エンジニアの遠藤淳也氏がプロの耳で徹底チェック

【人気ハードEQサウンドレビュー③】ルパート・ニーヴ・デザインズ551

【人気ハードEQサウンドレビュー③】ルパート・ニーヴ・デザインズ551

2018/04/18


プロのレコーディングでは、ハードウェアのEQが録音やミックスで使用されています。ここではAPI500シリーズ規格に対応している縦型EQの中から、特に注目のモデルを4機種厳選し、それぞれのサウンドや性能をチェックしてみました。試聴を担当してくれたのは、ヒップホップやR&B系を得意とする敏腕エンジニア、遠藤淳也さんです。


 

さすが王者ニーヴ! 音にクセがなく、自然な調整が可能

ルパート・ニーヴ・デザインズ
551

オープンプライス(¥98,000前後)
問:㈱フックアップ
TEL:03-6240-1213
http://www.hookup.co.jp
 

取材:目黒真二  写真:小貝和夫


これは素晴らしいEQですね。「さすがルパート・ニーヴ!」と感じさせてくれる音でした。中でもボーカルとベース、キックのサウンドが柔らかく、かつ太くなる感じが良かったです。

ブーストして味付けするのもいいですし、カットして補正に使うのもいいという万能なEQで、全体的に音質はハイファイです。EQは、モデルによってはカットすると音痩せしたり、ブーストすると嫌味な音になったりする傾向があるんですけど、これはそういったことをまったく感じさせません。3バンドなのに、全帯域に渡ってナチュラルに音質調整ができるという点もすごいと思います。

中でも特徴的なのがHF(高域)で、周波数を8kHzと16kHzで選択できるんですけど、例えばボーカルに空気感を足したい時には16kHzを選んでブーストすればいいですし、8kHzを選んでブーストすれば、各パートの輪郭を手軽にクッキリさせることができます。シンプルですけど、こういうところはよく考えられていて、コンソールを作り続けてきたニーヴならではの発想だと思います。
それと、ツマミを操作していて感じたのは、ブーストやカットの変化の度合いがすごく滑らかな感じで、扱いやすいんですよ。あるポイントを超えるといきなりガンッと効いてしまったり、逆に最初はすごく効いているのに、途中で効きが悪くなるというようなクセのあるEQが結構ある中で、本機は本当に目盛り通りにゲイン量が変化してくれるので、音作りをしていてとても助かります。

サウンドにクセがなくて、パートやジャンルを選ばない、まさにオールマイティに使えるEQだと思います。
 

HFは、8kHzと16kHzを選択して、ゲインツマミで±15dBを調整する仕様になっている。また、エフェクトをバイパスできるEQ INスイッチも装備

LFでは周波数を35〜220Hzの間で設定することができる。ちなみにMFは、200Hz〜6kHzの間で周波数を決めることが可能だ

製品概要

「551」は、ルパート・ニーヴ氏によるビンテージのテイストはそのままに、過去の設計上の妥協点を徹底的に取り払い、現代的な機能を融合させた500シリーズ互換の3バンドEQだ。シェルビングとピーキングの切り替えが可能な「LF」、歌や楽器を前面に押し出すのに有効な「MF」、モダンとビンテージのハイブリッド設計になっている「HF」、そして80Hz以下をスムーズにカットする「HPF」という構成で、原音を濁らせることなく各帯域をイメージ通りに調整できる。
 

試奏者プロフィール

1996年にスタジオ・グリーンバードからキャリアをスタート。ヒップホップやR&Bを中心に数多くの作品を世に送り出す。その後、㈱Plick Pluckを設立し、2010年にはSTUDIO QUESTを立ち上げた。最近はBrian the Sun、マオ from SID、96猫、郷ひろみなどの作品を手掛けている。
 

今回の試聴方法

今回は、アビッドPro Toolsのハードウェアインサートでデモ機を接続して、録音済みのトラックにEQをかけてチェックをしました。モニタースピーカーは、ヤマハのNS-10M STUDIOとムジークエレクトロニクガイザインRL904です。チェックに使った音源は、僕が録音とミックスを担当した1- SHINEというロックバンドの曲です。マルチのデータを用意して、まず周波数帯域が比較的広いボーカルで試してみて、それぞれのモデルが持つサウンドの傾向や、どこに特徴があるのかを確かめます。それから、ギター、ベース、キックといったトラックにかけて、ツマミを回した時の音質変化の度合いや質感、どんな楽器に合うのかも確認しています。
 

エンジニア遠藤淳也氏が語るハードEQの魅力

ハードウェアEQの質感をプラスしてミックスに立体感を演出します

──ハードのEQは、実際どんな場面で使うことが多いのですか?
遠藤
:僕の場合、録りの時にハードのEQを使うことが多いんですね。狙った理想的な音色になるべく近づけて録り込んでおくと最終的な仕上がりをイメージしやすいですし、その後の仕事がスムーズになるので。時間はあまりかけられないので、ツマミの操作性がいいハードウェアは重宝します。あまりガチガチに音を決めて録ってしまうと、後から変えるのが難しいので、録りの時は8割くらい作り込むつもりでEQを設定しています。逆にミックスでは、ピンポイントで音質を変えるので、細かい設定ができるプラグインの方が操作しやすいんですよ。

──ソフトと比べて、ハードウェアは具体的にサウンドがどう違うのですか?
遠藤
:ハードの方が「味付け」として使うのに向いているモデルが多い気がします。「こういう音が欲しいから、このEQを使う」みたいな感じですよね。ブーストの方がそのモデルの個性が出やすいイメージがあるので、主にブーストで使うことが多いです。

──実際の使用法を教えてください。
遠藤
:録りに関しては今言った通りですけど、たまにミックスで使う時もあります。ミックスが平坦に感じた場合に、楽器のいくつかをハードウェアEQに通して、そのEQの質感や個性を取り込むことでミックスの中で凸凹を作って、立体感を演出できないだろうかと試すんです。例えるならば、異物を混入するようなイメージでしょうか。

──遠藤さんは、ハードのEQをどんなパートで使うことが多いのですか?
遠藤
:録りでは必要と感じればすべてに使います。ミックスでは決めているわけではないんですけど、結果的にボーカルやベースとか、センター定位のパートに使っていることが多いかもしれません。

──遠藤さんが好きなEQは?
遠藤
:APIの550Bです。550Aが3バンドなのに対して、550Bはローミッドが追加されて4バンドになっているので、思い通りに音質が作れるんですよ。設定されているポイントが肌に合うんでしょうね。APIは本当に好きで、通すだけで音がカッコ良くなります。それからニーヴ1073タイプのEQも使いやすくて好きです。オリジナルはもちろん大好きなんですけど、ヴィンテック・オーディオのX73も、スピード感があって現代的な良さがあるのでよく使います。

──宅録でハードのEQを使う際に、何かコツやアドバイスはありますか?
遠藤
:先ほども言いましたけど、録りの段階で音を作り込み過ぎない方が安全です。ハードウェアEQで大まかに好みな音に寄せておいて、ミックスの時にプラグインEQで細かい部分を詰めるといいですよ。

 

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