GREEN ROOM FESTIVALでも堂々としたパフォーマンス

グラミー受賞の新世代ソウル・シンガー=リオン・ブリッジズ、フジロック以来約3年ぶりの日本公演でファンを魅了!(2019年5月24日(金))

グラミー受賞の新世代ソウル・シンガー=リオン・ブリッジズ、フジロック以来約3年ぶりの日本公演でファンを魅了!(2019年5月24日(金))

2019/05/28


リオン・ブリッジズリオン・ブリッジズ

写真:Masanori Naruse

リオン・ブリッジズ
リオン・ブリッジズ

米テキサス州フォートワース生まれのソウルマン、リオン・ブリッジズ(29歳)が、2016年のフジロック以来約3年ぶりに日本公演を行なった。まず5月24日(金)の会場は恵比寿・LIQUIDROOMで、単独来日公演としてはこれが初。そして翌25日(土)は横浜赤レンガ倉庫特設会場にて行われたに堂々ヘッドライナーとして出演した。ここではLIQUIDROOMの単独公演の模様を中心にお伝えしよう。

今回の日本公演で初めて観た多くの人は、まずこう思ったに違いない。「こんなに踊って歌う男だったのか?!」と。オープナーの「イフ・イット・フィールズ・グッド(ゼン・イット・マスト・ビー)」から彼は終始ステージを動いて、よく踊る。スローな曲であってもじっとしておらず、カラダをしなやかに動かして歌う(スロージャム系であんなに動いて歌う人は珍しい)。自分はフジでも観ているし、リオンがフィーチャーされたODESZAの「Across The Room」や、『グッド・シング』のリード曲「バッド・バッド・ニュース」のMVでも彼のダンスがフィーチャーされていたので驚きこそしなかったが、今回の公演で改めてリオンのソウル表現にダンスは切り離せないものだということがよくわかった。そして、その様はセクシーでもあった。

バンドはギター×2、ベース、ドラム、キーボード、そしてコーラスとパーカッションを兼ねる男女ふたり。鍵盤奏者は曲によってサックスも吹く。この7人のうちギタリストのうちのひとりのみ白人だ。それぞれの技量は非常に高く、バンドとしての音に厚みがある。ギタリストはブルーズのソロも泣き要素ありで色っぽく聴かせたりしていた。

全曲に触れる紙幅はないが、ざっと印象に残った場面のみ書き留めておこう。弾んだテンポ感の「イフ・イット・フィールズ・グッド(ゼン・イット・マスト・ビー)」はオープナーに相応しく、観る側の気持ちも弾ませたはず。ジャジーな「バッド・バッド・ニュース」はフロウの操りとコーラスの入りが印象的。軽快な「ミシシッピ・キッシズ」は間奏の鍵盤とブルーズ・ギターがレイドバックしたいい感じに。驚いたのは4曲目の「ベター・マン」で、1stアルバムではいかにも50〜60年代あたりのビンテージ感に満ちたソウルナンバーとして収録されていたわけだが、それとは大きく異なるモダンなアレンジが施され、ダンサブルな曲として生まれ変わっていた。

5曲目「シャイ」はリオンのファルセットが美しく、続いての「カミング・ホーム」は両手でマイクを握って歌うあたりにも情感がこもっていてグッときた。こういうテンポの曲になると、デビュー当時に「サム・クックの再来」とよく言われていたことを思い出さずにいられない。続いての「ビヨンド」は個人的に2018年に聴いたあらゆる曲のなかで一番好きだったりするのだが、やはりこういう素朴なスロー曲でリオンのヴォーカルの味わい深さがもっともよく出るように思った。

現代ジャズ的なドラムとコントラバスの奥行きある音にのせた「ジョージア・トゥ・テキサス」でのリオンの歌唱はこの夜もっともディープなもので、鍵盤奏者が間奏で吹いたサックスもそれに相応しかった。一方、「フォーギヴ・ユー」や、パーティー感満載のカリビアン・タッチなダンス曲「ユー・ドント・ノー」にはリオンのポッパー的な一面が表われたりも。「ユー・ドント・ノー」ではそれまで後ろでコーラスとちょっとしたパーカッションを担当していた女性ブリットニ・ジェシーと、同じく男性のブランドン・ミルズが前に出てきてヴォーカルをとり、非常に華やいだ雰囲気になった。因みにブリットニ・ジェシーは1stアルバム『カミング・ホーム』からリオンの曲に華やぎを加味している女性で、その佇まいと美しさでフジロックでも強い印象を残したものだった。そして本編は「スムース・セイリン」と「フラワーズ」というリズム&ブルース〜ロックンロール的なノリも持った軽快な曲で観客たちを巻き込むようにして終了。

