SQUARE ENIX 鈴木光人氏&小森雄介氏のインタビューを掲載
「KOMPLETE KONTROL S88」徹底解説!(あのSQUARE ENIXのゲーム音楽クリエイター陣も愛用)
「KOMPLETE KONTROL S88」徹底解説!(あのSQUARE ENIXのゲーム音楽クリエイター陣も愛用)
2016/09/27

KOMPLETE KONTROL S88 ¥110,925
EDMのトラックメイクに必要な機能と音源をすべて網羅!
KOMPLETE KONTROL S88は、操作性やタッチの良さで高い評価を受けているFatar社製のピアノタッチ鍵盤を採用した88鍵のMIDIキーボードコントローラーです。本機には同社の高品位なソフト音源やエフェクトを10種類バンドルした「KOMPLETE SELECT」が付属しており、その中には世界中のトラックメイカーがこぞって愛用しているEDMの楽曲制作に欠かすことのできないソフトシンセ「MASSIVE」をはじめ、直感的にドラムトラックを作ることができる「DRUMLAB」、存在感のある太い音が魅力のアナログシンセ「MONARK」などが含まれています(下の記事参照)。
本機の最大の特徴は、KOMPLETEシリーズの音源や「NKSフォーマット」(※)に対応したサードパーティ製の音源をパソコン上に立ち上げると、各音源の主要なパラメーターを、本体に8個装備されたタッチセンサー式ノブに自動的に割り当ててくれる点にあります。また、「KOMPLETE KONTROLソフトウェア」でKOMPLETEやNKS、VSTインストゥルメントの選択をブラウザで素早く行なえたり、各音源のキースイッチやサウンド、サンプルタイプなどの種類を、鍵盤に装備されたLEDで表示してくれるなど、快適に制作が行なえます。
試奏・文:内藤 朗


本体のNAVIGATEセクション(左の写真)に配置されているボタン類を、KOMPLETE KONTROLソフトウェアのブラウザ画面(右の画像)を見ながら操作することで、すぐに目的の音源を探すことができます。※右の画像はNKS対応のArturia Jupiter-8Vを読み込んだもので、KOMPLETE SELECTには含まれていません
10種類のソフトウェアがパッケージされた「KOMPLETE SELECT」に注目!

KOMPLETE KONTROLシリーズに付属している「KOMPLETE SELECT」は、同社のインストゥルメンツやエフェクトをパッケージした「KOMPLETE」の中から、世界中のミュージシャンが愛用している10種類を厳選したもので、これらを個別に購入すると、何と12万円相当になります。含まれている内容は以下の通り。
・MASSIVE(シンセ音源)
・REAKTOR PRISM(シンセ音源)
・DRUMLAB(ドラム音源)
・SCARBEE MARK I(エレピ音源)
・RETRO MACHINES(サンプリング音源)
・MONARK(シンセ音源)
・THE GENTLEMAN(ピアノサンプリング音源)
・VINTAGE ORGANS(オルガンサンプリング音源)
・WEST AFRICA(パーカッション音源)
・SOLID BUS COMP(コンプレッサー)。
※現在KOMPLETE SELECTは、単品の製品「KOMPLETE 11SELECT」として販売されており、KOMPLETE KONTROLシリーズやMASCHINEシリーズに付属されているKOMPLETE SELECTも「KOMPLETE 11SELECT」にバージョンアップされています。

