ミュージシャン、ライター、フォトグラファーなどさまざまな顔を持つZ世代DIYアーティスト
okkaaa、ファースト・フルアルバム『Voyage』の制作エピソードを公開!
okkaaa、ファースト・フルアルバム『Voyage』の制作エピソードを公開!
2022/01/26
Z世代のDIYアーティストとして注目を集めるokkaaa(オッカー)。TuneGateでは2020年8月に3rd EP『ID20』で初インタビューを行ない、タイプ・ビートを用いたユニークなトラックメイキングの手法を公開して頂きました(https://tunegate.me/P20200824004)。そんなokkaaaがついにファースト・フルアルバム『Voyage』 を1月26日(水)にCDと配信でリリース。本作にはこの2年間に配信してきたシングル6曲に、新曲を5曲、リテイクを1曲加えた、全12曲が収録され、アルバムのアートワークもokkaaaご本人が制作を手掛けているということです。ここでは『Voyage』のために書き下ろされた新曲を中心に、トラックに込めた思いをじっくりと聞いてみました。
取材:東 哲哉(編集長)
1曲目「Voyage」について
──アルバムのタイトル曲でもある「Voyage」についてお聞きします。この曲では、どのような世界観を表現しようと思われたのでしょうか。
okkaaa:このアルバムは僕の個人的なモラトリアムをめぐる旅の詩集のようなものなんです。大学4年間やってきた僕の内省とその聯関(れんかん)を一種の結び目として区切りをつけ新しいスタートを切りたいという意味合いもあります。「Voyage」はそういう意味では門出を祝うことを意味します。そして同時に、"この世界でどう一歩を踏み出すか"という問いの答えでもあります。特にブラック・ライブズ・マターやコロナでの政治や一連の悲しい事件、そういった生活の中で起きる様々な事象を見て、僕らはどう声を上げてどう自分のメンタルと向き合っていくべきなのかを考えました。ただ、その思想の歌にするだけでなく、「世界へ旅する少年」の歌にもしたかったんです。僕は「ID20」以降、個人的で印象派な趣のあるものから、ソングライティング的な側面を意識して、誰もが感じる普遍的な感情を探りそれを歌に起こす作業を中心にやっていました。その思想面とソングライティング面での総体が航海というテーマにつながっていきました。
──歌詞で特に気に入っている部分はどこですか?
okkaaa:「広げるカイト、また降る涙」を潔く「言い放てグッドバイ」と表現するにはストーリーが必要でした。それは大事な思い出や喪失を自分の中で受け入れ、感情と決別する覚悟です。最後のCメロでの歌詞を挟んで、「言い放てグッドバイ」の印象はだいぶ変わります。その物語と葛藤の聯関を楽しんでもらえたらいいなと思っています。絶賛、MVでもその表現の演出・編集に手こずっています。
──出だしのギターのアルペジオから「海」の雰囲気を感じる事ができましたが、トラック作りはどのように行ったのでしょうか?
okkaaa:全て楽曲は個人でライセンス契約したタイプビートを用いていますが、アレンジや展開作りなどは自分で行いました。タイプビートで提供される素材は、すでに出来上がっているものもあれば、パーカッション、シンセ、ベース、ギター…などなどデータは多岐にわたります。今回僕はそれらを再構築し、展開のアレンジやビートアレンジなどは自分で行っています。ビートの面で言えば、アフロビート主導のビートパーカッションから硬い金属のようなキックをセレクトして4つ打ちにして、ブレンドしました。ボーカルのクリエイティブにはLittle Alter boyやOvoxなどを使用しています。その他ミキシングはコンプや空間系のエフェクトを追加して、だいぶプリミティブな方法だと思います。
──「Voyage」を制作する上で、こだわった点を教えてください。
okkaaa:絡まった主人公の感情がほぐれて世界へ飛び出す様子を想像して聴けるようにこだわっています。いくつかのメタファーを交えて。声のピッチチェンジは成熟のメタファーです。歌詞の中でその物語を感じて、心に感じてもらえれば幸いです。
▲ボーカルに使用しているWAVES OVox Vocal ReSynthesis。ウィスパーのプラグインをレイヤーしVoiceをブーストして用いている
▲ボーカルに使用しているsoundtoys Little AlterBoy。ピッチをあげ、フォルマント・シフトをさげ、ドライブを加えることでエッジの効いたピッチシフトボイスを作成している
3曲目「Broach」について
──「Broach」はどのように生まれた曲なのですか? 最初に思いついた歌詞のワードは?
