ソロデビュー30周年を記念したアルバム
杉山清貴『OCEAN』インタビュー
杉山清貴『OCEAN』インタビュー
2016/07/27
“僕が責任を持ってソロとしてやります” という形になってしまったんですよ
──続いて杉山さんの音楽歴、ギター歴を聞かせて下さい。杉山さんが初めて購入されたレコードは何ですか?
杉山:初めてかどうかはちょっと定かではないんですが、やっぱり小学生の頃に買ったビートルズの『Let It Be』ですかね。
──ギターはアコギから入られたのですか?
杉山:そうですね。中学に入って、時代がフォークブームの全盛期だったので、学校に行けば誰かしらギター弾いてるし、文化祭の前夜祭では生徒会がみんなギター弾いて歌ってる感じだったので、自然と僕も始めました。
──やはり、初めは吉田拓郎さんや井上陽水さんといった日本のフォークからですか?
杉山:はい。
──そこからどんな風に流れていかれたのですか?
杉山:そこからというよりは並行して洋楽も聴いていました。ビートルズから始まって洋楽のヒットチャートを聴いて、日本のヒットチャートも聴いて。中学でギターを弾き始めたら、音楽雑誌を買ってギターのコードを覚えたりとかしていましたね。そうするうちに友達から「カッコ良いよ!」って薦められてグランド・ファンク・レイルロードとかハードロックも聴きましたし、色んな音楽を聴いていました。
──ご自身でバンドを始められるのは高校生からですか?
杉山:バンドは中学のときからやってました。ビートルズのコピーバンドを組んで文化祭でライブをやったのが中3かな? それで、高校のときはそこで出会った仲間とまたバンド組んで文化祭に出たりしていました。
──ポプコン(ヤマハポピュラーコンテスト)に出場なさったのはそのころですか?
杉山:はい。ポプコンに出たときはまだバンドを組んで間もないころですね。
──どういったジャンルの曲を作っていたのですか?
杉山:オリジナルはほとんど作っていなかったように記憶しています。世良公則&ツイストとかビリー・ジョエルのカバーを演奏してましたね。そんな中、何となく作った曲をバンドの皆に聴かせて、バラードを作ったんですけど。それを見ていた練習スタジオの人に “ポプコンに出てみない?” って薦められたのがポプコン出場のきっかけでした。
──そのころからサウンド的には杉山清貴&オメガトライブのデビュー当時のような方向性で活動されていたのですか?
杉山:最初のころはイーグルスやドゥービー・ブラザーズといった雰囲気の音楽をやっていて、70年代後半にTOTOが出てくるようになったら、いわゆるウエストコースト系の音楽になっていきましたね。それから世の中がAORになったらちょっとシャカタクっぽいものをやったりとか。確かそのぐらいのときにデビューの話をもらったと思います。
──音楽的にはそのままデビューに繋がっていったのですね。
杉山:そうですね。
──その後、ソロデビューされたのは杉山さんとバンドの方向性が違ってきたからでしょうか?
杉山:いえいえ、オメガトライブは単純にプロジェクトチームで、曲も提供していただいている状態でしたから “バンドで曲を書いて売れている” 状態ではないわけですよ。“曲、売れてるね~” ぐらいの感覚で。楽曲を作る人も違うし、プロデューサーもいるし、僕らはオメガトライブの「演者」だったんです。だから、バンドメンバー同士で云々というのは違いますね。僕は “林さんの曲はすごく良いし、今売れてるけど、何かのタイミングで売れなくなったらどうしよう?” と考えたんです。自分たちで曲を書いていれば次はあるけど、書いていないので、次はないじゃないですか。だから “そうなる前に解散しようよ” と言って解散したんです。
──あまり聞いたことがないバンドの解散劇ですね。
杉山:はい。だから “ソロになりたい!”っていう気持ちもなかったです。
──そのころにはもうオリジナル曲を作っていたのですか?
杉山:いえ、何もなかったですね(笑)。もう “とりあえず解散しよう! でないと先に進めない” という気持ちでした。解散したら僕は新しいバンドを組もうかなと考えていました。
──なにかの誌面で「さよならのオーシャン」は急いで作ったという記事を読んだ記憶がありますね。
杉山:そうそう! 当時の僕はいわゆる“大人の契約”というものを知らなくて。“まだ契約が残ってるのに勝手に解散しやがって!”という話になり、“僕が責任を持ってソロとしてやります” という形になってしまったんですよ(笑)。
──あれだけ売れてたので、ソロデビューもしっかりお膳立てされていたと思ってました。
杉山:いえいえ、だから最初は困りましたね。“えぇ~!? 俺はバンドのボーカルしかやったことないから1人でやったことはないし、何やれっていうんだよ” って(笑)。そこでオメガトライブの前身である「きゅうてぃぱんちょす」でやっていたようなサウンドでやってみたっていうのが始まりですね。
──確かに最初のシングル「さよならのオーシャン」はロック寄りな雰囲気でしたよね。
杉山:はい。8ビートのディストーションサウンドに戻しました。
僕はオリジナルをきっちり守っていきたいです。それも歌の修行だと思って(笑)
──杉山さんは歌唱法がデビュー当時から大きく変わらないと感じるのですが、そこについては意識的なものはありますか?
