前作で底上げされたバンド力を色濃く感じさせられる珠玉作
Yeti『ハウル』インタビュー
Yeti『ハウル』インタビュー

2017/05/31
──「ガブリエル」は4月のリクエストライヴで一足先に披露されましたが、この曲がリード曲っていうイメージなんでしょうか?
涼木:この曲は実は制作が一番最後だったんですよ。なので、『吠える』や『無重力』でアルバムの軸をとっていたので、この曲を軸にしたわけではないんです。ただ、『吠える』で始まった内なる叫びっていうのが別の叫びに変化していくようにしたくて、この曲はこのアルバムの中では起承転結の“転”の部分にしたかったんです。
──この曲を“結”にすることもできそうなのに、“転”にもってくるとは面白いですね。
涼木:確かに“結”に持っていける要素もありますね。この曲、最初はもっとファンタジーな世界の曲にしようかなと思っていたんです。荒廃した大地に西洋の騎士が倒れていて、そこに一筋の光が…みたいな。それぐらいちょっとストーリー仕立てなものに仕上げたら面白いかなと思っていたんですけど、なかなか苦戦して。
──それでファンタジーになる予定だったものが、よりリアルなものになったんですね。
涼木:そうですね。ライヴでの反応もすごくいいので、聴いてくれた方の私生活に置き換えられるような聴こえ方で届けられたらいいなと思います。
多村:この曲はバラードに位置されるものだと思うんですけど、今までのバラードに比べてすごく熱が出せるというか。ライヴ感も出しやすく、しんみりとしたバラードじゃないところが僕的には好きですね。
沢村:今回のレコーディングの直前に新しいギターを手にしまして、全曲それを使ってるんですけど、特にこの『ガブリエル』はそのギターが活躍したかなと。聴いてる人の気持ちが高まるような音になるように意識しましたね。イントロの“ドンドンパン”ってところも、みんなでスタジオで足踏みしたりして録ったんで、そういったところも面白い要素なので聴いてもらえると嬉しいです。
Bikkey:この曲はレコーディングだとピックでちょっと固く弾いてるんです。最後のサビは感情的にはなるんですけど、そこまで熱くなりすぎず、固くいくためにピックで弾いてるんですけど、ライヴでは全部指で弾こうと思ってるんですよ。それはライヴでしか出せない感情であったり、世界観を強調するためにあえてそうしてみようと思って。音源も十分にいいんですけど、絶対にライヴの方がいいって言われる曲にしたいんですよね。
──「コントラスト」は、今までのYetiらしい曲ですね。
涼木:そうですね。フラットナンバーというか。きっかけはプライベートで一眼レフのカメラをいじるタイミングがあって。一眼のカメラってちゃんと写真を撮るのもすごく難しいんですよね。露出、色調、ピント……パッと見た景色とファインダー越しに撮った写真と、ずいぶん見え方が違うなっていう。色って面白いなって思ったんです。それで色彩をテーマに何か浮かばないかなと家にこもって、一眼レフカメラをいじった時の感動みたいなものがエネルギーになって生まれた曲なんです。『ガブリエル』から少し温度が芽生えてきて、最終ゴールに向かうためのちょっと溜める部分というか、ライヴを想定してサビのメロディは作りました。今までの経験をそのまま生かしてステップアップできたような、今までのリスナーの方は安心するサウンドだと思います。
多村:5曲目にしてね(笑)。この曲は本当に得意中の得意分野でしたね。そこに今までやったことのない奏法を入れてみたりして、慣れ親しんだフレーズにちょっと色をつけてみたりっていう感じでした。
Bikkey:この曲は結構Yetiにはよくある得意分野なので、でもなんとかしなきゃなと思って。
多村:わかるよ。なんか一個装備を増やしていきたいもんね(笑)。
Bikkey:そうなんです、装備が増えてるんです。今回は一瞬ベースソロももらったりして、そこでも挑戦ができたので。オクターブフレーズを重ねるっていうもずっとやってみたかったので、そこも聴きどころです。
沢村:いい意味でフレーズもこだわることなくストレートにやったんですけど、録り方にフックをもたせたくて、いつもならピックで弾いてるところを、指だけで弾いたりしました。
──最後の曲「ストレイト」は希望や光を感じさせられるなと思いました。
涼木:この曲は、テレビで駅伝を見ていて。
──それで“襷”とかのワードが入ってるんですね。
涼木:そうなんです。今まで、寝る前だったり帰宅途中だったり、そういうところで聴くような印象の楽曲を作ることが多かったんですけど、この曲は何か汗を流すような、体を全力で動かしている最中、その瞬間を表現しようと、走る方々を見ていて興味が沸いて。こだわりとしては、“ストレート”じゃなく“ストレイト”であるところ。“ストレート”って単純明快でまっすぐな、ピュアな希望の光みたいなものを感じられるワードだと思うんですけど、僕が表現したかったのは、出遅れた選手なんですよ。なのでカタカナで表現したら、“ストレイト”の中に“レイト”が入るじゃないかと。なので、今年の末で5周年になるバンドのタイミングの、我々の心の部分、今までの過去を振り返りながらもまっすぐに突き進むぞっていうメッセージ、宣言でもあるような楽曲になったなと思います。『ハウル』の冒頭から始まっていた叫びみたいなものが、紆余曲折を経て、叫びではなく、人の背中を押すようなエネルギーに変えられたら。そういう流れにこだわりがあったので、その次の展開へと完結させないように歌詞を書いていきました。
──サウンド面はどうですか? アコースティックギターとエレキとの絡みも印象的でした。
涼木:もともとアコースティックな部分とビートロックな部分との両方を取り入れているバンドだったんですけど、しばらくこういうサウンドをやってなかったんですね。だからまさに、結成当時のサウン後が、5年のタイミングで今やるとこういう楽曲になるっていう、いい変化の仕方というか、原点回帰なところもありますね。
多村:当時の僕らだったらできなかったようなフレーズ作りができているのかなと。ドラムで言うと、前だったらイントロをもうちょっと派手にしてたと思うんですけど、5年経った今ならあえてちょっと渋くというか、タイトめに抑えたリズム作りにしました。
沢村:歌詞やそのメッセージ、メロディの綺麗さを大切にしたかったので、ストレートなサウンドというよりは、包み込むようなサウンドをイメージして作っていきましたね。
Bikkey:こういうフォークソングにロックを合わせた感じっていうのが昔からすごく好きで、どんなベースをつけようかなと考えた時に、AメロはすごくシンプルなんだけどBメロでちょっとベースを泣かせる、そしてサビはまたシンプルにルート弾きをして、歌をぐっと前に出すっていう手法をとらせてもらいました。それは俺の中では王道のポップスのやり方。ここまでそれを出させてもらったのは初めてで、やりたかったことがいっぱい詰め込めました。
──それでは最後に、6月から始まる『ハウル』のリリースツアーに向けて意気込みを聞かせてください。
涼木:バンド初の本数の多いツアーで。本当の意味でバンドが始まったような気が今していて、最高の自信作をもってツアーを回る準備を今進めています。初めての街も含まれているので、日本列島を『ハウル』一色に染め上げて回っていこうかなと気合い十分です。期待していて下さい。
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