オーディオファンだけでなく、音楽を作る人にも魅力的な製品
録音エンジニアが試す注目のUSB DAC LUXMAN DA-250
録音エンジニアが試す注目のUSB DAC LUXMAN DA-250
2016/02/10
ラックスマンの前身「錦水堂額縁店ラジオ事業部」の1925年当時の社屋(大阪・心斎橋)
1925年に創業、90年以上!という長き歴史を持つ、老舗中の老舗であるオーディオ専業メーカー、ラックスマン。同社はこれまでに、真空管アンプやソリッドステートアンプの名機を数え切れないほど生み出しているが、近年はCDプレーヤーや、DAコンバーター、ヘッドホンアンプなど、音楽ソースやリスニングスタイルの変化にあわせた幅広いジャンルのオーディオ製品を手がけている。そんなラックスマンから、新たに登場したのがUSB DAC「DA-250」だ。こちらの製品は音楽ファンにとってはもとより、音楽を制作する人たちにとっても非常に興味深い製品に仕上がっている。そこで、数多くの音楽制作に携わってきたことで知られる間瀬哲史氏が、音楽制作者としての立場からDA-250の魅力を探るべくラックスマンを訪問した。
いち早くUSB DACに取り組んだラックスマンの最新鋭機 DA-250
ラックスマンがPCオーディオという新ジャンルにアプローチしたのは、2010年のこと。それが、「DA-250」の先代に該当するモデル「DA-200」だ。もちろん、ラックスマンはこれまでにもCDプレーヤーなどのデジタル系製品は手がけていたものの、パソコン周辺機器メーカーによる入門モデルや、プロ用のオーディオ・インターフェイスを活用してシステムを構築するのがまだまだ主流だった当時に、老舗オーディオメーカーが“本格オーディオ機器”のひとつとしてUSB DACをリリースしたのは英断といえる。
加えて、コストパフォーマンスにも配慮された製品作り&価格設定が行われていたこともあって、高級オーディオメーカー“ラックスマン”のサウンドを(比較的)手軽に楽しむことができることもあり、発売当初から、「DA-200」は大いに話題を集め、ロングラン製品となった。
そんな、「DA-200」のコンセプトを受け継ぎつつ、最新ハイレゾスペックへの対応を実現。加えて、さらなる高音質化を推し進めたのが、この「DA-250」である。リニアPCMで192kHz/32bit、DSDでは5.6MHzという現在配信されている最高スペックのハイレゾ音源に幅広く対応し、同時にヘッドホン回路やプリアンプ回路には、ラックスマンが誇るハイクォリティ電子制御アッテネーター「LECUA」をそれぞれ独立して搭載。価格的には数万円のアップにもかかわらず、ワングレード、ツーグレード上級の製品に生まれ変わったかのような、機能性&クォリティ面での大幅なグレードアップが行われている。まさに“最新にして最強”という肩書きを付けたくなるような、いま考えられる完璧なスペックを持つUSB DAC製品に仕立てられているのだ。
●DA-200 ⇒ DA-250 への主な進化ポイント
・対応フォーマットの拡大
・ヘッドホンアンプの強化:インピーダンスの高いヘッドホンも高音質で楽しめる
・プリアンプ機能の強化:バランス出力端子からの音量調節を可能にすることパワードスピーカーとの組合せが可能
・高品位音量調節機構 LECUA搭載
パワードスピーカーと組み合わせればシンプルな再生システムを構築可能
さらに、音質とともに機能性も向上し、活用の幅が広がってくれたのも「DA-250」ならではのアドバンテージといえる。というのも、「DA-250」は単なるUSB DACではなく、専用設計のヘッドホンアンプ回路を搭載することで、上質&パワフルなヘッドホンアンプとしても活用できるようになっている。さらに、XLR端子によるバランス出力も用意されていて、パワード(アンプ内蔵の)モニタースピーカーを接続すれば、とてもシンプルな、それでいて上質なリスニングシステムを、いとも簡単に構築することができるのだ。
●DA-250を使ったリスニングシステムの例
DA-250 は、DAC + ヘッドホンアンプ + 音量調節が可能なプリアンプの機能が一体化されているので、ヘッドホンへの直接出力、パワードスピーカーへの直接出力、パワーアンプ経由でのスピーカーと組み合わせることが可能。コンパクトなデスクトップオーディオシステムや本格的なオーディオ機器との組み合わせなど多彩な使い方や発展性を楽しめる
最近は、レコーディングシステムとは別にリスニングシステムとして独立した再生システムを使うミュージシャンやエンジニアも増えてきていると聞く。そのためのシステムに組み込む機器として、「DA-250」は、クォリティ、手軽さの両面でマッチングの良い製品となっているのだ。
そんな、幅広い活用が可能な「DA-250」の魅力を探るべく、今回は音楽制作のプロフェッショナル中のプロフェッショナル、サウンド・エンジニアである間瀬哲史氏に試聴してもらった。間瀬氏は、レコーディング&ミックス・エンジニアとして坂本龍一、HUSKING BEE、Kyoto Jazz Massiveなど様々な作品やツアーなどに参加している、いわば現場のプロ。ピュアオーディオとも、PCオーディオとも異なる立場、観点から、「DA-250」を体感し、語ってもらおうという試みだ。なお、今回の試聴はラックスマン本社の試聴室にて行い、開発本部本部長の長妻雅一氏や広報部部長の小嶋康氏にも参加してもらった。インタビュアーはオーディオライターであるとともに、音楽制作にも関わる野村ケンジ氏が担当した。
初代発売から5年、購入後の使われ方や要望を取り入れて開発された DA-250
小嶋:まず初めにラックスマンの歴史について簡単に説明させてください。弊社は1925年に創業し、オーディオを専業としているメーカーとしては、世界で最も歴史の長い会社です。
間瀬哲史氏
レコーディング/ミックス/PAエンジニア。1992年にPA会社に入社。1994年に某プロダクション所有のレコーディング・スタジオに勤務した後、コロムビア・スタジオ、レンタル・スタジオ等を経てフリーランス。2003年8月に有限会社セカンドドリップを設立。 DJ KAWASAKI、Kyoto JazzMassive、沖野修也、坂本龍一などエンジニアとして様々なプロジェクトに参加する一方で、音楽機材の開発/製造や音楽スタジオのプランニング、音楽レーベルの運営など行なっている
間瀬:えっ、1925年ですか?
