1977年の『ルパン三世』のテーマ曲が生まれた秘話も公開!
大野雄二『ルパン三世 PART IV オリジナル・サウンドトラック〜MORE ITALIANO』インタビュー
大野雄二『ルパン三世 PART IV オリジナル・サウンドトラック〜MORE ITALIANO』インタビュー
2016/05/13
テレビアニメ「ルパン三世」を筆頭に、数多くの映画やCM音楽を手掛けるジャズピアニスト・作曲家・編曲家の大野雄二さん。そんな日本を代表するレジェンドが3月に『ルパン三世 PART IV オリジナル・サウンドトラック~MORE ITALIANO』をリリースし、6月8日にはYuji Ohno & Lupintic Six名義での1stアルバム『YEAH!! YEAH!!』を発売予定だ。ここでは、約40年前に誕生した「ルパン三世」の当時の裏話などを交えながら、大野さん流の作曲法、歌詞に関する考え方、最新アルバムの聴き所などを聞いてみた。音楽を作るすべてのクリエイター必見のインタビューだ。
文:布施雄一郎
メインテーマは、シンプルで8小節を聴いただけで分かる強さが必要なんだ。
──3月に『ルパン三世 PART IV オリジナル・サウンドトラック~MORE ITALIANO』がリリースされましたが、最初にアニメ「ルパン三世」の劇伴を手がけられた当時、この楽曲が約40年にも渡ってヒットし続ける名曲となる手応えはお持ちだったのでしょうか?
大野:いやいや。そもそも、音楽がどうこう以前に、「ルパン三世」というアニメ自体がどれくらい続くのか、まだまったく分からない状況だった。ただ、それまでに僕が作った劇伴作品の中で、「ルパン三世」だけは特殊だという感覚は当時から持っていたんだ。ジャズ的な要素を入れたり、フュージョン、ソウル・ミュージックといったテイストを入れても、この絵とこのストーリーならば合いそうだと。だから、僕に向いているというか、自分がやりたいことができそうなアニメだとは思っていたよ。
──どういった部分に、それまでのアニメ番組との違いを感じていたのでしょうか?
大野:まず、主人公自体が、日本人なのかどうなのか分からないようなキャラクターで、世界を股にかけるというストーリーだよね。これがもし、舞台が日本の劇伴だと、ジャズを使ったとしても、やっぱりどこかで“和”のテイストを入れないと違和感が出てくることがある。極端な例を挙げると、「サザエさん」にジャズの音を入れても、それは違和感が出てしまうだけで、「サザエさん」には、やっぱり、あの「サザエさん」の劇伴が一番いいんだよ。
──なるほど。よく分かります。
大野:それと当時、1977年のことだけど、大人が勝手に、“アニメは子どものものだ”と決めつけて作っていたんだよね。“アニメ=子ども”という図式で、アニメの劇伴は子どもが分かる音にしなければいけなかった。だから、ちょっと勇ましい感じの歌で必ず始まって、終わりも歌だった。でも、「ルパン三世」の制作チームは、そこはあまり気にせずにやろうという考え方だったんだ。「ルパン三世」というアニメ自体が、小学校低学年だと、ちょっと分かりにくいというか、少し“ませた”作品だったから、あまり子どもは意識せずに、むしろ「背伸びして、こっちにおいでよ」という方向性で作っていた。こちら側から子どもの側を向こうとする、例えば戦隊モノなんかとは、ちょっと感覚が違っていたんだ。そういったセンスを、番組のプロデューサーやディレクターが分かってくれていたんだよね。だからこそ、あの年代のアニメとしては、モダンなセンスで、タイトルバックもカッコいいし、ひとつひとつのファッション性にもこだわっていた。劇伴だって、最初はすべてインスト曲だからね。当時、他にこういったアニメはなかったと思う。
──そうした中で誕生した、あまりにも有名な「ルパン三世のテーマ」は、どのようにして作られたのですか?
大野:「自分がやりたいように」と言ってもね、「ルパン三世のテーマ」に関しては、やっぱりテーマ曲だから、分かりやすくて、骨太の、裸で成り立つメロディじゃないとダメだということは強く意識したね。そして、アレンジと一緒になった時に、当時一番カッコいいサウンドにしようと。そういう意味では、作り方としてはオーソドックスに、口ずさめるようなシンプルで強いメロディを作って、それをカッコよくアレンジしようという考え方だった。
──大野さんは、曲を作る際に、メロディとアレンジは、まったく別個に考えているのでしょうか?
大野:僕は、完全に分けてるね。そうやって作ると、例えば30分番組の中で、テーマをいろんなバリエーションで登場させられて、視聴者に印象づけられるんだ。僕ら世代の作曲家が影響を受けた、当時のアメリカ、イタリア、ヨーロッパの映画が、まさにそう。メインテーマを、編成を厚くしたり、薄くして寂しくしたりと、アレンジのテクニックでいろんな風に聴かせることで、映画館から出てきた時に、自然とメインテーマが頭に残る。それが最も重要なことだと考えていたね。でも最近の劇伴は、そういった作り方が少なくなって、場面に合った曲を数多く作っていくことが多い。もちろん、テーマ以外の違う曲も必要なんだけど、本来はテーマがいろんな形で出てくる方が、強く印象に残せるんだよ。アレンジというのは、テンポやリズム、編成次第で、いろいろとやりようがある。だからこそ、メインテーマは、シンプルで8小節を聴いただけで分かる強さが必要なんだ。サビがなくても掴めるキャッチーさがあればOK。
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