初心者DTMerでも簡単にフレーズが作れる機能「Travelers」を搭載

エスニック音源「WORLD SUITE」で『進撃の巨人』BGMの「2chi城」を再現

エスニック音源「WORLD SUITE」で『進撃の巨人』BGMの「2chi城」を再現

2018/03/16


作風の幅が広い澤野弘之さんの劇伴サウンドには、異国の雰囲気を感じさせるエスニックな要素も多く見られます。ここでは、世界中の民族楽器を網羅したUVIのソフト音源「WORLD SUITE」を使って、『進撃の巨人』のBGM、「2chi城」のサウンドを再現する方法を紹介します。

文:平沢栄司

※本コンテンツは音楽雑誌「サウンド・デザイナー」(2018年2月号)より抜粋したものです。詳しくは、http://www.sounddesigner.jp/をご覧ください。
 


世界中の民族楽器の音色とループフレーズで
本格的なエスニックサウンドが簡単に作れる!

 
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UVI WORLD SUITE=¥34,000(国内UVIセールスパートナー価格)/299$(UVIストア価格)
問:UVI http://www.uvi.net/jp/


TVアニメ「進撃の巨人」Season1で使用されたBGM「2chi城」は、アジアや中東、インドなど、アジア大陸の民族音楽を絶妙に融合したような雰囲気を持つ楽曲です。前半の叙情的でエスニックなミドルテンポのセクションと、激しい中盤のアップテンポなセクション、そして最後に、やや民族色が薄れたワイルドな曲調のセクションという3部構成になっているのが特徴です。

世界中の民族楽器の音色を320種類以上も集めたUVIの「WORLD SUITE」は、この曲の前半〜中盤のセクションを再現するのに、まさに最適なソフト音源です。メロディを奏でる擦弦楽器や木管楽器の音色は、いわゆるオーケストラ楽器のバイオリンやフルートとはニュアンスが異なり、民族楽器固有の奏法が、フレーズに色気を加えています。本製品はリアルな音色だけでなく、奏法などのアーティキュレーション関連の機能も多く用意されているため、打ち込みに苦労することなく、初心者でも表情豊かなエスニック調のメロディラインを奏でることができます。

また、8000種類以上のループフレーズや「Traveler」と呼ばれるユニークなレイヤー音色を活用することで、個別のパートごとに打ち込みをしなくても、一般的なポップスやロックとは異なる民族音楽らしいバッキングを手軽に鳴らせるところも魅力です。
そんなWORLD SUITEを活用して、簡単な打ち込みだけで「2chi城」の雰囲気を再現してみましょう。
 


ダイナミックな擦弦楽器のメロディと
力強く民族的なパーカッションのバッキング(2:55〜)

 
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民族音楽のカタログのようなTravelerの音色から、中東的な雰囲気を持つ「C-Zontos Power」をセレクト。民族味溢れる撥弦楽器のフレーズとパーカッションを組み合わせたもので、原曲のイメージに近い

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ストリングス系の音色は、同じ中東系ではなく、北欧系のサウンドの中から「Balkanish Violin Vel」をセレクト。音の強弱の表情が豊かで、荒々しい立ち上がりやピッチの揺らぎ感は、エスニックな曲調との相性も抜群だ



WORLD SUITEの注目ポイントのひとつが、Travelerと呼ばれる音色群です。これは複数の音色とフレーズを組み合わせて世界各地の民族音楽のサウンドを再現できるというもので、ゼロから打ち込みをしなくても、各鍵盤に割り当てられたキースイッチを押すだけで、雰囲気のあるバッキングが作れます。これにソロの楽器を選んでメロディを乗せるだけでも、民族音楽感あふれる曲が作れます。

そのTravelerのサウンドを活かして再現したのが、擦弦楽器のメロディと、撥弦楽器楽器&パーカッションによる力強いバッキングが特徴的な、原曲の2:55からの部分です。バッキングは、Travelerからイメージに近いプリセットを選んで、小節数分の長さの白玉ノート(C3のキースイッチ)を打ち込むだけで完成します。
弦楽器のメロディは、「レガートで打ち込むと立ち上がりが滑らかにつながる」という音色の特性を活かして打ち込み、速いパッセージのところは1音目だけに強いアタックが付くように打ち込みました。

また、本製品はベロシティによる強弱の効きもいいので、キメ細かく設定するほどダイナミックになって表情が豊かになります。フレーズ最後のロングトーンの部分は、エクスプレッションで減衰させて、自然な演奏に仕上げます。

 

