60年代テイスト満載のR&Rサウンド

THE BAWDIES「RED ROCKET SHIP」を解説【ツインギター・サウンド研究 第1回】

THE BAWDIES「RED ROCKET SHIP」を解説【ツインギター・サウンド研究 第1回】

2015/11/25


ギターバンドのヒット曲を音作り、ミックス、譜例を交えて解説する連載企画「ツインギター・サウンド研究」。第1回は、THE BAWDIES「RED ROCKET SHIP」を取り上げよう。
 

今回の解説曲:THE BAWDIES「RED ROCKET SHIP」

『1-2-3』収録
Getting Better/VICL- 63991

●60年代テイスト満載のサウンドと、シンプルなリフのアンサンブル

 この曲は、2本のギターの音色が全体的にすごくドライな質感で、ひとつひとつの音が太くて存在感があるのが特徴ですね。彼らが敬愛している60年代のロック的なファズと、ガッツリとコンプがかかったサウンドが印象的です。

 2本のギターのアンサンブルが基本ですが、途中でアコギが一瞬出てきたりして、それがいいアクセントになっています。それから、イントロとギターソロの部分ではもう1本ギターがセンター付近に現われるのですが、これはオフマイクによる空気感を活かしたサウンドになっていますね。他のオケがドライなので、そのコントラストが楽曲に奥行き感を与えていると思います。

 ギターは左が高め、右が低めのフレーズを弾いていますが、時々右のギターが高いオブリを弾いたりもしていて、この左右の絡みがギターアンサンブルのキモになっていますね。ギターアンサンブルの組み立て方として、90年代以降のロックバンドは、2本のギターでカッティングをすることで“音の壁”を作ることが多いのですが、THE BAWDIESの場合は、定位をシンプルにし、ギターリフで楽曲をグイグイ引っぱっていくアンサンブルを構築しています。
 

アンプシミュレーターでの設定例


GUITAR1

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GUITAR2

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 GUITAR1はVOXタイプやマッチレスなどで中音域を中心に音作りをして、リズムがハッキリと聴き取れるようにしよう。GUITAR2は高音域を中心としたサウンドで、ギラっとしたフェンダー的なアンプの方が雰囲気が近くなり、曲全体のまとまりも良くなる。
 

全体の定位

THE BAWDIES「RED ROCKET SHIP」のミックス定位

 

 左右に振られた2つのギターのサウンドが絡み合うことでアンサンブルを構築している。センターにはキック、ベース、ボーカル、そしてイントロと間奏に出てくるギターが定位されており、センター/L/Rという潔い3点の定位が、サウンドを迫力あるものにしている。

 また、THE BAWDIESのようなアナログ感溢れる歪みをプラグインで再現するには、レコーディングの段階で歪ませて録ったギターのサウンドに、ファズでさらに歪みを加えれば、高い音の歪み方が雰囲気になるので試してみてほしい。
 

「RED ROCKET SHIP」風ツインギター・フレーズ

THE BAWDIES「RED ROCKET SHIP」風ツインギター・フレーズ

 

 ギター1のバッキングでは、Bメジャーに9thが入ったり、D♯m7のトップに7thがくるなど、コードを弾きながらトップノートの音を変えることでフレーズに動きを出している。ギター2は、コード感をしっかりと出すために全音符の白玉を「ジャラ~ン」と弾いていて、シンコペーションせずに小節の長さをキープしているのがアンサンブルのキモになっている。
 


ミックス分析:上村 量(エンジニア)
取材:黒田隆憲
譜例作成&解説:野村大輔(ギタリスト)


 

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