マルチな才能を発揮するソロアーティスト
Spica、1st EP『Spica』の制作エピソードを公開!
Spica、1st EP『Spica』の制作エピソードを公開!
2023/03/23
コンポーザー、アレンジャー、エンジニア、ドラマーといったマルチな才能でキャリアを積み、特にドラマーとしては全国のコンテストで幾度も受賞経歴を持つという注目のアーティスト、Spica(読み:スピカ)。Spica名義ではクオリティの高いダンスミュージックを得意とし、自ら歌い手も務め、これまでに3曲のデジタルシングルを配信。そんな彼が満を持して2023年3月22日に1st EP「Spica」をリリースすることが決まった。作詞・作曲、アレンジ、ミキシング、そして歌い手として、Spicaでどのような世界観を表現しようと思っているのか!? ここでは、収録される全5曲について詳しく聞いてみた。
取材:東 哲哉(編集長)
ソロ・アーティスト「Spica」の生い立ちについて
──資料によると、コンポーザー、アレンジャー、エンジニア、ドラマーなど、様々な肩書きがありますが、ご自身の経歴や今まで影響を受けたアーティスト/楽曲などについて教えてください。
幼少の頃から父の薦めでドラムを始め、コンテストやオーディション等で賞を頂き、大学や専門学校の講師もしていました。それと同時にバンド活動も行い、レコード会社、事務所を転々としつつ、フェスへの出演、CMソングやアーティストへの楽曲提供、編曲、ミックス・マスタリング等の仕事を経て、現在に至ります。音楽一家とまではいかないのですが、家族や音楽の先輩にも恵まれ色んな音楽を聴いてきました。中でも菅野よう子さん、ZEDD、Periphery、Hans Zimmer等のアーティストには強く影響を受けています。
──顔出しをせずにSpicaとして活動している理由を教えてください。
僕自身が一番強く望むのは楽曲をとにかくダイレクトに聴いて欲しい。これに尽きます。情報量が多い今の世の中、目に入った時の情報量よりも直感的に耳に届けるようにしたかった。それが必然的にこういう形になったのだと思います。あとは今までの肩書きを一度まっさらにして聴いてほしかったのもあります。
1st EP『Spica』の収録曲について
【1曲目「poison apple」について】
──「poison apple」で表現したかったことは?(歌詞や音楽的なことなど)
今自分が思い描いている楽曲の理想像である、EDM/DubstepとPOPSの融合に近い楽曲になったと思っていて、ダンスミュージックの中毒性と頭に残りやすいメロディを意識して作曲しました。歌詞に関しては昔から人の心理、精神状態について興味があり、自分が女性脳的な部分もあるため、特に女性が思考するような事を表現したく、このような歌詞になりました。
──特に使用頻度が高かった音源は何ですか。その音源を使った箇所、その音源が気に入っている理由などを教えてください。
ビート作りでメインとなったUVIのFalconです。芯がしっかりしていて低音域も出過ぎず締まっており、現代っぽい音が加工なしで鳴ってくれる所が気に入っています。
──ミックスで特に活躍したプラグインは何ですか。その使い方や気に入っているところを教えてください。
Fabfilterを一番使用しました。特にQ3の使用量は断トツだと思います。リリースした他の楽曲にも共通して言える事なのですが、元の音源をなるべく加工せずに使用したいというのが念頭にあったので、原音を崩さずクリーンに処理してくれる所がとても気に入っています。
【2曲目「Last Chance」について】
──「Last Chance」で表現したかった世界観は?(歌詞や音楽的なことなど)
一言でまとめると人の「別れ」が表面上のテーマではあるのですが、もう一つ裏テーマ的なものがあり、自分に向けたメッセージでもあります。それは自分にとって今のこの活動がラストチャンスだということ。大きなチャンスは中々訪れるものではないですし、その一瞬一瞬がとても大事だと思うので、それを歌詞として表現しました。また、この「チャンス」は人との出会いや別れにも言えることだと思ったので、実は二重テーマになっています。その上で疾走感がある、アップテンポなBPMにしてチャンスが逃げてしまうような焦燥感を楽曲で表現しました。
──ボーカルのエフェクトが印象的ですが、どのようなプラグイン/編集などをしているのでしょうか? また、レコーディングに使用したマイクやDAWソフト、アウトボードなどがあれば、その製品を理由も含めて教えてください。
イントロ後やサビ後に出てくるアップテンポなものはreFX Nexus内の音源を使い、内蔵されているシーケンスでパターン化し、他は全て生歌を録音してそこから編集作業に入りました。歌詞が入っている部分の加工に関してはMelodyneでトランジェントをなくしフォルマントで周波数を変え、他の部分のエフェクトにはFabfilterのVolcanoを使用しています。レコーディングや制作に関して、DAWはしたいことが直感的に操作でき、マスタリングにも耐えうるStudio Oneを使用しています。
