魔法びんと同じ真空構造を採用したニアフィールド・モニター

【ドリカムのエンジニア、岡村 弦氏がレビュー!】VECLOS MSA-380S

【ドリカムのエンジニア、岡村 弦氏がレビュー!】VECLOS MSA-380S

2017/12/17


バランスアンプを収納しているベース部分には、剛性が強いマグネシウム合金を採用。音質の劣化を招く電磁波を遮断する
 

魔法びんと同じ真空構造を採用し、歌などの中高域が明瞭に聴こえるスピーカー

VECLOS
MSA-380S

オープンプライス(¥149,800前後/ペア)
サーモスお客様相談室
TEL:0570-066966
https://www.veclos.jp
 

VECLOSから、デスクトップ環境で音楽制作やリスニングをするのに最適なニアフィールド・モニターの新製品「MSA-380S」が登場しました。本機のサウンドを、DREAMS COME TRUEなどの作品を手掛けているエンジニア、岡村 弦氏にチェックしてもらいました。
 

取材:平沢栄一
写真:生井秀樹
 


真空構造で共振が抑えられているせいか音がタイトで、
スッキリした明瞭なサウンドが鳴るというのが第一印象です

スピーカー部分の上下の角度が
自由に調整できるところがいい

──まず、真空技術を活かして開発されたというMSA-380Sの第一印象はいかがでしたか?

岡村:MSA-380Sの他に、真空技術を応用したスピーカーを知らないんですけど、これは面白いことを考えるなと思いましたね。見た目も独特だし、最初はスピーカーに見えなかったです(笑)。スピーカー部分の上下の角度が自由に調整できるところがいいですね。コンパクトだしデザインも個性的なので、据え置きで使うよりも、好きな場所に置いて角度調整をして鳴らす、という使い方がいいのかなと思いました。

──では、セットアップについてはいかがでしたか?

岡村:デスクトップ向きの小型スピーカーなんですけど、それぞれにアンプを内蔵していて、入力端子と電源も別々に付いていますから、普通のニアフィールド・モニターとセッティングは変わらないですね。入力端子もXLR端子ではないものの、TRSの標準バランスフォーンになっていますし。音量調整用のレベルツマミも左右に分かれているので、パソコンに直結するというよりは、オーディオインターフェイスを使って接続することを考えているんでしょうね。そういった意味でも、モニター然としています。

──では、最初に音を鳴らしてみた時の印象を教えてください。

岡村:真空構造で内部の共振が抑えられているせいか音がとてもタイトで、スッキリした明瞭なサウンドが鳴るというのが第一印象です。

──ドライバの口径が52mmと、かなり小さなスピーカーなのですが、パワー的に不足はありませんか?

岡村:かなり大音量にすると、音がグシャッとなってキャパシティをオーバーしている感じになりますが、僕が試した音量は一般家庭で出すと隣から「壁ドン」を喰らう苦情レベルでしたから、適切な音量ならば必要十分なパワーは得られます。そもそも小型のスピーカーは、そんなに音量を出さなくてもしっかり聴けるということが利点だと思うんです。車で例えると、狭い路地では大型車やスポーツカーは性能を持て余しますけど、コンパクトカーなら快適に走れるみたいな。我々みたいなプロが使うニアフィールド・モニターを一般家庭で鳴らすと、かなり音量を絞らないといけないんです。ならば、最初からサイズの小さなものを適量なレベルで鳴らす方が、バランスのいいサウンドが聴けるんです。
 

曲を聴いたり作ったりする時に
気分が上がるスピーカーだと思う

──実際に試聴されて気づいた、サウンドの特徴があれば教えてください。

岡村:先ほども言いましたが、スッキリした明瞭な音という印象が強いですね。中域から上に少し色付けが感じられて、楽曲の中ではボーカルやギター、スネアみたいな、中高域を含むパートが強調されて立ち上がりも速く聴こえます。低域はバスレフ構造によって後ろからも出ているんですけど、控えめですね。でも、バスレフはロー感が出る反面、低域が回り込んで音像がボケることもあるので、本機はそれがない分、全体的にスッキリ聴こえるんだと思います。本機の周波数特性のグラフを見たんですけど、2kHz以上が上がっていて、100Hzの手前から下がっているんですよ。僕が音を聴いた時の印象と一緒だったので、間違ってはいなかったですね。

──音の分離や定位感、広がりなどはいかがですか?

