前作で底上げされたバンド力を色濃く感じさせられる珠玉作
Yeti『ハウル』インタビュー
Yeti『ハウル』インタビュー

2017/05/31
昨年9月にリリースした1stフルアルバム『アンチテーゼ』から約8ヶ月。Yetiの次なる一手となるミニアルバム『ハウル』の出来栄えに驚いた。これまでの繊細なYetiらしさを内包しつつ、力強く刺激的に進化を遂げた。一方で全てを包み込むかの如く深愛をも纏う。前作で底上げされたバンド力を色濃く感じさせられる珠玉作『ハウル』について、メンバーにたっぷりと語ってもらった。
取材・文:大窪由香
──4月に行なったリクエストワンマンツアーは、バンドとして初の試みでしたが、やってみていかがでしたか?
涼木:今年の年末で結成5周年なので、いいタイミングだと思ってやってみたんです。年単位でやってない楽曲とかもそろそろ生まれてきてて。
多村:新しいアルバムを出して、そのツアーをやると、昔の曲をどうしても入れ込めなくなったりするところもあるから。
涼木:いま歌っても、どの曲も筋の通る楽曲である自信はあったので、今やることで逆に初期の頃の楽曲を、また新曲のような気分で新しく演奏し直せるというか。ちょうど節目という時に、今一度改めて僕らの楽曲での人気の曲ってどういうものが挙がってくるんだろうかと。そのライヴを実際やってみると、想像しないような盛り上がりがありました。ツアー中も有意義だったし、その後のイベントにも活きて、バンドとしてはすごく収穫のある企画でしたね。
沢村:新しい発見みたいなものもあったよね。ライヴをしてて。
──では、5月31日リリースのミニアルバム『ハウル』のお話を伺っていきたいと思います。今作を聴いて、昨年初のフルアルバム『アンチテーゼ』を作ってバンドの核みたいなものを提示したことで、よりYetiとしての楽曲の幅が広がったのかなと感じました。特に収録曲の「阿吽」や「無重力」あたりから。
涼木:はい。去年のフルアルバムがものすごく核になっていて、楽曲を作るスタイルだったり美学だったり、そういうところもすごく学んだものが大きかったんです。実際にツアーを回っても、やっと始まった感じがあって、新しいバンドの核となる武器を再認識した感じがありました。なので、今回のミニアルバムはあまり産みの苦しみみたいなものはなく、『アンチテーゼ』で作った土壌に好きな種を植えていった、という感覚に近いですね。方向性やサウンド面でのネガティブな苦悩っていうのは一切なかったんですね。そういう心の余裕が、精神的に少し前のめりになっているような状態が、ちょっとハードな曲だったり、ちょっと偏ったトゲのあるような曲も今回、生み出したようにも思います。
沢村:すごくフラットな気持ちでしたね。『アンチテーゼ』で今までを出し尽くした感があったので、次はまたイチからっていう感覚で楽曲と向き合って出てきたものを具現化した、という形です。『アンチテーゼ』を出してから一年も経ってないんですが、いい意味で前作とは違った世界観の作品ができたなあと思いますね。
Bikkey:俺はすごく聡くんを頼りにしてるんで、聡くんから出てくるものに色をつけるっていうことは変わらず。それプラス、今回は自分の中でも毎回テーマがあって、そのテーマを作り手が俺に期待を寄せてちゃんと作ってくれるんで、どんどんステップアップしていけました。
多村:僕の中にあるコンセプトとして、無理せずレコーディングをするっていうテーマがあって。その中でどう自分のチャレンジやスキルアップをしていくかということでやっているんですけど、今回『吠える』っていう曲で結構細かいことを入れてみたら、すごく繊細なこともできるんだなっていうことに気付いて。そんな発見もありつつ、今回からレコーディング方法をちょっと変えたんです。今回試しにみんなで合宿に行ったんですね。レコーディングでいろいろと入れ替わり立ち替わりで入れ込んでいったんですけど、そのスタイルもよかったのかなと。
──合宿したんですか!
多村:一週間ぐらい泊まり込みで。
涼木:苦痛でしたね。
多村:最初はどうなることかと思ったけど、初日の夜には俺はもう大丈夫だなと思ったよ(笑)。
涼木:レコーディングのことを事務所と打ち合わせして、日程とか場所とかエンジニアさんを誰にするかとか、いろんな話をしている中で合宿っていうワードが出て来た段階で、もう僕は嫌になって即NGを出したんです。
Bikkey:速攻だったよね。
多村:俺はよかったと思うけどなあ。
涼木:制作終わってみたら効率はいいなとは思ったんですが、やはり一人になりたいような瞬間もあるんですよね。
── 一人にはなれない環境だったんですか?
多村:いや、部屋はありましたよ(笑)。
涼木:みんな同じ部屋で寝袋で寝るんじゃないかとか、林間学校みたいなのを想像してたんですよ。だから絶対に殴り合いのけんかになるって(笑)。行ってみたらちゃんとシングルルームで。すごく広くて音もよくて。
沢村:あと、富士山を見てパワーを得たよね。富士山見ると違いますね、みなぎります。
──いい環境じゃないですか(笑)。レコーディングの環境の変化は、まさに音に出ていると思います。音のクリアさや深みなど、よりよくなった印象が一聴してわかりましたよ。
涼木:それを感じてもらえたらよかったです。今回、レコーディングの環境も含めて、チームから総入れ替えしたんです。たぶんその辺も、フルアルバムを作ってやっと始まったなっていう、また新しい一歩が始まったような感じなんですよね。僕らの音質ってこういうのだよねっていうことすら簡単に除外していけるようなフラットな気持ちになれたきっかけが、この『ハウル』のような気がします。
──では、合宿に行く前にまずは曲出しをして、っていう感じですか?
涼木:そうです。今回も6曲収録でいくっていう決まりごとで制作を進めてたんですけど、何十曲か作っちゃって、ギリギリまで選曲して。時間的には余裕はあったんですけど、余裕がある分ものすごく根詰めてギリギリまで作ってましたね。
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