アンプやエフェクターなど、音楽制作に役立つアイテムが大集合!
プロのギタリストがギター&ベース用の真空管搭載機材8モデルを徹底レビュー
プロのギタリストがギター&ベース用の真空管搭載機材8モデルを徹底レビュー
2019/05/10
ギタリストで作・編曲家、プロデューサーのオダクラユウさんに協力してもらい、真空管を搭載した注目機材の実力をチェックしてもらいました。
取材:目黒真二 写真:小貝和夫
オダクラユウ (DaG LLC.)
ギタリスト/サウンドプロデューサー/アレンジャー/エンジニア。ギターを軸にしたロックサウンドに精通し、作曲からアレンジ、ミキシングまでを幅広く手掛ける。SCANDALなどのバンド系から、YUIなどのシンガー系、三代目J Soul Brothersなどのダンス系、°C-ute などのアイドルまで、楽曲参加は多岐に渡る。近年は、ゲーム音楽や舞台音楽への楽曲提供も行なっている。
試奏製品一覧
今回の試奏環境
今回は色々なタイプの機材があったので、それぞれが適正な音が鳴るように、複数の方法でチェックをしました。
まず、スピーカーが付いているコンボ系アンプは、ギターをそのまま接続してチェックしました。ヘッドのみのアンプは、録音ブース内のボグナーのキャビネットに接続してから、その音をシュアのSM57(ダイナミックマイク)で拾います。その信号をAPIの512C(HA)に送ってから、RMEのMultiface AE(オーディオインターフェイス)を経由して、ヤマハのNS-10M(モニタースピーカー)で鳴らしています。DIは512C経由で、プリアンプ系はMultiface AE経由で音を検証しました。
使用したエレキギターは、ギブソンのレスポールとファイヤーバード、ES-335です。DIはベースでの使用が多いことから、バッカスの5弦ベースでもチェックしています。マイクも接続できる機材では、シュアのSM58(ダイナミックマイク)を使いました。
真空管機材は、コンディションの関係もあって、毎度同じ音にはならない、一期一会なところが魅力だと思います。
Rocktron
Voodu Valve LTD
¥185,000
●問:日本エレクトロ・ハーモニックス㈱
●TEL:03-3232-7601 ●https://www.electroharmonix.co.jp//
80年代〜90年代初頭のギターサウンドが楽しめるデジタルプリアンプ
これは、90年代の中頃に発表された「Voodu Valve」というデジタルプリアンプの復刻版のようですね。80年代や90年代初頭の洋楽で聴ける、おいしいギターサウンドが手軽に出せました。
真空管の音なのですが、いわゆる「CDで聴けるギターらしい音」が出せます。プリセット名がバンドやヒット曲の名前になっていて、思わずその曲や、そのバンドのフレーズとかリフを弾いてしまいました。真空管にこだわったサウンドを目指しているだけではなく、トランジスタっぽい音、例えばローランドのJCっぽいサウンドとか、昔流行った線の細い感じの音色までしっかりとシミュレートしているのもさすがですね。
1台で幅広い音色を出したい人や、ギターヒーローが席巻していたあの頃のサウンドが好きな人にオススメです。
【SPEC】●真空管:12AX7EH ●インピーダンス:入力=470kΩ、出力=150Ω以下 ●入出力端子:インプット、アウトプット(L/ヘッドホンアウト、R、以上標準フォーン)、MIDIイン、MIDIスルー、XLRバランス(L/R) ●最大入力レベル:+20dBU ●電源:付属アダプター ●外形寸法:483(W)×45(H)×178(D)mm ●重量:2.5kg
Acme Audio
MTP-66
¥230,000(受注生産)
●問:㈱宮地商会M.I.D.
●TEL:03-3255-2888 ●http://www.miyaji.co.jp/MID
モータウンサウンド”の質感が加えられるチューブプリアンプ
正面に配置されたVUメーターから、ただ者ではない気配を感じました(笑)。
プリアンプのカテゴリーに入るようで、音色を変えるのではなく、マイクやギターをつなげて、真空管のテイストだけを音に足す使い方が良さそうです。
ソリッドのエレキをつなぐと、音の角が若干目立つ感じだったんですけど、セミアコのES-335をつないでみたらバッチリはまって、暖かみがグッと増してくれます。アウトプットを抑えながらインプットでギターの入力をどんどん大きくしていくと、音に心地良いサチュレーションが加わりました。
真空管らしさはマイクをつないだ時の方がわかりやすくて、オーバーロード気味にすると、音に張りが出せました。通すだけで音が太くなるので、後段に接続した機材でトーンを調整してあげると、さらにいい質感が得られると思います。
【SPEC】●コントロール:インプット、アウトプット、マイク/インスト切り替えスイッチ、リフト/グラウンドスイッチ、パッドスイッチ(ー15dB) ●入出力端子:インプット×2(標準フォーン、XLR)、インストスルー ●外形寸法:260(W)×180(H)×150.5(D)mm ●重量:5.2kg
VOX
VX50 GTV
¥27,500
●問:㈱コルグお客様相談窓口
●TEL:0570-666-569 ●http://www.voxamps.com/
真空管アンプの音色を10種類備えた、超軽量の小型アンプ
持ち上げた時に驚くほど軽かったので、当初は音質を疑っていたんですけど、いい意味で裏切られました。シミュレートの精度がとにかく半端く高いです!
