収録曲の制作エピソードを中心に、今のmajikoの世界観に迫る!
majiko『寂しい人が一番偉いんだ』インタビュー
majiko『寂しい人が一番偉いんだ』インタビュー
2019/06/25
majikoが、レーベル移籍後としては初となる3年5ヶ月ぶりのフルアルバム『寂しい人が一番偉いんだ』をリリースした。今作にはNETFLIXオリジナルアニメシリーズ『7SEEDS』のエンディングテーマ「WISH」を始め、ドラマ『限界団地』主題歌の「ひび割れた世界」など、全12曲が収録されている。ここでは、収録曲の制作エピソードを中心に、majikoが本アルバムで描きたかった世界観に迫ってみたいと思う。
取材:東 徹夜(編集長)
──まずは8曲目「春、恋桜。」から質問していきたいと思います。和を感じる素敵な曲ですよね。
majiko:ありがとうございます。実は、もともとは他の曲のサビだったものを持ってきて作った曲なんです。それは無意識に “和” を感じる進行だったんですけど、やっぱり “和” だと5、7、5が出てきて。それに歌詞を当てはめていったら恋の歌になって。だから「こういう曲を作るぞ!」って言ってできたわけではないんですよ。
──majikoさんの感じる “和” の進行というと?
majiko:私も感覚的に思っているだけなんですけど、「テン、テン、テン、テン」というお琴で鳴っていそうな。
──そういうのは「ヨナ抜き音階」でしたっけ?
majiko:たぶん、そうですね。こういう音階って、歌詞がスラスラ出てくるんですよね。
──歌詞は頭の方から書いていったのですか?
majiko:いえ、サビの「こんな冷たくて世知辛い世界で〜」の部分が最初にできて。そこから本当にテンション高くAメロから作っていきました。
──歌詞を読むと、時代設定はかなり昔なのかとも感じましたけど。
majiko:いえ、なんか、もろ昔だと私的にはつまらないかなと思っていて。なので、現代の自分が受けた体験だったり、妄想だったりで書いています。あと、奥ゆかしい感じも入れようと思って書きました。
──たしかに奥手の女性という感じですよね。majikoさんも恋愛すると同じタイプですか?
majiko:奥手ですね。絶対言えないっていうか。絶対告白できないっていうか。でも、妄想はたぎるみたいな(笑)。
──(笑)。この曲のアレンジャーは横山さんですけど、横山さんとはどのようなやり取りを?
majiko:まず、私が結構作り込んでいたデモがあったんですけど、それをもう少しブラッシュアップしてほしいとお願いをして。で、欲を言うと「このあたりはお祭りっぽく、太鼓の音が鳴っていたらいいな」とか、そういったことも伝えて。
──以前に、デモはCubaseで作っているとお聞きしましたが、今回も?
majiko:そうですね。
──どの程度Cubaseで作られるんですか?
majiko:ドラム、ベース、上モノで鳴っているものまで、飾りも含めてバチバチに作りますね。
──ちなみに、この和テイストなフレーズはデモ段階では何で作っていたんですか?
majiko:ギターですね。
──モデルは?
majiko:FREEDOM CUSTOM GUITAR RESEARCHのクロちゃん。それを最終的に横山さんがいい感じの音に差し替えてくれて完成しました。
──その他、デモ作りではどのような音源を?
majiko:Cubaseに入っているものだと「HALion Sonic」のピアノとかですかね。
──アレンジが完成した後、レコーディングではこの曲のみを録るのですか?
majiko:そうですね。この曲の演奏をバンドでフルに録っていって、最後に歌を録る感じでした。
──歌はすんなり録れましたか?
