アメリカ屈指のマスタリングエンジニアにインタビュー!

エンジニアのジョナサン・ワイナーが語るiZotope Ozone 9の魅力

エンジニアのジョナサン・ワイナーが語るiZotope Ozone 9の魅力

2020/03/15


世界中の音楽制作の現場で、今やマスタリングツールの定番ソフトとなっているOzone。現在、同社の製品開発に深く携わっているのが、米国屈指のマスタリングエンジニアであるジョナサン・ワイナー氏です。InterBEE 2019で来日していた彼に話を聞き、アイゾトープとの関わりについて教えてもらいました。

取材:サウンド・デザイナー編集部 写真:櫻井康史

※本コンテンツは音楽雑誌「サウンド・デザイナー」(2020年1月号)より抜粋したものです。
詳しくは、サウンド・デザイナー公式サイトをご覧ください。

 

/

ジョナサン・ワイナー
「マスタリング界の至宝」として知られる、アメリカ音楽業界屈指のマスタリングエンジニア。これまでにエアロスミスやニルヴァーナ、マイルス・デイヴィス、デヴィッド・ボウイ、ピンク・フロイドなど、数多くの歴史的なアーティストの作品を手掛けてきた。ボストンのバークリー音楽大学のエンジニア科では教授を務めており、後進の育成プログラムにも積極的に参加している。
 

AIが提供する情報がユーザーの技術をどのように教育して、
かつ向上させられるのかを念頭に置いて開発しています


──ジョナサンさんは、アイゾトープにエデュケーションディレクターとして在籍されていますが、具体的にはどのようなことをしているのですか?

ジョナサン:私が今まで培ったマスタリングエンジニアとしての知識と経験を共有しつつ、スタッフに対して技術的なアドバイスをすることが主な役割です。

──そもそも、アイゾトープとは何をきっかけに知り合ったのでしょうか?

ジョナサン:アイゾトープを知ったのは、確か2005年頃に、Ozone 3を見たのが最初でした。正直に言うと、それ自体はあまり魅力的な製品だとは思わなかったんです。ただ、ソフトウェアで曲を仕上げるというOzone 3のプロセスが将来的に主流となることは間違いないとも感じて、強く興味を持ちました。私はマサチューセッツ州に「M-Works」というスタジオを構えているのですが、アイゾトープの住所を調べてみたら、歩いて10分ほどの距離にあったので(笑)、電話をかけてみたんです。すると向こうから、「自分達がどれだけ馬鹿げたことや間違ったことをしているのか教えてほしい」と好意的に言ってもらえて、そこから彼らと深く関わるようになりました。

──近年、アイゾトープはAI技術を積極的に取り入れていますが、音楽制作にAIを持ち込むことに対して、ジョナサンさんはどう感じていますか?

ジョナサン:AIの話をする時に、私はいつもMIDIを思い出します。1983年にMIDIが世の中に現われた時、「いずれ世の中から生楽器が消えてなくなるのでは?」と心配する人はとても多かった。だけど実際は、音楽から生楽器がなくなることはありませんでしたし、反対にMIDIがあるからこそ生まれた、新しく素晴らしい音楽が発表され続けていますよね。MIDIの登場によって、音楽の新しい可能性が開かれたわけです。AI技術の活用も、MIDIの登場に近い好影響を音楽にもたらすのではないでしょうか。

──なるほど。

ジョナサン:私はテクノロジーを愛しています。大切なのは、その技術を人間がどう使うか、「AIをどう駆使すれば、音楽をより良く理解できるのか」ということなんです。正しいAIの使い方をすれば、音楽家はよりクリエイティブな作業にのみ集中できるようになりますからね。

──そのAI技術を搭載したプラグインを開発する際に、ジョナサンさんはどのようなアイディアを提供していますか?

ジョナサン:AIは、あくまで問題点や改善のアイディアを提供してくれるだけに過ぎません。肝心なのは「AIの情報を元にして、ユーザーが何をしたいのか」なのです。だから私は、AIがトラックの問題点を検出した時に、それをユーザーにどのように見せるのかといったことや、AIが提供する情報がユーザーの技術をどう教育して、かつ向上させられるのかを念頭に置いて開発に携わっています。

──今後、Ozoneをどのように進化させていきたいと考えていますか?

ジョナサン:まずは、今ある機能をより洗練させたいですね。例えば、Ozone 9で実装された音源のソース分離の技術とかはさらに強化されるでしょう。それと、ミックスとマスタリングは、作業的には大きく異なるものの、強く紐付いている工程です。なので、双方の作業をスムーズに橋渡しするような機能が搭載されていくのではないかと予想しています。

 

 

/

iZotope「Ozone 9」(オープンプライス/Advanced版=¥49,800前後、Standard版=¥24,800前後、Elements版=¥12,800前後)
「Ozone 9」は、音楽制作の最終段階で行なう「マスタリング」に特化したソフトウェアだ。あらゆるエフェクトモジュールを搭載しており、誰でも簡単に、かつ楽曲を高品質に仕上げることができる。バージョン9では、2ミックスのボーカルやベース、ドラムのバランスを個別に調整できる「マスター・リバランス」や、1つのフェーダーを動かすだけでローエンドをクリアにしてくれる「ロー・エンド・フォーカス」など、さらなる便利な機能が多数追加された

 

この記事の画像一覧

(全2枚) 大きなサイズで見る。

関連する記事

関連する記事

PAGE TOP