1977年の『ルパン三世』のテーマ曲が生まれた秘話も公開!

大野雄二『ルパン三世 PART IV オリジナル・サウンドトラック〜MORE ITALIANO』インタビュー

大野雄二『ルパン三世 PART IV オリジナル・サウンドトラック〜MORE ITALIANO』インタビュー

2016/05/13

曲を書いて人にやらせるだけじゃ、つまんないと思ってる。


──現状は、曲先行で、後から詞を付けるスタイルが多いですね。

大野:だから今の作詞家は、“詞先”だと書けないという人が、ほとんど。「先に曲をくれ」って言われる。僕は昔、山川啓介さんという作詞家とたくさんの仕事をしたけど、その時は、山川さんの“詞先”だった。もちろん、詞が先にあると、フレーズ的に“字余り”となってしまうこともあるから、そういう時は山川さんと、「同じ意味合いのまま、言葉を7つから5つに減らしてくれると助かるんだけど」といったやり取りをするんだ。だって、そのメロディが出てきたのは、詞があったからであって、詞ありきのメロディだからね。言ってみれば、言葉のイントネーションだって、そう。詞が先にあれば、イントネーションまでもが、メロディに集約される。だからこそ、心に響く。でも、曲が先にあって、そこにただ言葉を当てはめただけの歌は、歌詞カードを読まないと、何を歌っているのかが分からない。最近は、そういう歌が本当に多い。だから、“曲が先”、そして“サビが先”という作り方は、本来は逆なんだ。僕が一番好きな歌は、永六輔さんと、中村八大さんの「上を向いて歩こう」。音を聴いただけでも、言葉がちゃんと分かって、情景が目に浮かぶ。作曲した中村八大さんもすごいけど、詞を書いた永六輔さんもすごいと思うね。

──では最後に、ジャズ・ピアニストとしてのお話も聞かせてください。6月8日には、新しく結成されたバンド“Yuji Ohno & Lupintic Six”の1stアルバム『YEAH!! YEAH!!』がリリースされますね。

大野:昨年12月で、10年続けた“Lupintic Five”を解散して、メンバーを一新して、新しいバンドにしたんだ。ドラムとベースが代わったので、それまでとどうこうではなく、やっぱり劇的にサウンドが変わったね。これは特筆すべきことで、ドラムは、1978年に《ルパン三世》の劇伴を出した時の“YOU & THE EXPLOSION BAND”オリジナル・メンバーだった市原(康)くんで、ベースは、1979年に2枚目を出した際に弾いてくれたミッチー(長岡)。そこにもう1人、宮川(純)くんという若いオルガン・プレイヤーが加わったことで、ちょっとポップな感じになったと思う。もちろん、松島(啓之/Tp)くんや鈴木(央紹/Sax)くんなど、大半のメンバーがジャズだし、僕のアレンジの根幹もそうだから、ジャズのテイストは多いんだけど、市原くんはジャズ系のポップ・ドラマーだし、ミッチーも、ジャズも弾くけど、エレクトリック・ベース専門っていうくらいだから、いわゆる4ビート・ジャズの人ではない。だから、“Lupintic Five”とは、随分と感じが変わったね。今回は最初のアルバムだから、そういった部分を表に出しているよ。

──そのセッションをリードするのが、大野さんのピアノですが、これほどまでに精力的なご活動を続けられる大野さんのエネルギー源は、一体何なのでしょうか?

大野:曲を書いて人にやらせるだけじゃ、つまんないと思ってる。やっぱり、全部自分でやりたいんだよね(笑)。曲を書いたら、プロデュースをして、自分が弾く。だから今、曲を書いてほったらかしの仕事は、ほとんどやってない。それに、年齢が(自分の)半分くらいのプレイヤーと一緒にやるのが、とても面白くて。「何でこんな事ができないの?」っていうこともあるけど、逆に、僕と同世代にはないパワーがあったり。ギターの和泉(聡志)くんなんて、バンドに入った時は、譜面の“譜”の字も読めなかったんだから。感覚だけでしかない。でもそこが、新鮮だったしね。だから、「譜面を読めるようになれ」って言うのではなく、「好きなようやってくれ」って、いいところを伸ばしてあげた方がいい。違っていれば「違う!」って言うから、若い連中は、伸び伸びとやってくれた方がいいね。

──そういった“Yuji Ohno & Lupintic Six”の1stアルバムと、最新の「ルパン三世」は、まさに大野さんの世界を満喫できる2枚と言えますね。

大野:『ルパン三世 PART IV オリジナル・サウンドトラック~MORE ITALIANO』は、“Lupintic Six”の新しいアルバムとはまったく違う、あくまで劇伴アルバムだから、1曲を短くしている。30分番組だと使う音楽は、長くても1分ほどだからね。なおかつ、曲の途中でも切れるように作っているんだ。しかも、“Lupintic Six”のようなバンドだと、やっぱり聴かせどころはアドリブ。でも劇伴では、僕のメロディラインだったり、アレンジを聴いてもらいたいのさ。しかも、チェンバロだとかアコーディオンを使ったりして、僕なりのイタリア感を出したつもり。あくまでも、ルパンの風景に当てはめて作ってるから、そこを楽しんで欲しいね。対して、“Lupintic Six”の『YEAH!! YEAH!!』は、さっきも言ったように、アドリブもあったりと、1曲をしっかりと楽しめる音楽。まず、『ルパン三世 PART IV オリジナル・サウンドトラック~MORE ITALIANO』を聴いて、6月に『YEAH!! YEAH!!』も聴いてもらえたら、似ているところはあるけど、何か違うなという面白さを感じてもらえると思うよ。
 