majiko:そうですね。3〜4回くらいは歌ったと思いますが、いつも通りな感じです。
──ところで、横山さんといえば、アルバムの最後に収録されている「WISH」の楽曲も担当されていますよね。こちらは作詞がmajikoさんで、NETFLIXのアニメ「7SEEDS」のエンディングにもなっているそうですが。
majiko:はい。このタイアップの話が決まった時に、まず原作の漫画を番外編も含めて買って読ませてもらいました。そうしたら、私の人生の中でも3本の指に入るくらい面白くて。「この7SEEDSのエンディングの歌詞を書かせてもらえるなんて!」って、すごくうれしかったですね。でも、完全にファンになってしまって、歌詞を書くのが逆にすごく難しくなって。あれもこれも入れたいみたいになってしまったんです。
──思い入れが強くなると、どうしてもそうなりがちですよね。
majiko:そうですよね。なので、最終的にはメインの2人の恋愛模様に立ち戻って、シンプルな歌詞を書こうと思って。
──ちなみに最初はどんなことを詰め込もうと思ったんですか?
majiko:もっと、この作品を知っている人だけがわかるような世界を入れようと難しく考えていたんです。でも、「WISH」のデモは音数も少なかったし、これだと間に合わないというか、説明がちになっちゃうなと思い直して。それで、シンプルでわかりやすいストレートな歌詞を考えていきました。
──今振り返ってみて、一番お気に入りの歌詞を挙げるとすると?
majiko:どこだろう。やっぱり最初の「もし一つ願いが叶うなら、きっとぼくは きみの夢が叶うようにって 願い事をするんだろうな」ですかね。私としてはこういった前向きな感じの歌詞を日本語で書くのは初めてに近くて、ちょっと照れるんですけど。
──この歌詞はすぐに思いついたんですか?
majiko:はい。
──レコーディングはいかがでしたか?
majiko:そうですね。毎回、私はAメロ、Bメロ、サビという感じでブロックごとに録音していくんですけど、順調だったと思います。
majiko:いえ、面識があったというよりは、私がカンザキイオリさんの「命に嫌われている。」というボーカロイド曲をカバーしていて。それがスタッフさんの間で結構好評だったみたいなんです。それで、カンザキイオリさんにオファーをしたという流れですね。
──カンザキさんからデモが届いて、最初に聴いた時の印象はいかがでしたか?
majiko:歌詞がすごい素敵だなと思いましたね。もともと「命に嫌われている。」も歌詞が好きで歌わせてもらっていたんですけど、ここでも「カンザキ節が出とるわ〜」って。
──「1.寝る前は〜」、「2.友達に優しく〜」と、まるで家訓のような歌詞がユニークですよね。
majiko:なんか面白いですよね。こういう人生観とか、生死をテーマにされている作家さんなんだと思います。
──カンザキさんとは会ってお話はされたんですか?
majiko:いえ、歌詞と曲が来て「いえーぃ!」ってなっただけです(笑)。
──デモの仮歌はボーカロイドが入っているんですか?
majiko:そうです。ボーカロイドで歌ってあって、それを「歌ってみた」みたいな要領で完成させていきました。
──デモのキーとmajikoさんの音域はぴったり合っていたんですか?
majiko:1個ぐらい下げた気がしますね。あと、サビのメロディーなんかも変わったりしています。
──それはどうして?
majiko:サビのメロディーが息が続かなくて。そこはちょっと抜いてもらったりして。
──ところで、この曲をアルバムの1曲目に持ってきた理由というのは?
majiko:実は「ワンダーランド」や「WISH」を1曲目にしようかという案もあったんですけど、そうするとどうしても「エミリーと15の約束」が美味しく聴けるところがなくなってしまうと思って。で、シンプルにリード曲だし、1曲目に持ってきました。
──たしかに、1曲目でこの歌詞はインパクトもありますよね。昭和生まれの人が書いたのかなって思いましたけど、カンザキさんはおいくつなんでしょうね。
majiko:たぶん私よりも年下だと思いますよ。
──それは驚きですね。ちなみにmajikoさんが「エミリーと15の約束」の中で一番共感の持てる歌詞は?
majiko:結構全部なんですけど、個人的に大事にしたいと思うのは11番の「涙は見せびらかしてはいけない」ですかね。
──女の涙は軽々しく見せるな的な?
majiko:そうですね。なんか、そういうのに逃げたくないというか、武器にしたくないというのはあります。
──それは昔から思っているのですか? それとも最近?
