ゲストは盟友のクラムボン

NONA REEVES、『NONA REEVESデビュー20周年記念 渋谷ノーナ最高祭!!! 第三夜』ライブレポ到着!

NONA REEVES、『NONA REEVESデビュー20周年記念 渋谷ノーナ最高祭!!! 第三夜』ライブレポ到着!

2017/12/01


 

ノーナ・リーヴスのメジャー・デビュー20周年を記念して開催された『NONA REEVES デビュー20周年記念 ノーナ最高祭!!!』。

第一夜は堂島孝平とサニーデイ・サービス、第二夜はKIRINJIを迎えて行われた。
そして2017年11月25日、TSUTAYA O-EASTにて開催された『NONA REEVES デビュー20周年記念 渋谷ノーナ最高祭!!! 第三夜』のゲストは盟友のクラムボン。

会場に到着すると1階のフロア、2階の関係者席までオーディエンスで満員。誰もがこの2組のライヴを待ち望んでいたのだ。開演時間17時30分。突然、スピーカーから「2017年11月25日、まったくもってデビューから20年のこの日……あなたはどこにいますか?」と聞き覚えのある声が流れてきて、それが西寺郷太だと気付くと会場から笑いが起きた。

アナウンスは続き「どこにいますか?ってO-EASTに決まってるやろー!これを聞いてるねんから、O-EASTに決まってるぅー!……って始まりましたけどね、渋谷の最高祭。“ノーナ最高!”なんてね、もう言っちゃったりしてスタートしたわけですが。<中略>今日はノーナ最高祭のために、ものスゴい司会者が駆けつけてくれています」と呼び込まれて登場したのは西寺本人。「20周年って何回言うてるかわかりません。20回以上言いましたし、もっと言ったかもしれませんけど。<中略>11月25日が『GOLF ep.』という曲でデビューをしたまったくもって、その日だということでね」。「第三夜はクラムボンということで。久しぶりの対バンというか、同じステージでも時間が違うフェスとはあったんですけど。こうやってイベントに来ていただいて非常に感謝しています。<中略>それでは紹介しましょう、クラムボンよろしくお願いします!」と呼ばれて原田郁子、ミト、伊藤大助が登場。

1曲目は「GOOD TIME MUSIC」から幕を切った。<ここじゃない どっか もっと いい場所に GOOD TIME MUSIC 連れてって>歌詞の通り、ライヴ冒頭からクラムボンの世界へ誘われていく。そして2曲目は1998年にリリースされた1stミニアルバム『くじらむぼん』に収録されている「パンと蜜をめしあがれ」。原田の伸びやかな歌声とは裏腹に、ジャズ、ロック、プログレを感じさせる変拍子を使ったリズムに魅了された。あえてこの曲を演奏したのは、20周年を迎えたノーナとの対バンだからこそ、自身の原点ともいえる選曲をしたように感じた。

MCでミトが「(ノーナからは)いつも勇気をもらっているというか、いろんな人とコラボをやっていたりとか、曲を提供していたりとか、そういうのを見ていると良い年の取り方をしているなと感じる」とノーナへの想いを語ると、原田も「デビューの頃、レコード会社が一緒で(一時は)会わない時期もあったりして。どう言う感覚なんだろう……たまにデッカい大学の廊下ですれ違ったりするくらいの感じ」と話した。クラムボンとノーナは同じ学校にはいたものの、クラスが一緒になることがなかった同級生のようだ、とお互いの関係を語った。

そして話題は西寺の話へ。ミトが「郷太くんがテレビに出ているとゾクっとするよね。知り合いが出ているみたいな」。原田は「最初から喋りがすごくて。だから、(テレビやラジオが西寺を)ほっとくわけがないっていうね。<中略>当時から“ノーナ最高!”って自分たちで言ってたよね」と話すと、会場から笑いと拍手が起きた。2人曰く、ノーナ初期作品の帯にも“ノーナ最高”という文字が書かれていて、事務所に送られてきたポスターにも手書きで“ノーナ最高”と書いてあったそうだ。自己肯定力の高さは、当時から変わっていないのだなと再確認させられるエピソード。

今回、クラムボンは20周年イベントをどのように盛り上げれば良いか考えていたところ、西寺本人から「ノーナの曲をやってよ」とミト宛にメールが送られてきたそうだ。原田が「それって普通は本人から言わないよね(笑)」の一言で再び会場に笑いが起きた。

そんな本人リクエストで披露されたのは「高層ビル」。ドラム、ベースの低音が際立つアレンジになっており、原曲がロマンチックなサウンドに対して、クラムボンverは幻想的な音に生まれ変わっていた。青いスポットライトに照らされながら、目を瞑って演奏する3人。聴いているだけで東京の夜に彷徨う男女の絵が脳裏に浮かび上がってきた。

