「境界」を認め、乗り越え、阻まれながらも祝福を鳴らし、自らにとっての音楽活動を再定義したキタニタツヤ

キタニタツヤ、7月10日(土)に東京・渋谷のTSUTAYA O-EASTにてツアー「BOUNDARIES」ファイナル公演を開催!

キタニタツヤ、7月10日(土)に東京・渋谷のTSUTAYA O-EASTにてツアー「BOUNDARIES」ファイナル公演を開催!

2021/07/14

キタニタツヤ

 

キタニタツヤ

 

キタニタツヤ

 

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キタニタツヤ

 

キタニタツヤ

 

最後のツアーから1年半ぶり。新しいアルバム「DEMAGOG」が発売されてからも、実に1年ぶりとなる東名阪ワンマンツアーを6月から実施したキタニタツヤ。そのファイナル公演が東京・渋谷のTSUTAYA O-EASTにて先週末7月10日(土)に開催された。

ツアーのタイトルは「BOUNDARIES」。和訳すると「境界」である。2020年からの1年強の活動で、今までにない制限や枠組みの中でもがいたことや、他者と繋がる事でより強く自分と他との境目を意識した事などから、キタニ自身が冠したタイトルだ。

6月に大盛況のもと行われた名阪の公演と同様、開場と同時に訪れた観客たちは勿論マスクを着用、公演の来場者に何かあった時のための個人情報登録を済ませ、周りの観客との距離を保つためにそれぞれの指定エリアに着席。2020年より前の「ライブ開演前」とは少し違った様子だが、その熱気はやはりライブハウス独特のモノを帯びていた。

このツアーのために本人が書き下ろしたSEが鳴り響き、Key. 平畑徹也、Dr. Matt、Gt. 秋好、 Ba.齋藤祥秀がステージイン。続いて、キタニタツヤが登場し、本人の独唱から始まった一曲目は「逃走劇」。日本のみならず世界的に人気を博する漫画家・カネコアツシの最新作「EVOL(イーヴォー)」とのコラボレーションとして発表されたロックチューンだ。続く二曲目には、2020年に世相が大きく変わってから最初に発表された作品「ハイドアンドシーク」、三曲目に「トリガーハッピー」と、収録作品や発表時期こそバラバラだが、攻撃的に何かを煽動するような楽曲を、MCなど挟まず畳みかけた。文字通り息を付く間もないほどの勢いでの三曲の後、ギターを持ち、その日最初のMC。観客に、来場してくれたこと、ツアーが無事開催できている事への感謝を伝えつつ、「なんか、自分(観客)の場所が決まってたり、人との間を空けなきゃいけなかったり、(ステージの自分の歌唱可能枠線を指差しながら)俺がこの線を越えると歌っちゃいけなかったり、色んな窮屈なルールがある中だけど、みんなは、それを守ってでもライブを観るぞ!!という気持ちで来てくれてると思うので、全力で演奏していきたいと思います。最後まで楽しんでいこう!!あと、配信見ているお前ら、お前らもこの場を共有している仲間だ」と、檄を飛ばす。続けて演奏された四曲目はTikTokなどのSNSでも多くの人にカバーされたり、人気漫画の同人マッシュアップなどに多用されたことで話題となった「人間みたいね」。この楽曲から、ステージ後方にそびえていた巨大な鉄格子が照明として新たな世界観を添える。ステージにそびえ立つ四角形になったり、細かく分断する直線状になったりする様は、今回のツアータイトルの意味を表すかのように、何かと何かの「境界線」を感じさせる。照明演出は、もはやキタニの盟友とも呼べるhuez・アナミーによるもの。より一層のスケール感と没入感を感じさせる演出の中、「Sad Girl」「Cinnamon」「クラブ・アンリアリティ」など、都会的で退廃的、少しブラックミュージックを感じるリズムという、冒頭三曲とは異なるが、紛れもないキタニタツヤワールドを感じさせるナンバーを演奏。

続けて、インターネット上でキタニの名前を一躍有名にした出世作「悪魔の踊り方」や「夢遊病者は此岸にて」「デッドウェイト」など、ダークで攻撃的なギターロックという、キタニタツヤの必殺技とも呼べるキラーチューンを連打した。スモークによる靄がかったステージにピンスポットが刺し、再び世界観が変わり「花の香」「君のつづき」と、メロウながら全くタイプの違った楽曲をカメレオンのように表現した後、ステージではバンドメンバーによるジャムセッションがスタート。ジャジーな雰囲気の中、キタニは自らのスマホで観客席を撮影。楽しそうに、歌っているときとはまた別の方法でライブという空間に人が集まっている事の喜びを噛みしめるかのようにステージ上をひとしきり駆け回り、セッションの流れで突入したのは「白無垢」。ほぼ定期的に行われているYouTube LIVE「キタニタツヤを解放せよ」でファンとコミュニケーションを取りながら作った楽曲がベースとなっている、謂わば”ファンとのコラボ曲”を披露した。

一転、攻撃的な赤にステージが染まり、はじまったのは「悪夢」。ダウナーの極致のような楽曲を強烈な没入感で披露した。
ここで一呼吸置き、再びギターを持ち、MC。これまでのキタニタツヤのライブのふるまいとは少し異なり、言葉を一つずつ選ぶように、それでも時に言葉を詰まらせながら、このライブを行ったことに対する思いを語った。