小嶋:そうです(笑)。 大正14年、NHKのラジオ放送開始とともに創業いたしました。当時はラジオを受信するための部品の販売などを手がけていましたが、次第にそれらを組み立てた完成品として販売するようになり、それがラックスマンの原点となっております。戦後はアンプの開発に力を入れてきまして、それが現在はラックスマン製品の中心となっています。この間、アナログレコードやカセット、CD、SACD、DVDオーディオ、そしてハイレゾと、音楽の再生メディアの移り変わりとともに歩んできた歴史が、ラックスマンの今を築いています。
野村:ラックスマンというと老舗のハイエンドメーカーというイメージが強いかもしれませんが、実は「DA-250」のように最新のニーズにいち早く応じた新製品も開発する、チャレンジ精神を持ったオーディオメーカーでもあります。
小嶋:5年前に「DA-200」を発売してから、それをお使いになっている皆様から様々なご意見、ご要望などを頂戴しました。それらを真摯に受け止めるとともに、ラックスマンの最新技術を加えることで完成したものが、この「DA-250」です。
長妻雅一氏
ラックスマン入社以来、CDプレーヤーなどデジタルオーディオ機器の設計からスタート、2004年から開発本部長として同社製品の開発を統括
長妻:私からは、「DA-250」の特徴について簡単に説明させていただきます。「DA-200」を発売してから5年、この間、様々なスペックの音源が登場してきました。それら最新のハイレゾ音源に幅広く対応できるようにしたことはもちろんですが、それに加えて、ヘッドホンアンプが大きく変わりました。ディスクリート・バッファー回路を搭載することにより、駆動力が大幅に向上しています。ハイインピーダンスなヘッドホンなどでもしっかりと鳴らしきることができます。
間瀬:なるほど、高級ヘッドホンでもバリバリ鳴らすことができるんですね。
長妻:実は、ヘッドホンに関しては「DA-200」発売後にお客様からの要望が一番大きかった部分です。PCオーディオでは、ヘッドホンを使用して音楽を聴かれる方が多いのですね。もうひとつ、「DA-200」を発売してわかったことは、パワードスピーカーと接続して聴かれている方が少なからずいらっしゃったことでした。私共はオーディオメーカーですので、DA-200をプリアンプとし、パワーアンプと接続するケースを主に想定していました。しかしながら、実際には思いのほか、パワードスピーカーと接続されるケースが多かったのです。
超高品位音量調節機構LECUAを搭載、ラックスマンが誇る高音質技術を惜しげもなく投入
小島康氏
ラックスマンではアンプやデジタル機器などの設計者としてスタート。その後、広報、商品企画などを担当後、2007年から広報部部長を務めている。DA-250 の前身「DA-200」を企画、同社の USB DAC への取り組みを切り拓いた。ラックスマンとしての業務にあたる傍ら、「超PCオーディオ入門」(アスキー新書)などを執筆
小嶋:今回、XLRのバランス出力でも音量の可変調節をできるようにしたのも、このような使われ方に対応してのことです。しかも、そこに当社のセパレートアンプでも使っている非常に高品位な技術要素を投入することで、ハイエンドオーディオグレードでのボリュームコントロールを可能にしました。
野村:デスクトップでのシンプルな構成による再生環境に対するニーズに加えて、スタジオで使われているモニタースピーカーで、スタジオ環境に近いサウンドを体験したいというリスナーの要求もありますね。
間瀬:それは面白いですね。確かに同じモニタースピーカーで、ハイレゾ音源を再生すれば、スタジオで鳴っているものと、ほぼ等しいとも言えますね。ちなみに電子ボリュームについて興味があるのですが、詳しく聞かせてもらえますか?
長妻:はい。「DA-250」に搭載している音量調節機構は、正確に言うと電子ボリュームではなく、電子制御ボリュームです。一般的なDAC製品では、DACチップ内に内蔵されている電子ボリュームを活用しているケースが多いのですが、これですと、音量を絞っていくとビット落ちを起こし、デジタルの情報量を減らしてしまうという弱点があります。このデメリットを解消したのが、「DA-250」に搭載されている電子制御アッテネーター「LECUA(レキュア)」です。基本的には抵抗切替式の減衰器なのですが、電子制御することで、正確な音量調節とリモコン連動という利便性を両立しています。
●LECUAの概念図
間瀬:アナログの接点切り替えをコンピュータが行っているイメージですね。ボリュームを変動させても帯域バランスが変わらない。下げても音やせがしないということですよね。なるほど、ますます面白いです。
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