だが、最大の感動はアンコールで訪れた。1stアルバムの最後に収められていたリオンにとっての最重要曲「リヴァー」。フジでも最後に弾き語りで表現されたこの曲を、今回はリオンがエレキギターを弾いて歌い、その横にブリットニが並び、そしてほかのメンバーたちはステージ向かって左側に集まる形をとりながらコーラスを担当。楽器はリオンのギターと、あとは鍵盤だけで、まさしくリオンの祈りのような歌が心に深く沁み入ってきたのだった。

さて、翌日の。ここでは前日の単独公演より30分ほど短い構成だったが、その分、名場面的なところがギュッと凝縮されたライブとなった。広々としたステージを彼は終始、生き生きと動き回っていたし、おまけに途中で海上に花火があがったりもして(それは彼側の演出だったわけじゃないが)、よりエンターテイメント性といったものが強く感じられもした。デビュー当時とは違い、現在の彼のライブにはソウルだけでなくブルーズやロックやポップの要素もあって、だから例えば彼がオープニングアクトを務めたローリング・ストーンズや、またはヴィンテージ・トラブルなんかを好きな人もグッとくるであろう開かれた感覚がある。でありながら、やはりそこにいるひとりだけに歌いかけているような感覚を今も大事にしているところもある。まだ20代。3年先、あるいは5年先、10年先に、リオンはどんな歌をどんなふうにうたっているだろうか……。とにかく長く追いかけたいシンガーだ。

(文: 内本順一)

<完全版ライヴレポートはこちら>
http://www.sonymusic.co.jp/artist/leonbridges/info/507052

<セットリスト>
1.イントロ/イフ・イット・フィールス・グッド(ゼン・イット・マスト・ビー)| Intro/If It Feels Good (Then It Must Be)
2.バッド・バッド・ニュース | Bad Bad News
3.ミシシッピ・キセズ | Mississippi Kisses
4.ベター・マン | Better Man
5.シャイ | Shy
6.カミング・ホーム | Coming Home
7.ビヨンド | Beyond
8.ブラウン・スキン・ガール | Brown Skin Girl
9.ベット・エイント・ワース・ザ・ハンド | Bet Ain’t Worth The Hand
10.ジョージア・トゥ・テキサス | Georgia To Texas
11.フォーギヴ・ユー | Forgive You
12.ライオンズ | Lions
13.ユー・ドント・ノウ | You Don’t Know
14.リサ・ソーヤー | Lisa Sawyer
15.ホールド・オン | Hold On
16.ミセス | Mrs.
17.スムース・セイリン | Smooth Sailin’
18.フラワーズ | Flowers
<アンコール>
19.リヴァー | River

『Good Thing』 | グッド・シング
【リリース情報】
リオン・ブリッジズ | Leon Bridges
『Good Thing』 | グッド・シング
発売中(2018年5月)
<国内盤CD(全11曲)>
SICP-31169 / 2,400円+税
高品質Blu-spec CD2仕様
ボーナス・トラック1曲収録
解説・歌詞・対訳付き

<配信/輸入盤(全10曲)>
アルバム『グッド・シング』試聴・購入リンク:
https://lnk.to/GoodThing_LeonBridgesAW
 
リオン・ブリッジズ

【リオン・ブリッジズ:プロフィール】
http://www.sonymusic.co.jp/artist/leonbridges/profile/

・米テキサス州出身ソウル・シンガー。レコード会社40社による争奪戦の末2014年に米コロムビアと契約。
・デビュー前に出演した「インタラクティブ」「映画」「音楽」の複合イベント『SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)』では最優秀パフォーマンス賞にあたる「The Grulke Prize」を受賞。
・2015年のデビュー・アルバム『カミング・ホーム』は全米初登場6位にランクイン、テレビCMにも2曲起用され、第58回グラミー賞で「最優秀R&Bアルバム」部門に、第59回グラミー賞では「最優秀ミュージック・ビデオ」部門にノミネートされた。
・マックルモア&ライアン・ルイスやオデッザの楽曲へのゲスト参加や、ファレル・ウィリアムスの英Apple Music Festivalやハリー・スタイルズの南米ツアーのサポートなど、ジャンルを超えた様々なアーティストとのコラボレーションも話題を呼んでいる。
・フジロック・フェスティバル'16で初来日、日本のファンに大歓声で迎えられた。
・約3年ぶりとなる待望の2ndアルバム『グッド・シング』を2018年5月発売。
・2019年2月に行われた第61回グラミー賞で「最優秀R&Bアルバム」部門と「最優秀トラディショナルR&Bパフォーマンス」部門にノミネートされ、見事「最優秀トラディショナルR&Bパフォーマンス」部門にて初受賞。

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