2021年2月に結成30周年
L‘Arc~en~Ciel、30年前の1991年に1stライヴを行った日程に合わせ、5月29日(土)、当日5月30日(日)の2日間にわたり記念公演『30th L’Anniversary Starting Live “L’APPY BIRTHDAY!”』を開催!
L‘Arc~en~Ciel、30年前の1991年に1stライヴを行った日程に合わせ、5月29日(土)、当日5月30日(日)の2日間にわたり記念公演『30th L’Anniversary Starting Live “L’APPY BIRTHDAY!”』を開催!
2021/06/01
5月29日(土)
カメラマン:岡田貴之、石川浩章、河本悠貴
5月30日(日)
開演を待つ間、「♯ラルクハピバ」とハッシュタグ投稿を募ったファンからのお祝いコメントをLEDビジョンに表示。暗転のあと、いよいよ開演すると、初期から現在までのライヴやミュージックビデオをコラージュしたオープニング映像に続き、メンバーが登場。hyde(Vo)、ken(Gt)、tetsuya(Ba)、yukihiro(Dr)が4分割で大写しになり、大拍手に包まれる中「X X X」で妖艶に幕開けた。次曲「Caress of Venus」で180度ムードを変えて軽やかに転じると、「CHASE」「winter fall」「flower」とヒットシングルを次々と披露。飛沫感染防止のため声を出すことはできない中、ファンは大きな拍手を送り、公式グッズとして販売されたバットマラカスライト(※色の切り替えも可能)の他、今回初めて持ち込みを許可された鳴り物でリアクション。様々な制約がある中で、ファンと共に新しいライヴの形をつくりあげようとしていた。「三十路になりました、L‘Arc~en~Cielです」「こうやって会えて、うれしいね」としみじみ語り始めたhydeは、「どうなることやら……と思いましたけど、無事に“L’APPY BIRTHDAY!”を迎えることができました。来てくれてありがとうね」と感謝を述べた。
L‘Arc~en~Cielの場合、王道のヒット曲を並べてもセットリストは決して均一な印象にはならず、いかにバリエーション豊かな楽曲群を毎回シングルに選んできたか、またそれらを着実にヒットさせてきたかに気づかされる。加えて、久々の披露となる「metropolis」では、tetsuyaのハネるベースラインを筆頭に、艶のあるグルーヴにバンドの重ねて来た年輪を感じさせた。演出面では、ステージ全面を覆ってカーブを描く巨大な柵のようなLED装置、レーザー光線や火の特効を巧みに操り、洗練された異空間を立ち上げていた。「REVELATION」では、スモークと火柱がダイナミックに噴出。これまでのライヴであればオーディエンスの掛け声が欠かせない曲だが、ここでは鳴り物が活躍、一体感を高めていく。揺らめくトーチに囲まれ、神秘的な美しさを醸し出したのは「花葬」。「EVERLASTING」ではスモークが雲海のようにたちこめ、楽曲の幽玄な気配を視覚面でも表現した。幻想的なkenのギターソロによってその世界へと導かれていき、yukihiroの決然としたドラミングで鮮やかに始まった「MY HEART DRAWS A DREAM」は、暗闇から光の世界へと浮上していくイメージを喚起。かつて観客の合唱が感動を生んで来たこの曲を、大きな声で共に歌うことはできなかったが、hydeはファンを温かい眼差しで見つめていた。
「Driver‘s High」「HONEY」「READY STEADY GO」とアップテンポなナンバーを畳み掛け、猛スピードで駆け抜けていった終盤。まったくパワーの衰えることのないyukihiroの強靭なドラミングには驚嘆。小型ドローンがメンバーに接近しながら飛び回り、臨場感溢れる映像を捉えていたのも盛り上がりに加勢した。一旦ステージを去った4人の再登場を待っていると、ピアノのイントロが鳴り始め「あなた」がスタート。日本のみならず世界各国のファンがこの曲で歌っていたライヴ映像が映し出され、その情景への懐かしさがこみ上げる。