今年コーチェラ・フェスティバル出演も果たし、世界的に話題を集めているアメリカン・エレクトロ・ファンクバンド=キャノンズが10月16日、代官山Space Oddにて一夜限りのワンマンショーを行った。初来日公演にも拘わらず会場は大きな歓声に包まれ、彼らにしか出せない妖艶な世界観で観客を魅了。そんな 様子を早速ライヴレポートでお届けする。 

今年４月の“コーチェラ・フェス”で大きな話題を巻き起こしたLAの３人組、キャノンズが初来日、代官山SPACE ODDで一夜限りの公演を行った。 ティナ・ターナーのムーディなラヴソング「愛の魔力」が流れるなか、メンバーはステージに登場。その選曲センスだけでもニヤっとさせられるが、既にその時から彼らのドリーミーなエレクトロニック・ジャーニーは始まっていた。続いた１曲目の「Shadows」で、いよいよ幕は切って落とされる。 
デイヴィッド・リンチの映画から抜け出したかのよう、と例えられることも多いキャノンズ。ライブでは、妖しさとファンキーさがいっそう濃厚だ。重厚なベースが跳ね回り、ギターが小気味良く刻まれ、更に外部ドラマーが参加。そしてバンドの紅一点ミシェル・ジョイが、淡くムーディな歌声を放っていく。 

ミシェルはスポーティだがグラマラスなドレスを身に纏い、マイクを握る右手にだけ黒いロング手袋を装着。長い金髪と深紅の口紅も相まって、往年のハリウッド女優のような妖艶さを漂わせている。が、意外なことに、常にステージ狭しと動きまくって、クルクル回りながら踊ったり、音楽を全身で表現する。スタンドマイクで歌う時も、大きなジェスチャーを交えて音楽と一体化。トランス状態でキャノンズの妖しい世界へと誘ってくれる。そして観客とも熱く、ダイレクトにコミュニケートしていたのが印象的だった。一人一人の顔を覗き込み、観客に手拍子やコーラスを求めたり、スマホライトを促したり、フロントマンとしての存在感も絶大だ。彼女のスター性やバイタリティがバンドの大きな強みであるのは間違いない。 

セットリストの大半は、彼らの2ndアルバム『Shadows』（2019）と、3rdアルバム『Fever Dream』（2022）と、そして11月リリースされるニューアルバム『Heartbeat Highway』からの楽曲で構成。中盤の「Hurricane」や本編ラストの「Fire For You」など、彼らの代表曲では、やはりひと際大きな盛り上がりを見せていた。特に後者では会場が一体となり“Fire”の大合唱の瞬間も生み出された。 MVや楽曲のイメージから、クールで気取ったバンドを想像していた人も多いだろう。だがライブでは、そのクールさを失うことなく、そのクールな彼らの世界に我々を招き入れてくれた、という気がする。傍観者としてリンチの世界を眺めていたら、いつの間にかリンチの世界に飲み込まれていた、といった感じだろうか。 

アンコールの最後は、彼らが最初に作った曲「Evening Star」で締め括られた。「ずっと10年間やってきて、これが初めての海外ツアー」とMCでも語っていたように、実は結成してから10年ものキャリアを持つキャノンズ。ベース担当のポールは今回不在ではあったが、３人の結束はそうとう強靭だと思われる。ニューアルバム『Heartbeat Highway』からの新曲も多数披露してくれたこの日のライブ。上昇気流に乗っているバンドならではの前途洋々としたエネルギーと、魅惑的なオーラで包み込んでくれた。 
（村上ひさし） 

フォトグラファー: Hajime 

公演後公開された、公演セットリストのプレイリストも必聴である。 
プレイリスト：https://smji.lnk.to/CannonsJPNSetlistIG 
 
<セットリスト> 
1. Shadows 
2. Come Alive 
3. Talk Talk 
4. Bad Dreams 
5. Love Chained 
6. Bright Lights 
7. Hurricane 
8. Lightning  
9. Ruthless 
10. Spells 
11. Loving You 
12. Purple Sun 
13. Fire For You 
14. Desire 
15. Evening