ダンスミュージックの定番音源として世界中のトラックメイカーが使っているMASSIVE

生ドラムとエレクトリックドラムの両方の音色を内蔵したDRUMLAB
MIDIコントローラーとしての操作性と機能をチェック
鍵盤が苦手なギタリストでも安心して使える機能が満載!
まずは鍵盤の弾き心地を試してみましたが、本機はアコースティックピアノが持つ鍵盤のレスポンスがリアルに再現されていて、本格的なタッチが好印象です。これなら弾き心地を重視してMIDIキーボードを選びたいという人も納得できるでしょう。
今回は色々な音源を立ち上げて試してみましたが、各音源のキースイッチやサンプルタイプをキーボード上のLEDの点灯で識別できるため、サンプラー系の音源を使用する場合の作業効率が飛躍的に高くなります。
また、EDM系のトラックメイクにおいてはシンセ系のサウンドを多用しますが、例えばパッド系の音色を選んでいる時に、ソフト音源側のプリセットを切り替えて音色を試聴するのは、かなりの時間と労力が必要になります。しかし、本機にはKOMPLETEシリーズの各ソフト音源との親和性が高い「KOMPLETE KONTROLソフトウェア」が用意されており、ブラウザで音源やプリセットを選ぶ際も、本体のNAVIGATEセクションのボタンを操作して選ぶことができます。実際に試してみると、想像以上に素早く目的の音色を探し出すことができました。これは音色選びが曲作りの重要なポイントとなるEDMの制作において、大きなアドバンテージです。
また、音源を切り替えると8個のノブにパラメーターが自動的に割り当てられるだけでなく、パラメーター名も切り替わって表示されるので、迷うことなくツマミが操作できるのは本当に便利です。
さらに1つの鍵盤でコード演奏ができたり、スケールモードにした際は、設定したスケールに含まれる音の鍵盤が点灯したり、アルペジエーターも内蔵されていたりと、本機は鍵盤が苦手なギタリストにもオススメしたいモデルです。

本体の8個のノブにMASSIVEのパラメーターをアサインして表示させたところ

アルペジエーターのボタンを押すと、ノブのパラメーター表示がアルペジエーターのものに切り替わる
Perfume「FLASH」の音色をMASSIVEで再現!

KOMPLETE SELECTに収録されているソフト音源を使用して、「FLASH」の冒頭部分から出てくるコードバッキング系のシンセサウンドを再現してみました。
使用する音源はMASSIVEで、プリセットは音色的に一番近い雰囲気を持っている「APPAREO」(①)を選択して、この音色を元にエディットを行ないます。
エディットの順番は、まず②のようにFILTER1のカットオフを少し上げ、レゾナンスを下げます。次に2Envを③のように変更してアタック感を調整すると、この曲に近いサウンドを得ることができます。また、必要に応じて内蔵のリバーブ(④)などのエフェクトを加えると、一層オリジナルのサウンドに近づけることができます。
SQUARE ENIXのゲーム音楽クリエイターがKOMPLETEの魅力を語る
世界的に注目を浴びているSQUARE ENIXのコンポーザー鈴木光人氏とサウンドデザイナーの小森雄介氏が音楽と音響を手掛けている、大人気のスマートフォンアプリ「MOBIUS FINAL FANTASY」(メビウス ファイナルファンタジー)でも音楽やシステムサウンドなどの効果音の制作でKOMPLETEが活躍しています。そこで、鈴木光人氏と小森雄介氏にKOMPLETEの魅力とゲームの中でどのように活用しているかと、曲作りや音色作りのポイントをお聞きしました。

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【MOBIUS FINAL FANTASY】
●ジャンル:RPG
●プラットホーム:iPhone/Android
●価格:基本プレイ無料(アイテム課金型)
MOBIUS FINAL FANTASY 公式サイト

