『POPMAN'S WORLD』と対をなすアナザー・ベスト!
スキマスイッチ『POPMAN'S ANOTHER WORLD』
インタビュー
スキマスイッチ『POPMAN'S ANOTHER WORLD』インタビュー
2016/04/13
「夕凪」は、“大人みんなで遊ぼう”という企画だったんです(笑)。
──その後、2005年の「全力少年」が大ヒットとなりましたが、カップリング曲の「さみしくとも明日を待つ」でのエピソードはありますか?
常田:ポップスとは違う曲調なので、“ライブでセットリストに困ったときにやる(笑)” というものだったんです。段々とカオスになって、最後の方はポストロックみたいな空気に変わるというか。で、だったらGRAPEVINEさんに頼んでみたらいいんじゃないかと2人で決めて。恐る恐るオファーを出したら快諾して頂いたんです。
──レコーディングはどのように進められたのですか?
常田:基本的にはGRAPEVINEさんのやり方に乗っからせて頂いて。“一発録りしようぜ!” って言われたら、“一発録りしましょう!” って答えるみたいな(笑)。リハスタもいつもGRAPEVINEさんの使っているところに我々がお邪魔する形でプリプロなども一緒にやらせてもらいました。で、何より思い出深いのは、この曲でエレキギターを解禁したことなんです。
──というと?
常田:スキマスイッチとして、それまでの曲にはエレキギターが入っていないんです。本当は解禁したいんですけど、あえて入れてなかったんですね。で、GRAPEVINEさんとご一緒することになって、“では、アコギでお願いします” って言うのもなんか違うなと思って。じゃ、ここでエレキを解禁しようと。これもある意味では実験だったんです。
──大橋さんは、GRAPEVINEさんとのやり取りで何か印象的な出来事というと?
大橋:この「さみしくとも明日を待つ」という曲は、もともと、いわゆるサビというものが1回しかなくて。そうしたら、田中さんが“この曲はサビがもう一回あった方がいいよ”って言ってくれて。実はこの曲はデビュー前からあって、ライブなどでも歌ってきた曲なんですよ。でも、田中さんの一言で、サビの前にメロディーを足して、新たな歌詞を付け加える形でサビも追加して。それはすごい印象的だったし、自分の発想にはなかったことなので“あぁ〜、なるほどな”って思えましたね。田中さんが言ってくれなければ、こうなってなかったと思いますし。
──「全力少年」には、もう1曲「花曇りの午後」というカップリング曲もありますよね?
大橋:2枚目のシングル「奏(かなで)」からなんですけど、カップリングには必ずインストを入れようと決めたんです。インストだけでもスキマスイッチらしい世界観は出せるんじゃないかという思いもあって。歌詞にもスキマスイッチ・カラーがあるように、メロディーでもスキマスイッチ・カラーを表現できたらなと思って。
──インスト曲はどのように作られるのですか?
大橋:2人で決めていたのは “1日で全部作る” ということ。曲もスタジオに入ってから作って、そのままレコーディングして。なので、こんな曲があるからカップリングはこうしたいねって感じではなくて、“インストを入れたいね。じゃ、どんな曲を入れようか” って感じなんです。
──当時、インストの曲ではどんな楽器を使っていたのですか?
大橋:基本的にはアコギとピアノですね。あとは、僕もピアノを弾いていたので、2台のピアノを使ったり。たまに、僕だけがピアノを弾いて、普段は歌わないシンタくんがコーラスワークを考えたり。そんな実験室でのことがもとになって、徐々にループを入れたり、打ち込みでトラックっぽいものにしたり、エレキを入れたり。いずれにしても、すべてプログラミングも含めて2人でやってました。
──2009年や2010年以降はスキマスイッチ市場最大規模の全国ツアーが始まるわけですが、この頃のカップリング曲で印象的だったものと言えば?
大橋:2010年の「夕凪」ですかね。この曲は最初からビートルズがテーマにあって。僕自身もビートルズが大好きなんですね。中学生の頃はファンクラブにも入ってましたし。シンタくんに曲のアレンジを頼んだのをきっかけにスキマスイッチが生まれたのもビートルズがあってのことだし。僕みたいに “ビートルズが好きでビートルズみたいな曲をやりたい” と思っているミュージシャンって山ほどいると思うんですよ。で、そんなビートルズが大好きなエンジニアやミュージシャンを集めて作ったのが、この「夕凪」なんです。もっと言えば“大人みんなで遊ぼう”という企画だったんです(笑)。なので、アナログテープを回したり、この曲にはビートルズのフレーズというか、雰囲気みたいなものがたくさん入っているんです。みんなでガチのオマージュをしたというか(笑)。
──常田さんにとって、ビートルズらしさってどこに感じますか?
常田:本当に色々あると思うんですけど、まずは“音質”というのは強くありますよね。
──それはアナログテープで録っている部分も大きいのでしょうね?
常田:そうですね。デジタルでもできると思うんですけど、やっぱりハイファイにキレイに録ったら、ビートルズっぽくはないですよね。ただし、アナログテープだけではなく、古めのコンプだったりアウトボードも重要だと思いますし。8ビートの感じやドラムのちょっと跳ねた感じ、ピアノをなるべく3和音でやってるとか。寄せ集めるとそういう感じになるんだなぁと思いましたね。
大橋:あと、当時は8chだったので、いわゆるピンポンもあまりできないし。演奏もチャンネルの数から決めて行ったようなところもありました。
──当時のビートルズの演奏能力の高さの証明でもありますよね。
常田:そうですよね。あまり語られないですけど、ちゃんと考えるとスゴいなと思いますよ。
──ミックスのアイディアも本当に面白いですよね。
大橋:学生の頃、僕が友達と片耳ずつウォークマンのイヤホンを付けて聴いたときに、ジョンやポールの声が突然消えるんですよ。“あれ、なんでかなぁ。イヤホンの接触が悪いのかなぁ〜” とか言ってましたもん(笑)。パンを振ると全然違う曲に聴こえるんだとか、そういった発見が面白くて。「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」も右と左で全然違いますしね。この発見からくる好奇心が、僕らも “アナログで録ってみたいよね” っていうことにつながっていったと思います。
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