okkaaa:これはだいぶ素直な曲ですよね。解説するのも恥ずかしいですが、ただバックグラウンドを説明するのであれば、元々この曲は、「高積雲」というタイトルの別プロジェクトの曲でした。それは、今のバージョンよりも孤独の中にある喪失みたいなものを希求した作品でした。ただそれがあまりにも個人的すぎたんです。だからもっと概念化させた「愛」の形を歌いたいなと思いました。ただ僕の思う形というのはいろんな形があります。その根底には自分自身が流動的でいたいという根本的な欲求が絡んでいます。これはプライベートな問題もです。流動的な心の狭間にいるからこそ「どんな言葉だって受け止めるよ。多分あなたが好き。誰にも言えないこと話してくれるなら、もちろん僕は喜んで。」という受容の曲になったんだと思います。
──曲のアレンジ、ミックスなどでこだわった点を教えてください
okkaaa:どの曲にも共通しますが、僕がやりたいミックスをあえて言葉で表すなら「音と分離しないトラックに潜り込むような情動の囁き」です。それは夢の中で醒めている感覚に近くて、「明晰夢」という曲のテーマにもなっています。簡単に言って仕舞えば、曖昧な世界を作り上げるということです。今回はコーラスワークがその印象的な世界を形作っていると思います。まぁ、技術的にはまだまだ修行が必要なんですけどね。
4曲目「思い出して」について
──歌詞で「今が船出の時さ」というワードが出てきますが、1曲目の「Voyage」しかり、海がモチーフになっていますよね。この曲で表現したかったことというと?
okkaaa:一貫してこのアルバムはモラトリアムでの葛藤であり、漂泊することへの自由な精神の希求でできています。得に「思い出して」はそんな側面が大きいです。最後にできた曲ですが、旅のお供になるような曲にしたかったんです。だから僕がこれから先、一人旅に出て、知らない土地に一歩足を踏み入れた時、どう感じてどう過ごすのだろうかと想像しながら作りました。そこで考える未来のあれこれや社会の問題は、自身のオンライン上での葛藤であり、社会との接続点です。「熱波」でも表現していた、失われていく世界の問題をどう受け入れ世界へ踏み入れていくのか、そういったものをラップで表現しています。単なるインターネットからの反骨精神から生まれるノスタルジーでないことを示すにはこういったアプローチも含めて音源にして示したかったんです。
7曲目「幻影 pt.Ⅰ」/8曲目「幻影 pt.Ⅱ」について
──「幻影 pt.Ⅰ」と「幻影 pt.Ⅱ」がありますが、もともと2曲作る構想があったのですか? それぞれの「幻影」で表現したかったことを教えてください。
okkaaa:元々、幻影はpt.Iのみの構想でした。先が見えない世界でどう僕らは立ち振る舞い、愛を持って接することができるのだろうかという問いを立てできた作品でした。pt.Iでは愛を求めるばかり、主人公は偶像化した愛を希求します。そんな世界を閉じるためには新しい物語が必要でした。捉えどころのない世界でも進まなくてはいけないという次のステップが幻影pt.IIです。
──「幻影 pt.Ⅰ」と比べて、「幻影 pt.Ⅱ」ではトラックのアプローチが全く正反対に感じましたが、この楽曲はどのように制作されたのでしょうか? DAWソフト上で行ったことなどを具体的に教えてください。
okkaaa:元々、どんなタイプの音楽も好きだし、影響されています。だから基本的にはジャンルなど関係なく混ぜ合わせたいと思っています。だからこそこういう形で自然に反映されたんだと思います。pt.Iとpt.IIはビート自体ジャンルが違います。voyage同様、データは多岐にわたりますが、それらのキーや速さ、ベースラインを変えて、そこにボーカルの音色、吐息、環境音、馬が走ってくる音などなど...この曲の世界観を作る人物像の部分を追加していきました。濃い霧の中で走りこむようなサウンド、そして訪れる瞑想、やがて雨が降り展開が変わる。馬はこちらに向かって走ってきます。全ては「幻想」のテーマのメタファーです。