岡村:音の分離はいいと思います。それぞれの音がシャキッとしています。試聴ではストリングスを録ったトラックだけの状態でも聴いてみましたが、バイオリンやビオラとかの各楽器がちゃんとセパレートされていて、どこに定位しているのも見えやすいですね。リバーブ感もわかりやすかったです。ただ、EQの調整をする場面では、出音の中域に色付けがあるのと超高域やローが控えめなので、その点を頭に入れて調整をするといいと思います。

──では、MSA-380Sは、どういった用途のモニタリングに向いていると思いますか?

岡村:ポップスやロックとかの、歌ものの制作やリスニングに向いていますね。2kHzあたりから上の帯域が出ているので音がわかりやすいですし、いい意味でハデなんですね。なので、制作をしていても気持ち良く聴けるのではないでしょうか。プロエンジニアがスタジオに置いて正確なミックスをするためのニアフィールド・モニターというよりも、ミュージシャンや宅録をやっている人が、色々な場所に持ち運んで曲を聴いたり作ったりする時に気分が上がるタイプのスピーカーだと思いました。楽器店や家電店の店頭でMSA-380Sを見つけたら、一度サウンドをチェックしてみてください。
 

今回はアビッドのオーディオインターフェイスから出力したPro Toolsの信号を、グレースデザインのm904というモニターコントローラーを通してMSA-380Sに送って試聴を行なった。音源は、岡村氏が現在手掛けているアーティストのプロジェクトの他、様々なタイプの楽曲を使った
 

MSA-380Sは可搬性に優れているので、こうしてノートパソコンと小型のオーディオインターフェイスと組み合わせることで、どこでも簡単にモニタリング環境を構築することができる
 

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スピーカー部の断面図。ステンレスの二重構造になっており、内筒と外筒の間を真空にすることで振動が減衰し、ノイズのないクリアなサウンドを生み出す
 

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スピーカー部は最大45°まで、5°刻みで角度を調整することが可能だ。カチカチとしたしっかりした感触で、左右の角度を正確に合わせることができる
 

SPEC

●形式:1ウェイ・バスレフ型パワードモニター ●ドライバ:52mmコーン型フルレンジ(アルミ) ●周波数特性:100Hz〜20kHz ●最大出力音圧レベル:90dB
●アンプ定格出力:13W/バランス ●S/N比:97dB ●入力インピーダンス:20kΩ ●入力感度:0.35Vrms(−3.0dBu)/バランス ●最大入力レベル:22dBu ●入力端子:TRS標準フォーン(バランス)×1 ●コントロール:レベル ●外形寸法:約74(W)×98(H)×171(D)mm(スピーカー部をたたんだ状態) ●重量:本体=850g(1台) ●付属品:保護用スピーカーグリル(2個)、スピーカーケーブル(4本)、ACアダプター(2個)、電源ケーブル(2本)
 

岡村 弦(オカムラ ゲン)

専門学校卒業後、音響ハウスにアシスタントとして入社し、エンジニアとしてのキャリアをスタート。2000年には香港に渡り、3年間で約300曲のレコーディングとミックスに携わる。帰国後はDREAMS COME TRUEやLiSA、堂本 剛や感覚ピエロなどを手掛け、生楽器を中心としたサウンドメイクを得意とする。また、アニメ音楽にも精通しており、数々の作品を担当。2017年には自身の所属するWAVE RIDERのニュースタジオ「catapult studio」をオープンし 、「リラックスした環境」で「最高のクオリティ」の作品を生み出すことをコンセプトに、日夜制作を行なっている。

 

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