映画化決定!
人間椅子、初の中野サンプラザで〈バンド生活三十年~人間椅子三十周年記念ワンマンツアー〉の千秋楽!(12月13日の金曜日)
人間椅子、初の中野サンプラザで〈バンド生活三十年~人間椅子三十周年記念ワンマンツアー〉の千秋楽!(12月13日の金曜日)
2019/12/14
人間椅子
PHOTO BY 西槇太一
PHOTO BY 西槇太一
SE「新青年まえがき」が大音量で響き、和嶋慎治(G&Vo)、鈴木研一(B&Vo)、ナカジマノブ(Dr&Vo)の3人がステージに姿を現わすと、観客はさっそく喜びを爆発させる。和嶋は4~5年前から祝祭の日のために準備していたという紋付袴、ナカジマは背中に人間椅子のロゴ刺繍を配した特別仕様の黒の鯉口シャツ、鈴木は“いつも通り”の黒の法衣といった装いで気合い十分だ。まずはミステリアスな「宇宙からの色」でオーディエンスを幻惑すると、彼らが次に放ったのは、荘厳でプログレッシヴな大曲「羅生門」。人間椅子の独創的な技を目の当たりにして、フロアはすでに興奮真っ只中である。
異端の音楽を奏でながら、観客の心を鷲掴みにするキャッチーな味を併せ持つのが人間椅子。演奏、世界観、パフォーマンスのどれをとっても、他に類を見ないライヴ・アクトだ。そのステージを体感するたびに、たったの3人でこんなにも厚みのある音が出せるのかと驚くばかりである。いざMCが始まると、マイペースで和やかなトークが展開するところも非常に面白い。
和嶋が軽妙な落語を披露することでお馴染みの「品川心中」で日本情緒を漂わせたかと思えば、不気味な緊張感がたまらない「芋虫」で存分に重低音を轟かせる3人。切れ味鋭いエロスとタナトスを炸裂させる「愛のニルヴァーナ」や鈴木の歌声が切実な臨場感を生む「悪夢の序章」といったベスト盤収録の新曲もライヴに新鮮なアクセントを加えていた。
本編中盤、MVの再生回数が300万回を超え、海外からの注目度も上昇中の「無情のスキャット」が披露されると、この日最大級の歓喜の声があちこちから聞こえてきた。その後も「芳一受難」のようなブ厚く物語性豊かな楽曲でオーディエンスを酔わせると、ナカジマがドラムを叩きながらパワフルな歌声を響かせる「地獄小僧」を合図に本編は終盤へ。3人の阿吽の呼吸はさらに素晴らしいものと化し、凄まじく猟奇的な「陰獣」やおどろおどろしくもポップな「人面瘡」といった必殺曲を惜しみなく連発する。最後は皆がお待ちかねの「針の山」がド派手に爆発、イントロとアウトロで客席に向けて銀テープが発射された祝宴の光景は、夢のような美しさだった。稀有なサウンドだけでなく、視覚的にも観客をたっぷり楽しませた今宵の人間椅子だった。
アンコールでは、昔話の語り部さながら、この寒い時期にぴったりの「雪女」、恐ろしい情景が眼前に浮かぶ「地獄」といった楽曲でファンを魅了。まだまだこの場を離れがたい観衆の大声援に応えて演奏されたダブル・アンコール「なまはげ」が妖しく趣深い余韻を生んだ頃、この濃密な宴の開演からすでに2時間半が経過していた。
文字通り、新旧の人間椅子の名曲群から精選されたベスト・ヒット・パレード。彼らの30年間の楽曲を網羅した集大成的なライヴは、最近彼らの虜になったばかりのファンも、長年彼らを応援し続けてきたファンも大満足の内容となった。観た後は必ずや晴れ晴れしい気分になれる。これこそが人間椅子のライヴの醍醐味だ。
和嶋はMCで、このツアー・ファイナルの模様が映画として公開されることを観客に告げている。果たしてどんな作品が出来上がるのか、続報が待ち遠しい。また、既報の通り、来年2月には初の海外公演がドイツおよびイギリスで開催される。その旺盛な活動を見ていると、30周年は一つの通過点でしかないと思えてくる。来年以降も彼らはお楽しみ満載の趣向で我々に喜びをもたらしてくれることだろう。軸のぶれない人間椅子は、この先も自分の信じる道をまっしぐらに突き進むに違いない。
TEXT BY 志村つくね
2019年12月13日(金)東京・中野サンプラザホール公演
〈バンド生活三十年~人間椅子三十周年記念ワンマンツアー〉
〈セットリスト〉
1. 宇宙からの色
2. 羅生門
3. 品川心中
4. 芋虫
5. 愛のニルヴァーナ
6. 死神の饗宴
7. 悪夢の序章
8. 命売ります
9. 無情のスキャット
10. 芳一受難
11. 深淵
12. 地獄小僧
13. 陰獣
14. 人面瘡
15. 針の山
EN1-1. 雪女
EN1-2. 地獄
EN2-1. なまはげ
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