ユニバーサルオーディオ製のIFをプロが使う理由に迫る!
UADプラグイン愛用ミュージシャンインタビュー【JUVENILE(ジュブナイル)】
UADプラグイン愛用ミュージシャンインタビュー【JUVENILE(ジュブナイル)】
2019/07/12
ユニバーサルオーディオ製のオーディオインターフェイスやUADプラグインを愛用するミュージシャン/クリエイターを訪ね、製品をチョイスした理由やレコーディング、ミックスなどでの活用法を公開してもらおうという本企画。第1回目は大ヒットしたRADIO FISH「PERFECT HUMAN」を作編曲したJUVENILE(ジュブナイル)さんの登場だ。
取材:編集部 撮影:小貝和夫
JUVENILE:「Apollo Twin USB」が出た頃に導入したので、これで2〜3年くらいになると思います。もともと僕は外のスタジオでレコーディングすることも多くて、そこでUADプラグインのもとになっているようなビンテージの実機を見たり、触れたりする機会も多かったんです。なので、そういった機材が自宅レベルで利用できるメリットを強く感じて。
──では、プライベートスタジオでも録りの段階からUADプラグイン(※Unison対応プラグイン)を?
JUVENILE:はい。例えば歌を録る場合は、最初に「Neve 1073 Channel Amplifier」を通して、その後に「1176 AE」をかけます。で、歌のピッチが心配な時はその後に「Auto-Tune」を使ったり。リバーブが欲しい時はプレートリバーブの「EMT140」を使うことも多いです。
※「Unison(ユニゾン)」とは、ユニバーサルオーディオ社が開発したプリアンプやギターアンプの入力特性を忠実に再現する技術のことで、Unison対応のUADプラグインを付属のミキサーソフト「Consoleチャンネル」に読み込むと、オーディオインターフェイスのマイク/Hi-Z入力が最適化され、基になったハードウェアを実際に用いたかのようなレコーディングを行なうことができる。
──歌用のセットでは、パラメーターはどのようなセッティングに?
JUVENILE:まず「Neve 1073 Channel Amplifier」で歌のキャラクターを決めていきます。Neveってゲイン(一番上の赤いツマミ)を上げると音量だけではなく、音も変わるんですよね。なので、最初にそこを見極めて。で、ゲインを上げると当然音量も上がっていくので、そういった場合は隣りにあるフェーダーを下げて調整します。ちなみに僕は、ゲインをちょっとだけ上げた30〜35くらいで使うことが多いですね。
──その後にかける「1176 AE」のセッティングはいかがですか?
JUVENILE:この「1176 AE」は「Neve 1073 Channel Amplifier」と同じく別売のUADプラグインなんですけど、通常の1176と違って、アタックタイムに「SLO(スロー)」という選択肢が用意されているんです。歌にコンプ/リミッターをかけ録りする場合、歌のニュアンスまでは変えたくないので、アタックタイムは遅めにするケースが多いと思うんですけど、この「1176 AE」だと「SLO」でゆったりとコンプがかけられるので重宝しています。
──「Auto-Tune」や「EMT140」を使用する場合は?
JUVENILE:これはもう楽曲のスケールを選択するだけですね。ケロケロボイスとかにしたい時は過激なセッティングにすることもありますけど、基本的には楽曲のスケールに合わせて自動的にピッチ補正されるようにするのが目的です。あと「EMT140」は歌い手さんによって設定はまちまちですね。リバーブ感を強めに欲しい人もいれば、逆に素の自分の声がダイレクトに聴こえた方が歌いやすいという方もいるので。
──こちらのプライベートスタジオでは、簡易ブースも用意されているとのことですが、歌を録る場合の「Apollo Twin USB」のルーティングは?
JUVENILE:「Apollo Twin USB」は6アウトプットなので、1と2はGENELECのモニタースピーカーにつなぎ、3〜6はブース内にある小型ミキサー(キューボックス)へと信号を送っています。小型ミキサーにはヘッドホンが接続されていて、3と4でオケの信号、5は歌用のマイクをモニターするため、6はクリックをモニターするために使っています(Apollo Twin USBの5と6はヘッドホンアウト)
JUVENILE:僕自身はギターを弾かないので、ギターが欲しい時はギタリストに来てもらうんですけど、歪み系だったら標準付属の「Marshall Plexi Classic Amplifier」、クリーン系だったら「Fender '55 Tweed Deluxe」を使うことが多いですかね。
──何か具体的な楽曲を例に解説していただけますか。
JUVENILE:例えば、RADIO FISHの「進化論」という曲があるんですけど、このクリーンギターでは「Fender '55 Tweed Deluxe」と「Empirical Labs EL8 Distressor Compressor」を組み合わせて使いました。「Distressor」を使うことで、ギターの余韻がぶつ切りにならずに、いい感じに持続されるんです。クリーンギターの場合、この方がギタリストも弾きやすいし、ダイナミクスも整えられるので。
JUVENILE:僕はCubaseを使っているんですけど、グループバスにまとめたドラムには「Fairchild Tube Limiter プラグイン・コレクション」をかけています。というのも、エンジニアさんがスタジオにある実機でもそのようにしているのを見たことがあって。実はスタジオにある機材ってすごくシンプルで、やれることは限られていますけど、簡単に真似できるのもポイントだと思います。UADプラグインを使う理由は、とにかくスタジオの環境が自宅でパッと試せるというのも大きいと思いますね。
──ドラムは、キックやスネアといったパーツごとサウンドメイクを行うことも?