VOX AC30やJCM800、ソルダーノなど、真空管アンプの音色が10種類入っています。一般的なモデリングアンプって、音は似ていても、ピッキングの反応が悪くてイライラすることが多いんですよ。でも、このアンプのレスポンスは真空管そのものという感じですね。これが「Nutube」という新しい真空管の実力なのでしょうか。ビックリしました。アンプモデルを切り替えた時に、スピーカーの鳴りや音圧の特性までオリジナルに近くなるのが素晴らしいですね。
内蔵のエフェクトも秀逸で、レコーディングでそのまま使えそうです。ハイファイ系ではなく、コンパクトエフェクターの名器を再現した感じの音で、「よくここまでやったな!」と感心しました。
【SPEC】●真空管:Nutube ●アンプモデル数:11(10種類+ライン) ●エフェクト数:8 ●プリセットプログラム数:11 ●入出力端子:インプット、フットスイッチ(以上標準フォーン)、ヘッドホン、AUXイン(以上ステレオミニ)、USB(タイプB) ●外形寸法:354(W)×313(H)×208(D)mm ●重量:4.1kg
Audient
Sono
オープンプライス(¥46,500前後)
●問:オールアクセスインターナショナル㈱
●support@allaccess.co.jp ●http://allaccess.co.jp
多彩なアンプサウンドがゼロレイテンシーで録れる、 真空管を搭載したオーディオインターフェイス
これは、他の製品とはコンセプトが違う面白いオーディオインターフェイスで、「真空管プリアンプ+オンボードのパワーアンプやキャビネットシミュレーター」という表現がしっくりくるもしれません。
基本的な音作りを本体のプリアンプ部で行なってから、専用のソフトウェア上でパワーアンプとキャビネットの鳴りを調整します。この“手元のプリで音を作っていく”感じが、ギタリストにすごくマッチすると思いました。レイテンシーがまったくないのも特筆ものです。
真空管のテイストも、しっかりと出ていました。プリ部はギターアンプというよりも、高級なコンソールのチャンネルストリップでEQをイジるような感じで、音作りをしていて楽しいですね。ソフトウェア上では、キャビとマイク、ルームアンビエントなどがコントロールでき、デザインと操作がわかりやすくて、直感的に音作りができました。
【SPEC】●真空管:12AX7 ●接続:USB 2.0(Type C) ●最大録音・再生チャンネル数:録音10、再生4 ●音質:最高24ビット/96kHz ●入出力端子:インプット×3(XLRコンボ×2、標準フォーン)、オプティカルイン、アウトプット×(L、Rステレオ)、リアンプアウト(標準フォーン)、ヘッドホン ●外形寸法:229(W)×67(H)×165(D)mm ●重量:1.25kg
Radial
Firefly
¥108,000
●問:㈱エレクトリ
●TEL:03-3530-6181 ●https://www.electori.co.jp
音の輪郭をハッキリさせて、押し出し感が加えられるチューブDI
これを通すと、音がすごく太くなって、存在感が増してくれますね。押し出し感も強くなって、音の輪郭がハッキリします。僕が普段使っている、マンレイのチューブDIがハイファイ系の音なのに対して、こちらは全体の質感をうまく整えてくれる感じですね。ひと言で表わすと、カッコいい音になりました。
インプットがAとBの2系統あるので、宅録でギターとベースをつなぎっぱなしにしておいて、演奏する方だけをオンにするというように使えば便利でしょうね。Bの入力の方がゲインが高くて、真空管特有のザラッとしたサチュレーションが得られました。倍音がギュッと乗ってくるようなサウンドなので、これを通してベースを録音したら、ミックスの時も低音の処理がしやすいと思います。
他にも、DIなのにトリムツマミがあったり、インサートやAUXアウトも付いていたりと、多機能なのがうれしいですね。
【SPEC】●真空管:12AX7 ●コントロール:トリム×2、ローカット、アウトプット、フェイズスイッチ、グランド/リフトスイッチ、AUXポスト/プリスイッチ、DRAG ●入力ゲイン:最大20dB ●入力インピーダンス:22kΩ〜500kΩ(DRAGオン)、3.9MΩ(DRAGオフ) ●出力インピーダンス:150MΩ ●外形寸法:146(W)×45(H)×210(D)mm ●重量:1.8kg
Marshall
JVM215C
¥230,000
●問:㈱ヤマハミュージックジャパンお客様コミュニケーションセンターギター・ドラムご相談窓口
●TEL:0570-056-808 ●http://www.marshallamps.jp/
真空管のニュアンスを継承した、モダンなトーンのコンボアンプ
とにかく多機能で使い勝手がいいです。音もオールマイティで、どんな音色にしても使えるアンプだと思いました。
見た目は2chなんですけど、1chごとに3つのモードを搭載しているので、実質的には6chのように使えます。サウンドバリエーションも豊富で、クリーン、クランチ、リードと何でもいけます。
