オーディオライター岩井 喬が送る連載企画第1話

連載企画「デスクトップオーディオのススメ」内蔵スピーカーではなく、外付けスピーカーで聴いてみよう

連載企画「デスクトップオーディオのススメ」内蔵スピーカーではなく、外付けスピーカーで聴いてみよう

2016/04/19


この連載は「机の上のパソコンに外付けのスピーカーを加えることでいかに心地よく音楽を聴けるかについて、ステップアップ方式でスピーカーなどの設置を含めた使いこなしを実践し、その効果についても解説していこう」というものだ。今回は、まずは限られた予算の中で音質改善がどこまでできるかをテーマに、リーズナブルなスピーカー3機種を試聴してみよう。

文:岩井 喬
 

はじめに


音楽を聴く環境は年々変化しているが、街中ではiPhoneから付属のイヤホンなどで音楽を楽しみ、家ではPCの内蔵スピーカーでiTunesに保存した音楽をBGMにして過ごすという方も多いのではないだろうか。

家で音楽を聴くときにはスピーカーを通せばもっと良い音で音楽を楽しめるのではないかと思っていても、“大きなシステムを導入するようなスペースがない”、“住環境的に音を出すのが難しい”、“PC用の小型デスクトップスピーカーではさすがに良い音を望むのは難しいのではないか”など、いくつかのハードルが立ちはだかり、外付けスピーカーで音楽を楽しむことをあきらめているケースも少なくないだろう。しかしながら、音が空間へ放たれることで生まれる自然な定位感や音場の立体感はスピーカー再生ならではのものでイヤホンやヘッドホンでは味わえない世界がある。まずは、外付けスピーカーを導入することをオススメしたい。

そこで、連載の第1回目にあたる今回は、まずは手頃な価格のアクティブスピーカーを加えることで音楽の聴こえ方がどのように変化するかを検証してみた。
 

おすすめスピーカーその1:クリエイティブ「Inspire T10」

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クリエイティブオンラインストア価格:¥4,612(税抜)
 

まず、本特集のスタートとなるアイテムはクリエイティブのコンパクトアクティブスピーカー「Inspire T10」である。ボリュームとトーンコントロール(センター位置がニュートラルで、左が低音、右が高音を強調する)がフロントパネルに用意された、2ウェイモデルだ。

わずかに上方向にバッフルを傾け、耳の位置へ程よく角度を向けた仕様である。特徴的なのは設置の際、背面側の壁への影響を抑えるため上面に設けられたバスレフポートBasXPortを搭載していることだ。入力は付属ケーブルによるアナログ1系統に加え、ヘッドホン端子とともに設けられた“AUX”アナログステレオミニジャックをもう1系統用意。PC以外に携帯プレーヤーのアナログ出力を繋ぐこともできる。

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上面のバスレフポート

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側面のAUX端子により携帯プレーヤーの再生が手軽にできる


●試聴・実感レポート


PC(MacBook Pro)のヘッドホン端子に「Inspire T10」への入力ケーブルを接続。音源はiTunesから再生している。基本的な音質であるが、ベースが豊かにふくらみ、全体的にゆったりとした雰囲気が漂う。余韻はボンボンと低域の響きが加わり、中高域のフレーズがマスクされてしまうため、トーンコントロールで高域側を多少持ち上げ、音像の輪郭を際立てるとバランス良く音がまとまるようだ。

ボーカルはやや奥まった位置から聴こえ、ややくぐもった印象を持つ一方、女性の声はハキハキとしたクールな艶が乗り、適度に前へ張り出してくる。高域方向はトゥイーターを搭載していることもあり、比較的明瞭度が高い。シンバルも輝きよく響き、存在感も十分だ。ピアノも低域の響きが深くどっしりとした雰囲気が良く出ている。ベースやキックドラムは厚く表現され、エレキギターのリフも太く心地よい。