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『ルパン三世 PART IV オリジナル・サウンドトラック~MORE ITALIANO』
You & Explosion Band


¥3,500(本体)+税
VPCG-83509
Blu-spec CD2 2枚組
[Yuji Ohno & Lupintic Five
10周年記念キャンペーン対象商品]


[Disc1]
1.LUPIN'S PROVERB
2.SUB TITLE 2015
3.THEME FROM LUPIN III 2015〜FUNKY & WILD
4.JET COASTER LOVE〜ORGAN vs. WHISTLE ver.
5.CHASE!! CHASE!! CHASE!!
6.DEAR BELLADONNA
7.ZENIGATA MARCH 2015〜VIVA TO-CHIAN
8.GRAZIE!!〜GAMAN SI CHATTA ver.
9.FISH AND HARD FRIED CHIPS
10.EYE CATCH 2015 A3 何すんのよ 詩織
11.THEME FROM LUPIN III 2015(ALONE)
12.A BATTLE ACTION
13.GRAZIE!!
14.CHASING THE HUSTLER 2015
15.THE BLACK DREAM FOR ITALY part II
16.LUPIN'S PAL part II
17.ZENIGATA MARCH 2015〜MISERY
18.EYE CATCH 2015 A3 いやーん 久美
19.JET COASTER LOVE〜BURI-BURI ITALIANO
20.A CIRCUS (哀しいピエロ)
21.THEME FROM LUPIN III 2015〜TEQUILA
22.URAGA'S DILEMMA
23.DANGEROUS TEMPTATION 2015
24.CHAN-CHIKI LUPIN〜UTAGE ver.
25.BLACK THUNDER

[Disc2]
1.THEME FROM LUPIN III 2015(ンパッパラッパー)
2.FISH AND HARD FRIED CHIPS〜RATTLESNAKE
3.LOVE IN VENICE
4.MYSTERIOUS JOURNEY 2015
5.BOON-BOON-BOON
6.ZANTETSUKEN 2015〜GOEMON LOST HEART
7.MELANCHOLY BABY〜SCAT ON THE BEACH
8.ESCAPE!!
9.A TIPSY LURCH WITH SPUMANTE
10.EYE CATCH 2015 B ルパンザサード 詩織
11.ZENIGATA MARCH 2015 〜IL DAMERINO
12.THEME FROM LUPIN III 2015〜EROTICA
13.ICE BLUE CRASH
14.LOVE SQUALL 2015〜JINGLE ほれちゃイヤ-ン
15.CHA-CHA-CHA DI AMORE〜TRAMONTO
16.AN INCOGNITO 2015
17.THEME FROM LUPIN III 2015〜WHISTLE & CEMBALO ver.
18.GOT TEN DA!!
19.SONG OF ZOMBIE
20.MELANCHOLY BABY〜HARMONICA & FLUTE ver.
21.SNIPE
22.TREASURES OF TIME 2015
23.GET UP A GRAPPA!
24.ARRIVEDERCI…ITALIA…

『YEAH!! YEAH!!』
Yuji Ohno & Lupintic Six
2016年6月8日
発売


¥3,000(本体)+税
VPCG-83511
Blu-spec CD2
 


[収録曲]
1. LUPIN AU GO GO 2016
2. LOVE SQUALL 2016
3. YEAH!! YEAH!!
4. CHASING THE HUSTLER 2016
5. あこがれ feat. 佐々木詩織
6. ZENIGATA MARCH 2016
7. TORNADO 2016
8. DEAR BELLADONNA 2016
9. SPIRAL FLIGHT 2016
10. 愛のつづき feat. TIGER
11. THEME FROM LUPIN III 2016

大野雄二(YUJI OHNO)
静岡県熱海市出身。
小学校でピアノを始め、高校時代にジャズを独学で学ぶ。慶應大学在学中にライト・ミュージック・ソサエティに在籍。藤家虹二クインテットでJAZZピアニストとして活動を始める。その後、白木秀雄クインテットを経て、自らのトリオを結成。解散後は、作曲家として膨大な数のCM音楽制作の他、「犬神家の一族」「人間の証明」などの映画やテレビの音楽も手がけ、数多くの名曲を生み出している。リリシズムにあふれた、スケールの大きな独特のサウンドは、日本のフュージョン全盛の先駆けとなった。その代表作「ルパン三世」「大追跡」のサウンド・トラックは、70年代後半の大きな話題をさらった。近年は作曲活動としては「ルパン三世」とNHKテレビ「小さな旅」に絞り、再びプレイヤーとして活動を開始。大野雄二トリオでの活動に加え、2006年にYuji Ohno & Lupintic Fiveを結成し精力的な作品リリースを続け都内ジャズクラブから全国ホール公演、ライブハウス、ロックフェスまで積極的にライブを行う。2016年にはメンバー編成を新たに、Yuji Ohno & Lupintic Sixを結成、その勢いは止まらない。

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