新アルバム2曲のギター・ダビングに自宅で使用
ユニコーン、2年ぶりのアルバム「ツイス島&シャウ島」をリリース!(ギタリスト手島いさむ、TASCAM「US-4x4HR」の活用エピソードを公開)
ユニコーン、2年ぶりのアルバム「ツイス島&シャウ島」をリリース!(ギタリスト手島いさむ、TASCAM「US-4x4HR」の活用エピソードを公開)
2021/09/21
取材:編集部(斎藤一幸)/加茂尚広さん(ティアック)
手島さんの宅録歴
手島:最初はTASCAMの「PORTA TWO」というカセットの4トラックからですね。
──それは学生時代ですか?
手島:東京へ来てからなので24歳ぐらいです。しかも(奥田)民生のお古を。民生はそういう機材はすぐに飛びついていたので。で、彼が次にオープンリールの「B16」へ行ったもので僕のところに「PORTA TWO」が回ってきたんです。この「PORTA TWO」の1トラックにドラムマシーンを突っ込んで録音して、そのドラムを聴きながら2トラックにベースを録音して、どんどん重ねて4つ5つ楽器を入れてカラオケトラックを作って最終的に歌を入れるみたいなことをやってましたね。
──相当ピンポン録音を多用していたのですね。
手島:そうですね。その後、機材も4トラックから8トラックになっていき、お金も若干できたので「ADAT」を買って。最初はVHSのテープからはじまりハードディスクの「HD24」までいったのですが、「Digital Performer 4」でのエディットってところで断念しました。音声データの波形がパソコンで編集できるということだったんですけど、僕ってマニュアルの1ページ目から読まない人なので(笑)。
──その頃はオーディオインターフェースは使われていたのですか。
手島:いえ当時は「Digital Performer 4」と「HD24」をMIDIインターフェースの「studio4」で同期してました。
──では、いわゆるオーディオインターフェースを初めて買われたのは?
手島:多分12~3年前だと思うんですけど、Focusriteのコンパクトなやつかな。ただ本格的に使い始めたのはMOTUの「828mkⅡ」からですね。その当時はオーディオインターフェースとDAWの相性がまだ不安定な時代だったんで大変でした。今でもその時のトラウマはありますよね。僕の場合、便利というか手軽なのが一番重要なんですよ。なんて言ったらいいかな「パッと音にしてパッと聴ける」っていうのが大前提なんですよ。
プロのスタジオのようにいわゆるエクストリームな、マキシマムなものを使うわけにもいかないので、ただ単にレコーダーとミキサーがあればよかったんですよ。実際、1回パソコンを離れてレコーダーだけでコンピューターを介在しない時期もあったんです。でもMIDIをどうしようってなって、やっぱりまたパソコンに戻ったんです。そうしたらもう、「世の中こんなことができるのか!」っていう状態ですよ。
──では本格的にパソコンで全部完結するという状況になったのはここ最近ですか?
手島:ここ10年ぐらいの話ですよ。いわゆるSSLやNEVEだとかそういうでっかいミキサーは家では持ちきれないので、そういうことはもうパソコン内で完結したほうが便利だなと。あと、今はプラグインとしてWAVESの「Mercury(バンドル)」を入れています。
TASCAM「US-2x2」及び新製品「US-4x4HR」について
手島:2016年ですかね。池袋にあった「パワーDJ's池袋」で店員さんに「ドライバーをインストールしないで、どのコンピューターでもいけるオーディオインターフェースはないのか?」と聞いたことがあって。その頃、いわゆるドライバーを入れて設定がどうのこうのっていうのが、自分的にとにかく面倒くさくて。コンピューターの相性を考えると入れた方が良いんでしょうけど、USBでドンって挿してしかも省電力でバスパワーで動くやつが欲しかったんです。そうしたら「はいっ!」て出されたのがTASCAM「US-2x2」だったんですよ。箱の保証書に2016年って書いてあったんでよく覚えてます。※編集注:その後、US-4x4を追加で導入されたとのこと。
USシリーズ先代モデル TASCAM「US-2x2」
手島:最初からレイテンシーは全然感じなかったんですよ。なんだったらちょっとズレてても合わせられる世代の人間なんで(笑)。
──手島さんはプラグインのアンプ・シミュレーターなどは使われているのですか。
手島:WAVESの「GTR」とか色々使ってみたことはあるんですが、正直楽しいだけというか、こんなのあるのねっていうぐらいでしたね。
──では、掛け録りがメインですね。
手島:そうですね。Rolandの「GP-100」とか「GT-1000」とか、とりあえず色々試してました。
──それらのマルチもUSBで直接コンピューターに繋ぐわけではなく「US-2x2」のインプット経由で使われていたのですか?