4人が紡ぐ慈しみ深い音が絡み合い、観客は声援を送ることはできなくても手をウエーブさせてリアクション。「声は出せないけど伝わってるからね、気持ちはね」「まさか30周年、こうなると思いませんでしたが、今日の0時に発表された曲を今からやります。この曲はね、実はみんなのことを考えながらつくりまして。一緒にこの曲を歌いながらお祝いできたらいいなと思って。声出させないから計画狂いましたけど、光で僕らを照らしてもらっていいですか?」とhyde。スマートフォンのライトを使用しても構わない旨をファンに呼び掛けて、「その光がこうやって〝虹″(L‘Arc~en~Ciel)を呼んで、未来をつくっていけたらいいなと思ってこの曲をつくりました」との言葉から新曲「ミライ」をライヴ初披露、スクリーンには歌詞を投影した。闇から光へと手を伸ばし、希望を掴み取ろうとする前向きな言葉の数々が並んでいる。憂いを帯びつつも凛としたメロディーを持つ、混迷の時代にこそ響く真っ直ぐな曲。キャッチーさと芸術性を兼ね備えた、L‘Arc~en~Cielの新たな代表曲が生まれた、という印象だ。虹色のレーザーとミラーボールの輝きが、待ち望む明るい未来を象徴しているかのようだった。更に、直後に1stアルバムの表題曲「Dune」を披露してファンを驚かせ、大いに沸かせた。hydeがtetsuyaに接近して合図を送り、同時に反対方向へとターンする場面は初期を彷彿とさせる、見逃せない瞬間だった。
30年前の初ライヴを振り返りながら、「どういう心境だったか、まったく覚えてないですけど(笑)、その時もリーダーが段取りしてくれて」とtetsuyaの尽力を讃えるhyde。「最初は300人ぐらい?」(hyde) 「200人ぐらい?」(tetsuya)と2人は記憶を手繰りながら笑顔で対話した。1stライヴ当日にあたる5月30日(日)の公演では、「30年前の今日、大阪で初ライヴをやりまして。(難波)ロケッツ(※2016年に閉店)という素敵なライヴハウスで、そこでやるのも憧れでもあったんでね。すごいうれしかった。お客さんがきてくれてね。やっぱり……お客さんがいるのっていうのはいいよね」とhydeは、活動初期と現在とを重ね合わせているのか、感慨深そうな様子。その言葉を聞いて、tetsuyaもファンに向かって手を合わせ、感謝を表していた。この30歳の〝誕生日″公演は到達点ではなく、「まだ始まったばかりですから」とhyde。「こんなツンデレバンドを慕ってくれて、ありがとうございます」「30年やれているバンドは一握りしかいない。皆がここまで連れてきてくれたんだな、と思います。ありがとうございました」とファンに改めて感謝を述べ、届けたのは「虹」。ラストを「HAPPY BIRTHDAY」に繋げるアレンジで祝福ムードの中締め括った。tetsuyaによる恒例のバナナ投げは断念されたが、「ありがとう、まったね~!」の挨拶はいつも通り。ファンへの想いを全身から放つように、ステージを端から端までダッシュし、大きく手を振り続けていた。
2020年2月に、8年ぶりのアリーナツアーがコロナ禍で中断を余儀なくされて以来、4人が揃ったのは約1年3か月ぶり。高い熱量を感じさせるツアーだっただけに中断は惜しまれたが、バンドの勢いはあの後失われることなく動き続けていたのだ、と感じさせる記念公演だった。新曲「ミライ」は5月31日(日)より配信リリース開始。チャートアクションは早速良好な滑り出しを見せており、iTunes 総合トップソング ランキング、同ロックトップソング ランキングで共に1位を獲得した。また、5月30日(日)のライヴの模様は、会場に足を運ぶことができなかったファンも〝誕生祝い″に参加できるよう、バンド初のライヴ配信が決定しており、最終日の終演直後、日程は8月22日(日)であることが告知された。この2Days記念公演はゴールではなく、30周年イヤーの出発点。先行きが見通しづらい世情ではあるが、今後のL‘Arc~en~Cielの動きに注目していきたい。
文:大前多恵
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