マーシャルらしい真空管のニュアンスはしっかりと継承していながらも、トーンはモダンな印象でした。低域がガッツリ鳴って、かつレンジも広いので、オールジャンルで使えます。付属のフットスイッチでチャンネルの切り替えや内蔵リバーブのオン/オフができるんですけど、MIDIスイッチも付いていて、他のMIDIコントローラーから音を制御できるのも便利だと思いました。
エフェクトループやラインアウトも搭載しているので、宅録からライブまで、これ1台あればバッチリでしょうね。
【SPEC】●プリ管:ECC83×4 ●パワー管:ECC83、EL34×2 ●出力:50W ●スピーカー:12"×1 ●コントロール:ゲイン×2、3バンドEQ×2、プレゼンス、チャンネルボリューム×2、リバーブ×2、レゾナンス、マスターボリューム×2 ●入出力端子:インプット、センド/リターン、スピーカーアウト×5、アンプイン/アウト、MIDIイン/アウト、ラインアウト ●外形寸法:605(W)×510(H)×265(D)mm ●重量:26.5kg
Marshall
DSL1H
オープンプライス(¥33,000前後)
●問:㈱ヤマハミュージックジャパンお客様コミュニケーションセンターギター・ドラムご相談窓口
●TEL:0570-056-808 ●http://www.marshallamps.jp/
小型ながらパワーと音圧感を備えた1W出力のアンプヘッド
「出力1W」と聞いて、音を出す前は「どうなんだろう?」と思っていたんですけど、実際に弾いてみてビックリしました。
パワーと音圧感があって、サウンドも「まさにマーシャル!」という感じです。こんなに小さいのに、しっかりとチューブらしさが出ているのは、さすがのひと言ですね。エミュレートアウトも付いているんですけど、ここからの音が意外に良かったので、オーディオインターフェイスに直接つなぐだけで、気持ちいい音で録音できました。
「キャビネットに接続してマイク録りをするけど、音量は下げたい」という場合に、出力を0.1Wにまで落とせるのも便利ですね。あと、Tone Shiftというボタンを押すと中域が太くなるので、ソロを録る時にオンにするのがオススメです。
他にも、リバーブやエフェクトループが付いていたり、2ch仕様だったりと、小さいのに至れり尽くせりの1台ですね。
【SPEC】●プリ管:ECC83×2 ●パワー管:ECC82 ●出力:1W ●コントロール:チャンネルボリューム×2、ゲイン、トーンシフト、3バンドEQ、リバーブ、ローパワー ●入出力端子:インプット、センド/リターン、スピーカーアウト、3.5mmエミュレートアウト、3.5mmAUXイン ●外形寸法:360(W)×210(H)×215(D)mm ●重量:5.6kg
Eden
Glowplug
オープンプライス(¥20,000前後)
●問:㈱ヤマハミュージックジャパンお客様コミュニケーションセンターギター・ドラムご相談窓口
●TEL:0570-056-808 ●https://jp.yamaha.com/products/brands/eden/index.html
ライン録りの信号に太さを与えてくれるペダル型チューブドライバー
もともとベース用のチューブドライバー的なものですが、ギタリストがモデリングアンプやアンプシミュレーターの前につないで使っても効果的みたいです。
今回は、プラグインのシミュレーターと併用して音を出してみたのですが、真空管らしいフレーバーがしっかり感じられて、音がグッと太くなりました。うまい具合に音の角が取れて、それでいて引っ込まないという、真空管独特の挙動がうまく再現されていますね。
ツマミはボリュームも含めて4つ用意されていて、どれも直感的に操作できるので、マニュアルを読まなくてもすぐに好みの音が作れました。CROSSOVERという、歪みを加える周波数帯を調整できるツマミや、原音とエフェクトの割り合いを決められるMIXツマミ、真空管のドライブ具合を微調整できるWARMTHツマミを組み合わせて、サウンドのニュアンスを細かく設定できます。
ベースにつないでみたら、ローエンドがうまく締まってくれたので、ミックスで余計な低域のブーストをしなくても済みました。些細なことかもしれませんが、ACアダプターが15V仕様なので、ヘッドルームに余裕がある感じがしますね。
「基本的な音作りは他のシステムで行なって、音に暖かみだけを足したい」という人にオススメです。あと、今回は試せなかったんですけど、ハードのアンプシミュレーターの前につなげると、入力音が太くなって余計なEQを使わずに済みそうなので、音作りが楽になるでしょうね。
↑コントロールは4つのみとシンプルだが、サチュレートさせる帯域を選択できるCROSSOVERや、原音とエフェクト音をブレンドするMIX、歪みの強さを微調整するWARMTHを組み合わせて、細かい音作りが行なえる
【SPEC】●真空管:12AX7 ●入出力端子:インプット、アウトプット(以上標準フォーン) ●コントロール:WARMTH、CROSSOVER、MIX、ボリューム ●電源:付属ACアダプター(15V) ●外形寸法:120(W)×89(D)×51(H)mm ●重量:0.5kg
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