手島:はい。USB経由で繋いで設定とかで悩むのは、世代的なものか、ただ怠け者なのかわからないですけど、ちょっと苦手で(笑)。
──さて、今回、新製品の「US-4x4HR」と「US-2x2HR」をレコーディングに使用されたということですが、これまでお使いになられていた「US-4x4」や「US-2x2」と比べていかがでしたか?
手島:これはあくまで僕の感想ですよ。データでみるとどうなのかわからないですけど、ダイナミックレンジが若干広くなった感じがするなと思いましたね。それは何か肌触りが変わっただけかも知れないですけど。
──それはギターの場合ですか。
手島:ギターも歌もですね。マイクもSM58と57、あとaudio-technica、Neumannとそれぞれ特性が違う4本で検証してみたんです。歌に関してですけど、録りやすく、パッと聴きやすいのはオーディオテクニカで、オーディオインターフェースとの相性だと「SM58」が好きでしたね。劇的に変わりましたね。
──ギターのライン入力はどうでしたか。
手島:僕は「US-4x4HR」の方がリズム良く録れる気がしますね。
──ティアックの加茂さんにお聞きしますが、これは実際に仕様が変わっているのでしょうか?
ティアック:これまでお使いいただいていたUS-2x2から新製品US-4x4HRへモデルチェンジするにあたりオーディオ性能全般がチューンナップされています。細かい話を言うと、部品1つ1つの定数に至るまで細かく見直しておりまして、特にEINやS/Nは、この価格帯のオーディオインターフェースでは他に類を見ない良い値です。この事が前身モデルと比べて、”良く録れる”という実感に繋がったのではないかと思います。あとTASCAMはマイクプリアンプにすごく力を入れているんですよ。TASCAMのメインユーザーの一つである放送局からは「とにかくクリアで透明感がある音にしてくれ」という要望を多くいただくんですね。「癖よりはとにかく透明感のある=マイクの特性を引き出せるマイクプリアンプ」が欲しいと。ですから、その流れで「US-4x4HR」にも放送機材に搭載するクラスの自社設計の"Ultra HDDA"マイクプリアンプを搭載しています。
手島:やっぱり変わってたんですね。
──「US-2x2」を購入された時、4chの「US-4x4」もあったと思いますが、なぜ2chを選ばれたのですか。
手島:やっぱり持って歩けるというのがポイントだったんですよ。片手に「US-4x4」を持って片手にノートパソコンを持って移動するのはちょっと。軽い方が良いんですよね。「US-2x2」ならいろんな箇所に置けますよね。僕の場合、レコーディングブースの中に一つレコーディングシステムを作り、作業スペースにもシステムを作り、さらに事務所にまた別のシステムもありますので。今はトータル3か所の作業スペースがありますから。
▲手島さんが自宅で使用中の「US-2x2HR」
──ではご自宅でデモを作ったりするのはすべて「USシリーズ」ですか。
手島:はい。ただ、事務所はMOTU「828mk3」ですね。自宅は「US-2x2」と「US-4x4HR」です。アンプシミュレーター「Kemper」の後ろからキャノンで「US-4x4HR」の3/4chにステレオで繋いで、2chがベース、1chが「SM58」ですね。
──「US-4x4HR」を使う際のモニター環境についても教えていただけますか。
手島:「US-4x4HR」のメインアウトからMACKIEのモニターコントローラー「Big Knob」に繋がってYAMAHAのモニタースピーカー「MSP3」へ行ってます。これがメインなんですが、これとは別にあえてヘッドフォンアウトからミニプラグに変換してパソコン用のスピーカーにも繋げています。昔でいうラジカセ環境のチェックです。ユニコーンはそれはプロが全部やるのでいらないんですけど、自分で責任をもって音を作る場合はいろんな環境でどう聴こえるかをチェックしたいので。
──スピーカーによって音は変わりますか?
手島:どんなスピーカーでも良い音楽は良いです。例えば僕が好きなプロデューサーでヒュー・パジャムっていう人がやったものですかね。ポリスの「Synchronicity」やフィル・コリンズのソロを全部手掛けている人ですけど、その人がプロデュースした作品はどんなディバイスや環境で聴いても素晴らしい音です。だからそういう音作りが出来るはずなので、それを目指しますね。
ティアック:それは「US-4x4HR」のヘッドフォンアウトが2つあるから出来るってことですよね?
