牧とプリティの地元凱旋ワンマン
go!go!vanillas、全国ツアー「青いの。ツアー 2022」が5月5日、大分 iichikoグランシアタでファイナルを迎えた!
go!go!vanillas、全国ツアー「青いの。ツアー 2022」が5月5日、大分 iichikoグランシアタでファイナルを迎えた!
2022/05/09
写真:西槇太一
go!go!vanillasの全国ツアー「青いの。ツアー 2022」が5月5日、大分 iichikoグランシアタでファイナルを迎えた。大分県は牧達弥(Vo/Gt)と長谷川プリティ敬祐(Ba)の故郷であり、会場の大分 iichikoグランシアタは、2人が中学の頃に合唱コンクールでステージに立ったというゆかりの地。バンドが大切にしてきたgo!go!の日(5月5日)に開催された凱旋公演に全国からファンが駆けつけたほか、牧&プリティのソウルフード=豊後の洋食本舗「金なべ亭」、チーズケーキ工房「いちごみるく」が特別に出店。また、生配信も実施され、ライブの模様、そして当日行われた重大発表は会場に来られなかったファンにも届けられた。
ステージセットはまるで青の洞窟のよう。SE「RUN RUN RUN」が流れるなか、音楽とともに表情を変えるドラマティックな照明が空間を彩った。そんなオープニング演出を経てメンバーが登場。「帰ってきたぞー!」とギターを掻き鳴らす牧が歌い始めた1曲目は、この季節にぴったりな「サクラサク」だ。気持ちが前のめりになるがあまり、半ば立ち上がっているような姿勢で叩きがちなジェットセイヤ(Dr)のフィルインから始まるのは「バイリンガール」で、牧と柳沢進太郎(Gt)のツインボーカル曲「クライベイビー」は、ツインギターによる間奏も聴きどころ。縦横無尽に跳ね回るような演奏で観客をジャンプさせた「ヒンキーディンキーパーティークルー」、さらにMC後には「チェンジユアワールド」、「エマ」と曲数を重ね、高まる気持ちのまま音楽にダイブする4人だ。
みずみずしいバンドサウンドはもちろんのこと、客席を見渡したり、互いにアイコンタクトをとって楽器をガシガシと鳴らしたりしているメンバーの笑顔からも喜びや楽しさが溢れている。タイトルにあるように、今回のツアーは最新シングル『青いの。』のリリースに伴うもの。アルバムを引っ提げたツアーよりもセットリストの自由度が高いため、早速新旧様々な曲が披露されている。今回のセットリスト、メンバー自身も新鮮な気持ちで取り組めたのではないかと想像するが、中でも「デストロイヤー」(インディーズ1stアルバム『SHAKE』収録曲)はかなり久々の登場。演奏自体は洗練されている一方、バンドの根底にあるルーツミュージックへの愛情、憧憬はずっと変わっていないのだと感じさせられた。
MCでは、牧が祖母に「新曲の『青いの。』はどう?」と聞いたところ「『パラノーマルワンダーワールド』の方が好き」と辛口の評価を受けたという話、中学生時代のプリティが合唱練のときにふざけて言った一言が誤解とともに感動を呼んだ話など、地元ならではのエピソードも飛び出した。そんななか、「何度でも言わせてください。ただいまー!」と牧が叫んだあと、客席から返ってきた“おかえり”の拍手にメンバーが嬉しそうにしていたのは、go!go!の日の大分凱旋は2020年、2021年にも試みたものであり、2度の延期を乗り越えて今回やっと実現したからだ。大分に駆けつけた観客はもちろん、配信で観ているファンも含め、みんなが一堂に会しているとし、「俺たちはもう、家族!」(牧)と改めて全員を歓迎した。
2度の延期自体は残念だったが、こうして今“家族”とともに笑い合えていること、そして2年分の進化を経てこのステージに立っていることは確か。シングル『青いの。』収録の最新曲=「青いの。」、「T R A P !」を披露した中盤にはこの2年で積み重ねたものが如実に表れていた。シャッフルビートに乗って爽やかにアンサンブルする「青いの。」から「サイシンサイコウ」へ繋げ、休符も聴かせるグルーヴで魅せたと思いきや、「FUZZ LOVE」で一気に突き抜ける。4人のコーラスワークを聴かせる「T R A P !」はトリッキーな構成だが、テンポアップやビートの変化をフックとし、観客を巻き込んでいる様が頼もしく、同じく4人ボーカル曲の「デッドマンズチェイス」に休みなしで入る展開も痛快。しかしここで終わりではなく、セイヤがメインボーカルをとる「Ready Steady go!go!」が続く。セイヤと牧&プリティ&柳沢が声を張り上げ掛け合いをするこの曲は魂の交わし合いといった感じで、ステージも客席も一緒になって熱量を上げていった。極めつけは「ヒートアイランド」。「府内戦紙、長浜祭、七夕まつり。面白い祭りがいっぱいあるこの街で、俺が作ったお祭りの曲、行っていいかい!?」(牧)と始まったこの曲は、随所に和のテイストを忍ばせつつ、多様な要素をごった煮にしたバニラズ流お祭りソング。ライブ同様、全国各地の祭りはコロナ禍で延期・縮小を余儀なくされたが、祭りの中心にあった人々の情熱や活気は2020年以降も決して失われていない。失われた光景なんて言わせてたまるか、という意気を感じさせる演奏に、この時代を生きる当事者として歌う「平成ペイン」を続けた並びからは強いメッセージを感じた。
