約7年ぶりとなる単独来日公演
美しきエレクトロ・ポップ・デュオ=ハーツ、大熱狂のライヴ・レポート公開!
美しきエレクトロ・ポップ・デュオ=ハーツ、大熱狂のライヴ・レポート公開!
2018/01/31
その端正なルックスと耽美なエレクトロニック・サウンドでヨーロッパ全土において絶大な人気を誇る、英マンチェスター出身の美しきエレクトロ・ポップ・デュオ=ハーツの約7年ぶりとなる単独来日公演が開催された。


<ハーツ:来日公演ライヴ・レポート>
2018年1月29日(月)
マイナビBLITZ赤坂
ハーツのライヴを過去に一度でも観たことがある人ならばご存知だろうが、彼らのライヴは常に驚くほどエモーショナルでアンセミックだ。「欧州的エレガンスを漂わせた、耽美なエレクトロ・ポップをやるデュオ」という、アルバム音源や彼らのヴィジュアルから得られるイメージは、ライヴが始まってものの数分で覆される。前回来日のフジロック(2013)も、フラットな温度で彼らを観ていたフェスのオーディエンスを熱狂させた素晴らしいステージだったが、今回の5年ぶりの単独来日公演は、さらにパワフルに進化したハーツのライヴ・パフォーマンスを目撃できた興奮の一夜となった。
彼らのライヴ進化の原動力となったのが、最新アルバム『デザイア~衝動~』だ。リズムとグルーヴを徹底的に鍛えたダンス・アルバムでもある本作によって、彼らのエレクトロ・ポップにフィジカルな説得力が増したからだ。EDMやディスコのエッセンスを取り入れたアッパーな新曲「レディー・トゥー・ゴー」、ラウド・ギターが駈けるロック・バンド然とした「サンデー」など、ショウの前半からウォーミング・アップを必要としない瞬間沸騰のパフォーマンスだ。ライヴではセオ(ボーカル)とアダム(ピアノ、ギター)に加え、ドラムス、ベース、キーボード、そして女性コーラス2人というバンド編成が基本となるハーツだが、今回はとりわけそのバンド・サウンドが活かされたダイナミックなパフォーマンスだ。
ただし、エモーショナルでアンセミックとは言っても、ハーツのライヴはすべてが開けっぴろげで分かりやすいわけではない。たとえば、彼らのステージのライティングは非常に暗い。時折バックライトがフラッシュのように点滅し、ピンスポットライトが仄かにセオやアダムを照らし出すものの、ショウは基本的に薄闇の中で進んでいく。「HURTS」と書かれたバックドロップもモノトーンでシンプル。アダムが弾くグランド・ピアノの上に置かれた白い薔薇の花束も含めて、彼らのステージはどこかシアトリカルでミニマルな美意識で貫かれたものなのだ。そしてそんなステージ上で溢れんばかりのパッションが躍り、過剰なまでに分厚いシンセ、コーラスが宙を突き抜けるという、静と動、影と光のコントラストが圧巻なのだ。白いシャツに細身の黒パンツで王子然としたルックスのセオも「メイク・サム・ノイズ!」と何度も叫び、「ローリング・ストーン」ではしゃがれた声で野太いシャウトを繰り返すなど、ステージ上では徹底したショウマンでもある。
後半は新作『デザイア~衝動~』で彼らが獲得したリズム、グルーヴの多様性が活かされたセクションで、ヒップホップ的アレンジを効かせた「サンドマン」や、ファンクやアフロ・ポップのリズムも取り入れた新機軸の新曲「ウォーク・アウェイ」など、ハーツの今後を見据えた未来志向のセットになっていた。そして「日本の皆は本当にビューティフルだ、次の曲は君たちに捧げるよ」とセオが言って始まった「ワンダフル・ライフ」から、彼らとオーディエンスが声を合わせて「僕らは美しき者たち」と宣言した「ビューティフル・ワンズ」、そしてセオが白薔薇を次々とフロアに投げ込んでいった「ステイ」と、本編ラストからアンコールへの流れはハーツとファンが共鳴、共振しながら昂り、ひとつになっていく最高のフィナーレだった。
文: 粉川しの
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