エンジニア飛澤正人が解説!

音を奏でる楽器のほとんどは“倍音”を持っている

音を奏でる楽器のほとんどは“倍音”を持っている

2015/10/20

倍音のイコライジング

  ギターといえば我々プロのエンジニアもまず中域1.5KHz〜3KHzぐらいを意識してブーストすることが多いのですが、この辺りは実際には基音ではなく、倍音に相当する部分をいじっているということになります。では、なぜそこをEQするのかというと、基音が他の楽器でマスキングされて聴こえないような場合に、“倍音をいっじって基音を感じさせている”のです。

 例えばギターなどがオケの中に埋もれて見えなくなっているような場合、この倍音領域をブーストすることで“音がヌケる”という状態になったりするのです。

 しかし、当然のことながら基音である低域〜中低域を無視することはできません。

 楽曲中、ほとんどの楽器やボーカルの基音は100Hz〜700Hzぐらいに集中しているので“どの楽器がメインなのか?”ということをしっかり踏まえて音作りをすることが大切です。
 

倍音の実例

 下記画像は、バイオリンがミドルA(440Hz)の音程を弾いた時の音をアナライザーで表示したものですが、ここに興味深い結果が示されています。


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 基音の440Hzが一番大きく振れ、次に第2倍音の880Hz、そして第3倍音の1,320Hzと第4倍音の1,760Hz辺りは一緒になっているような感じですが、だいたい理論的に言われているポイントがだんだんレベルが落ちるように存在しているのが分かりますね。

 ちなみに、倍音は読んで字のごとく、下には存在しません。


次に下記音例を聴いてみて下さい。

1つ目は、バイオリンがミドルA(440Hz)の音程を弾いた時の音をそのまま再生。
2つ目は、イコライザーで440Hzの前後を鋭くカットして再生。
3つ目は、440Hzの正弦波をオシレーターでならしているものを再生。



/こちらは、2つ目のイコライザーで440Hzの前後を鋭くカットして再生したときの画面

 音を聴いてみた感想はいかがです?

 「バイオリンの倍音」がどういうものなのかを感じていただけたのではないでしょうか。
倍音の豊かなバイオリンから「倍音」をEQでカットしてしまうと、味気のない3つ目の正弦波のようになってしまうのです。

 参考までに3つのアナライザーを紹介しておきましょう。

 

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 このように、楽器のほとんどには「倍音」が存在しています。

 今回は分かりやすく単音の例を出しましたが、コードトーンになると、かなり複雑な倍音構成になった和音が形成されます。

 なので、算数のように計算する必要なんて全くありません。楽器というのは、こういうものが必ず一緒に鳴っているのだということを理解しつつ、その楽曲、あるいはそのコードトーンにとって邪魔になっているポイントに敏感になって下さい。



 

飛澤正人(とびさわまさひと)=プロフィール

「Dragon Ash や 鬼束ちひろ 、BAROQUE などを手掛けるエンジニア。生のバンドサウンドとブレイクビーツをシームレスにミックスして創り上げる空間表現に定評があり、早い段階からコンピューターを使ったサウンドメイキングを取り入れてきた。近年はアレンジや作曲、ボカロP『寂恋』としても活動。またミキシングセミナーを積極的に展開し、クリエーター達の音創りのサポートにも力を注いでいる。現在の目標は、“日本の音楽全体をいい音にする”こと」

■オフィシャルサイト=
http://www.flashlink.jp/

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