人に聴かせても恥ずかしくない歌声の作り方を解説!

ピッチ修正ソフト「Melodyne 4 Studio」で始めるボーカルトラック編集術【第2回】

ピッチ修正ソフト「Melodyne 4 Studio」で始めるボーカルトラック編集術【第2回】

2016/06/09

声の「倍音」を調整して明るさやヌケを良くする

次に「倍音」機能について説明しましょう。前回、発音によって倍音パターンが違うことを解説しましたが、倍音はその人が持っている声の個性であったり、ま
たはマイクの特性によっても変わる部分です。ですから、ボーカルを処理する時には「トータルで倍音がどう出ているのか」に注目します。

Melodyne 4では音源の読み込みが終わると、倍音の分析結果がグラフになって現われます。左の画像はボーカルトラックを分析した倍音グラフで、しっとりとした歌い方のAメロと、勢い良く張って歌ったサビでは、倍音パターンに特徴的な違いが見られます(試聴できます)。

また、Melodyne 4では下の画像のように72倍音/6オクターブを超える解析がされます。16倍音以降は12平均律の分割(半音)より細かくなるため音程としてはとらえられませんが、声の明るさやヌケを良くするためには重要な音域です。グラフの各バーは個別に調整できるので、例えば第2 倍音を増やしたり、第5 倍音をゼロにすることも可能です。こちらで基音と第2倍音をそれぞれ増やした音源を試聴してみてください。
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メロは、女性が話しているぐらいの音程D4(約294Hz)~A4(440Hz)の音域で太くしっとりと聴こえ、基音が一番大きい。それに対してサビはE4(約330Hz)~D5(約660Hz)とやや高めの音程を力強く歌っているため、基音よりも第2~第6倍音の方が大きく出ている

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基音がA3=220Hzの場合に、オクターブに対して倍音と周波数がどのように変化するかを示した画像。オクターブが上がるごとに倍音の数と周波数が共に倍々に上がっていく

声の周波数特性を補正できる「EQ」を併用する

最後に「EQ」機能を見てみましょう。

こちらも倍音と同じように解析結果がグラフに現われ、音源がどのような周波数特性を持っているのかがわかります。グラフは下にノート、上に周波数が表示さ
れているのでわかりやすく、分析結果からアプローチするという点と、グラフィックEQ的に補正ができるところが今までにない新しい感覚です。解析結果の谷になっているポイントは音程的に不要な周波数である可能性が高いので、そこはあえて補正しないようにしましょう。

EQと倍音は双方が密接に関わっていて、役割も効果も似たようなところがありますが、その機能はまったく異なるものです。補正をする時には、両方の特徴をよく理解し、合わせワザで音を作るようにするといいでしょう。

次回(最終回)はマルチトラックノート編集とシンセについて説明します。
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フルコーラスの分析結果。谷になっている部分はキンキンしていて必要のないポイントと感じたのであえてイジらず、その前後のポイント(Ⓟ)を上げて声のヌケを良くした

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ブリリアンスを17%上げた時の倍音(左)とEQ(右)

 


小寺可南子(コテラ カナコ)

ボーカリスト。
ヤマハ音楽院大阪ボーカル科を卒業後、CMソングやジングルで多くの作品に関わる他、ゲームの楽曲に歌唱と作詞で参加。他にもTVアニメ作品やアイドルへの作詞も手掛けるなど、作詞家としても活躍している。

 


Melodyne 4 Studio=¥100,000(※他にEditor=¥60,000、Assistant=¥30,000、Essential=¥12,000のバージョンがある)

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