シングル収録曲4曲の作詞・作曲エピソードを公開!
高橋 優「ルポルタージュ」インタビュー
高橋 優「ルポルタージュ」インタビュー
2017/11/22
──では、続いて3曲目の「シーユーアゲイン 〜ピアノバージョン〜」についてお聞きします。ピアノバージョンを再収録しようと思った理由というのは?
今回のシングルは4曲入りで、どこかに共通するテーマを持たせようと思っていたんです。で、わりと「ルポルタージュ」も「羅針盤」も“無機質や無関心との戦い”や“感情が出にくくなっていくことへの抗い”みたいなものがあって。そんな中、「シーユーアゲイン」の歌詞にも「君か僕のどっちかが ロボットみたいになったらおかしいね」とか「泣き虫で怒りっぽくてワガママ それぐらいが丁度いいね」とか、別れ際に出てくる言葉が羅列されていて。別れ際というのは、時として人間らしさが出るシーンだったりするし、また会いたいと思える感情も人間味に近いのかなと。そういう理由がまずはひとつ。あとは、この曲を好いてくれているスタッフが多い(笑)。再録してほしいなというリクエストも頂いていて。
──ピアノバージョンを歌ってみて、新たに気づいた点などはありましたか?
そうですね。今回、ただ強く歌うだけじゃないっていうのをやりたくて。Aメロ、Bメロをわりと力強く歌って、サビで落とすというやり方をしたんですね。それって普通は逆で、Aメロ、Bメロを落として、サビでドンといくじゃないですか。でも、時としてアレンジによっては、落として歌うことで、急にあらたまったような感じがするというか。僕の曲の場合、楽器がなくなっていくほど会話に近くなるというか。「シーユーアゲイン 〜ピアノバージョン〜」では、それを如実に試せたと思います。聴いてほしい部分ほど、落として歌う。結構難しいんですけど、個人的にはそれが一番楽しかったし、そこを心掛けたと思います。
──歌は何テイクか録ったのですか?
まず、2テイクか3テイク、ピアノのはっちゃん(平畑徹也)とクリックを聴きながら録ったんです。というのも、クリックを聴きながらやると、後でパンチインが効くという利点があるので。でも、クリックを聴きながらやると、どうにもらしくない感じになってしまって。曲の生々しさにノリきれないというか。なので、4テイク目、5テイク目あたりで、クリックなしでやったんです。で、今回収録しているのは、その4テイク目のものです。
──クリックがあると、多少そっちに引っ張られてしまうのですかね。
何なんでしょうね。そんなにダメなわけではないんですけど。ドキドキする感じがないというか。僕の場合、わりとAメロやBメロに比べてサビで走りがちだったり、逆にAメロとかゆっくり歌い過ぎたり、落ちサビでめちゃくちゃゆっくり歌い過ぎたり。はっちゃんとは、もうかれこれ10年以上の付き合いになるんで、お互いの呼吸をちょっとずつ読めるようになってきたのかな。2人で目が見える状態で、クリックなしでやってみようと思ったテイクの方が良かったんです。まぁ、完成度というよりは、ドキドキするものが録れたかなと。
──「シーユーアゲイン」の歌詞を振り返ってみて、高橋さんの中でのお気に入り箇所はどこになりますか?
やっぱ、「君か僕のどっちかが ロボットみたいになったらおかしいね」とかですかね。
──最初に作ったときは、この歌詞はすぐに思いついた部分だったのですか?
いえ、作っている途中です。もともと、この曲はセカンドシングルに入れさせてもらったんですけど、セカンドシングルの表題曲が「ほんとのきもち」で。その「ほんとのきもち」がQ10(キュート)っていう、元AKBの前田敦子さんがロボット役で登場して、そのロボットに恋に落ちるみたいなドラマのタイアップ曲だったんです。なので、カップリングなんで関係ないんですけど、その頃、自分の中にロボットというキーワードをどこかに使いたいというのがあったんだと思います。ただ、後々見てみたらロボットっていうワードは、だんだん他人事じゃなくなってきていて。このご時世、人間がロボットみたいになって、ロボットが人間みたいになっているじゃないですか。なので、この歌詞があながち間違ってなかったというか、自分の中の危機感みたいなものを表わせたのかなと思います。
──わかりました。では、4曲目「ゴーグル」についてお伺いします。亀田さんとは何回目のコラボになりますかね?
この曲が6曲目になります。
──では、もうお互いがツーカーな感じで?
いや、まだそこまでは全然。亀田さんは大先輩ですし、亀田さんが僕に合わせてくれている感じです。
──そもそも、亀田さんとはどのような話があったのですか?
いつからかシングルの4曲目は必ずメガネツインズというのがあって。もう、僕がどうこう言う前から亀田さんとのレコーディングスケジュールを会社の方が組んでくれていて(笑)。今回の曲に関して言えば、メガネツインズ史上最もハートフルなファミリーソングにしましょうという話がありました。
──その後は、具体的にはどのようなやり取りを?