majiko:昔から、女の子だからとか、そういう意識はあまりなかったと思います。
──さて、今回のアルバムには作詞/作曲ともにmajikoさんがクレジットされているものも多いですが、特に生み出すのに苦労した曲を挙げるとすると?
majiko:歌詞を書くことに関しては「マッシュルーム」ですかね。
──というと?
majiko:「マッシュルーム」は、スタッフの方から「大バラードを書いてみて!」とオーダーされて作り始めたんですけど、なかなか作れなくて。それで「ちょぴ(蝶々P)なら書ける!」って、最終的にはお願いして(笑)。
──仲がいいんですか?
majiko:EXIT TUNESにいた時から「ちょぴ」も「とみき(みきとP)」もいて。なので、昔からの戦友です。
──蝶々Pさんのどんなところに期待して歌詞をお願いしたんですか?
majiko:私は、ちょぴの書く「男の女々しい感じ」が好きで。この曲の歌詞でいうと、サビの「この世界ごと全部僕の物にして 心から笑えたら君は要らないよ どうせなら夢のまま」とか。そういうエゴ感みたいなのが。
──では「マッシュルーム」は歌詞から作ったのですか?
majiko:いえ、毎回私の場合は曲とメロディーが先にできて、そこに歌詞を付けていくんです。なので、ちょぴにお願いした時は「やっぱ、慣れないことをするとダメだな」みたいに思いました。ただ、最終的にNAOTOさん(ヴァイオリニスト/アレンジャー)がカッコ良くアレンジしてくれたし、結果的には自分の中の引き出しがひとつ増えたような気がして良かったです。
──NAOTOさんのアレンジで好きなところは?
majiko:やっぱり、弦ですね。もう「さすが」としか言えませんけど。もともと『ROCKIN' QUARTET』でよくしてくださったのがきっかけなんですけど、その時から弦がとにかく素晴らしくて。弦のレコーディングにも立ち会ったんですけど、「すげぇー」って思いながら見てました(笑)。
──「マッシュルーム」は歌詞作りが大変だったようですが、曲作りで難航したものはありましたか?
majiko:「ワンダーランド」ですかね。これは私の「好き」を “どのようにメジャーなものに入れ込めるか” をすごく悩みました。
──「好き」をメジャーなものに入れ込めるというのは、具体的には?
majiko:「好き」というか、自分のマニアックな部分だけだとダメじゃないですか。私としてはもう少し間口を広めたいと思っていたし。もう少し聴きやすくといった方がいいかもしれませんけど。
──平たく言うと「一般ウケしそうな」ということ?
majiko:自分の中ではカラオケで歌いやすいというのをテーマにしていて。今回、「ワンダーランド」では弦とクラリネット、トランペットが入っているんですけど、そのアレンジも最初はMIDIで細かく打ち込んでいて。そのフレーズを考えるのもすごく苦労しましたね。頭のネジを外さないと考えつかないというか、でも、すごく勉強になりました。
──こういったフレーズは専門知識が必要そうですよね。
majiko:私はスウィング・ジャズとか、スウィング・エレクトロが好きなので、今回はそういったものに手を出してみました。でも、めっちゃ難しかったです。
──最初にMIDI打ちした時は、どんな音源を使ったんですか?
majiko:Native Instrumentsの「Battery」とか、「MASSIVE」とか。あと、「KONTAKT」も使いました。
──Nativeの製品が多いんですね。
majiko:色んな人にオススメしてもらったんです。便利ですよね。
──制作環境はMacですか?
majiko:そうです。今はMacでMOTUのインターフェイスを使っています。
──ところで、今回のアルバムのタイトル『寂しい人が一番偉いんだ』はいつ頃決まったのですか?