「人それぞれ事情があって、普通に今日ここに来るという選択をした人、凄くいろんな葛藤を経てきてくれた人、諦めて配信を観ようとした人、それらの選択はすべて正しくて尊重されるべきで、敬意を表したいし、俺の音楽に関わってくれてありがとう」
と、この特殊な状況下で、それぞれ形はあれど、自分の音楽に関わってくれている人に感謝を述べた。

MCの話題は、最近のライブ興行やフェスなどを取り巻く状況の話へ。色々な事が起きて、「音楽を止めるな」という声も聞こえる中で、自身は少し違和感を覚えており、「音楽は止まっているわけではない」とした。ライブが無くても、サブスクリプションサービスを筆頭に、音楽を享受できる方法は沢山ある。だから、ある側面から見る人にとってはライブなんてなくても、機能的には良いはずだ、と。それでも、「俺たちにはどうしてもこの場所が、ライブが必要。俺が音楽を作って、それをここに持ってきて、みんなと、配信越しであっても、この(ステージ上に引かれた)2メートルの線越しでも、共有するってことが、どうしても、人生に必要で、それが無いと生きていくのがとても難しくなってしまう」と語り、お互いの立場の違いを受け入れた上で、より良い未来に向けて努力する事の必要性と、今回のライブもその努力の蓄積になると語った。世情についての話題から、自らの音楽活動スタンスの話へ。「もう一人で音楽を作って、「良い曲できた!!」じゃ終わらせられない。最初のうちはそれでよかったんだけど、だんだんと、聴いている皆が、ライブでどんな表情をするか、どんな反応を返してくれるのかを考えてしまう体になってしまった。俺の音楽は良い曲を書いて終わりでは無くて、みんなで共有して初めて成立して、それで俺も自己実現できて・・・」と、アーティストとしての心の在り方が大きく変わった事や自らにとってのリスナーへの想いを語った。

改めて自分の音楽にこれからも関わって欲しいと伝えた上で「みんなもこのライブが終わって、ライブハウスを出たら、それぞれの生活に戻って、そこにはどうしようもない理不尽さとか、自分の力では選べない環境とか、逃げたくなるけど逃げようのないものがあって、そんなものを受け入れて生きていく皆に少しの祝福があるように、そんな想いでこれからも曲を作っていきます。そんな決意で作った歌です」と、ギター弾き語りで奏で始めたのは「デマゴーグ」。アルバムタイトルでもあり、「扇動者」という強い言葉を冠しているタイトルナンバーは、まさにキタニがMCで語った様な、度し難い現実の中にそれぞれ弧として立つ人への、現実とほんの少しだけの綺麗事を織り交ぜた様な優しい賛歌。キタニタツヤの思い目指す、キタニタツヤにしか成し得ない「扇動」の形を示した楽曲で、声を出す事が出来ない環境ながらも確実に観客も参加して合唱しているかのような光景は、間違いなくその場にいた多くの人間にとってこの日のハイライトであっただろう。

続けて、アルバム「DEMAGOG」と同様、「泥中の蓮」で、伝家の宝刀とも呼べるベースボーカルで熱量高く本編を締めくった。

鳴りやまぬアンコールの拍手の中再びステージに登場し、「新曲やります」と披露したのは「聖者の行進」。ちょうど1週間前に自身初となるタイアップが発表された、フジテレビのTVアニメ枠”ノイタミナ”にて放送される「平穏世代の韋駄天達」のOPテーマだ。圧倒的な攻撃力のサウンドは確実にアーティストとしてのネクストステージを感じさせながら、”キタニ節”と呼べる要素がつまった破壊力満点の楽曲に会場の熱はさらに高まる。ここからは、本人も「もう”キタニタツヤを解放せよ”のテンションでやろ!!」と明確に切り替え、ラフにより観客に近い距離感のコミュニケーションで、ツアーグッズを紹介。そして、大きな発表として、10月からの全国ツアー「聖者の行進」が開催される事、ファイナル公演が新木場・USEN STUDIO COASTであることを告知。ファンにとって何よりのサプライズプレゼントに大きく盛り上がった中で、「芥の部屋は錆色に沈む」「初夏、殺意は街を浸す病のように」をこの日一番ともいえる勢いで演奏して駆け抜けた。

どうしようもない世情による抑圧と断絶、ステージにも客席にも物理的に引かれた仕切り、コラボレーションによってより際立ったキタニタツヤという個の輪郭など、様々な「境界」を受け入れ、乗り越え、認めた上で「自分の音楽にはあなたたちが必要」と明確に示した今回のツアー。初めて明らかに”絆”とも呼べるものをファンとの間に表現したキタニタツヤがこれから鳴らしてく祝福はどんなものになっていくのか。

度し難い孤独も、選べない理不尽も、これまでと変わらずかそれ以上に襲い掛かる世界を生きていく者たちを引き連れたキタニタツヤによるいよいよ始まった「行進」の第一歩。これまでにあった形とは少し違った、確実に大きなうねりとなる「煽動」が静かに生まれた一夜であったように思える。


キタニタツヤ One man tour “BOUNDARIES”ファイナル公演@東京・渋谷O-EAST配信
“BOUNDARIES + Footprints” 7/10(土)17:30open / 18:00start
見逃し配信試聴チケットはコチラから⇒ https://stagecrowd.live/s/live072/?ima=1947
~2021年7月16日(金)18:00まで販売中

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