予定外のサプライズも飛び出した極上の2時間

エクストリーム、ジャパン・ツアー初日(東京:昭和女子大学人見記念講堂)のライヴレポート!

エクストリーム、ジャパン・ツアー初日(東京:昭和女子大学人見記念講堂)のライヴレポート!

2016/10/02


エクストリーム
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9月29日、東京は昭和女子大学・人見記念講堂にて、エクストリームの約2年ぶりとなるジャパン・ツアーが開幕を迎えた。彼らの来日公演は1989年の初来日時から数えて今回で実に9回目。1996年当時、一度は解散にも至っている彼らだが、復活後もコンスタントに日本上陸の機会を重ねてきた。

極上の躍動感と、ドラマティックな感動。その双方が同居するエンターテイニングなライヴ・パフォーマンスをもって熱烈な支持を集めてきたこのバンドは、これまでにも名盤『ポルノグラフィティ』(1990年)の完全再現など、趣向を凝らした演奏内容でこの国のオーディエンスを魅了し続けてきた。今回、彼らが日本のファンに向けてあらかじめ確約していたのは、1992年発表の野心作『スリー・サイズ・トゥ・エヴリ・ストーリー』(三部構成による大作)の最終章にあたる“エヴリシング・アンダー・ザ・サン”(“ライズン・シャイン”、“アム・アイ・エヴァー・ゴナ・チェンジ”、“フー・ケアーズ?”の3曲からなる組曲)の完全披露。バンド史上初となるこの試みを世界で初めて実践する場として、彼ら自身が選んだのがここ日本というわけなのである。

そしてこの夜の東京公演は、納得以上の演奏内容のみならずサプライズ要素までもが盛り込まれた約2時間に及ぶきわめて密度濃いものとなり、会場を埋め尽くしたオーディエンスを満足させ、笑顔で帰路につかせることになった。具体的な演奏プログラムについて詳しく述べることは、これから各地での公演に新鮮な気分で触れることを望む人たちのためにも避けておきたいところなので、この先の記述に目を通すか否かについては慎重にご判断いただきたいところだが、今後公演を重ねていくなかで演目に変化が生じる可能性も充分にあるはずだし、事前にすべての演奏内容を把握できていたとしても興奮せずにいられないのがエクストリームのライヴである、ということは強調しておきたい。

午後7時15分、定刻を15分ほど過ぎて場内が暗転すると、まず聴こえてきたのはケヴィン・フィグェリドの繰り出す軽快なビート。そこにパット・バジャーのベースがうねりを乗せ、ヌーノ・ベッテンコートがリフを刻み始める。弾丸のようにステージ中央に飛び出してきたゲイリー・シェローンが歌い始めたのは“ゲット・ザ・ファンク・アウト”だ。『ポルノグラフィティ』から選曲されたこのファンキー・チューンでは「ここで起きていることが気に入らないやつは出て行ってくれ!」という歌詞が繰り返されるが、もちろん場内にそんな人間など皆無。ステージを目いっぱい使いながらのゲイリーのパフォーマンス、ライヴならではのグルーヴを伴った完璧な演奏に、オーディエンスはすぐさま束ねられた。そしてその熱は、2時間後に彼らがステージを立ち去るまで一瞬たりとも下降することがなかった。たとえば全米No.1を獲得した彼らの代表曲のひとつ、“モア・ザン・ワーズ”はアコースティックな楽曲ではある。が、それでもこの曲に声を重ねる客席はクール・ダウンするわけではなく、むしろさらに熱を高めていくのだ。

演奏プログラムの軸となっていたのは、やはり前述の『ポルノグラフィティ』と『スリー・サイズ・トゥ・エヴリ・ストーリー』からの楽曲群ということになるが、1988年発表のデビュー・アルバム『エクストリーム』や、復活後唯一のオリジナル・アルバムである『サウダージ・デ・ロック』(2007年)からのナンバーも選曲され、不要なMCを挟む余地のないほどスキのない流れを伴った、実に起伏の大きなショウとなった。

経過とともに興奮が上塗りされていくかのような時間の流れのなかで、この夜のショウがクライマックスを迎えたのは、やはり“エヴリシング・アンダー・ザ・サン”が完全再現された時のことだった。目の前で構築された、約20分にも及ぶ音楽のドラマ。その素晴らしさについてはここで僕自身があれこれと感想を述べるよりも、まず実体験していただくべきだろう。また、その局面においては、2012年の来日公演時にも彼らを陰で支えていた西脇辰弥のサポートぶりも素晴らしかったことを付け加えておきたい。その援護射撃がエクストリームの完璧主義を無欠のものにしていた、と言ってもいいはずだ。

しかもこの夜にもたらされた驚きは、そればかりではなかった。アンコールの最後の最後、「これは初めてやることなんだ」というヌーノの言葉とともに始まったのは、なんと彼らの敬愛するクイーンの“伝説のチャンピオン”。実はこの場面に至るまでに、やはりクイーンの“愛という名の欲望”がワン・コーラスだけ披露される場面、さらにはゲイリーが一瞬だけ“愛にすべてを”の冒頭箇所を口ずさんだ瞬間もあった。ちょうど先週、そのクイーンが日本武道館での三夜公演を大盛況のうちに終了させたばかりだが、エクストリームはかつて、あのブライアン・メイをして「クイーンが何たるかを誰よりも理解しているバンド」とまで言わしめたバンドでもある。もちろんこれは彼らのショウにおいてはあくまで“予定外のプラス・アルファ”の要素であり、実際、“伝説のチャンピオン”のタイトルはセットリストにも記されていなかった。が、このサプライズによってこの夜の観衆は“ボーナスつきの満足”を得ることになったのではないだろうか。

そしてこのツアーは、この先も仙台、大阪、名古屋と続き、10月5日、ふたたび東京で最終場面を迎えることになる。まさに満足が確約されているうえに、その日にしか味わえない興奮を堪能させてくれるエクストリームのライヴ。彼らの音楽を愛し続けてきたファンにも、少しばかり遠ざかってきた人たちにも、そして彼らのライヴに触れたことのない人たちにも、絶対にこの機会を逸して欲しくないところである。

レポート:増田勇一
写真:土居政則

 

EXTREME JAPAN TOUR 2016

〈仙台〉 9/30(金) チームスマイル仙台PIT
〈大阪〉 10/3(月) あましんアルカイックホール
〈名古屋〉 10/4(火) ZEPP NAGOYA
〈東京〉 10/5(水) 東京ドームシティホール

 

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