【レビュー】FabFilterの“3つのツール”を駆使すれば、初心者でもミックスのコツがつかめる!

【レビュー】FabFilterの“3つのツール”を駆使すれば、初心者でもミックスのコツがつかめる!

2018/05/26


現在、プロ・アマ問わず多くの音楽制作の場で愛用されている、ファブフィルター社のプラグインエフェクト「Proシリーズ」。エンジニアや作・編曲家、プロデューサーなどとして幅広く活躍しているmarimoRECORDSの江夏正晃さんに、ミックスの観点から、特に注目すべき3モデルをレビューしていただきました。

文:江夏正晃(FILTER KYODAI/marimoRECORDS)

※本コンテンツは音楽雑誌「サウンド・デザイナー」(2018年5月号)より抜粋したものです。詳しくは、http://www.sounddesigner.jp/をご覧ください。


直感的な操作性を持つデザインと、プロも認める高音質が魅力

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Pro-Q2=¥23,500、Pro-C2=¥23,500、Pro-MB=¥26,000

プロのエンジニアも絶賛する注目のプラグインメーカーが、ファブフィルター社です。個性的な製品を数多く有していますが、今回はミックスの作業をするうえで重宝する3製品を紹介しましょう。

同社のプラグインに共通する特徴的な機能として、コントロール画面をディスプレイ上で最大化できる点が挙げられます。全画面で表示させれば精微な音のチェックが行なえるので、波形の動きやダイナミクスの変化などの詳細がわかり、音が現在どのような状態にあるのか、またそれをエフェクトでどのように変化させればいいのかがすぐに把握でき、サウンドをより追い込むことができます。さらに、直感的な操作が行なえるようにデザインされているので、初めて触れる人でも、各機能をすぐに理解して、目的の処理が行なえるでしょう。

ですが、最も特筆すべきは「高音質」である点です。誌面ではなかなか伝わりづらいですが、プロも認めるそのクオリティは、一度体験すれば理解していただけると思います。また、各パラメーターの可変範囲や自由度も、他社のプラグインと比べてもかなり高く、ファブフィルターのプラグインでしかできない、トリッキーなサウンドメイクも魅力です。

 


「Spectrum Grab」で感覚的に処理が行なえるEQ「Pro-Q2」

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「Pro-Q2」は、EQのパラメーターの可変範囲が広く、ゲインは±30dB、周波数帯域が10Hz~30KHz、Q値が0.0025~40、フィルターのスロープが6dB/oct~96dB/octと、アナログのEQではあり得ない調整が行なえます。削りたい、または持ち上げたい帯域を視覚的にピンポイントで調整できるので、精緻な追い込みが可能です。DAWソフトでミックスなどを行なうエンジニアからは、この点が好評を得ています。

さて、初めてPro-Q2を知る人に向けて、本製品ならではの機能を2つ紹介しましょう。
1つが「EQ Match」で、これは参考とする任意の音源に質感が近くなるように、自動的にEQポイントを提示してくれます。他社にも似たような機能はありますが、Pro-Q2が優れているのは、EQポイントの数をなんと24個まで自由に増減させられる点で、より細かく調整ができます。個人的にはポイント数を4~8ぐらいに設定すると、直観的にエディットしやすくなるように感じました。

そして、もうひとつが「Spectrum Grab」で、これを使うとアナライザーがピーク状態でホールドされて、調整したいポイントをドラッグするだけでEQ処理が行なえます。数値を考えずに、感覚的な処理が行なえるのです。なお、この機能を使う際にはぜひ、全画面表示にしてエディットすることをオススメします。
 

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「EQ Match」は、画面下のタブから「Analyzerボタン」を選択して使用する。リファレンスとなるトラックをサイドチェインで送って数秒分析させるだけで、原音に近い質感となるようなEQカーブを、自動で提示してくれる。またこの際、使用するEQポイントの数を多めにして、分析後に不要な箇所を減らしていく方法がオススメだ
 

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「Spectrum Grab」は、スペクトラムのピークを固定して、気になる周波数帯域をマウスでドラッグして調整するという、今までにありそうでなかった機能だ。これなら、EQの知識がない初心者でも、スマートにエディットが行なえる。非常に優れた機能で、これを使うだけでもPro-Q2を導入する価値があると言えるだろう

 


圧縮の状態を視覚的に把握できる高品質なコンプ「Pro-C2」

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「コンプの使い方がイマイチよくわからない」という人に試してもらいたいのが、この「Pro-C2」です。
スレッショルドやレシオなどの数値を視覚的に把握できるのはもちろん、時間軸に合わせた音量の変化まで視覚的に確認できるので、サウンド的な変化がわかりにくいコンプのメカニズムが、初心者にも理解しやすいのです。設定が難しいとされているリリースタイムなどは、時間軸と音量の変化を見ながら適切な値を探ることができる……つまり直観的に、見た目で各パラメーター値の設定ができるわけです。コンプの使い方で挫折してしまった人も本製品を使えば、かけたコンプがどのように音を変化させているのかよくわかるので、コンプの仕組みを理解できるという意味でもオススメです。