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1小節目に登場する3連16分のフレーズは、1音目だけにアタックが付くように、後ろに続くノートに少しずつ重なるようにして、レガート奏法として打ち込んでいる。音の変わり目がスムーズにつながるように、ベロシティをなだらかに下げているのがポイントだ



 

撥弦と木管楽器のユニゾンで演奏される
エスニック感溢れるメロディ(2:13〜)

 
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アタック感の強い木管の音として、「African Flutes Vel」をセレクト。デフォルトではニュアンスが異なる音色だったが、キースイッチを「Majingu Flute Fit」に切り替えると、原曲に近いアタック感が得られた

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インド系の楽器に目星を付けて、「India」のプリセットの中から、独特の響きを持つ撥弦音色の「Santoor」をセレクト。今回はデフォルトで使用したが、こちらもキースイッチから、奏法が異なる6種類のサウンドを楽しむことができる



民族音楽では、何よりも演奏する音色(楽器)が重要です。WORLD SUITEでは、各国の民族楽器の音色が豊富に用意されており、地方や楽器の種類別にカテゴライズされているため、知識がなくてもイメージに近い音色を見つけられます。また、各楽器にはそれぞれの奏法が割り当てられたキースイッチも用意されているので、民族楽器固有の表情豊かなサウンドが、鍵盤ひとつで切り替えられます。

本製品の豊富な音色を用いて、エスニック感溢れるメロディが特徴的な2:13からの部分を再現してみます。ここは、プリセットから選択したフルートの音色が原曲のイメージにピッタリだったので、凝った打ち込みをしなくても、十分に原曲の雰囲気を再現できました。撥弦楽器の「Santoor」はベロシティによる強弱を付けて、木管の「African Flutes Vel」も歯切れ良く演奏されるようにノートの長さを調整する程度で、ほぼベタ打ちでも問題ありません。

また、これらのサウンドを乗せるための3パート目として、Travelerの中からインド系の「115-E-Alan Say One」を選択して、小節単位の白玉ノート(C1のキースイッチ)で重ねると、若干原曲よりも賑やかではありますが、バッキングの雰囲気も合わせて再現できます。

 

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撥弦楽器の「Santoor」を打ち込んだピアノロール画面。ベロシティで強弱を軽く設定するだけで、原曲にかなり近い質感が得られる。木管の「African Flutes Vel」の打ち込みはさらに簡単で、ベロシティはベタ打ちのまま、原曲のメロディラインをなぞるだけでいい



 

表情豊かな弦楽器のメロディと
リズミカルなカリンバの伴奏(0:00〜)

 
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弦楽器の音を試聴した中から、インド系の「Indian Violin True Legato」をセレクト。枯れた感じの音色で、レガートで弾くと自動でポルタメントがかかるため、原曲のメロディのニュアンスとマッチする

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バッキングは、カリンバのループの中から雰囲気が近いものを選んでみた。なお、ループフレーズとは別に、1音1音を打ち込むこともできるので、余裕があればより細かい再現に挑戦してみよう



民族系の弦楽器は、フレットのない楽器ならではのピッチの揺らぎに特徴があります。WORLD SUITEの弦楽器には、レガートで弾くと自動的にポルタメント(※)がかかる音色も用意されているので、打ち込みで面倒なピッチベンドのカーブを描かなくても、ノート同士を少し重なるようにするだけで、滑らかなピッチ変化を再現できます。また、各楽器の特徴的なフレーズを収録したオーディオループもキースイッチに用意されているので、単一の素材として、複数の楽器が組み合わさったTravelerのプリセットよりも、曲中で使いやすいでしょう。

ポルタメントによるピッチ変化の表現を活かしやすい部分として、原曲の冒頭箇所を再現してみました。まずは、インド系のバイオリン楽器でメロディラインをサラリとコピーして打ち込んだ後、ピッチが揺らぐ部分に装飾的なノートを重ねていき、ピッチベンドを使うことなく、原曲に近いピッチの変化具合を付けていきます。また、この音色はベロシティの強弱で表情が変わるので、キメ細かい調整も加えていきました。

バッキングには、アフリカのカリンバ(ハンドオルゴール)のループフレーズの中から、雰囲気が近いものを選択。後半は半拍ズラしたオクターブ上のループも足して、原曲の後半と同様に、リズムが複雑に入り組む感じを狙っています。

 

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「Indian Violin True Legato」のフレーズ。メインの音の直前に、下の音程のノートを入れてシャクリ上げたり、短いノートを細かくつなぎながらピッチの揺らぎを再現している。なお、原曲の音色よりも音の減衰が早く、また発音域も狭いため、フレーズに若干のアレンジを加えている


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