中盤戦に突入し、クラムボンの代表曲「サラウンド」へ。フロアに目をやると、ピョンピョンとジャンプをする人、ダンスをしている人など様々なノリ方で音楽に酔いしれていた。ミトの「カモン! 郁子!」の掛け声で続いて演奏されたのは「シカゴ」。メンバーと一緒にサビを歌うオーディエンス。僕の隣にいた3歳ほどの赤ちゃんも満面の笑みで手拍子をしている。なんだ、この多幸感に包まれたステージは。

ミトの「みなさん歌えます? 歌ってもらえます?」との呼びかけでsmall circle of friendsの「波よせて」を演奏した。サビで観客が両手を天高く上げて、左右にムーブさせている。<波よせて 波よせて 君は行く 君は行く>の歌詞通り、ステージの前は大きな波が起きていた。

最後は「タイムライン」。チャイムのようなループ音に合わせて、原田の優しい歌声が乗る。<いつもの公園 ちょうど5時の時報 鳴り渡る空は 真っ赤な夕暮れどき>夕暮れのようなオレンジの照明がステージを包み込む。原田が「クラムボンでした、ありがとう」と発し、3人がステージが去る。スピーカーからはループの音が鳴り続けている。誰もいないステージをまだ夕日色の照明は照らし、オーディエンスはしばし余韻に浸り続けていた……。まるで1本の映画を観ているようなドラマチックさを、クラムボンのライヴから感じられた。

ステージ転換の合間、会場に設置された大きなスクリーンには、ノーナのサポートを務める真城めぐみ、村田シゲ、松井泉、冨田謙のインタビュー映像が流れて、バンドとの思い出や、魅力について語られていた。

そして、本日の主役であるノーナ・リーヴスのステージへ。西寺郷太、奥田健介、小松シゲルの3人に、真城めぐみ、村田シゲ、松井泉、冨田謙を加えた7人が登場。1曲目はデビューアルバム『ANIMATION』に収録されている「FORTY PIES」。いきなりデビューアルバムの曲から始まり、会場からは歓声が上がった。さらに3rdアルバム『DESTINY』の「二十歳の夏」へ。ノーナは初期作品をいま聴いても一切色褪せることなく、キラめきがそこにある。彼らのポップさは20年前から完成されていたのだと思い知らされる。そういえば学生時代、MDに録音した「二十歳の夏」を聴きながら自転車を漕いでみなとみらいへ出かけたっけ……。思い返せば、僕の人生のBGMにはいつだってノーナが流れていたのだ。

ポップチューンは続き、3曲目は最新アルバム『MISSION』の中から「Sweet Survivor」を演奏。のっけからダンスフロアのごとく、観客全員が踊っている。たった10分ほどで自分たちのムードに引き込んでしまう、ステージパフォーマンスはさすがとしか言いようがない。

MCに入り、西寺が「今、“二十歳の夏”を歌ってて。ノーナ自体が今日で二十歳ということで……まあ、夏ではないですけれども。メンバー3人とも変わりなく、クラムボンもそうなんですけどね。休みなく続けているバンドは数が少ないので。そう言った意味でもクラムボンを観ながら特別なことだなと思って、今日を迎えております」とライヴへの感謝をのべて、4曲目は11月にぴったりな「NOVEMBER」。大人の色気が漂う歌詞で、前半の曲と比べるとバンドの成熟した様がうかがえる。<とめどなく過ぎた若さ洗う 涙流れる さぁ、秋をほどいて>小説のような奥ゆかしさのあるフレーズが胸に沁みた。

再びMCになり、西寺がクラムボンとの共演について語った。そもそも今夜のライヴが実現したのは、2014年にクラムボンが結成20周年を記念してリリースした『Why not Clammbon!?』がきっかけだったそうだ。原田がマイケル・ジャクソンを想って書いた「SUPER☆STAR」をノーナにカバーしてほしい、と依頼をしてノーナがトリビュートアルバムに参加した。そんなこともあって、ノーナの20周年記念で2組の対バンが実現したのだ。「(「SUPER☆STAR」は)まだライヴでやったことがなくて。“今日やらないといつやるんや”ってね、元日本代表の加茂周監督の口癖だった、って中田英寿さんの本に書いてあって。“中田、今やらんかったらいつやるんや”って加茂周監督の声が虚しく響いていたって書いてありましたけどね。……ゾーンディフェンスの人ですね」と謎のうんちくを語り、会場で爆笑する人が。「そこウケてますね。それで良いんですよ僕も! 数人が面白いと思ってくれたら良いんです。僕のギャグをゾーンディフェンスしてくれましたね」とギャグの駄目押しゴールを決めた。

