低域方向の締まり感が一段と向上。ボーカルの質感はさらに鮮明となり、潤い感や肉付き感が自然となる。リヴァーブの余韻もより分かりやすくなった。ピアノの響きも輝き良く、ストリングスも潤いと密度感のバランスが取れたハーモニクスを聴かせてくれる。

4点支持から3点支持に変更。さらに前方のウッドブロックを3cmのものにしてみた

さらにこの応用として前方2か所に対し、やや大きめの3cm角カツラ材キューブと差し替え、前方を高くしてよりバッフルによりアングルをつけたバージョンも試してみた。こちらはボーカルの音ヌケの良さが増し、透明度が高いサウンドとなる。ドラムやベースのキレも良く、音場の見通しがきくバランスの取れた音質だ。ピアノのアタック感はより強くなり、ハーモニクスの付帯感もない。ボーカルは音伸びも自然で密度高くソリッドな音像表現となる。

加えて、もう一つのパターンも実施。見た目からしてあまり現実的ではないが、机からスピーカーユニットを遠ざけ、卓上の反響を避けるべく、3cm角キューブの上にそれまで使っていた2cm角キューブを乗せ、前方をさらに高くした仕様も聴いてみた。この場合、後方のキューブへ荷重バランスが偏るため、より安定するよう3点支持からゴムスペーサーの滑り止め効果を生かした4点支持に戻す。ピアノはより沈み込み、高域の潤いある響きがクリアに澄み渡る。ボーカルも透明度が高く、ボディ感も自然で輪郭についても誇張が少ない。ベースラインも締まり良く、机の振動も減っている。女性ボーカルの口元はハリが強めとなり、キックドラムのアタックもソリッドだ。この点はトゥイーターからの音がよりダイレクトに届くようになった影響かもしれない。タイトでエッジ感を立てたサウンドが好みであれば、このパターンも悪くないが、自然なバランス感を望むなら一つ前の“前方3cm角・3点支持”のパターンの方が聴きやすいかもしれない。この後はこれまで登場したアイテムを総動員し、音質のバランスを取りながら様々な組み合わせを探ってみることにしよう。

/

3cm角キューブの上に2cm角キューブを乗せ、前方をさらに高くした



次のページ »

この記事の画像一覧

(全18枚) 大きなサイズで見る。

関連する記事

PAGE TOP