4年振りとなったアルバム『エヴリシング・ノット・セイヴド・ウィル・ビィ・ロスト・パート1』を世界発売

フォールズ、ロンドンEartH (Evolutionary Arts Hackney)にて行われたライヴ・レポートが到着!

フォールズ、ロンドンEartH (Evolutionary Arts Hackney)にて行われたライヴ・レポートが到着!

2019/03/10


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<2019年3月7日 EartH (Evolutionary Arts Hackney) ライヴ・レポート>

本国UKでは本日発売となる、フォールズ5枚目のニュー・アルバム『Everything Not Saved Will Be Lost Part 1』。”Part 1“と銘打っている通り、同時期に録音された”Part 2”の発売が今秋に予定されている。3年ぶりの新作が1年の内に2枚発表されるという壮大な計画は、新譜をリリースする度に、常に何か新しいことを仕掛けてくるフォールズらしい試みだ。

その『Part 1』の発売を記念して、リリース前夜にロンドンでスペシャルライヴが敢行された。北米を皮切りとしたツアーを発表したばかりの彼ら。6月に予定されているロンドン公演は、キャパ1万人のアレクサンドラ・パレスを即完させている。そのフォールズが、アルバムの予約特典としてわずか1000人の前でパフォーマンスをするとあって、チケットは当然の如く激しい争奪戦となった。

会場は、音楽をはじめとするロンドンカルチャーの震源地である東部ハックニー地区・ダルストンに、今年オープンしたばかりの新ヴェニューEartH(Evolutionary Arts Hackney)。ロンドンのクラブカルチャーをハックニー地区に遷都させた人物が仕掛けた話題のヴェニューで、ビースティ・ボーイズの書籍ローンチなどもこの会場で行われている。

20時37分。ステージとの距離がかなり近い空間は、すでに超満員。バンドと共に成長してきであろう20〜30代の男性が大半を占める異様な熱気の中、4人が静かにステージに登場した。怒濤のような歓声で迎え入れるオーディエンス。会場が独特の緊張感に包まれる。

昨年1月、ニュー・アルバムのレコーディング中に脱退を発表したウォルター・ジャーヴァースに代わり、今年よりサポートメンバーとしてツアーに参加することになったエヴリシング・エヴリシングのジェレミー・プリチャードがベースとして登場。ドラムのジャック・ビーヴァンとの、息の合ったグルーヴを紡ぎ出す。

オープニングは、新曲の「On The Luna」。タイトなリズムとヤニス・フィリッパケスの伸びやかな声が、すでにライヴチューンとしての完成度の高さを見せつける。指一本でオーディエンスを鼓舞するヤニスと、それに応えて身体を揺らす客席。初めて耳にする新譜への反応は上々だ。

2曲目のお馴染み「Mountain At My Gates」で、会場の温度が一気に上昇。続く「Exits」は新曲ながら、すでに先行シングルとして配信されているため、口ずさんでいる観客も多い。シンセとベースラインが80年代ニューウェーブを思わせる曲ながら、パーカッションをフィーチャーしたライヴ・ヴァージョンは、かなりソリッドなダンスチューンにアレンジされている。

短い挨拶を挟んで「Olympic Airways」「My Number」「Black Gold」「Spanish Sahara」と、ライヴ・フェイヴァリットを間髪なく繋いでいく怒濤の展開へと突入する。フォールズの真骨頂である変則的なマス・ロックのリズムと、緩急を自在に使い分けるヤニスの歌声、あくまでもタイトなパフォーマンスで、会場をダンスフロアの海に塗り替える。天井からは蒸発した汗の雨が滴り落ち、床に水たまりが出来るほどの激しさ。続く新曲「Syrups」は、気怠いビートにファットなベースラインが印象的だが、ライヴ・ヴァージョンでは突然フィードバックギターが疾走し、初めて耳にするオーディエンスを煽りまくる。たくさんの要素がぎっしり詰まった、彼らの新たなキラーチューンへと成長しそうな予感は、前半の山場である「Red Sox Pugie」へとなだれ込む構成で、確信へと変わったのだった。

ラストの「Inhaler」で盛り上がりは最高潮に達し、その興奮冷めやらぬままアンコールへ突入。1曲目に選んだ「White Onions」は、まさにフォールズ・クラシックとも言うべきエレクトロクラッシュ全開のドライブ感溢れる名曲で、これから何度もライヴを盛り上げることになるのだろう。そう、ヤニスが激しい客席へのダイブを見せ、オーディエンスが大合唱でひとつになったラストソング「Two Steps Twice」のように。

フォールズのライヴは、鋭利な刃物で切りつけられた感覚に似ている。切られた瞬間、痛みはなく、ひやりとした冷たい感覚が走る。そして、後からこみ上げるような熱さが襲ってくるのだ。クールでいて、滾るような熱を内包している。そんな生々しい皮膚感覚を、フォールズのライヴパフォーマンスは体感させてくれる。「世界最高峰のライヴバンド」との呼び声も高く、NMEアワードのベストライヴバンド賞にノミネートされたのち、Qアワードでは大賞を受賞しているのも頷ける。

その折り紙つきのライヴパフォーマンスの集大成であり、彼らが原点回帰を経て、再び新たなフェーズへと突入したことを思わせる、濃密な全17曲、人生でいちばん短い1時間40分。傑作『Everything Not Saved Will Be Lost Part 1』(そして『Part 2』)を引っ提げたワールドツアーを体験することで、このアルバムに生命が吹き込まれ、新時代の目撃者になれる予感がする。そんな高揚感に包まれながら、この新譜を繰り返し聴くことになるだろう。
                                                                                                                                                                                                                                            ライヴ・レポート YUMI HASEGAWA

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