3ヵ月ぶりのライヴで提示した、未知の可能性

圭、7月10日に日本橋三井ホールにて『THE SCRIPTURE -回帰の受難-』と銘打たれたライヴを開催!

圭、7月10日に日本橋三井ホールにて『THE SCRIPTURE -回帰の受難-』と銘打たれたライヴを開催!

2021/07/13

圭

写真:上溝恭香(TAMARUYA)

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7月10日、圭が東京・日本橋三井ホールにて『THE SCRIPTURE -回帰の受難-』と銘打たれたライヴを行なった。時期的にはあいにく東京都での4度目の緊急事態宣言発令が確定した直後、さまざまな音楽フェスの中止が相次ぐ中での開催となったが、万全の感染防止対策がとられ、客席の間隔が充分に確保された会場には熱心なファンが集結し、それを遥かに超える数多くの人たちが配信を介してこのライヴの目撃者となった。
 
公演タイトルに掲げられた英単語が意味するのは、聖書や経典といったもの。また、同夜の公演終了後、圭自身がツイッターを通じて発信した感謝のメッセージには「どんな受難があろうと演奏し続けたい、愛する曲たちを呼んだ新月の夜でした」という言葉が添えられていたが、ステージ上で演奏する圭のたたずまいは、困難に押し潰されそうになりながら苦闘しているというよりも、自らが信じ、愛する音楽を奏でられること、それを共有できることの喜びの大きさを感じさせるものだった。
 
盟友というべきヴォーカリスト、怜の音楽活動引退に伴いBAROQUEが無期限の活動休止の意向を示したのが2020年9月のこと。その直後にも、そして今年の4月にも圭は個人名義でのライヴを行なっている。こうした一連の機会は、新たな表現形態を単純に提示するものというよりも、時間経過とともに彼自身のヴィジョンや決意といったものがより明確かつ強固なものになっていくさまを示すものになっていたと思われる。たとえばそれは、ある種の覚悟をもって臨んだことによって固まった決意が、さらなる確信を伴ったものになっていく過程だったのではないだろうか。実際、去る5月の時点において、前回、前々回の公演を振り返りながら、圭は次のように語っている。
 
「自分でもあまり実感がないまま9月にBAROQUEの休止を発表して、その前から決まっていたソロ・ライヴをやって、それから4月までの間に7ヵ月あって……。その経過の中でようやく『ああ、俺、ホントにひとりになったんだな』と実感したんです。たとえば新しい曲を作ろうとして、いいメロディが思いついたとしても、『いい曲になりそうだな』と思った次の瞬間『だけど誰が歌うの?』ということになる。そこでシンガーを探すことも含めていろんな方法を考えたんだけど、どれも完全にはしっくりこなくて。ホントに毎日、自問自答を繰り返してましたね。ただ、すべてをポジティヴに捉えるとすれば、これはある意味、もっと難しいことにチャレンジできるチケットを授かったってことなんじゃないかなと思って。バンドのギタリスト出身のやつがひとりでやっていく。それがすごく大変なことも、それを上手く続けられる人がなかなかいないこともよく知ってるわけですけど、そこで挑戦するかしないかは自分次第じゃないですか。そこでチャレンジして、もしもそれをやり遂げられたなら、もっと価値のある何かが獲得できるのかもしれない。だから、そこへの挑戦権を神様からもらえたんじゃないかと捉えることにしたんです」
 
受難という重い言葉が指すのは、まさにそうした「より困難なことへの挑戦」なのだろう。去る4月のライヴの際と同様、今回の公演でも、ステージ中央から客席フロアへと長い花道がまっすぐに伸びていた。前回の公演においてこの花道が意味していたものについて、圭は「自分の中にある花道、つまりギタリストとシンガーとの境界線みたいなものでもあった。メッセージを発信するギタリストに憧れて歩み始めた俺が、あの花道を進んでいくことで自分の理想とする存在へと近付いていくかのような図をイメージしていた」と認めている。同時に彼は、根拠のない自信と抑えることのできない衝動に突き動かされた16歳当時の感覚が、さまざまな経験を重ねながら音楽的にも人間的にも成熟を遂げてきた今現在の彼自身の中に蘇ってきている、とも発言している。つまり、衝動と理性、理屈抜きの領域と理論的な裏付けを併せ持った状態で、いわば無邪気な確信犯であれるのが現在の彼ということになるのかもしれない。その花道の上を軽快なステップで躍動する彼の姿には、まるで現実と理想の間を自由に瞬間移動できるかのような身軽さが感じられた。
 
