ダジャレを交えた軽妙な文章で 曲作りのノウハウをわかりやすく紹介!
好評発売中の作曲本「神のみぞ知る!? 名曲・作曲 テクニック」の傑作コンテンツを4週にわたって公開【第3回】
好評発売中の作曲本「神のみぞ知る!? 名曲・作曲 テクニック」の傑作コンテンツを4週にわたって公開【第3回】
2017/12/12

ギタリストのためのレコーディングマガジン「サウンド・デザイナー」が発行している作曲をテーマにした単行本「神のみぞ知る!? 名曲・作曲テクニック」が、現在好評発売中だ。
この本は、洋邦のロック・ポップスの名曲を題材に、作曲をするうえで覚えておきたいコード理論やメロディの作り方などのノウハウを、著者の野口義修氏ならではのダジャレを交えた軽妙な文章でわかりやすく紹介するという、これまでになかったタイプの作曲本で、アーティストや楽曲にまつわる逸話も数多く盛り込んでおり、ロック・ポップスのエピソード集としても楽しめる内容になっている。
普段から作曲を行なっている人やプロの作・編曲家を目指している人から、これから曲作りを始めてみたいと思っている人まで、音楽に興味がある人なら誰でも楽しんで読める本書の中から、選りすぐりのストーリーを1話ずつ4週にわたって紹介しよう。
著者:野口義修
発行:サウンド・デザイナー
定価:1,836円(税込)
判型:A5版・平綴じ
総ページ数:276ぺージ
第3週目の題材曲=ヴァン・ヘイレン「ジャンプ」
「ペダルこいで登っていこう!」
【インパクトのあるスケールの大きいイントロ】
今回は、アメリカのロックバンド、ヴァン・ヘイレンのアルバム『1984』に収録されている「ジャンプ」という曲の、スケールの大きいイントロの秘密を探ってみましょう。リッチな響きを持つ、シンセブラス系サウンドのイントロです!
これはローリング・ストーンズの「サティスファクション」と並び、ロック史上で5本の指に入るインパクトを持ったイントロです(野口の主観ですが……)。ご存じない方は、YouTubeなどで「van halen jump」と検索すれば、簡単に「ジャンプ」のPVやライブの演奏が見られますよ!
このイントロは、シンプルなのに、何かドッシリとスケールの大きい雰囲気を感じませんか? 実は、その秘密は「コード」にあるのです。この曲のイントロをコードで表わした譜例①をご覧ください。
CとGsus4以外は、すべてオンコードになっていますね。しかも、ほとんどが「on C(オン・シー)」です。オンコードとは、ベース音が指定されたコードのことで、「分数コード」とも呼ばれます。「GonC」と「G/C」は同じ意味です。
もう一度コード譜を見ると、1小節目から3小節目までは、ベース音がほぼずっと「ド」を鳴らしているのがわかりますね。このように、コードが色々と変わるのに、ベース音やトップの音がずっと同じ音を鳴らす進行のことを「ペダルポイント」、もしくは「ペダル」と呼びます。
ちなみに、「ペダル」の由来は、パイプオルガンの低音用の「足鍵盤(ペダル)」からきています。
このペダルのテクニックを使い、「ジャンプ」では左手のベースをペダルにして、その上に乗る右手のコードをチェンジさせています。譜例では、右手のアタックのみを記譜していますが、実は左手で、低音のドの音を「ダ〜〜〜」と白玉音符で鳴らし続けています。
その上で、右手のコードがリズムの裏拍を強調しながら演奏するのですから、疾走感が半端ありません。結果、ベースでどっしりした安定感を出しつつ、コードでテンション感を感じさせ、さらに疾走感をアピールできる、スケール感の大きいフレーズが完成しました。
ちなみにこのシンセサイザーは、ギターのエドワード・ヴァン・ヘイレン(以下、エディ)が演奏しているそうです。
【トニック、ドミナント、サブドミナントをペダルにしてみよう】
さて、ペダルに使われる音は、その曲の調(キー)の1度(トニック)の音はもちろん、5度(ドミナント)にあたる音でもカッコいいサウンドになります(譜例②)。
例えば、サビの頭などでよく使う、「F→G7→Em7→Am」といった王道のコード進行で、「F→G7/F→Em7→Am」といったように、2つ目のG7/Fでペダルを盛り込んだりすると、イメージが随分変わります。よりサビらしいスケール感が出てきます。まさに、ペダルパワーですね。ちなみにこの場合、ペダルの音はサブドミナントとなります。
他にも、ストリングスやオルガンの音色で高音部の持続音にペダルを使うと、クラシカルな雰囲気を演出できます。例えばビートルズの「イエスタデイ」では、コード進行が「F→Em7→A7→Dm→B♭……」と変わる中、第一バイオリンが高音部でずっと「A(ラ)」を弾き続けていて、これがまた曲に深みを与えています(曲の後半で聴くことができます)。
他にも、実はギターのコードでもペダルは使えます。譜例③は、ローコードのEをそのまま平行移動しただけですが、これも6弦と1弦のEを鳴らし続けるペダルです。
2弦(▲)はミュートでもOKですが、A/Eでadd9(アドナインス)の響きになったり、F♯/Eでは3度とsus4がぶつかって、面白い響きになったりします。そのF♯の3弦3フレットの白丸を3弦2フレットに移動すると、F♯m7(11)/Eとなって、かなり美しい響きになります!
さて、様々な「ペダル」の使い方を解説しましたが、まずは「ジャンプ」から「ペダル」のテクを盗んでください!
メロディを盛り上げていくのって、坂道を自転車で登っていくみたいな感じなのです。そんな時、トニックを使ったペダル(トニックペダル)は最高の武器になります。
とにかく、「ペダルこいで登っていこう!」って覚えてください!
題材曲こぼれ話
「ジャンプ」は1983年に発表された大ヒットアルバム『1984』に収録されています。ギタリストのエドワード・ヴァン・ヘイレン(以下エディ)は、若い頃にピアノを習っていたそうですが、ライブ映像を見る限り、神ワザのようなギターに比べると、キーボードの演奏は決して流暢とは言えないような……。エディは、ギターの「ライトハンド奏法」を広く普及させたことでも知られています。マイケル・ジャクソンの「今夜はビート・イット」で聴ける、間奏の燃え上がるようなギターソロも、彼の手によるものです。
その他のストーリー
第1回=ザ・ビートルズ「ヘイ・ジュード」
歌メロディの音域は「平易10度(ヘイ・ジュード)」!
第2回=ワン・ダイレクション「リヴ・ホワイル・ウィ・アー・ヤング」
構成は「ああせい、こうせい(構成)!
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