majiko:これは、かなり私が病んでいる時に浮かんだテーマが元になっていて。落ち込んでいる時に、この世界で偉いのは、賢い人でも、優しい人、美男美女でも、金持ちでもないと思って。それで、「私という寂しい人は賞賛されるべきだろう、だって、こんなに悲しいんだもん」という思いに至ったんです。それをスタッフとの飲みの席で話したら、「それいいじゃん!」って(笑)。その後、これを元にタイトルも色々と考えたんですけど、なかなか今までのアルバムのような英語のワンワードが出てこなくて。それで、もうこのテーマをそのままタイトルにしちゃおうとという感じで決まりました。
──では、収録曲の多くはこのテーマを元に作られたわけですね。
majiko:すでに曲作りは進行していたんですけど、私が作ったものは特にそうですね。寂しい人に向けてというか、もともと私が寂しい人なんで(笑)。
──(笑)
majiko:なので、そういう気持ちで「ワンダーランド」とか、「パラノイア」、「ミミズ」は作ってましたね。で、「MONSTER PARTY」とかはライブ要員って感じで。
──ワンマンライブも始まりますよね。
majiko:始まりますな〜。
──ライブは楽しみですか?
majiko:はい。やっぱり、今回のアルバムではライブを想定して作った曲もあるんですけど、ライブで歌うとレコーディングでは気付けなかったこともたくさん出てくるんですよね。感情の高ぶりってとても大切で、今からライブで曲がどう生き生きとするんだろうって自分でも楽しみですし、それをお客さんと一緒に過ごすこともすごく楽しみです。
──わかりました。では、最後にあらためて今回のアルバムの聴きどころを一言お願いできますか。
majiko:そうですね。自分が書いた曲はもちろんですけど、今回カンザキイオリさんとか、満を持してとみきとか、ちょぴの作詞とか、haruka nakamuraさんとか、バラエティーに富んだ『AUBE』に比べると、焦点を絞ったというか、ピントを絞った世界観のアルバムになったと思っています。その世界観をぜひとも楽しんでもらえたらと思っています!
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2019年6月25日〜2019年7月15日23:59まで
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majiko ライブ・イベント情報
majikoが、本日渋谷WWW Xにて行われたアルバム「寂しい人が一番偉いんだ」のリリースツアー初日公演にて、8月からのアコースティックツアー「majiko PRESENTS “寂しい人が⼀番偉いんだ” RELEASE TOUR ~SALUTE YOUR LONELINESS~ 寂夏2019」を開催することを発表した。全国8か所を回るこのツアーは、majikoとギターとピアノによるアコースティック編成で、現在開催中の「majiko PRESENTS“寂しい⼈が⼀番偉いんだ”RELEASE TOUR ~SALUTE YOUR LONELINESS~」の延長戦となるとのこと。モバイルFC「zikka」では本日21時よりチケット先行予約受付が開始となっている。また、併せて12月15日に恵比寿LIQUID ROOMにて今年最後のライブを開催することも発表となっている。こちらの詳細は後日発表される。この夏から冬にかけてmajikoの活躍から目が離せない!
「majiko PRESENTS “寂しい人が⼀番偉いんだ” RELEASE TOUR ~SALUTE YOUR LONELINESS~」(Band Set)
7月4日(木)愛知・名古屋APOLLO BASE
7月14日(日)大阪・大阪MUSE
「majiko ニューアルバム「寂しい人が⼀番偉いんだ」発売記念ミニライブ&サイン会」
7月6日(土)タワーレコード名古屋パルコ店
7月13日(土)タワーレコード梅田NU茶屋町店
7月18日(木)タワーレコード新宿店
「majiko PRESENTS “寂しい人が⼀番偉いんだ” RELEASE TOUR ~SALUTE YOUR LONELINESS~ 寂夏2019」(Acoustic Set)
8月15日(木)兵庫・神戸ニューラフレア
8月16日(金)静岡・浜松Cafe AOZORA
8月28日(水)北海道・札幌KRAPS HALL
8月29日(木)宮城・仙台SENDAI KOFEE
9月5日(木)広島・ヲルガン座
9月6日(金)京都・SOLE CAFÉ
9月11日(水)福岡・LIV LABO
9月17日(火)東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGE
モバイルFC「zikka」チケット先行予約受付
https://zikka.majiko.net/ticket/saluteyourloneliness_tour2019.php
一般発売:2019年7月14日(日)
「タイトル未定」(Band Set)
12月15日(日)東京・恵比寿LIQUID ROOM
後日詳細発表
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