鈴木光人氏

小森雄介氏
KOMPLETEがMOBIUS FINAL FANTASYの音楽制作で大活躍
──まず、MOBIUS FINAL FANTASYではかなりKOMPLETEを使われたそうですが、具体的に使われたソフトを教えてください。
鈴木:KOMPLETEは、かなりの数の音源がバンドルされていますが、その中で使用頻度が一番高かったのはシンセ音源の「FM 8」と「MASSIVE」です。尖った音なら「MASSIVE」、80年代のキラキラしたベルの音ならば「FM 8」と言った感じで、どこで使っているのか限定できないくらい色々な曲で使用しています。それと、シンセドラム音源の「BATTERY 4」と、サンプラーの「KONTAKT 5」はすべてのパートにおいて、必ずと言ってよい程使ってます。
小森:私は音楽ではなく、効果音や環境音を担当しているのですが、よく使ったのは「FM 8」ですね。ゲームの中で、協力バトルリージョンと言うみんなで協力して敵を倒すバトルシステムがあって、そこで「攻撃を頼む」とか、「私はパスします」といった他のプレイヤーに意思疎通をする時の「スタンプ」という機能の送受信音にこの「FM 8」を使っています。
小森:それと昨年の8月に、MOBIUS FINAL FANTASYのCMを開始した際に「アビリティカード」(ゲームの中で使えるアイテムカード)をプレゼントしたのですが、カードの中にFINAL FANTASY Xの人気キャラクター「ユウナ」をデザインしたものがあって、そのカードの効果が発動した時に鳴るサウンド(効果音)にもFM 8を使いました。ちなみにそのSEは、FINAL FANTASY Xの「祈りの歌」のワンフレーズをモチーフにしたもので、FINAL FANTASY Xを知っている人ならば、誰でもわかると思います。
──音源はそのまま使っているんですか?
鈴木:KOMPLETEの音源はクオリティが高いのでそのまま使えますよ。それと僕はエフェクトで誤摩化していない音が好きなので、曲を作る際にはエフェクトを切ってドライな状態で使うこともあります。。
──エフェクトは使わないんですか?
鈴木:基本的にはそうですね。もちろん曲の最終形を確認するためにエフェクトやエディットを行なってラフミックスまで完成させますが、そこから最終ミックスのためにエンジニアさんに渡す際には、もう一度バイパスの状態(エフェクトを切った状態)にして渡します。
──その理由はどんなところにあるのですか?
鈴木:僕はエンジニアさんもフィルター(エフェクター)の一種だと考えていて、エンジニアさんの手によってエフェクトやエディットが行なわれて曲がさらに磨かれて、そして僕が考えていないような仕上がりに変わっていくことが楽しみなんです。だからこそ曲を作る際に音源選びは特に大切にしています。曲作りの2割くらいは音色選びと作曲との同時進行ですね。アマチュアの方もKOMPLETEを購入したら、まずは各音源のプリセットの音を聴いて楽しんでください。シンセの音に触発されて曲が思い浮かぶかもしれません。ただ膨大な数の音源が入っているのですべて聴くのは大変だと思いますけれども(笑)。
──鈴木さんは今回紹介しているKOMPLETEの専用キーボードコントローラ「KOMPLETE KONTROL-Sシリーズ」も愛用されているそうですが、使い心地はいかがですか。
鈴木:KOMPLETE KONTROL-Sシリーズを使うとKOMPLETEのソフトを、ハードのシンセのように自由自在に演奏できるのがいいですね。音色に切り替えも色々なモードも簡単に行なえるので、慣れるともう手放せないですね。今制作している環境でも、KOMPLETE KONTROL-Sシリーズをメインにしているくらいです。今後もKOMPLETE KONTROL-Sシリーズは僕の作品の中で活躍してくれると思います。
■鈴木光人プロフィール
作曲家。京都府出身。田中フミヤ主催のレコードレーベル「TOREMA」や細野晴臣主催の「Daisy world」からのリリースでキャリアをスタートし、1997年にエレクトロ・ポップ・ユニットOVERROCKETを結成。その後SQUARE ENIXに入社し、『FINAL FANTASY XIII-2』、『LIGHTNING RETURNS : FINAL FANTASY XIII』、『スクールガールストライカーズ』、『MOBIUS FINAL FANTASY』などのゲーム音楽を手がける。iTunesよりソロ作品『IN MY OWN BACKYARD』(2007年)、『NEUROVISION』(2009年)を発表。2011年3月、サンフランシスコで行われた世界最大のゲーム開発者向けカンファレンスGDCで即興ライブを披露した。
Mitsuto Suzuki Official Blog
http://blog.jp.square-enix.com/music/cm_blog/suzuki/
■小森雄介プロフィール
(株)スクウェア・エニックス サウンド部 サウンドデザイナー。
ゲーム中の効果音や環境音の制作、ボイス編集、映像用の音声編集作業等を担当。幼少の頃からピアノに親しみ、自然音を即座に「音」に変換する才能を活かしたサウンドデザインが特徴。大学ではサウンドとサウンドプログラミングを学び、「無音」を音と捉えるタイミング感、ダイナミックレンジとピッチとの相乗効果を計算したアトモスフィアを得意とする。反面、「1本軸をもって幅広くやる」体育会系。ゲーム代表作は『ドラッグ オン ドラグーン3』、『CHAOS RINGS III - ケイオスリングス』、『MOBIUS FINAL FANTASY』。「ゲームの世界、キャラクターの耳になり息吹を吹き込む住人になる」が口癖。
KOMPLETEのサウンドが聴けるサウンドトラックも発売中

© SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
問い合わせ
問:ネイティブ・インストゥルメンツ・ジャパン
http://www.native-instruments.com/jp/
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