約2年7ヶ月ぶりのオリジナルアルバム
シシド・カフカ『トリドリ』インタビュー
シシド・カフカ『トリドリ』インタビュー
2016/04/18
亀田さんには、とにかくベースがカッコよく目立つ曲をリクエストしました。
──今回のレコーディングで特に苦労したのは?
シシド:「Spider trap」と「春の約束」です。「Spider trap」はラテン歌謡で、ライドのパターンが今までやったことのないタイプだったんです。かなり時間をかけてマスターしました。「春の約束」はキメの応酬だし、区切るところもすごく多くて。『堂本兄弟』でやっていた曲もそうなんですが、割とポップスでは多いんですよ。体の中に入れるのにとても苦労しました。
──プロデューサーは、先の平出さん、大島さんはもちろん、亀田誠治さんや蔦谷好位置さんなど錚々たる人たちが顔を揃えています。「こんな曲にしてほしい」といったリクエストは、あらかじめしたのでしょうか。
シシド:はい。曲作りの段階から、実際のレコーディング、ミキシングの段階まで、割と細かくディスカッションしながら作っていきました。「ライブで映える曲」というのもそうですし、例えば亀田さんには、「ギターロックはたくさんあるのにベースロックが少ないのは何故ですか?」っていう質問から始まって(笑)、とにかくベースがカッコよく目立つ曲をリクエストしました。
──それが「さようなら あたし」ですね。たしかにベースがめちゃくちゃカッコイイ曲です。やはり、ご自身がドラマーということもあって、ベースをよく聴くようになったのでしょうか。
シシド:それはありますね。キックとベースは密接な関係にありますし。もしあと1年ドラムを手に入れるのが遅かったら、たぶんベースをやってたと思うくらい好きなんです。
──以前、レッド・ツェッペリンのジョン・ボーナムを好きなドラマーに挙げていましたが、他に好きなドラマー、影響を受けたドラマー、最近気になっているドラマーはいますか?
シシド:色んなドラマーから「いいとこ取り」みたいに影響を受けてきたんですけど(笑)、やはり(中村)達也さんは別格ですね。プレイスタイルももちろんですが、人柄も含めてすべて好きです。あとは、ご一緒したことのある屋敷豪太さんとか。女性ドラマーだと惑星のドラマーだった平田智美さん、シンディー・ブラックマン、それからデトロイト7の元ドラマーで、今はTOKIEさんとTHE LIPSMAXを組んでいるミヨ(山口美代子)さんも大好きですね。ミヨさんは、ずっと立ったまま叩くというユニークなスタイルで、とても真似は出来ないですけど、見ていて楽しいし勉強になります。以前は他のドラマーを見ていると、悔しさの方が先に立ってしまったのですが、最近はやっと楽しめるようになってきましたね。
──織田哲郎さんにオファーされたのは?
シシド:織田さんといえばJポップのレジェンドじゃないですか。まさかご一緒していただけるとは思わなかったんですけど、この曲はドラマの主題歌ということもあって、いわゆる王道のポップスに挑戦してみたかったんです。織田さんからも快くご快諾をいただいたので、歌詞も共作という形で密接に関わってもらいました。
──長年、プロデューサーを務めている大島さん、平出さんからはどんなことを学んできましたか?
シシド:以前、言われたことで心に留めているのは、「好きなことと、出来ることと、似合うことは違う」っていう言葉です。以前は「自分はこうでなけれないけない」「ロックはこうでなければ...」みたいな意識が強かったんですけど、その言葉を聞いてからは、もっと色々なことを柔軟に考えて、様々なチャレンジができるようになったと思いますね。もちろん、納得いかない部分に関しては、今も遠慮なくディスカッションさせてもらっていますが(笑)。
──「似合うこと」っていうのは、なかなか自分では分からない部分もあるから、客観的に見てくれる人がいるのは心強いですよね。シシドさんは、デビューするまで5年くらいはずっと下積みが続いていたと聞きました。
シシド:そうですね、ずっとひどい生活が続いていて(苦笑)。生活するためにバイトをしながらの音楽活動だったんですけど、自分は何をしたらいいのかが分からなくなってしまうときもあったんですよね。ドラムやボーカルの練習をしているだけではダメで、色んな人と会ったり、色んなものをインプットしなきゃと思うんですけど、いったい何から手をつけていいのかわからなくて。音楽が本当に好きなのかも分からなくなったし、自分が土台にすら立たせてもらえていないということは、自分はその世界に受け入れられていないんだって考えたこともありました。
──音楽を辞めたくなった時期もありましたか?
シシド:「どこかで諦めなきゃいけないのかな」とも思ったんですけど、まだ自分は誰からも「イエス」とも「ノー」とも言われてない。「ノー」も言われていないのに、やめることなんか出来ないじゃないですか(笑)。それに私、自分のことが信じられなくなった時でも、常に周りの人のことは信じられたんです。だったら、自分が信じている人たちに「ノー」を突きつけられるまでは、とりあえず頑張ろう、25歳までは続けてようって。そうしたら不思議なことに、25歳くらいから色んなことが回り始めて。それで今があるんですよね。諦めず...というよりは、諦めきれずに続けていたらこうなったというか(笑)。
──とても勇気付けられます。では最後に、ドラムを叩きながら歌えるようになるための秘訣を教えてください。
シシド:ひたすら練習です!(笑) あと、よく思うのが「ドラムにもボーカルにも意識を置かない」っていうことですかね。なんとなく、ここらへん(自分がいるところより、ちょっと離れた前の方)から音を出しているみたいなイメージ? ドラムとボーカルのどちらかに意識を寄せてしまうと、間違えた途端に両方崩れてしまうんですよ。「あ、今日はいいライブだったな」って思う時は、大抵は自分の意識がちょっと離れたところにあるときなんですよね。みんなに当てはまる感覚かどうかはわからないですけど(笑)。
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