──アルバムタイトルがバンド名と同じですよね。

石毛：セルフタイトルにするのが良いかなと思ったんです。まぁ他に浮かばなかったというのもあるんですけど（笑）。「1stっぽい作品になったし、lovefilmの『lovefilm』で良いんじゃないの？」って。

──早い段階で決まっていたのですか？

石毛：いえ、一番最後だったと記憶しています。いつもアルバム名や曲名を決めるのは一番後の方にしているので。

──レコーディング終盤ということですか？

石毛：はい、終わりかけている時に、スタッフから「そろそろ決めないとね」という話が出て、そこから決め始めました。

──では曲順も最後の方に決めたのですか？

石毛：そうですね。ミックスが大体終わってからでした。そうでないと曲のイメージが変わってしまうので。ギリギリまで待っていただいて、何パターンか作ってみんなで話し合って決めるという作業をしました。

──曲順で悩んだ部分はありましたか？

石毛：敢えて挙げるのならば、2曲目「Don't Cry」と4曲目「Vomit」かな。今でも入れ替えてもどちらでも作品として完成したと思います。ただ、どうしても作品を手にして、早い段階で江夏の叫び声を聴いてもらいたかったので「Don't Cry」を2曲目にしました。

──今作は全曲石毛さんが作詞作曲されたそうですが、デモは自宅で作られたのですか？

石毛：そうですね。それはthe telephonesの時も一緒なんですけど、家で大体アレンジはひと通り作って、それをメンバーに渡して各自さらにアレンジを加えるといったスタイルが多いですね。

──最初に歌詞を見た時、江夏さんが作詞をしたのかと。

石毛：そうなんですよ。僕、中身は女子なので（笑）。

──曲はどのように作られたのですか？

石毛：全曲最初にオケから作ります。メロディが乗るのは最後ですね。歌詞は適当な英語を当てはめて作って、それをメロディに乗せるかたちで日本語に変えていく、という作業をしています。でも3曲目「Kiss」は最初から日本語で書いていたかな。

──1曲目の「Alien」イントロのギターのハモりは早い段階で出来ていたのですか？

石毛：そうですね。オブリガードのようなものは最初に出来ていて。左右ダブルにするか左右でハモっているようにするかということを考えたりして作りました。僕、曲を作る時は楽器を使わずに、まず頭の中で流れるんですよ。カッコイイ言い方をすると脳内DAWのようなものがあって、それでシミュレーションしてから実際に録音しています。

──ボイスレコーダーなどに録ったりは？

石毛：しないです。「良いな」って思った曲はずっと記憶に残っているんで。それが自分の中での判断基準になっています。3日ぐらい寝かせて頭の中に残っていたら「俺はこの曲作りたいんだろうな」って。

──意識的にそういった作り方をされているのですか？

石毛：そうですね、正直曲が作れないことはないので。逆に「こういう曲を作ろう」と思わないと出来ないんです。「Alien」に限ってはバンドを組んでレコーディングまでの中期～後期に、他の曲が固まってきて「こういう曲もあったら良いよな」という考えのもとで生まれた曲なんです。

──全曲、基本的に日本語の歌詞が多いですよね。

石毛：そうですね、日本語の歌詞というのはコンセプトの中にあったので。

──歌詞がとてもコミカルというか、個人的にエイリアンに呼びかけているような印象を受けました。

石毛：僕自身は何となくで書いてストーリーが出来たんです。もともと、子供の頃からSFが好きというか。ただ、色々な比喩表現があると思います。例えば江夏は「このエイリアンって赤ん坊のことですか？」って聞いてきて。赤ん坊が母親のお腹から「聞こえるか？」という呼びかけている愛のようなことをイメージしたみたいです。それで「面白いからそれにしよう」と（笑）。

──とても女性らしい感覚ですね。

石毛：そうですね。あとスタッフは「お客さんに対して言ってるんですか？」とも言っていました。まぁ僕は色々な風に捉えられる歌詞がスゴく好きなので。

──聴く人に委ねるということですか？

石毛：その方が曲を想像できて良いなと。それは自分が洋楽育ちということもあるんです。というのも僕はちゃんと英語が喋れないので、想像するということが楽しみ方の一つだと思っていて。

──だからこそ、曲作りの時は適当な英語を当てはめていくのですか？

石毛：どうなんですかね？　僕の場合そういった英語っぽい言葉の方がリズムノリが良くて、特に歌はリズムノリを重視するんです。たださっきも言った「Kiss」のように、最初から日本語で歌詞を書くこともあります。

──「Don't Cry」ですが、江夏さんの叫び声はどうやって生まれたのですか？

石毛：当初、この曲にシャウトは入っていなかったんです。江夏はモデルの他に女優としても活動しているんですけど、ある日スタジオの休憩中にノブが「舞台ってどんな感じでやるの？」って聞いて。そうしたらセリフを言ってくれて、それが「影でコソコソやってるんじゃねぇよ」みたいな内容で（笑）。しかも舞台の本番同様大きな声で、ビックリしたんです。「そんな大きな声出るんだ」って。

──それまで見せていなかった一面が垣間見れたのですね。

石毛：はい。それで色々とリクエストしたら叫んでくれました。

──聴いた時とても衝撃的でした。

石毛：実はこれワンテイクしか録っていなんですよ。

── 一発録りであれを？

石毛：そうですね、本当にスゴかった。こうやってメンバーの個性でどんどん曲が変わっていくのが楽しいです。

──歌詞はどこから作り始めたのですか？

石毛：サビからです。これは他の曲にも大体同じことが言えます。サビの世界が出来てから、AメロとBメロでストーリーを繋げていくので。というのも、サビが一番キャッチーでありたいのでそれを大事にしました。

── “boys don't cry” というフレーズがありますが、どういった意味が込められているのでしょうか？

石毛：特にはないです。あえて言うならThe Cure（1970年代後半から活動しているイングランドのバンド）の「Boy Don’t Cry」という曲が大好きだからですかね。