サウンド・デザイナー&ヤマハミュージックメディア共同企画
「たくろくガールズ」×「作曲少女」作者(ノッツ、仰木日向、まつだひかり)座談会
「たくろくガールズ」×「作曲少女」作者(ノッツ、仰木日向、まつだひかり)座談会
2016/08/08
マンガと音楽の作り方には似たところがある
──DAWソフトの話題が出たので、皆さんがどんなソフトを使って曲を作っているのかを聞いていきたいと思います。
まつだ:私のDAWソフトはスタインバーグCUBASEですね。主人が宅録をやっていて、見よう見まねで使い始めました。最初はやり方もよくわからずに、「このボタンって何だろう?」とか思いながら(笑)。
ノッツ:僕はもともとギターとか歌を録りたくてアビッドPro Toolsを使っていましたけど、今はプリソーナスStudio Oneがメインですね。
まつだ:私の場合、田舎の実家に蔵があったので、一番最初はそこで自分のバンドの練習を録音していましたね。
ノッツ:それって外国のバンドが家のガレージで練習してるみたいですね! CUBASEユーザーなのに「ガレージバンド」とは(一同笑)!
仰木:そうか、お2人ともバンドマンなんですよね。
──仰木さんはバンド経験はあるのですか?
仰木:いいえ、僕はもともと吹奏楽をやっていた人間なんです。バンド経験はまったくなくて、作曲家になることが目標でした。それで、音楽制作会社で仕事をするためにDAWソフトの操作を覚える必要があったんです。入社当時、制作アシスタントをしながら会社に泊まり込んで、必死になってDAWソフトの操作と作曲のノウハウを覚えましたね。
──「作曲少女」と「たくろくガールズ」は、DTMを始めた人がつまずくポイントに目を向けているという点で共通しています。
仰木:僕もしょっちゅうつまずいていましたからね。「たくろくガールズ」のネタで言うと、いいフレーズを思いついたと思って曲を作り始めたのに、作っている途中で「あれ? この曲ダメじゃね?」って思ったりとか。「頭の中で鳴っている時は名曲だったのに……」とか。そういう時、他の音を足していくことで意外と形になったりするんですけど、その段階に行くまでがすごく大変なんですよね。
まつだ:ありますよね。ダメだと思っていた曲に、間奏を付けることで意外といい感じに聴こえるようになったりとか。
仰木:あと、「お風呂の中でいいメロディが浮かぶ」っていうネタも「たくろくガールズ」にありますけど、この現象って何なんでしょうね?
ノッツ:血行がよくなるからとか?
まつだ:お風呂のリバーブ具合がいい感じだからとか(笑)。
仰木:なるほど(笑)。入浴中って他にやることがないからっていうのもある気がしますね。音楽以外の創作でも、お風呂でアイディアが浮かぶことってありませんか?
ノッツ:ありますね。お風呂でぼんやりしている時にアイディアが浮かぶのって、睡眠中に夢を見る仕組みと似ているような気がするんです。夢っていうのは「頭の中にある記憶が組み合わさって投影されているもの」という説があるんですけど、それと同じようにして、ぼんやりした頭の中で、無意識にアイディアの断片同士が組み合わさるのかなと。
──マンガや小説、そして音楽では、アイディアの出し方は違いますか?
仰木:僕の場合、音楽と小説は作り方が似ていますね。曲を作る時は詞先(歌詞を先に作る作曲法)なので。あと、歌詞がないBGM的なものだったとしても、まずはそのBGMが流れる物語の展開を考えて、そのビジョンに当てはまる音楽を考えていくというやり方をしています。
ノッツ:マンガと音楽の作り方にも似たところがありますね。マンガの場合、物語をまず文章で書いてからそれをマンガに置き換えていくんですけど、音楽の場合も先に歌詞を書いて、それに曲を付けていくことが多いので。ストーリーを言葉で書いて、それに絵を付けるか音楽を付けるかの違いというか。あと、マンガも音楽も一定の領域に行くとパズルじみてくるところがあって。マンガだと、吹き出しの位置を逆にしても話が通るとか、音楽だと構成を入れ替えても曲として成立するとか。そういう共通点はありますよね。
まつだ:マンガも音楽も、あまりゴチャゴチャさせずに、思い切って「いらない部分を省くのが重要」っていうのは共通していると思います。情報量が少ない方が、印象付けたいものを強調できると思いますね。
ノッツ:わかります。でも、「手を抜いている」と思われたくないから、つい色々と描き込んだりして。
仰木:たしかに! 曲のアレンジも文章もイラストも、作家ってつい「言い過ぎてしまう」っていうのがあるんですよね。その結果、情報過多になってしまう。「作曲少女」も書き終えた段階から最終的に本になるまでに100ページ以上削っています。書いている時は「このページはカットできないよな」と思っているんですけど、後になって思えば、やっぱりカットした部分は不要だったんだと思いますね。
まつだ:削る作業って、怖いですからね(笑)。
ノッツ:でも、マンガでも音楽でも、「削る作業」っていうのは絶対に必要ですよね。どの作品にも適切な分量っていうのがあるはずですから。
まつだ:あと、めっちゃがんばって描いたイラストよりも、ちょっとしたラクガキの方が人気だったりとか(笑)。
仰木:作者的に「ここを見てほしい」という部分がウケることって、少ないんですよね。
ノッツ:結局のところ、作品が人に届くか届かないかって、作り手の意思ではなくて、受け手次第なんですよね。もちろん、作っている時はそれが面白いと思って描くんですけど、それが思った通りに読者に伝わるかどうかは、実際わからないですからね。
仰木:それに関して、僕は「作り手の思った通りに伝わらなくてもいい」っていう風に考えています。例えばジョン・レノンの「イマジン」に救われた人がいたとして、「イマジン」がその人を救おうとして作られているわけではないじゃないですか。だから、読者であったりリスナーであったりが、各々の日常の出来事と作品を結び付けて「勝手に感動したり共感したりする」っていうことでいいんだと思います。
ノッツ:例えばラブソングとかも、ほとんどが作った人のパーソナルなものですよね。
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