杉山:歌い方に関して、飽きてしまって変えたりとかそういった時期もあったとは思うんですけど、やっぱり元々林さんの曲、つまり他人の曲でデビューしているので、ヘンに変えると失礼なんですよね。林さんは “歌は歌ってる人のものだよ”って言ってくださるんですけど、やっぱり僕自身も他人に曲を書くので、最初に作ったメロディーと譜割りって大事だと思うんです。だから、あえて変えようという気はないですね。歌いやすいように変えてしまうこともできるんですが、僕はオリジナルをきっちり守っていきたいです。それも歌の修行だと思って(笑)。
──最近、テレビで弾き語りをされている姿をよく拝見しますが、バンドアレンジの曲をアコギ一本で演奏するときはどういったことに気を付けられていますか?
杉山:大変なことなんですが、オリジナルの楽曲のイメージをなるべく壊さないように心がけていますね。例えば、「さよならのオーシャン」はストロークから始まって、そこから続くメロディーは弾き語りではやらないんですが、それを感じさせるように演奏したりとか。この間、小室等さんの番組で「さよならのオーシャン」を弾き語ったときに、小室さんが「オリジナルのイメージをそのままちゃんと使っていますね。ギターを弾いているオジサンたち、これをお手本にしなさい!」って言ってくださったんです。だから僕はお手本みたいですよ(笑)。あのときは褒めてもらってとても嬉しかったですね。
──やはりそういったところは意識的にされているのですね。
杉山:“なるべく” ですけどね。全部を再現するのは無理なんですが、聴く人が原曲の雰囲気を感じられるように演奏しています。
──歌に関して、デビュー当時の曲を歌うときもキーは変わらないですか?
杉山:はい。変わらないですね。
──歌うために普段されているトレーニングはありますか?
杉山:何もしてないです。“いきなり会場行って声を出す” みたいな感じですよ(笑)。よっぽど朝起きて “今日、ヤバイな” と感じない限りは何もせずに普通に歌いますね。自分の中では調子の上がり下がりはありますが、聴いてる人には分からないと思います。
──現在メインで使われているギターはどこのメーカーのものでしょうか?
杉山:Tearsという国内ブランドのギターです。6~7年くらい前に工房に伺って、色々弾かせてもらいながら選びました。
──アコギを選ぶときのこだわりは何ですか?
杉山:僕は手が小さいのでネックの握り具合が一番気になりますね。弾き語りライブは2時間くらいやるので、なるべく負担がこないものを選びます。薄いネックは力が必要になるので少し厚めにして、幅は広すぎず狭すぎず、ちょうどいいもので。基本はネック触って “2時間耐えられるか” がポイントですね。僕の曲はややこしいコードが多いので(笑)。
──確かにテンションコードが多くて難しいですよね。
杉山:弾き語りライブは2000年ごろから始めて、当初はハワイで買ったGibsonのハミングバードを使っていたのですが、何年目かで腱鞘炎になってしまったんです。それからギター選びは神経質になりましたね。そのころはオメガトライブ時代の曲も多くやっていたので分数コードが多くて、それをずっとやっていたら腱鞘炎になってしまいました(笑)。
──分数コードも省略せずに演奏されているのですね。
杉山:はい。なるべくやってますね。
──最近、「楽器.me」の歌詞/コードページに、杉山さんの楽曲リクエストが増えています。最後に、杉山さんの曲を弾き語りしているファンの皆さんにメッセージをお願いします。
杉山:僕はギタリストとして活動してきた人間ではないし、決してギターが上手く弾けるから弾き語りをはじめたわけではなく、逆に弾き語りをしながらギターを覚えていったという感じもあるんですよ。だから、ギターを弾きながら歌うっていうことは創意工夫がとても大事だなと思います。オリジナルのイメージを伝えるためにどうすれば雰囲気が出るのか、そのことを探究するために常にギターを触って、プレイを進化させていってほしいですね。そうなってくるとより一層ギターが楽しくなるし、楽曲も生きてくると思います。ぜひ、頑張ってください!
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