手島:そうです。便利に使わないと(笑)。
TASCAM「US-4x4HR」
▲フロントに搭載されている2系統のヘッドフォンアウト
新アルバム「ツイス島&シャウ島」の制作エピソード
手島:ずっと使ってましたよ。
──実際のレコーディングにも使われたのでしょうか。
手島:はい。2曲ほど「US-4x4HR」を使ったテイクを採用しました。レコーディングは、本来ならばスタジオで一発で終わらせるんですよ。だけど、中には「この曲はどうしようかな?」ってのがあったりするんですよ。今回初めてやったことなんですけど、その中の2曲のデータを家に持って帰り、家でダビングしました。
──ちなみにどの曲ですか?
手島:一つは「米米米」。米3つでマイベイベイですね。このギターは家で録りました。
──全部ですか。
手島:右チャンネルです。左チャンネルは奥田民生のギターですね。右チャンネルはFenderのジャガーを使って「Kemper」から「US-4x4HR」で録りました。これはギターソロもあったし、一発で弾いたテイクもあったんですが、ちょっと納得がいかなかったというか、リズムが気になったんで録り直しました。それともう一曲は「紅CAR」ですね。右チャンネルのスライドですね。これはGibson「ES-335」で弾いたんですが、最終的に家で録ったデータをスタジオに送るということをしました。もうリモートで良いんじゃね?って思いますけどね(笑)。
ティアック:皆さん、レコーディングの作業は速いんでしょうね。
手島:曲の構成書いて、こんな曲ですってオケを録り始めたら速いですね。テンポが決まったらもうバスっと録っちゃうんで。だから、テイクを重ねて録ってるうちに「次何しようかな」って考えていると、迷ってる部分の録音がダビングクールの日に回されちゃうんです。『今日は飯食って帰ろうか』ってなっちゃうんで、「もう一回録らせて」っていうのが、なかなか言いづらい雰囲気になるんですよ。「みんな帰りたがっとる」と思って(笑)。なので、家でのダビングは今回試験的にやってみました。
ティアック:「US-4x4HR」を使っていただいたそのテイクは、音質面でも合格だったということでしょうか。
手島:エンジニアの宮島さんは「良いねぇ!」という感じでしたね。
──最後に手島さんにお聞きしたいのですが、ギタリストの目から見てオーディオインターフェースに求めるものは何でしょう。
手島:もちろん凝る人は凝るんですけど、直感的に触れるものが良いですね。だから「俺は歌と生ギターだけでいくんだ!」って人はマイク2本挿せる「US-2x2HR」で、さらにベースも弾けばマルチエフェクターで全部ギターの音を作ってステレオで入力したいって人は「US-4x4HR」一択でしょうね。僕はよく人に勧める時は、本当に弾き語りの人が使うような感じの仕様ではマイクキャノンが1個でラインが1個のやつ。
ティアック:「US-1x2HR」ですね。
手島:とにかく、パッと思いついたときに出来るっていうのは大事だと思います。なんだったらパソコン立ち上げるのも面倒くさいんで(笑)。作曲はエア録音でiPhone一個あれば出来るんですよ。でも、オーディオインターフェースを使えば良い音で録れますから。あとは正直な音を出して欲しいですね。こういうオーディオインターフェースってミュージシャンのアイデンティティーを左右するようなものではないので、そこは概念的で申し訳ないですけど正直に出して欲しいですね。
──フラットなものということですか。
手島:ギターとかはもちろんなんですけど、そもそも楽器というのは脚色があるものばっかりなんですね。例えばLINE6の「POD」の音が全盛だった頃はそれが個性になってたギタリストもいましたけど。今はプラグインを入れてみたり。
ただ僕は指というか弾いたものがそのまま出てくれるアンプってものが基本なんで、Marshall「Bluesbreaker」しかり、今使ってるEVH、あとはFender「Twin Reverb」も弾いたことがちゃんと出てくれるんですよ。それが音に残って、ちゃんと正直に出てくれるためにはオーディオインターフェースが正直であって欲しいと思っています。TASCAMのオーディオインターフェイスはそれができていると思うし、弾き語りをやってるやつでデモテープ作るんだったらこれで録れって勧めますよ。本格的に宅録やりたいんだったら「US-4x4HR」にすれば良いんじゃねぇのって。
──本日はどうもありがとうございました。
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