ステージは、深海を思わせるような青く暗い照明の中で幕を開け、その主人公たる圭はまずブラック・スーツで登場。トータル1時間50分ほどに及んだライヴには二度の場面転換が設けられ、その中盤にヒョウ柄のコートで花道を闊歩する彼の姿はまるでファッション・モデルのようにも見えたし、邪悪ささえも持ち合わせているかのように感じられた。が、後半に純白の衣装をまとって現れた際には、まさしく少年期の純真さを連想させるまばゆさが感じられた。もちろんそうした演出は、彼の音楽自体の多面性や、そこで表現される物事の二面性といったものとのリンクを形にしたものではあったはずだが、表現者としての彼の柔軟性、変幻自在とまで言うと大袈裟だろうが、パフォーマーとしての彼が秘めている未知の可能性といったものも感じずにはいられなかった。
 
そもそもはギタリストである彼が、ギターをほぼ弾かない曲もあった。最後の最後に披露された“ring clef.”では、ピアノ演奏をしながらの歌唱となった。BAROQUEの楽曲も披露されたが、BAROQUEもkannivalismも動いていなかった2009年に発表された2枚のソロ作品『silk tree.』『for a fleeting moment.』からの楽曲もライヴにおける重要な位置を占めていた。12年前に生まれたそうした楽曲たちについて、ステージ上の圭は「この曲たちと成長していきたい」と発言していた。この言葉は、今現在の彼が、12年前の理想をより確実に具現化できる術を持ち合わせているのを自覚できていることを意味しているのではないか、と思えた。そして重要なのは、このライヴが「BAROQUEの圭」のライヴではなく圭自身のライヴであること、同時に、何かとの差別化を図るようにわざわざソロ・ライヴと銘打たれたものではなく、単純に「圭のライヴ」だったということではないだろうか。
 
信頼のおける音楽仲間たちとの演奏をすべて終えると、圭は「また来月、会いましょう」と言い、その場を去った。再会の場は、8月12日、渋谷ストリームホール。すでにいくつかの境界線を越えてきたはずの圭が、そこでどのような進化と成熟の形を披露してくれるのかを楽しみにしていたい。また、今回の『THE SCRIPTURE -回帰の受難』については、7月13日(火)の23:59までアーカイヴ映像が公開(https://admin.galacaa.com/concert/221)されているので、是非今のうちにこの重要局面を目撃しておいてほしい。
 
文:増田勇一
ライブ写真:上溝恭香(TAMARUYA)
 
 
アーカイブ配信中

THE SCRIPTURE
-回帰の受難-
2021年7月10日(土) 日本橋三井ホール
 
Support Members
Guitar 結生(メリー)
Bass 高松浩史(THE NOVEMBERS)
Drums 山口大吾(People In The Box)
Keyboard&Manipulator hico
 
配信チケット
¥3,500 (税込)
 
視聴チケット 販売受付

配信システム「GALACAA」
7月13日(火) 20:00まで
https://admin.galacaa.com/concert/221
 
アーカイブ視聴期間
7月13日(火)23:59まで
 
GALACAA
https://www.galacaa.com
 
※チケット購入・ご視聴には事前にGALACAA会員登録(無料)が必要になります。
※初めてのチケット購入手続きには少し時間を要しますので、余裕をもって事前のご登録・チケット購入をおすすめいたします。
詳しくは https://www.galacaa.com/about
 

LIVE INFO.

2021年8月12日(木) 渋谷ストリームホール
「THE ELEGY -夜明けの明星-」
1st STAGE_TRANSPARENT UTOPIA.
2nd STAGE_WITH LOTS OF LOVE.
 
※詳細は後日発表いたします。

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