音像の密度は高く、柔らかなアタック表現が耳当たりの良さに繋がっているようだ。ただし机に低域の振動が響き、音場を濁している印象も受ける。トーンコントロールを含め、使いこなしで詰めていけばある程度バランスの整った音質となるが、ただ机の上に置いただけでは本来持っているコスパの良さが半減してしまう。対策の一つとしては、豊かな低域の響きとともに盛大に震えるキャビネットの制振が一つのカギとなるのではないか。

【主なスペック】
スピーカー出力:5W RMS/ch (2チャンネル)
周波数特性:80Hz - 20kHz
S/N比:75dB
外形寸法:約8.8x19.4x13.2cm
重量:約2kg(電源アダプター含まず)
入力端子:アナログ2系統
・2ch(ステレオミニジャック) x 1
・AUX(ステレオミニジャック) x1
出力端子:ヘッドフォン出力(ステレオミニジャック) x 1
スイッチ、インジケータ、その他のコネクタ類
・電源スイッチ/ボリュームコントロール
・バスレベルコントロール
・電源LEDインジケータ
電源:DC 12V(AC-DCアダプター)

■メーカー詳細ページ

 

おすすめスピーカーその2:クリエイティブ「GigaWorks T20 SeriesⅡ」

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クリエイティブオンラインストア価格:¥7,600(税抜)
 

続いて同じクリエイティブより、上位モデルとなる『GigaWorks T20 SeriesⅡ』を試してみた。こちらも2ウェイ構成となるが、トゥイーターは布製ソフトドーム仕様、ウーファーは温度や湿度の影響を受けにくい素材であるグラスファイバーコーン仕様だ。音響学的なレイアウトを導入したというスピーカーの構造も独特で、『Inspire T10』同様、机からの反射による影響を受けにくい角度をつけたバッフルを取り入れているが、ユニット配置はトゥイーターがウーファーの下に取り付けられた構成である。

そしてバスレフポートの構造も『Inspire T10』と同じく、キャビネット上面にBasXPortを装備。フロントパネルにはボリュームの他、低域用と高域用が分離したトーンコントロールを設け、より細やかなサウンドチューニングが行えるようになった。外部入力はステレオミニのアナログが2系統用意されるほか、ヘッドホン出力も設けている。スピーカー保護の点で有効なサランネットが付属する点も上位モデルらしい仕様といえるだろう。
 

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「Inspire T10」と同様に、上面にバスレフポートが設けられている

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トーンコントロールはBASSとTREBLEの2バンドを搭載


●試聴・実感レポート


こちらのサウンドについてであるが、『Inspire T10』に比べ低域の引き締め感が高まり、声の厚みも自然に表現できるようになった。トーンコントロールの低域側を少し下げ、高域側を少し上げることで一つ一つのパートがクリアに引き立つようになる。

空間性もより良く表現できるようになり、抑揚のある高域の音伸びも心地よい響きだ。中高域の適度なハリ感と輪郭表現によって分離も良く、ボーカルの細やかな発音もすっきりと見通せる。ウーファーが机面から離れていることもあり、低域の響きが適度に制限されていることも明瞭度の高さに結びついていると考えられるが、腰の据わった安定感という点ではもう少しという印象だ。

女性の声も適度に厚みを持たせ、艶ハリ良くナチュラルに際立たせている。ベースやキックドラムの密度良く程よくしなやかな描写も『GigaWorks T20 SeriesⅡ』の価格を考えると非常によくまとまったクオリティであり、色付け感の少ない自然な表現性を感じることができた。

トゥイーターの品位の良いサウンドが全体をまとまりよくカバーしているようで、人の声など、中域の厚みや質感の滑らかさといった点もバランスの取れたサウンドになっているようだ。トータル面では荒削りなところも見受けられるものの、素性の良さも感じられるので、セッティングを詰めることで音質についてもさらに高めることができるのではないか。