12曲目「SS22」について
──12曲目の「SS22」は2020年5月配信曲「SS20」のリテイク・ヴァージョンだそうですが、アルバムを締めくくる曲として「SS22」を選んだ意図を教えてください。
okkaaa:このアルバムは春夏秋冬、移ろう季節を感じられる構成になっています。長い探求の先に穏やかな春を希求する少年の涙はこのアルバムには不可欠だったと思います。全曲を通してそういったコンセプチャルな部分も楽しんでもらえたらいいなと思います。
──特にお気に入りの歌詞はどこですか? 理由と共にお答えください。
okkaaa:「次にやってくる風が僕の涙を乾かすの」という歌詞でこのアルバムは終わります。このセリフには僕のクリエイティブに対する姿勢の一部が反映されています。それは”風を捉える”ということです。だいぶ平凡なものかもしれませんが、この季節性や情緒性が今まで僕が曲で行ってきた内省の発露に共通すると感じています。というかしっくりきます。やっと自分の作家性みたいなものを見つけられたって。聞いてくれている人はどんな風を感じてくれるでしょうかね。気になります。
その他の収録曲に関して
──1stアルバムには、この他にも多数の楽曲が収録されておりますが、制作する上で特に印象に残っている楽曲やエピソードなどがあれば教えてください。
okkaaa:そうですね。先程の”風を捉える”という意味合いでいえば、この感覚を革新に変えたのは「ヒグラシ」という曲でした。大切な誰かに手紙を書くように”また会おうね”と語りかけるこの曲ですが、手紙を書くときに出てくる季語や言葉は優しい表情を持ちながら時には愛らしく時には疎ましく時には苛立たしく存在します。そんな言葉たちが田舎の田園風景の中で駆け巡って風を吹かすんです。そういった景色がありありと浮かんでくる曲だと思います。聞いてくれている人の脳内でそうあって欲しいなと思います。こうやって歌世界の中に大きなストーリーが立ち上がって訴えかけてくる。僕はこの物語にいつだって身を寄せることができるし誰にだって渡すことができる。すごい素敵なことだなぁって。それに、ヒグラシを書き上げた時、一瞬で僕のものではなくなったような気がしたんですよね。普段なら独り占めしたい!と思える歌詞やサウンドも今回はもっとみんなに聞いて欲しい。そっちの方が強かった。この景色が見られたことは僕にとってとても重要なことだと思います。
今後の活動に関して
──最後にあらためて1stアルバム全体のコンセプトと、ご自身が伝えたい世界観などを教えてください。また、コロナがなかなか収束しない状態が続いていますが、今後の活動予定などもあれば教えてください。
okkaaa:はい。まずここまで読んでくれてありがとうございます。「Voyage」いかがだったでしょうか?これまで同様に今作でも、楽曲、ミュージック・ビデオ、ジャケット画像、ウェブサイトの全てを手掛けております。今までのモラトリアムをめぐる自身の旅を総括しながらも、新しいシーズンに向かう決意がこもった旅の詩集のようなものとなりました。ぜひ一度試聴していただけますと嬉しいです。ライブなどは未定なのですが機会は設けようと思っていますので、SNSを随時チェックしてみてください。
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「熱波」はもともと昨年夏にリリースしたシングル曲で、今回のアルバムにも収録されています。そのテーマである「気候変動、地球温暖化」とシンクロして書かれたのがこのSF短編小説「熱波」となります。
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