スレート・デジタルVirtual Microphone System(モデリングマイク)

ビンテージマイクの音をリアルに再現する「VMS」を実機と聴き比べてみました

ビンテージマイクの音をリアルに再現する「VMS」を実機と聴き比べてみました

2017/09/15


スレート・デジタル「Virtual Microphone  System」(以下、VMS)は、8種類の有名チューブマイクを再現するプラグインと、マイク、プリアンプで構成された製品です。その再現力を確かめるべく、クリエイター集団「SUPALOVE」のエンジニアと作家陣が集まり、試聴会を行ないました。元になったと思われるマイクの実機を数本用意し、VMSと録り音の比較を行ないます。取材:本多理人(編集部) 写真:生井秀樹

【Virtual Microphone System】¥135,000
同梱のマイク「ML-1」とプリアンプ「VMS-ONE」で収録したサウンドに、同社のデジタルテクノロジーに基づくソフトウェアプロセッシングを施すことで、歴史に名高いマイク及びプリアンプのトーンを忠実に再現するハイブリッドシステム

/

左がVMSに同梱されている、究極の透明感を追求したラージダイアフラム・コンデンサーマイク「ML-1」。右がML-1からの信号を最大限ピュアな状態でADコンバーターへと伝送するVMS専用プリアンプ「VMS-ONE」(こちらもVMSに同梱)

/

試聴会に参加したメンバー。左からTak Miyazawa氏(作・編曲家/エンジニア)、池澤 聡氏(作・編曲家)、大塚 郁氏(作・編曲家)、歌唱を担当してくれた吉田 博氏(シンガーソングライター)、そしてエンジニアの伊東大和氏

INTENSITYを130%にするとすごく本物っぽい音になる

伊東:まず最初に、「ノイマンU67」(実機)と「FG-67」(VMS)で録ったテイクを交互に再生して聴き比べているんですけど、音の違いがまったくわかりませんね……。この再現性はヤバイです。今回、U67はニーヴのプリアンプを通して録っていて、FG-67もVMSに内蔵されている「FG-73」という、ニーヴのプリアンプを再現したと思われるプラグインをかけているのですが、再現性の精度がものすごく高いんですよ。
池澤:僕はU67よりもFG-67(VMS)の方が好きですね。輪郭がハッキリした、今っぽい音だと思います。
大塚:伊東さんの手元の操作を見ていれば「今、トラックを切り替えたな」っていうのがわかりますけど、それを見ていなかったら、U67とFG-67(VMS)のテイクを切り替えたことに気がつかないくらい、両者の音は本当によく似ていますよ。
伊東:うん、すごいとしか言いようがない。VMSは「INTENSITY」(インテンシティ)っていうスライダーの設定が重要で、これを「130%」にするとすごく本物っぽくなるんです。「100%」だと物足りないし、フルだと強過ぎる。「130%」くらいがちょうどいいですね。このスライダーでドライブ感を変えるんです。
大塚:質感がすごく変わりますね。
伊東:じゃあ次に、「ノイマンM269」(実機)と「FG-269」(VMS)を聴き比べてみましょうか。……これはM269の方が好きかもしれない。
吉田:声が減衰していく感じとか、ボリュームがスーッと下がっていくところで、M269とFG-269(VMS)の違いが出ますね。
池澤:でも、これもすごく似ていますよ。
伊東:M269の方が、ちょっとだけコンプがかかったような音になりますね。波形で見ても前者の方がダイナミクスが安定した、整った波形になっています。でも、これも違いはほとんどわからないですね。僕はもうVMSが欲しくなりました。買います! 次に「ソニーC-800G」(実機)と「FG-800」(VMS)を聴いてみましょう。
Tak:……先に再生したのはどちらですか?
伊東:FG-800(VMS)です。
Tak:そっちの方が好きな音でした。
伊東:次に、切り替えながら聴いてみましょう。
大塚:……最後に再生したのがFG-800(VMS)ですか?
伊東:いえ、C-800Gです。
大塚:違いが全然わからない(笑)。
伊東:次に「FG-800M」(VMS)という、C-800Gの初期型を再現したと思われるモデリングもあるので、これも聴いてみましょう。
Tak:このFG-800M(VMS)と比べると、C-800Gの方が好きですね。
伊東:今回使ったC-800Gはオールドモデルなので、音質的に似ているのはFG-800M(VMS)の方ですけど、聴いた印象はFG-800(VMS)の方が全然良かったです。実機よりも良かった。
Tak:良かったというか、好みだったという感じですよね。
伊東:最後に、「ノイマンU47 Tube」(実機)と「FG-47」(VMS)の試聴をしてみましょう。
Tak:……この2つは、結構違って聴こえますね。僕が聴いている位置が、スピーカーから遠いせいかな?
伊東:レベルを完全に揃えて聴いてみると、今回の中では一番差が出ますね。
池澤:でも、「違う」って言っても「まったく別のマイク」っていうわけじゃなくて、音質的には同じ方向を向いていて、薄い膜が1枚入っているか入っていないか程度の違いなんですよ。
Tak:うん、他社のマイクモデリング製品と比べると、実機との誤差が全体的にかなり小幅だよね。
大塚:振り返ると、FG-800(VMS)は群を抜いて聴きやすいというか、音がパリッとしていました。最初に試したFG-67(VMS)も個人的には好きでしたね。

ハードのコンプをかけ録りしてVMSをかけるとさらに良さそう

Tak:このVMSはAAX DSPには対応していないんですよね? ネイティブ環境のみ対応ということは、録音時のレイテンシーが気になりますね。
吉田:モニター音が、実機に比べると遅れているように感じましたね。
伊東:あと、歪まないようにコンプをかけてからPro Toolsに入れたいんですけど、ハードのコンプを通すと、「コンプ→VMS」っていう順番になりますよね。
Tak:その順番でもありだと思いますよ。
伊東:コンプを通って、レベルが均された音がVMSに入るっていうことだから、それでもいいのか。ダイナミックレンジが狭い方が、VMSのかかり方も自然でしたしね。
大塚:確かに音量が小さい時と大きな時で、シミュレートの感じが違いました。
伊東:それならコンプで音量を潰してからVMSをかけると、さらに良くなるのかもしれない。あくまでもピークを叩くくらいの軽めの設定で。
池澤:歌のアラも消えそうですしね。
伊東:もしくはコンプをかけずに録って、後でVMSをかけて調整していくとか。
Tak:その方が正当的な使い方だと思いますよ。素で録って、後で音を作り込んでいくという。となると、ML-1の素の音が「どれくらいボーカリストにインスピレーションを与えてくれるのか?」っていうことも気になってきますね。
伊東:完全に買うつもりで試奏をしているから、本当に色々な状況を考えちゃいますね(笑)。

/

ML-1と、VMSの元になったであろう実機を、ダイアフラムの高さを合わせてセットし、同じボーカルテイクを同時に収録して聴き比べを行なった

/

左がVMSとの聴き比べに使用した実機のマイク。❶ノイマンU67、❷ノイマンM269、❸ソニーC800G、❹ノイマンU47 Tube。右側がVMSに付属するプリアンプモジュール「Virtual Preamp Collection」。今回はFG-73というモデリングを使用した

この記事の画像一覧

(全5枚) 大きなサイズで見る。

関連する記事

関連する記事

PAGE TOP