そして、コンプを使う際に気になるのが、やはり音質です。コンプは、そのモデル自体が個性になると言っても過言ではないほど製品によって音が異なりますが、Pro-C2は8種類のサウンドキャラクターが選べます。
個人的には、色々と試した印象として、SSLのバスコンプレッサーを意識したと思われる「BUS」が好みでした。しっかりとコンプレッションしながらも、かかりはナチュラルなので、ある程度の音圧がすぐに稼げます。強めにかけても、聴感上のダイナミクス感を大きく損なわないのが好印象でした。
対象的に、「Punch」や「Pumping」、「Opto」はとても個性的なサウンドで、ロックドラムなどで、スネアのディケイ成分(余韻)をエフェクト的に作り込みたい時などにオススメです。

さらに、本製品はサイドチェイン機能が充実しており、入力ソースにもEQやフィルターがかけられます。ダンスミュージックなどのラウドミックスを制作する際にも1つの画面で設定できるので、とても便利です。
本製品は、ある意味万能コンプとも言えるでしょう。
 

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スレッショルドとレシオの設定と、波形の音量変化がリンクしている。赤いラインがリダクション量の変化をリアルタイムで表わしてくれるので、リリースタイムを決める際は、このラインを見て適正値を探っていこう
 


帯域ごとの設定を精微に追い込めるマルチバンドコンプ「Pro-MB」

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①「位相タイプ切り替えボタン」
複数帯域ごとに分けて複雑な処理を行なうと、位相の乱れが生じて原音が変化することがある。この時に「Liner Phase」を選ぶと、その際の音の変化を抑えることができる。レイテンシーが気になる場合は「Minimum Phase」を選ぼう

②「Auditionボタン」
このボタンを押すと、マルチバンドモードで選択した周波数帯域のみを聴くことができる。バンド別に処理した音が、それぞれどのように変化しているかを、詳細に確認することが可能だ

③「Band/Freeボタン」
「Free」を選ぶと、特定の1つの帯域だけではなく、例えば「低域と超高域」といったように、複数の帯域を同時に試聴することができる。Pro-MBならではの特徴的な機能で、ある帯域に施した処理によって、他の帯域にどのような影響を及ぼしているかをチェックすることが可能だ

④「LOOKAHEADボタン」
コンプ/エキスパンダーが処理を行なうタイミングを、最大20msec早めることができるボタン。この数値を大きくすると、より自然なダイナミクス効果が得られるが、その分若干のレイテンシーが生じるので、気になる場合は下のタブから「LOOKAHEAD」をオフにしておこう


「Pro-MB」は、フレキシビリティの高いコンプです。シングルバンドとしても、最大6バンドのマルチバンドとしても機能するので、マスタリングや、ドラムのバストラックなどで使うと便利です。

一般的にマルチバンドコンプは、各バンド同士の境界がつながっていて、連続的に設定をしていく場合が多いのですが、本製品では好きな帯域のみをオンにして、個別にコンプ/エキスパンダーがかけられます。また、マルチバンド系のプラグインで問題になりがちな位相も、多少のレイテンシーは生じますが、リニアフェイズで快適に処理が行なえます。位相による音の変化を気にする必要がないのは、非常にうれしいことです。

そして、Pro-MBで特筆すべきなのが、インターナルかサイドチェインかを、帯域ごとに選べる点です。例えば、低域部分のみにサイドチェイン信号によるコンプをかけて、中高域はトラック単体で直接コンプをかけるといったことが可能です。「Expertタブ」を開けば設定が行なえるので、一度試してみてください。

また、Pro-MBも全画面表示に対応しています。複数のモニタリング環境を活用して、音の微妙な変化を聴覚と視覚の両面で確認しながら、こだわりのミックス/マスタリングが行なえるのです。
 

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一見すると操作が複雑そうなPro-MBだが、パートや用途ごとにカテゴライズされた、豊富なプリセットが多数用意されている。操作に慣れないうちは、まずプリセットを選んでから、必要に応じてパラメーターを調整しよう
 


レビュワープロフィール

江夏 正晃(エナツ マサアキ)

音楽家、DJ、プロデューサー、エンジニア。
エレクトロユニットFILTER KYODAIやXILICONのメンバーとして活動する一方、多くのアーティストのプロデュース、エンジニアなども手掛ける。また株式会社マリモレコーズの代表として、映画音楽、CM、TV番組のテーマ曲など、多方面の音楽制作も行う。ヘッドホンやシンセサイザーのプロデュースなども手掛け、関西学院大学の非常勤講師も勤める。著書に「DAWではじめる自宅マスタリング」(リットーミュージック)などがある。自他ともに認めるシンセサイザー好きで、ビンテージ、アナログシンセはもとより、最近はモジュラーシンセを使った制作、ライブなども積極的に行っている。


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