約2年7ヶ月ぶりのオリジナルアルバム
シシド・カフカ『トリドリ』インタビュー
シシド・カフカ『トリドリ』インタビュー
2016/04/18
「ドラムボーカル」というスタイルで注目を集めるシシド・カフカ。彼女が4月27日にオリジナルアルバム『トリドリ』をリリースする。大島賢治、大西省吾、奥野真哉、織田哲郎、亀田誠治、蔦谷好位置、平出悟、K.MASAKI(moumoon)、松本晃彦といった豪華なプロデューサーを迎えた今作は、本人いわく “ライブ” を念頭に置いたという渾身のセッションアルバムだ。ここでは、新アルバムのレコーディング話を中心に、ミュージシャンとしての彼女の内面に迫ってみた。
取材:黒田隆憲
作詞では「いかに力を抜いて、隙間を作るか?」ということに焦点を当てました。
──約2年7ヶ月ぶりとなるアルバムですが、新アルバム『トリドリ』はどのような方向性にしようと考えたのですか?
シシド:『K⁵(Kの累乗)』からの流れというのもあったのですが、「ライブを中心に活動していきたい」という気持ちが強いので、やはりライブでの再現性が高く、盛り上がる曲というふうにプロデューサーの方々にはリクエストしました。
──そもそも、シシドさんが「ドラムボーカル」という今のスタイルにたどり着いたのはいつ頃なのですか?
シシド:デビュー前は、ずっとドラムだけを演奏していて。プロデューサーの平出悟さんと大島賢治さんに出会ったタイミングで歌を歌い始めたんですね。しばらくはボーカルとドラムを別々のバンドで並行してやっていたんですけど、一時期、ボーカルに専念した時もありました。そして、シシドカフカでデビューが決まったあとに、「もう一つ何か武器はないか?」という話になって。飲みの席で、「お前ドラム叩けるんだから、叩きながら歌えばいいだろ」と(笑)。そのときは、「そんなの無理っすよー」って言ったんですけど、当時は「ドラムボーカル」というのを新しいカタチでやっている人もいなかったし、ちょっと面白いかなと思ったんですよね。それで、3ヶ月後に無理やりライブを決めて、そこに合わせてカタチを作っていったら割としっくりきたんです。そのステージは散々だったんですけど(笑)。そこからブラッシュアップして、ちゃんとしたデビューにこぎ着けたという感じです。
──「しっくりきた」というのは、具体的には?
シシド:大きな武器を手にした、という感じですかね。はじめは「到底ムリだ」と思っていたんです。30分のライブですら息が続かなくなるし、機材のトラブルが起きてしまうし...。ただ、バーンと音を出して歌い出した途端、周りにいた人みんなが「あ、これだね」って思えたというか。その先のイメージがハッキリ見えたんですよね。もちろん、そのあとも色々と模索しながらカタチにしていった感じです。
──数年前、シシドさんが「ドラムボーカル」というスタイルで出てきたときは、お茶の間を含めて大変なインパクトでした。そこに行き着くまでは、大変な思いをしてきたわけですね。
シシド:そうですね。コーラスくらいはやったことがあったのですが、メインボーカルとなるとまず技術的に大変でした。一つ一つ分解して、Aメロを演奏できるようになるまで2、3日かかったり。スティックを降り下ろしたときに「あ」って言って、スティックを上げるときに「い」と言って、完全に上げきったところで「う」って言う、みたいな(笑)。ほんっとうに細かく分解して、最初はゆっくり練習しました。あとは体力ですよね。30分のセットを、息が上がらないように演奏するためには、とにかくスタミナをつけていくしかなかった。今はかなり体力もついたし、機材も工夫していますね。ヘッドセットを使って歌うのですが、重いものだと演奏しづらいので、軽いものを探したりだとか。とはいえ、ドラムボーカル用のヘッドセットはありませんから(笑)、今もエンジニアさんと相談しながら模索中なんです。
──シシドさんは、いわゆる曲作りも行なっているのですか?
シシド:今のところ作品としては発表したことがないです。ただ、いつかそういうチャレンジも出来たらと思って。最近機材も揃えました。アップルMacBook ProにプレソナスStudio One、オーディオインターフェースはフォーカスライトScarlett 2i2を使っています。
──では、今回のレコーディングで使用したドラムは?
シシド:メインで使っているのはサカエのAlmightyです。
──本作では半分以上の歌詞がシシドさんのクレジットになっていますが、いつもどのように書いていますか?
シシド:今回は、「いかに力を抜いて、隙間を作るか?」ということに焦点を当てました。作っていただいた曲を聴いたときに、ふーっと思いついた言葉を掘り下げていくことが多かったですね。
──「隙間を作る」というのは、音数だけでなく言葉の意味でも?
シシド:そうですね。『K⁵(Kの累乗)』を作っていたとき、ご一緒したミュージシャンの方々が、「こっちの方が柔らかいから心にスッと入ってくるよね」とか、「こっちの方が色んな意味に解釈できるから、聴く人の想像を喚起しやすいよね」とか、そういうことを考えながら作詞をしていたんです。歌詞だけでなく、楽器のフレーズやリズムのタイミングなど、色々な部分で「隙間」というのを意識していて、それに今回は感化された部分は大きいです。
──シンプルかつ余白があることで、聴き手のイマジネーションを喚起するということですね。
シシド:そうです。歌詞にもこだわりはだいぶ少なくなってきました(笑)。あと、以前は歌詞の中に英語と日本語が混じっているのが好きじゃなくて、無理やり日本語にして歌ってたこともあったのですが、最近はそういうこだわりもなくすようにしています。こだわりがあるのも素敵なことですが、最近はあえて実験的にそうしているというか。
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