そんなMCのあとにクラムボンの「SUPER☆STAR」。以前、西寺と原田が対談をした時に「自分の歌だけだと届ききれない部分とか、グルーヴ感とか、郷太くんたちの尋常じゃない“マイケル愛”で形にしてもらいました」と原田が語っていた。まさしくカバー曲という概念を覆すようなアレンジで、自分の曲にしてしまう表現力の高さを証明して魅せた。

7曲目に入り、ゲストのMCいつか(Charisma.com)が登場。『MISSION』で彼女がゲストボーカルを務めた「Danger Lover」を披露した。ノーナのファンクサウンドにMCいつかのまくしたてるようなラップが炸裂して、フロアの熱気が一気に上昇。メモを取っていた僕も気づけば両手を振っていた。ステージもフロアも興奮状態のまま、「NEW SOUL」へ。サビではメンバーと一緒にオーディエンスも熱唱。熱量のキャッチボールとも言える、コール&レスポンス。誰一人として静かにライヴを観ている人なんていない、とにかく体を動かしてノーナの音楽を浴びていた。

終盤に入り、西寺が「みなさんにメッセージはないですかね?」と小松に訊くと、照れながら「僕ら20周年になるんですけどね。MCは相変わらずこんな感じでやらせてもらってます。今後ともよろしくお願いします」と話し、奥田は「(ノーナとクラムボンは)同じ3人組で。編成はちょっと違うけど、ずっとメンバーチェンジもなくやってて。同じくらいの年月を重ねているバンドとやれる喜びは多分、想像以上に大きいです。正直ね、あんまり寝れなかったです」とステージに立てる嬉しさを語った。そして「本当にいろんな人に助けられてるなって考える1年でした。最初についてくれていたPAの白神さんという方が今年ガンで亡くなられて……」と仲間の不幸を惜しみつつ、「このステージに、この7人で立てているということは本当に特別なことだと思ってます」と、今までノーナに協力したいろんな人の想いを背負いながら、今日のステージに立っていることを話す西寺。思わず拳を強く握っている自分に気づいた。

本編の最後は「Glory Sunset」。<振り返る 懐かしき日々を ただ眩しくて 誰も皆、ガムシャラで 恥ずかしいほど絵に描いた未来の理想に まだしがみついて……>。デビューから20年間たったこの日。メンバーそれぞれの脳裏には、今日までの出来事が走馬灯のように流れていたかもしれない。僕はそんな特別な日を目撃することができて本当に幸せだったと思う。ライターとしてではなくて、イチ音楽好きとしてノーナを聴き続けて良かった、と……。

アンコールに入り、ノーナと原田郁子が登場。演奏するのは西寺と原田が初めて共作した「記憶の破片」。この曲は20周年のために一緒に作った、という言葉では片付けられないほど西寺と原田の20年という長い関係が詰まった名曲だ。ステージ上で原田はメンバーを見ながら、何度も笑みをこぼしていた。一緒に歌えて嬉しい気持ちがこちらにも伝わってくる。

アンコール2曲目では伊藤も参加。「洋楽と邦楽で最も強い歌。めちゃくちゃ盛り上がる曲って何なん?って思って。<中略>この曲を邦楽代表で原田郁子さんが選んでくれました」と西寺が話すと、「まさか歌う日が来るとは……感無量です」と原田。そう言って披露されたのは、なんと光GENJIの「STAR LIGHT」。まさか過ぎる選曲! 原田と西寺は過去にラジオ番組でジャニーズについて語っていたほど、80年代アイドルソングに傾倒している仲。だとしても、やっぱりこれは意外だった。「一緒に歌って」と観客にマイクを向ける原田。普段のライヴでは見せることのない、童心に戻ったような2組の姿がそこにあった。

ラストはミト、MCいつかも加入して11人編成に。「このメンバーで歌えることを嬉しく思ってます……」と西寺が語り、大きなスクリーンには、見覚えのある地球儀が映し出される。そして、出だしの<There comes a time when we heed a certain call>が歌われると、会場から一斉に歓喜の声が上がった。そう、洋楽の最も強い曲として選んだのは「We Are the World」。1フレーズ歌うごとに、声援が上がる。1フレーズ歌うごとに、鳥肌が止まらなくなる。ノーナ・リーヴスの20周年記念イベントのラストに「We Are the World」が聴けるなんて誰が想像しただろう……。
ステージ上では11人のアーティストだけでなく、スクリーンに映し出される歌詞に合わせてオーディエンスも一緒に合唱。<We are the world, we are the children>何度も会場全体で歌った。今、地球上で最もピースな場所は間違いなくココだ。自身の耳は今、人生で一番贅沢な音を聴いた。

文:真貝聡

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