レコーディング定番モデルと最新モデルがガチンコ対決!

【定番機の後継モデルと復刻モデルをレビュー】ゴールデン・エイジ・プロジェクトCOMP-2A

【定番機の後継モデルと復刻モデルをレビュー】ゴールデン・エイジ・プロジェクトCOMP-2A

2017/12/18


光学式特有のスムーズで上品なかかり具合が魅力

ゴールデン・エイジ・プロジェクト
COMP-2A

¥73,000
㈱アンブレラカンパニー
TEL:042-519-6855
http://umbrella-company.jp/
 

試奏:間瀬哲史(Cafe 2st)
定番モデル解説:篠崎恭一(SLOTH MUSIC)
 


往年の名機テレトロニクスLA-2Aを、細部にまでこだわって再現したCOMP-2Aをチェックしてみました。
操作は至ってシンプルです。入ってきた音に対して右側のツマミでコンプのかかり具合を調整して、左側のツマミでリダクション(圧縮)した分を持ち上げるというのが基本的な使い方です。光学式ゆえ、1176に比べて動作が少し“おっとり”としていて、スムーズなかかり具合がとても上品です。本機はオリジナルのキャラクターをしっかりと受け継いでおり、S/N比の良さや真空管の丁度いいサチュレーション感などを考えると、このモデルはかなりありだと思います。

オリジナルでは背面に装備されていた調整機能が、本機ではフロントに配置されているので、ラックマウントしてもすぐに調整できる点も好感が持てます。高域信号に対するコンプの感度を調整可能な「HF COUNTOUR機能」が非常に優秀で、設定した帯域に対して積極的にコンプをかけることができ、結果として非常に聴きやすく存在感のあるボーカルサウンドを得ることができました。

何より、ここまでこだわり抜いて作られたハードのコンプが、この低価格で手に入るというのは絶対にお得です!

【製品概要】
「COMP-2A」は、テレトロニクスの光学式真空管コンプの名機「LA-2A」を再現したモデルだ。ビンテージの回路構成にこだわって設計していることで、当時のサウンドを完全に再現しており、プラグインでは表現できない本物の真空管コンプサウンドを楽しめる。オリジナルでは背面に装備されていたスイッチ関係が、すべて前面に配置されているのも特徴だ

 

定番モデル「テレトロニクス/ユニバーサル・オーディオLA-2A」の特徴

クリーンでファットなサウンドが得られる世界初の光学式コンプレッサー

 

1960年代初期に、ゲインのコントロールにフォトセル(光に反応する素子)を用いた世界初の光学式コンプレッサーとして登場して以来、世界中のエンジニアが魅了され、現在でも現行モデルが生産されるほど人気の高い真空管コンプレッサーが、このLA-2Aです。

音を光に変換する光学式というシステムを採用しているため、アタックタイムはそれほど速くはありませんが、サウンドは非常にクリーンでファットという印象が強く、様々なソースに用いられます。特にボーカルにかけた時の声の存在感は格別です。

使い方は非常にシンプルで、コンプモードとリミッターモードのどちらかを選択し、ピークリダクションでコンプのかかり具合を調整、ゲインで出力レベルを設定するだけという、まるでギターアンプのゲインとボリュームのようなシンプルな仕様になっています。これだけシンプルでありながら、非常に素晴らしいサウンドが得られるというところも、この機種が長年、定番となり得ている理由のひとつと言えるでしょう。
 

 

下の白いモデルがテレトロニクスのLA-2Aだ。ツマミが3つとスイッチが2つだけという、非常にシンプルな作りになっている。ちなみに、上の黒い2台は、ソリッドステート式のLA-3Aを、ユニバーサル・オーディオが甦らせたモデルだ
 

テレトロニクスLA-2Aの現行モデル(¥375,000)。製品についての問合わせはフックアップまで(TEL:03-6264-1213、http://hookup.co.jp/
 

定番モデルはどうして長きにわたり愛され続けているのか?

定番モデルと後継・復刻モデルを紹介する前に、プロのスタジオではどうして「定番」と呼ばれる機材が必ず導入されているのかについて考察してみましょう。エンジニアとしてだけでなく、プログラマーやPAエンジニアとしても活躍している篠崎恭一さんが、わかりやすく解説してくれました。
 

クオリティの高いサウンドでレコーディングやミックスを行なうことができるプロのスタジオは、部屋の鳴りや導入している機材など、それぞれに個性や違いがありますが、その反面、どのスタジオにも定番の機材というものが置いてあります。定番となりうるその理由は様々あるのですが、まず何と言っても「音がいい」というのが大きなポイントとして挙げられます。例えば、マイクならシュアSM57やAKG C414、ノイマンU87、マイクプリならニーヴの1073、コンプでしたらユニバーサル・オーディオの1176あたりは、まさにド定番です。

それらの定番機材を使えば何もかも音が良くなるという訳ではありませんが、「この楽器をこの機材に通した音が最高」という実例が非常に多いのです。

スピーカーやヘッドホンなどのモニタリング機器に関しては、聴いて楽しい音でなく、演奏やミックスの時にリズムや帯域が見えやすい、フラットな音を持つものが使用されます。代表的なものは、スピーカーではヤマハNS-10M、ヘッドホンではソニーMDR-CD900STなどで、それらを置いていないスタジオを探す方が難しいほどです。

また、定番になりうるもうひとつの理由として、「操作性が非常にシンプル」という点も挙げられます。プロのスタジオは時間単位で使用料金が加算されるので、手早く音を作れるというのも実は重要なポイントなのです。また、シンプルな操作性は、多くのエンジニアが出入りするスタジオにおいて、誰でもすぐに使えるというメリットもあります。

定番機種は、そのような理由で需要が高く、姉妹品や後継・再現モデルの他に、プラグインも出ているので、今では宅録環境でも導入しやすくなっています。また、「シンプルで音がいい」というのは、宅録においても大きなメリットです。定番モデルや後継モデルの導入は、プロのサウンドに近づくための一番の近道と言えるでしょう。
 

手前はギターアンプの録音で必ずと言っていいほど使用されるシュアSM57(ダイナミックマイク)。奥は、アンプやアコギ、ドラムのオーバートップなどでも使われるAKG C414(コンデンサーマイク)だ
 

左のシュアSM57と並んでギターアンプのレコーディングで使用される、ゼンハイザーMD421(ダイナミックマイク)。アンプ以外にもスネアやタムなど、ドラムでも使うことが多い。通称「クジラ」と呼ばれている
 

世界中のスタジオでボーカルレコーディングに使用されている、ノイマンU87というコンデンサーマイク。非常に幅広い帯域を捉えることができ、シンガーやプレイヤーのニュアンスを余すことなく収音できる
 

こちらもモニタリングでは定番の密閉型ヘッドホン、ソニーMDR-CD900ST。ギターやキックなどの音の立ち上がりがとても速く、リズムに合っているかどうかの判断がしやすいため、特にミュージシャンが歌や楽器をレコーディングする際に使用される
 

上はユニバーサル・オーディオ1176(コンプ)。世の中に流れている音楽で、これを通していないものはないと言っても過言でない定番機だ。下はニーヴ1073という、これまたスタジオではスタンダードなマイクプリ。もともとはコンソールに組み込まれていたが、マイクプリ部を抜き出して使っている場合が多い
 

世界中のスタジオにセットされているヤマハのモニタースピーカーNS-10M。周波数特性がフラットで、音楽を制作するうえで不要な味付けがない

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