ソロデビュー30周年を記念したアルバム
杉山清貴『OCEAN』インタビュー
杉山清貴『OCEAN』インタビュー
2016/07/27
80年代のバブル全盛期は日本のシティ・ポップ全盛期でもあった。当時、「夏、海、リゾート」をコンセプトにした楽曲でチャートを賑わし、メディアへの露出も多かった“杉山清貴&オメガトライブ”は、シティ・ポップの代表選手として不動の地位を確立した。そんな杉山清貴が、ソロデビュー30周年を記念したアルバム『OCEAN』をリリースした。意外にも、ソロになってからは“海”をコンセプトに取り上げるのは今回初とのことで、ここでは、杉山本人に制作時のエピソードやリード曲「風の記憶」に盟友「菊池桃子」を招いた経緯を語ってもらったほか、デビュー当時から変わらない歌唱法や弾き語りへのこだわりについても聞いてみた。
取材:斎藤一幸(編集部)
「“海”を感じるような言葉を入れて下さい。」と頼んだんですよ
──だいたい○○周年記念アルバムというと、ベストや自身のカバーを出される方が多いのですが、今回、オリジナルアルバムを出されたのは何か意図があるのでしょうか?
杉山:やっぱり、カバーは3年前(2013年リリースのセルフカバーアルバム『I AM ME』)にやっちゃったんで、ちょっと近すぎますよね(笑)。
──意外にも、アルバム・コンセプトとして「海」をテーマにしたのは今回が初ということですが。
杉山:これまでの作品は“海” を連想させるアルバムタイトルであっても一曲は“街” の歌が入っていたりしていたのですが、収録全曲の歌詞に“海” のイメージを入れたアルバムは初めてだと思いますね。自分で歌詞を書いた曲もそうですけど、作詞家の方にお願いするときにも 「海っていうワードを入れなくてもいいから、“海” を感じるような言葉を入れてください」 と頼んだんですよ。
──1曲目の出だしから“わっハワイだ!”とイメージが湧きました。
杉山:そうですか! でもあれは「River」で「OCEAN」ではないんですけどね(笑)
──今回、アレンジが、バックバンドのKT SUNSHINE BANDと小林信吾さんで分けられていますがこれはどういった理由なのでしょうか?
杉山:KT SUNSHINE BANDがアレンジでクレジットされている3曲(「River」、「Umi-dori upon a sky」、「Sunset Lanai Bar-Tina Time-」)はすでにライブでも披露している曲なんですよ。
──なるほど。ではアレンジもある程度固まっていたのですね。
杉山:はい。作った時には “これはアルバムに入れよう!” といった意気込みもなく、逆に “アルバムに入れなくともパーソナルな曲が欲しい” という気持ちからレコーディングせずに、弾き語りや野音でのライブで演奏したりしていたんです。でも、そのうち「せっかくだからレコーディングして残しておきたい」という気持ちも芽生えて、今作に収録しました。
──3曲の雰囲気は統一されているように感じましたが、こちらはアレンジの段階で統一感を出していったのでしょうか?
杉山:そうですね。それぞれアコースティックな感じで仕上げました。この3曲って全部詞が先なんですよ。実は、「River」は釣りを仕事にしている友達に作った曲で、彼に “自分のDVDを出すから、何か曲を使いたいんだけど” と相談されて、“じゃあ書き下ろしてやるよ!”って作った曲なんです。「Umi-dori upon a sky」は以前書き留めておいた歌詞を見つけて、“あぁ、こんな歌詞あったなぁ。ちょっとメロディーをつけてみようかな” とメロディーをつけてみて、思いのほか良いものができたので弾き語りライブで演奏したりしていたものです。
──もう1曲の「Sunset Lanai Bar-Tina Time-」はどのように作られたのですか?
杉山:この曲は80年代当時、僕がハワイで入り浸っていたバーでの思い出を歌にしたんですよ。今回のアルバムは “この3曲がアルバムに入ったら面白いかな?” というアイディアからアルバムの方向性を決めていきました。
──この3曲をメインに据えてアルバムを作っていったのですね。
杉山:出だしとしてはそうですね。
──「Good Day, Sunny Guy ~村田和人に捧ぐ~」はイントロから“村田さんワールド”全開ですね。
杉山:そうです。これは村田ちゃんが亡くなったっていうメールをもらった次の日に、彼のCDをかけながら “村田トリビュートな曲を作ろう!” と作ったんですよ。それで、歌詞は村田ちゃんの歌詞を昔から書いてる安藤(安藤芳彦)さんに “村田のオマージュ、よろしく” と頼みました。
──では、この曲は歌詞よりも曲を先に作られたのですね。
杉山:そうですね。今回、信吾(小林信吾)さんが編曲を担当している曲はどれもメロディー先行です。
──後半のコーラスの盛り上げ方は、村田さんのファンにとってはたまらないアレンジですが、これも小林さんのアイディアですか?