次回は、この「GigaWorks T20 SeriesⅡ」をベース機として設置方法でどれだけ音質が改善するのかも実践してみたいと思う。

【主なスペック】
スピーカー出力:14W RMS/ch
周波数特性:50Hz - 20kHz
S/N比:80dB
外形寸法:約14.3 x 8.4 x 23.0cm
重量:約2.1kg(ACアダプター含まず)
入力端子:アナログ入力2系統
・2ch(ステレオミニジャック) x 1
・AUX入力(ステレオミニプラグ) x 1
出力端子:ヘッドフォン出力(ステレオミニジャック) x 1
電源:DC 27V(ACアダプター)

■メーカー詳細ページ
 

おすすめスピーカーその3:JBL「Pebbles」

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公式通販サイト価格:¥6,880(税抜)

ここまではアナログ接続での簡単な方法でのサウンドを確認してきたが、最後にUSBからデジタル信号を取り出して再生を行うデジタル接続環境での音質がどのようなクオリティなのかもチェックしてみた。

用いるモデルはUSB接続により音声をデジタルで引き込むだけでなく、バスパワーで本体のアンプも動作させる合理的な構造を持つ、JBLの「Pebbles」である。デジタル入力においては48kHz/16bitまでのCD/DAT程度のクオリティであるが、増幅部もデジタルアンプ構成としており、小型ながらもパワフルで純度の高いサウンド再生を実現させているという。

スピーカーユニットは5cmフルレンジ1発のシンプルな構成で、本体横の電源スイッチを兼ねるロータリー式音量コントロールを備えている。USB-DAC以外にステレオミニジャックによるアナログ入力も備えているが、電源はUSBバスパワー供給のため、PCの電源が入っている状態を維持しなければならない。
 

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ロータリー式の音量コントロール

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AUX入力も用意されている


●試聴・実感レポート


さすがにデジタル接続だけあり、緻密で解像感の良いすっきりとしたサウンドを聴かせてくれる。ユニット口径が小さいことやフルレンジ仕様という点で鳴りっぷりにおいては前述したクリエイティブの2モデルに歩がある印象であるが、密度良く丁寧なベース部の表現性も的を得ており、躍動感あるサウンドを楽しむことができた。

声の艶もハリ良く表現し、すっきりとセンターへ浮き上がる。音場感も素直でストリングスの重なりもほぐれ良く感じ取れた。ピアノや女性ボーカルの表現は瑞々しい響きとなり、滑らかで奥行き感も感じられる。エレキギターのクリーンでエッジの効いた描写も付帯感なく引き出し、ディストーションの粘り感も自然に描き出す。癖がなくナチュラルな音像描写においてはここまでで最も理想の表現となっているものの、トーンコントロールがないため、環境に応じた調整ができない点は惜しいところだ。

試聴を行った環境ではベース帯域の上、中域付近に膨らむポイントがあり、机の共振などの影響も考えられる状況であった。『Pebbles』はどちらかといえばピュアオーディオ的なアプローチのアクティブスピーカーであり、性能をフルで発揮させるには設置環境にも配慮する必要がありそうだ。

次回はアクティブスピーカー3機種の試聴で明らかになってきた “デスクトップの環境を整えることで、どのように音質を向上できるか” をテーマとし、インシュレーターなどの効能を確かめてみたいと考えている。

【主なスペック】
音声入力:USBコネクタ×1、外部入力(3.5mmステレオ ミニジャック)×1
使用ユニッ:50mm径フルレンジドライバー×2
周波数特性:70Hz~20kHz
音声フォーマット:リニアPC(48khz/16bit)
電源:USB 2.5W
サイズ:幅78mm、奥行150mm 高さ132mm
重量:1kg
付属品:オーディオケーブル(45cm)×1

■メーカー詳細ページ

 


岩井 喬(イワイタカシ)=プロフィール


1977年長野県生まれ。小学生の頃、電子工作の面白さに気づき、中学生からは自作の延長線であったオーディオにはまる。工業高校~音響系専門学校を経て、都内レコーディングスタジオへ就職。オーディオ専門誌への執筆を開始。コンシューマー系オーディオ誌の他、プロオーディオの取材執筆もこなす。またアニメ誌編集・執筆に携わっていたこともあり、いち早くオーディオ分野と“萌え”の融合にも取り組む。80年代ロックが好物。


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