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SPL、サー、トゥーノーツ、ユニバーサル・オーディオのロードボックスをギタリストのZENTAが検証!

SPL、サー、トゥーノーツ、ユニバーサル・オーディオのロードボックスをギタリストのZENTAが検証!

2018/05/16


本物のアンプヘッドをスピーカーにつなげずに、ライン録音できるようにする機材が「ロードボックス」です。ここでは、最近注目を集めている4機種を厳選して、ギタリストのZENTAさんにそれぞれの音質をチェックしてもらいました。キャビネットを鳴らしてマイクで録ったサウンドを知り尽くしているZENTAさんに、率直な感想をお聞きしましょう。
 

取材:目黒真二 写真:小貝和夫
 

 

オンマイク的でダイレクトなサウンドとシンプルな操作性が魅力

SPL
Model 2930 Cabulator

¥90,000
問:㈱エレクトリ
TEL:03-3530-6181
http://www.electori.co.jp
 

音質的にはミッドに少し特徴があって、柔らかめな印象です。耳につくようなイヤなハイの成分が抑えられていますが、かと言ってオケには埋もれない芯のある音ですね。ピッキングに対する反応も良くて、本物のアンプと変わらない感覚で弾けました。かなりオンマイク的でダイレクトなサウンドなので、部屋鳴り感が欲しい場合には、後からIR系のルームリバーブとかを足すといいと思います。

操作系はシンプルで、中央にあるスイッチでキャビネットのタイプを「open」と「close」から選べるうえに、さらにキャラクターを「vintage」と「modern」から選ぶことができます。例えば、フェンダーのコンボアンプっぽい音が欲しいなら「open & vintage」という組み合わせにすればいいですし、マーシャルやメサブギーっぽくしたければ「close & modern」にするといったように、わかりやすい点が好印象でした。複数のキャビやマイクとかを選ぶようなことはできないですけど、逆にあまり時間をかけずにキャビネットの質感を決められるので、素早くレコーディングをしたいという人には向いていると思います。

それと、本機には本物のキャビネットに接続できるソークアウト端子が付いています。例えば、アンプの方では音量を気にせずに音作りをしておいて、キャビネットとの間に本機を挟んで、実際に鳴らす音量を本体の「Power Soak」ツマミでコントロールすれば、自分のイメージするサウンドを崩すことなく、音量だけを下げられるわけです。この機能はライブでとても重宝すると思います。
 

こちらのCabinetスイッチでは、キャビネットのサウンドを大きく左右するオープンバックとクローズドバックという2つのタイプを選ぶことができる

Characterスイッチは、ビンテージとモダンの2つのキャラを選択でき、Cabinetスイッチとの組み合わせだけでも4通りの質感を得ることが可能だ

Speaker Voicingツマミでは、キャビネットにかかる音圧レベルをシミュレートすることができ、右に回すとミッドが強調された音質を得ることができる

この製品について

[製品概要]
「Model 2930 Cabulator」は、高品位なレコーディング機器でおなじみのSPL社が、厳選されたパーツを使って製造したロードボックス/キャビネットシミュレーターだ。最大の特徴は完全なアナログ回路を採用している点で、トランスによる暖かみのある音色を実現し、高音質かつレイテンシーを感じずに録音ができる。また、シンプルな操作系ながら、様々なマイクとキャビネットの特性を設定することができる。

[SPEC]
●入出力端子: スピーカーイン、ソークアウト、DIアウト ●電源:外部電源(ACアダプターが付属) ●外形寸法:300(W)×134(D)×207(H)mm ●重量:3kg
 


 

スタジオでオンマイクで拾った時と同じサウンドが得られるコンビ

サー
REACTIVE LOAD/A.C.E.

¥72,000(REACTIVE LOAD)/¥46,000(A.C.E.)
問:㈱オカダインターナショナル
TEL:03-3703-3221
http://www.okada-web.com/
 

今回、サーについては、REACTIVE LOADというロードボックスとA.C.Eというキャビネットシミュレーターとの組み合わせでチェックを行ないました。試しにREACTIVE LOADだけをつなげると、いわゆるラインの音になるんですけど、信号のロスがまったくないヌケのいい音が得られます。

両者を組み合わせたサウンドは、とにかく「アナログらしい!」というのが第一印象ですね。真空管アンプの特性がよく出ていますし、弾いていてとても気持ち良かったです。色付けもないですし、ローもしっかり出ていて、オンマイクで拾った時と同じサウンドが得られました。

REACTIVE LOADから本物のキャビネットにつないだ時と、A.C.Eにつなげた時の音を聴き比べてみたんですけど、A.C.Eでもキャビネット特有のガッツ溢れる音が得られます。IRリバーブを足してあげれば、「部屋の中で爆音を鳴らしている」という雰囲気も出せますね。