マイクには暖かさと現代のスムースさを感じられるSoyuz FET 017を使用しました。プリアンプはヴィンテージ感と抜けが欲しく、Avalon Design のV5を通してそこからWesAudioのbeta76でコンプレッションしてメインミキサーあるSSL SiXに送っています。また録音時にはJZ MICROPHONES Pop FilterとASTON MICROPHONES Halo Shadowの二つで環境音等に配慮しています。特にHalo Shadowに関しては、他のリフレクションフィルターにはない、上部までマイクを覆うことができるのでとても気に入っています。AD/DAにはRMEのADI-2 Pro FSを使用していて、その安定性と堅実な音が僕の作る音の全てを担ってくれています。
【3曲目「pocket」について】
──「pocket」で表現したかったことは?(歌詞や音楽的なことなど)
SNSやネットが生活の一部となった昨今において、言葉だけが先行してしまうことって増えたと思うんです。顔が見えず、どこの誰かもわからない。言動と行動が伴っていない。そんな現在の形を歌詞にして楽曲の方もリバースストリングスを使用したりドロップでアプローチするなど他の楽曲とは異なる印象にしてみました。
──ミックスなどで苦労したことがあれば教えてください。
他の楽曲と比べて音数が少ないので、一つ一つの楽器やビート音源が負担する割合が大きく、音量バランスやパンニング、音選びには神経を使いました。その分迫力のある仕上がりになったと思います。
──この曲の歌詞で気に入っているところはどこですか?
「結局のところ自分次第」です。何をするにしても人の手助けや応援されることは多々必要ですが、まずは自分から物事を始めたり、考えないと何も進まないし、生まれないと思っています。歌詞のテーマとは少しズレるかもしれませんが、この言葉は自分の性格上グサッと刺さります。
【4曲目「punishment」について】
──「punishment」で表現したかったことは?(歌詞や音楽的なことなど)
何事にも裏表がある様に、SNSの「闇」の部分を表現しました。それに伴い楽曲の方も重く、ダークな雰囲気を作りたく、元々好きなヘヴィロックの要素を取り入れたりと自分の中でもお気に入りの曲です。
──特に使用頻度が高かったシンセ音源は何ですか。また、曲中で使用されている鐘のような音はどのように鳴らしているのでしょうか?
MusicLabのRealEightです。8弦ギターをシミュレートした音源なのですが、この楽曲の肝であるダークさや重厚感を押し出すのに中心的な存在となっています。鐘に関してはNative IntstrumentsのKONTAKTを使用して実際の音をサンプリングされたものを使用しています。それに加えて楽曲の雰囲気に合うように、サチュレーションとディストーションを付与して少し歪んだ音に敢えてしています。
──楽曲の構成などでこだわった点があれば教えてください。
間奏とDメロはかなりこだわりました。ダークさ故にのっぺりとした平たい曲の感じにはしたくなかったので、映画で言うクライマックス感を取り入れたかったんです。音源には抜けのいいストリングスを使用し、パーカッション系はディストーションでドライヴさせて楽曲の雰囲気を残しつつ、メロディも音階が高くなるように作りました。
【5曲目「paradox」について】
──「paradox」で表現したかったことは?(歌詞や音楽的なことなど)
まず制作するにあたって念頭にあったのがドロップのある曲を作ることでした。サビに歌詞がなくても何か感じ取れる、聴いていられる、そんな曲にしたかったんです。歌詞もそれに合わせて恋愛をテーマにし、恋のしんどさ、その心の叫びをイメージして作詞しました。
──交差するサウンドがまさに曲のイメージを象徴しているように感じましたが、ミックスなどでこだわった点を教えてください。
PAD、Ambient系のシンセやストリングスが入り乱れているのでEQ処理、リバーブのセンド量やパンニング、ステレオ感にはこだわりました。
今後の活動・目指していることなど
──あらためて、今回の1st EP『Spica』全体を通じて表現したかったことを聞かせてください。
1st EPということで固定した意識は持たず、今自分が表現したいものを、ロックやEDMなどといったジャンルの垣根を取り払って作ることができたEPだと思います。なので今回は何々を〜といったコンセプトは良い意味でありません。ただ歌詞に関しては一貫して共感してもらえるような統一性を持たせたので、1人でも多くの方に聴いて、感じ取ってもらえたら嬉しいです。
──今後の活動・目指していることなどをお聞かせください。
まだ始まったばかりでやりたい事は沢山あるのですが、目先で言うと今後は配信だけでなくLive等も行っていきたいと考えています。また後々は海外でも日本に面白いアーティストがいるという存在を知らしめたいです。
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