杉山:いえ、あれはレコーディング現場で僕が “村田ちゃんの「波まかせ風まかせ」のコーラスを入れよう!” と思いついて入れたものなんです。コード進行もちゃんとハマってくれて、満足のいく仕上がりになりましたね。
彼女(菊池桃子)のあの声、歌い方を聴いて欲しかった
──「風の記憶 杉山清貴with菊池桃子」についてもお伺いします。以前、林哲司さんをインタビューさせていただいた時に、“竹内まりやさんや松原みきさんの曲を書いていた時は洋楽のテイストを邦楽に取り入れることに苦労したが、杉山さんや菊池さんの曲を書いていた頃に、ようやく違和感なくそれができるようになっていった” とお話されていました。そんな杉山さんと菊池さんがデュエットというのは、我々世代からするとたまらないものがありますが、ご一緒に歌われるのは意外にも今回が初なのですね。
杉山:そう、初なんです。
──テレビなどでも共演はなかったのでしょうか?
杉山:いや、ないですね。2年前に彼女はデビュー30周年を迎えて、セルフカバーアルバムを出しているんですけど、僕は彼女の事務所の社長に昔からお世話になっていて、その社長に「杉山君、桃子の曲をアレンジして欲しいんだ。ギターでも参加してくれる?」と言われたんです。それで3曲ほどアコースティックギターを弾いていて。そういった縁があって、今回はこちらから彼女にお願いして歌ってもらったっていう流れですね。
──菊池さんのあの唄声は当時から変わらない、唯一無二のアーティストですね。
杉山:僕も彼女のあの声、歌い方を聴いて欲しかったので、「風の記憶」はそのことだけを考えてメロディーを作りましたね。
──「好きなことを!」ですが、後半のギターソロは曲始まりからは想像もつかないような凄い展開となっていますね。
杉山: これは、あわしまマリンパークのイルカショーのイメージソングとして作った曲なんですが、アレンジですごく悩んだんですよ。イルカショーは家族連れの子供 がメインターゲットで、イルカは遊びが大好きな生き物なので、“サウンドは俺が考えちゃダメだ!”って思ったんです(笑)。それでガンガン行くようなアレンジができる若い人を探して、AKB48も担当しているHINATAspringに “イケイケでハデハデで、子供が飛び跳ねるようなやつを作っちゃって!”ってお願いしたんです。もう、大正解だったと思います(笑)。
──Disc2には「さよならのオーシャン」と「最後のHoly Night」の様々なバージョンが収録されていますね。
杉山:はい。
──「さよならのオーシャン」のリアレンジバージョンは今回初めて聴かせていただいたのですが、すごくカッコイイアレンジですね。
杉山: 『I AM ME』に収録したバージョンですね。あのアルバムは杉山清貴&オメガトライブ「SUMMER SUSPICION」からの歴代シングルをオリジナルのアレンジャーにリアレンジしてもらったものを収録したという、なかなか暴挙なアルバムだったんです (笑)。「さよならのオーシャン」は最初、佐藤準さんも「えぇ~、アレンジし直すの!?」なんて言われてたんですけど、やりはじめたら面白くなったみたいで(笑)。ちょっとラテンの雰囲気も入って、良いアレンジに仕上がってますよね。
──なぜDisc2はセルフカバー集になったのでしょうか?
杉山: 最初からこうなる予定ではなかったんですが、30周年の時もセルフカバーをやっていたので今作のディレクターから “何かセルフカバーやります?” と聞かれて、“でも、もうセルフカバーって感じじゃないよなぁ”って思ったんですよ(笑)。それで悩んでたら30年前に出したシングルは「さよならのオーシャン」と「最後のHoly Night」の2曲で、それぞれ何度もセルフカバーをやっていたことに気づいて。それでリストアップしたらどちらも4パターンずつやっていて、“これは面白い!” ということでこういった形になりました。
──ファンにはたまらないですよね。
杉山:レーベルもバップ、ワーナー・ミュージック、キングレコードとそれぞれ違うので面白いですよね。各バージョンを揃えて持っている人も少ないと思うので、全部が聴けるこのDisc2は貴重だと思いますよ。
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