それと、A.C.EのEQツマミが優秀で、特に「SUB」というローを調整するツマミは効果絶大です。これを上げるだけでローの存在感が出て、キャビネットのサイズ感も調整できるんですよ。なので、ポップス系からメタル系まで、どんなジャンルにも対応できると思います。ラインの音って、どうしてもこもりがちになりやすいんですけど、それもEQの「HIGH」と「PRESENCE」で簡単に補正することができるのは便利です。自宅でお気に入りのチューブアンプを使って、アナログらしい音で録音したいという人にはオススメのコンビですね。
 

REACTIVE LOADのDI LEVELツマミを回すことで、オーディオインターフェイスなどの外部機器に送る信号レベルをコントロールすることができる

A.C.E.のEQ。「SUB」ではロー感を増減でき、「HIGH」と「PRESENCE」ではアタックを出したり耳につく高域を下げたりといった調整が可能だ

A.C.E.のDI/ラインアウトは、XLRのバランスと標準フォーンのアンバランスの2種類が用意されており、様々なシチュエーションに対応することができる

この製品について

[製品概要]
REACTIVE LOAD:スピーカーキャビネットとまったく同じインピーダンスカーブを描くように調整された特殊回路により、アンプの暖かさやダイナミクスを損なわずにラインレベルで出力し、自然でリアルな音をライン録音できるロードボックス。
A.C.E.:100%アナログ回路を採用し、独自開発のMFSフィルター(マルチ・ステージ・フィルタリング)によって、ギターアンプからスピーカーキャビネットを通すことで生まれる暖かみのあるサウンドを忠実に再現するスピーカーシミュレーター。

[SPEC]
REACTIVE LOAD:●入出力端子: スピーカーイン、ラインアウト(バランス)、ラインアウト(アンバランス)、スルーアウト ●電源:不要 ●外形寸法:223(W)×226(D)×91(H)mm ●重量:3kg
A.C.E.:●入出力端子: インプット(バランス)×2、DI/ラインアウト(バランス、アンバランス)、スルーアウト ●電源:付属9V DCアダプター ●外形寸法:124(W)×98(D)×35(H)mm ●重量:476g
 


 

あらゆるキャビの鳴りが作れる「ギター録音環境再現プロセッサー」

トゥーノーツ
Torpedo Live

オープンプライス(¥81,000前後)
問:日本エレクトロ・ハーモニックス㈱
TEL:03-3232-7601
http://www.electroharmonix.co.jp
 

見た目のスリムさに反して、音にはずっしりとしたロー感があって、キャビネットの箱鳴り感がしっかり出ているのには感心しました。ピッキングの反応もいいですし、感覚は本物のキャビネットを鳴らしている時と変わりません。

実際の使い方ですが、キャビネットとマイクを選んで、マイクの位置を調整するという、まさにスタジオでアンプのマイク録音をする時に行なう作業が本機だけでできてしまうんですよ。5バンドのEQも入っていて、これの効きもいいので、非常に細かい音作りもできます。それと、いい意味で適度なコンプレッション感があるので弾きやすくて、かつアンプヘッドの個性を殺さずに、チューブアンプならではの質感や弾き手のニュアンスをきちんと出してくれました。

あと、本機はパワーアンプや部屋鳴りも調整できるので、もはやたんなるロードボックスと言うよりも、「ギター録音環境再現プロセッサー」という感じで、本当に至れり尽くせりです。

本体でもエディットはできますが、専用の「TORPEDO Remote」というエディタソフトを使うことをオススメします。使い勝手もいいですし、プラグインのアンプシミュレーターを操作しているのと同じ感覚で使えるので、僕もすぐに目的の音が作れました。あと、キャビネットのIRファイルを本体に読み込んで部屋鳴りを調整することもできるんですけど、それもデジタル機器ならではのアドバンテージですね。音作りの幅が本当に広いので、ジャンルを選ばずにオールマイティに使えます。

本体には代表的なスピーカーモデルが32種類も収録されている(画像上)。また、8種類が選べるパワーアンプの質感も調整することが可能だ(画像下)

マイクはシュアSM57やゼンハイザーMD421など、アンプ録音で多用される8種類を装備(画像上)。また、マイクとキャビとの距離も調整できる(画像下)

専用エディタソフト「TORPEDO Remote」が用意されており、これを使うことでパソコンの大きな画面を使って、よりスムーズに音作りができるようになる
 

この製品について

[製品概要]
「Torpedo Live」は、トゥー・ノーツ社が開発した1Uラックタイプのデジタル・ロードボックスだ。本体で32種類のスピーカーキャビネット(ギター用=22、ベース用=10)、8種類のマイク、8種類のパワーアンプを選ぶことができ、ライン録りでもエンジニアが録ったようなリアルな質感が得られる。また、「TORPEDO Remote」という専用ソフトを使えば、本機に新しいキャビネットのIRデータを追加できる。

