いよいよ来月ジャパン・ツアーが開始

カルロス・サンタナにロング・インタビューを敢行!

カルロス・サンタナにロング・インタビューを敢行!

2017/03/15

 

 


——これまで様々なアーティストとコラボレーションしてきましたが、一番印象に残っているアーティストは誰でしょうか?

サンタナ:マイルス・デイヴィスだ。マイルスはピカソ、ダリ、ダヴィンチに匹敵する。謎が多い人物だった。マイルス・デイヴィスは他とは違っていた。真の天才だ。

——一緒にコラボしたいアーティストはいますか?

サンタナ:ああ、アフリカ系シンガーのローラ・マヴーラとおそらく一緒にやると思うよ。もしかしたらアデル、もしくはビヨンセ。女性シンガーとやるのが好きなんだ。僕の心と指が鳴らすギターの音色はシンガーの歌声とすごく相性が良く、引き立たせることができるからだ。だからシンガーとやるのが好きなんだよ。男女問わず、アフリカ系ミュージシャンとやるのも好きだ。もし今、一人選ぶとしたらローラ・マヴーラだね。彼女のスピリット、魂、歌声には特別な何かがある。他の女性シンガーは彼女に比べたら弱いね。ローラはアフリカ系だがニーニャ・パストリみたいなフラメンコの要素もある。いずれにせよ、女性シンガーと一緒にやることの方が多いね。

——ピットブルやミシェル・ブランチなど、数多くの違う音楽ジャンル・若いアーティストと一緒にやってきて、そこからインスパイアされるものは何でしょうか?

サンタナ:彼らのイノセンスかな。無邪気さを持つ人間と一緒にやるのは楽しいよ。セメントみたいにガチガチじゃないからね。 ガチガチな頭からはシニカルな発想しか生まれない。シニカルなやつは頭が固い。 でもイノセンスはソフトで柔軟で順応性があり、生産的でクリエイティヴだ。 シニカルな人間と何かをしようとしても難しい。やっていてつらい仕事になってしまう。僕は仕事は嫌いだ。楽しみたいだけなんだ。イノセンスが感じられることの方がずっと楽しい。イノセンス、そしてピュアさ。この2つがあれば、どんなアーティスト同士でも、ごく自然に音楽の奇跡や恵みを生み出すことができる。それは歳をとった後も一緒で、7歳の子供のようなマインドを持ち続けるべきなんだ。つまりそれが冒険を追い続けること。シニカルな人間は「そんなことはどうでもいい。もう全部知っている、やっているよ」と言って終わらせてしまう。それは良いエネルギーとは言えないよ。

——昨今の音楽シーンや音楽業界についてはいかがでしょうか?ギター・ヒーローが減少していると言われたり、EDMが台頭してきていますが。

サンタナ:今の音楽業界は、同じようなものばかりを過剰に作り出し、自らを窮地に追い込んでいると思う。まるで同じプードルを次々と増殖させ、輪の中を飛ぶ芸を教えているようなものだ。もっともっとプードルを作れ、とね。だからダンスであれ、口パクであれ、すべてが簡単に予測できるものになってしまった。ただ1人、立って、歌う、もしくはヴァイオリンを奏でる。そういう音楽がなくなってしまったことが寂しいよ。気付けば、涙が流れているような音楽がね。いわゆる音楽業界は自らを窮地に追い込んでしまった。新しい形を生み出すべき時期に来ていると思う。 きっと世界のどこかの国のどこかのガレージから、それは生まれると僕は信じているよ。きっと誰かが一生懸命、練習をして、新しいジャンルを作ろうとしているに違いない。 それがアフリカのどこかから生まれてくればいいなと思う。

僕自身、アフリカのメロディやリズムが大好きだからだ。 僕らには変化が必要だ。コーンフレークだって毎朝、来る日も来る日も食べ続けていたら飽きてしまう。ミュージシャンとして、常にバラエティが欲しい。だから僕のローロデックス(名刺帳)はでかくなるし、ポートフォリオ(作品の見本集)も分厚くなる。毎日同じことをしていたら退屈で、とても続けていられないんだ。繰り返しになるが、音楽業界が自ら追いやった場所から抜け出し、気づくべきだ。 今日のアーティストの多くは、50%の力しか出していない。 なぜなら彼らは他の大勢と同じようなサウンドになることと引き換えに、ユニークさや指紋、個性を手放してしまったからだ。 すべてそうさ。誰もが同じものをコピーしている。でもそこには美しさもある。最初にその実例を作ったのは、ジェイムス・ブラウンの流れを引き継いだマイケル・ジャクソンだ。マイケルの後には、イン・シンク、アッシャーなどが続いた。でも中にはその流れをこんな風にして壊す者もいる。

それがレディ・ガガだ。シェールやマドンナもそうだった。レディ・ガガもレディ・ガガとして存在するが、かと思えば、トニー・ベネットと全く違うジャンルも歌えるし、メタリカとも一緒にできる。 そういうところは僕に似ているんじゃないかと思う。つまり多面的で多角的だという部分でね。 一つの芸しかできない子馬じゃないんだよ。レディ・ガガはかなりデキる人間だよ。 そういうアーティストがもっと必要なんだ。なぜなら勇気がいることだからね。例えば「日本に行き、日本のTOP10人のアーティストと何かをやろう」と言ったとする。互いに学び合い、アイディアを交換しあう。そして日本だけで受け入れられるのではなく、世界中に通用するものを作るとする。 例えば世界では知られてないが、日本の子供たちなら誰もが知っている子守唄のメロディに、僕のアフリアン・リズムをミックスする。するとたちまち! 良い例が、60年代に大ヒットした「Sukiyaki Song」だ。知ってるかな?みんなあの曲を歌っていたよ。

だからアーティストには異なる国の音楽の要素を取り入れ、世界中の人に広く愛される音楽を作る方法があるんだ。広い愛される音楽とは、例えばジョン・レノンの「イマジン」、マーヴィン・ゲイの「ホワッツ・ゴーイング・オン」、(ディランの)「風に吹かれて」、ボブ・マーリーの「ワン・ラヴ」などだ。つまり、永遠に不朽の曲だ。 僕はそういう曲を探している。僕がもうすぐ70歳だなんてことを人が忘れてくれるような音楽を作りたいんだ。聞いて「え?そうなの?」と言われる。 世界のどの国に行っても子供達が「あなたの音楽が好きです。サインもらえますか?」と言ってきてくれるのは、本当に嬉しいことだ。 マイケル・ジャクソンだったらそれは普通のことなのかもしれないが、僕はとてもありがたいことだと思うよ。実際、子供達からサインをねだられるからね。 そして話は戻ってしまうけど、言っていいかな。それはつまり子供達の領域とされるピュアさとイノセンスという2つに要約されるんだよ。 ピュアさとイノセンスをもって作られた音楽は永遠に死とは切り離された世界に行くこととなる。マイケル・ジャクソンがそうだったように。マイケルは不死身だからね。今日の音楽はそんな状況だ。今、必要なのは、全く新しいけれどもどこかで絶対に聴いたと思える音楽を作りたいと思うオープンさを持ったアーティストなんだ。

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