メガネツインズでは、基本的に僕が作詞と作曲をしていて。というか、曲によっては亀田さんが来る前に歌とギターを録り終えていることもあるくらいで。で、そこから亀田さんに色々と付け足してもらったり。で、また合わない部分が出てきたら、そこを録り直したりしていきます。この「ゴーグル」に関しては、カズーとかのアイディアは亀田さんからのものです。
──亀田さんのアイディアで曲の印象がガラッと変わったのですか?
いえ、変わるというよりは、あくまでも曲のムードをより引き立てるものを足していくというか。
──歌詞というのは、実際のお父さんのエピソードなんですか?
これは実話です。
──では、前々から書こうと思っていたネタでもあるんですか?
いや、全然そうではなくて。もともとメガネツインズが歌おうとしているのが“目まわり”というか、目に関することなんですね。ただ、目の界隈のことを歌いたいというのもありつつも、僕自身は予定調和になるのがものすごく嫌で。なので、6曲目で何を歌おうかと迷っていたんです。そんな時に、親父がGoogleのことをゴーグルと間違えたのをたまたま思い出して。あぁ、ゴーグルって“目まわり”じゃんって思って。もう、それ以外は何も目とは関係ないんだけど、こじ付けのようにして書きましたね。
──曲はいつ頃作られたのですか?
レコーディングの前々日くらいです。
──では、曲も歌詞もすぐにできたんですね。
そうですね。
──スタジオに入って作ったのですか?
この曲はお家で作りました。
──お家ではどんな感じで曲作りされるのですか?
iPhoneをギターの前に置いて。でも、これも最近で、ちょっと前までは僕はカセットを使っていたんですよ。でも、曲を提出した後に、事務所やレコード会社の人がカセットからパソコンに落とす機材がなくて(笑)。わざわざ買ってくれたりしたんです。しかも、カセットなんでパソコンに落としてもめっちゃ音量小さいし。そういう弊害があるということを聞いて、なくなくカセットレコーダーを手放して、iPhoneで録るようになりました。
──この「ゴーグル」で、気に入っている部分やこだわったところを教えて下さい。
この曲では、ビンテージマンという言葉が歌詞で使えたのが良かったですね。
──あまり聞かないワードですよね。
そうなんです。ノリというか、そんな言葉はありませんというワードが書けるのは、僕の中ではうれしいことで。今って、何でも検索できちゃう時代じゃないですか。検索すれば何かが出てくるとは思うんですけど、検索を恐れずに自分で造語みたいなものを作って、「それって、どんな意味?」って、聞かれるのがうれしい。1コーラス目でビンテージマンと歌って、2コーラス目でビジネスマンと歌っているところなんかは、僕の親父世代を揶揄(やゆ)するでもなく、リスペクトし過ぎるでもなく、ある意味リスペクトと親しみを込めて「おっちゃん!」とふざけるにはちょうどいい言葉を選べたんじゃないかなと思ってます。
──さて、さきほど歌本の話も出てきましたが、楽器.meの歌詞コードサイトでは、高橋さんの楽曲をコピーしたいという方も多くいると思います。ギターの弾き方や歌い方のコツがあれば伝授していただきたいのですが。いかがでしょうか?
やっぱり、ギターをさわり続けることじゃないでしょうかね。それに尽きると思います。僕は人に何かを教えられるほど何かになれたとは思ってなくて、今でもギターを上手くなりたいと思っているし、ギターを始めてさわったときから何かが変わったという実感もないんですけど、ただ、面白いなと思うのは、さわり続けていると弦が押さえやすくなったような錯覚に陥るんですよ。なんか、ギターが自分の体に近づいてきてくれたような気持ちになることがあります。そういう時って、ギターがすごく小さく感じて、より自分の体の内側にあるような気がしてすごく弾きやすいんですよ。でも、しばらく置いておいて、久しぶりにギターをさわると、冷たいし、硬いし、遠くで弾いているような感じになるんですよね。めちゃくちゃ感覚的な話なんですけど。でも、何回も何回も久しぶり久しぶりってやっていると、冷たいし、体にも合ってないし、ギターを弾いていても楽しくないと思うんですよね。立派なものを弾いてなくてもいいので、試してもらえれば、そこは絶対に実感してもらえると思います。僕なんか寝る時もギターを持っているときがありましたもん。そうすると、ギターが自分の腕の一部になったような気になることがたまにあるんです。上手か、下手かというと、僕はあまり上手になれたことがないからわからないけど、上手、下手の以前に、自分のものとしてギターを弾くというのはそういうことじゃないかなと思います。
──アドバイスありがとうございます。それでは、最後にあらためて今回のシングルの聴きどころと読者へのメッセージをお願いします。
今回は4曲を通じて、有機的な心というか、感情って何だろうっていうのがテーマになっています。今の時代、無関心とか、無が押し寄せて来ているような危機感があると思うんです。でも、そんな中でも、心にあるときめきとか、自分が行きたい方向とか、抗うこととか、自分の意思を叫ぶことを表現したいと僕は思いました。この曲を聴いて、そういったことを見つめてもらえたらうれしいです。
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