[SPEC]
●入出力端子: スピーカーイン、ラインイン、スピーカースルー、ラインアウト、ヘッドホン、デジタルアウト(S/P DIF) ●電源:AC100V ●外形寸法:483(W)×182(D)×44(H)mm ●重量:2kg ●専用エディタ−ソフト:TORPEDO Remote(無料ダウンロード)
 


 

キャビの特性を忠実に再現し、音作りの幅も広いスーパーマシン

ユニバーサル・オーディオ
OX|Amp Top Box

オープンプライス(¥148,000前後)
問:㈱フックアップ
TEL:03-6240-1213
http://hookup.co.jp
 

昔のアンプみたいなルックスで、高級感があってモチベーションが上がります。肝心の音質ですが、まずプリセットを試したんですけど、自然な空気感のある質感に驚きました。アンプの音量をある程度上げた状態でキャビネットを鳴らし、シュアSM57をオンマイクで立てるという、僕が普段やっているセッティングの音がすぐに出てくれました。色々なマイクモデルが用意されていて、そこから2本のオンマイクを選んで、別にルームマイクも1本選べるので、音作りのバリエーションはとても広いです。ルーム感をフロント面の「ROOM」ツマミですぐに調整できるのもうれしいですね。

あと、「RIG」というツマミがユニークで、普通のレコーディングだったらエンジニアさんに頼んでやってもらうような音質変更が、ツマミひとつですぐにできるので、インスピレーションが湧いたら音をささっと決めて、すぐに録音にとりかかれます。とにかくチューブアンプの特性をしっかり出してくれるので、余計なことを考えることなく、演奏に集中できました。

エディターソフトの「OX App」もわかりやすくて、すぐにイメージ通りの音が作れました。これにはEQやコンプ、ディレイ、リバーブも入っていて、これだけでギターのトラックが完成できるという印象ですね。まさにアンプ以外にレコーディングで必要なものが、全部用意されているという感じです。

好みのアンプとこれ1台さえあれば、それこそジャズもいけるしメタルもいけるという、すべてのギタリストのニーズに応えてくれるモデルだと思います。
 

本機にはDSPの処理によってスタジオ同等のクオリティを生み出す「RIG」という回路があり、RIGツマミで6個のRIGを切り替えて手軽に音作りができる

接続するアンプによってインピーダンスを4Ω、8Ω、16Ωから選べる。なお、リアパネルをのぞき込んだ時に見やすいように、上部は文字が逆さになっている

OXのコントロールを行なうエディターソフト「OX App」。ギターの録音に使われる定番のマイクが複数用意されており、オンマイクを2本、ルームマイクを1本選んで、それぞれのバランスを調整できる
 


試奏者プロフィール

 

ZENTA(ゼンタ)
小学6年生からギターを弾き始め、中学時代からは作曲も開始。中学卒業後は音楽学校MI JAPANに入学。MI卒業後には作曲活動を開始し、様々なジャンルで活躍する数多くのアーティストに楽曲を提供する。他にも「龍が如く」や「CR真・花の慶次」などのゲーム音楽やTV音楽、CM楽曲などを幅広く手掛けている。
 

今回の試奏方法

今回の試奏は、ギターはピックアップにP90が付いたギブソン・レスポールを使って行なっています。ケーブルはモンスターケーブルのMonster Rockで、3.6mのものを使ってボグナーのShivaというアンプヘッドにつなぎました。アンプで音作りを行なったうえで、アンプのスピーカーアウトから各モデルに接続して、スタインバーグCUBASE 9に実際にレコーディングをして確認をしています。その他に、録音済みの素のトラックを、リアンプボックスを経由してアンプから各ロードボックスに送ったサウンドのチェックも併せて行ないました。

他に、本物のアンプでしか得られない、ピッキングした際の「ゴン!」というニュアンスが出ているのかにも注目しました。
 

ロードボックスとは?

ロードボックスの接続例

真空管アンプはスピーカーに接続して鳴らすのが基本です。アンプのスピーカーアウトからオーディオインターフェイスのインプットに直接つなぐと、アンプとインターフェイスが壊れてしまいます。「ロードボックス」(ダミーロード)は、スピーカーを使わずにオーディオインターフェイスにつなげるようにするための機材です。これにより真空管アンプを、自宅環境でもライン録音することが可能になります。

また、ロードボックスの多くは、「スピーカー(キャビネット)シミュレーター」機能を備えています。これはスピーカーから鳴る音をマイクで拾った質感を再現できる機材のことで、スタジオでプロが録音したようなリアルなサウンドでライン録音ができます。
 

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