JUVENILE:それもやりますね。「Pultec Pro Equalizers」はキックなどに使ったりします。でも、使う時はカットのみで、ブースト目的で使うことはないかな。
──ボーカルなどには?
JUVENILE:例えば、「Movie Diary -青春スクロール- feat. 和島あみ」という曲では「Teletronix LA-2A Classic Leveling Amplifier」を使いました。
──マスタートラックにもUADプラグインを使うことはありますか?
JUVENILE:はい。僕がマストで使うのは「Brainworx bx_digital V3 EQ Collection」と「Shadow Hills Mastering Compressor プラグイン」です。「Shadow Hills」の方は実機も知っているんですけど、めちゃくちゃデカくて6Uくらいあるんですよ。で、たしか150万円くらいするんですよね。それを考えるとUADプラグインは本当にお得だと思います。
──マスターのプラグインはどのようなセッテイングで使うことが多いのですか?
JUVENILE:僕の場合、マスターでは「MS処理」といって、右/左ではなくて真ん中とサイドにわけて位相を処理していくのですが、まず「Brainworx bx_digital V3 EQ Collection」で耳に痛いキンキンする部分を探して。そこをカットしていきます。「Brainworx bx_digital V3 EQ Collection」は、MとSに分けた状態でピンポイントに不要な音が探せるので便利です。で、最終的にもう一方の「Shadow Hills」でコンプをかけていきます。「Shadow Hills」はコンプが2段構成になっていて、見た目はかなり難しそうなんですけど、1段目で軽くかけて、さらに2段目でもうちょっとかけるみたいな使い方をしていますね。
▲マスタートラックに使用しているUADプラグイン。画面左がEQの「Brainworx bx_digital V3 EQ Collection」、画面右がコンプの「Shadow Hills Mastering Compressor プラグイン」
──JUVENILEさんは、ご自身ではUADプラグインはよく使う方だと思いますか?
JUVENILE:そうですね。先ほどお話したRADIO FISHの曲はもちろん、自分のJUVENILE名義の作品、OOPARTZ(オーパーツ)名義の曲はほぼすべてに使っていると思います。UADプラグイン以外だとWAVESのプラグインを使うこともあるのですが、やはりDSPでかけ録りできる魅力も大きいですし、別売のUADプラグインで欲しいものもまだたくさんあります(笑)。
──では、最後にユニバーサル・オーディオ製のオーディオインターフェイスやプラグインは、どういった方にオススメだと思いますか?
JUVENILE:僕はスタジオの実機を知っているので、それを自宅レベルで使えることの魅力がより理解できると思うんです。でも、実機を知らない人にはその魅力をどう伝えればいいんでしょうね。例えば、金額的な話をすれば、実機でNEVEの「1073」を揃えようとしたら130万円くらいしますけど、それが数万円で手に入るだけでもすごいことですよね。で、もし、UADプラグインのもとになっている実機を本気で自宅に揃えようとした場合、実は実機を揃えるだけでなはくて、部屋のモニタースピーカーを考え直した方がいいし、電源にもこだわった方がいいし、マイクもノイマンにしないとですよね(笑)。そう考えたら、UADが宅録にもたらすメリットは計り知れないと思います。
あと、録りの段階でUnison対応プラグインが使えるのはやっぱり大きいですよね。宅録だと、とりあえず「素の音」で録っておいて、後からいくらでも変更できるという考え方もあるんですけど、それって実は結論を先延ばしにしているだけとも言えて。たしかに戻れないリスクはあるけど、スタジオでの作業と同じように、限られた時間の中で決断を先延ばしにしない方法も大切で。僕も実際、その方がうまくいくことも多いんです。そういった意味では、UADプラグインは本当にシンプルな操作性で実機と近いことができますし、オーディオインターフェイスとしての音質もプロクオリティだと思います。とにかく、UADの製品を使えば、一番効率良くプロスタジオの音に近づけるということは間違いないと思いますね。
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