早いものでライブも終盤。本編ラストのMCでは、牧が、このライブを作るためにたくさんの人が協力してくれたと話しながら涙を流した。牧いわく、彼らがバンドを始めた頃の大分は、楽器屋やライブハウスのある通りがバンドを始めた人たちで賑わっていたりと、自分のやりたいことを率先してやっていこうという空気が流れていたが、ツアーで大分に帰る度に大分に元気がなくなっているのを感じていたらしく、「でもやっぱり、俺が生まれたのはこの街やからずっと誇れる街であってほしいなという想いがあって、みんなに観に来てほしいと思って、今回のこの場所でツアーファイナルを開催しました」とのこと。目を潤ませたまま歌い始めた「アメイジングレース」では「大分の未来に、ここにいる全員の未来に、僕らの未来に賭けてみよう」と歌詞を替え、その願いを演奏に託していった。
「このまま俺たちのロックンロールの魔法にかかってくれー!」(牧)と本編ラストの「マジック」まで心のままに転がる4ピースサウンド。鳴りやまない拍手に応えて姿を見せたセイヤが一人ライトを浴びながら叩くリズムに、プリティのフレージング、柳沢のギターカッティング、観客の手拍子が重なることによって始まったアンコール1曲目は、大分という街を出て、上京し、ロックバンドとしてこれからもっと広いフィールドに繰り出していこうというメジャーデビュー当時の意志を歌った、メジャー1stアルバム『Magic Number』のオープニングナンバー「セルバ」。2曲目は、好きなものに対する変わらない気持ちをテーマにした曲で、メインボーカルのプリティだけでなく全員で叫ぶように歌う「バームクーヘン」だった。若さゆえの未完成でしかし特別な輝きを歌った「青いの。」という曲をタイトルに据えたツアーで、新鮮なセットリストで臨んだワンマン、そして「昔に戻った気持ちになった」というバンド仲間とのツーマンを経て、牧&プリティの故郷で迎えたツアーファイナル。あらゆる意味で原点回帰の意味合いが強かったツアーの最終日だったからこそ、この2曲が演奏された意味にも合点が行った。「時間をかけて作ったものはその月日がないと手に入らないから大事にしたいと思います」という牧の言葉は、go!go!vanillasというバンド、そしてバニラズの音楽を慕うファンとともに作り上げた2022年5月5日に対するものであろう。
最後のMCを終えて、牧がギターを弾きながら歌い始めたのは「LIFE IS BEAUTIFUL」。そしてイントロに入る前に「俺たちgo!go!vanillasは今年9月に2本ワンマンライブをやります。1本目は人生初の大阪城ホール! そして2本目は人生2回目の日本武道館!」と告げた。そう、事前にアナウンスされていた重大発表とはこのことだったのだ。9月24日の大阪城ホール公演、9月30日の日本武道館公演のタイトルは「My Favorite Things」で、go!go!vanillasが愛する全てを詰め込んだ、とっておきの夜にする予定とのこと。そして「次に俺たちに会うまでの間も素晴らしい人生を送ってください。だから最後にこの歌を贈るよ!」(牧)とバンドインとともに演奏が再開。人生という舞台の上を軽やかに踊るようなサウンドで、今日に至るまでの一人ひとりの歩みを讃えつつ、明日へと想いを繋ぐ美しいラストとなった。
なお、現在Streaming+では本公演のアーカイブ配信が行われており、チケット購入者は5/12(木)23:59まで視聴可能(チケットの購入は同日20:00まで)。残念ながら当日見逃してしまったという人はそちらをチェックしてほしい。
テキスト:蜂須賀ちなみ
<セットリスト>
1 サクラサク
2 バイリンガール
3 クライベイビー
4 ヒンキーディンキーパーティークルー
5 チェンジユアワールド
6 エマ
7 デストロイヤー
8 青いの。
9 サイシンサイコウ
10 FUZZ LOVE
11 T R A P !
12 デッドマンズチェイス
13 Ready Steady go!go!
14 お子さまプレート
15 カウンターアクション
16 ヒートアイランド
17 平成ペイン
18 アメイジングレース
19 マジック
En1 セルバ
En2 バームクーヘン
En3 LIFE IS BEAUTIFUL
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