岐阜県の自宅にいながら曲作り
imase、5月10日恵比寿LIQUIDROOMにて「1st Live『POP OVER』追加公演」を開催!
imase、5月10日恵比寿LIQUIDROOMにて「1st Live『POP OVER』追加公演」を開催!
2023/05/23
Photo by Viola Kam (V'z Twinkle)
5月10日、恵比寿LIQUIDROOMにて、imaseが「1st Live『POP OVER』追加公演」を開催した。本公演は、コロナ禍でデビューしたimaseにとって初の有観客ライブ「1st Live『POP OVER』」が即完したことを受けて、追加公演として開催されたもの。この日もチケットはソールドアウト。imaseがZ世代をはじめ今の時代を生きる人たちにとって、スターであることを証明するライブだった。
そもそもimaseは、音楽制作を始めてからわずか1年でメジャーデビューまで駆け上がったこと、しかもそれを岐阜県の自宅にいながら果たしてみせたこと、そして新曲を次々とSNSにてショート尺で発表していること、さらにはファルセットを多用しラップと混ぜ合わせながらチル感のある音像を作り上げていることなど、これまでの音楽業界の常識を軽やかに飛び越えて新しい音楽表現・活動を進めている存在だ。そんなimaseはライブにおいても独自の形を提示。ライブが開催できなかったコロナ禍を経た、これからのライブのためのアイデアが随所に表れていた。
開演時間の19時になると、バンドメンバーであるモリシー(Gt/Awesome City Club)、林あぐり(Ba)、松本ジュン(Key、Manipulator)、BOBO(Dr)がステージに上がってセッションをスタート。まずこの4人の音がとにかく気持ちいい。軽やかなステップでimaseが登場すると、家とSNSとステージが一直線上にあるかのように、パーカーを着た肩肘張らない姿でステージセンターに置かれた台に上がる。スポットライトと拍手を浴びたその瞬間から、新たなスターの形を感じさせる。
思い通りにはいかない世界を歩み続ける僕たちの背中を押す「アナログライフ」からライブはスタート。鍵盤とオーディエンスのクラップに乗って歌い出した「あべこべ」では、サビになると自然とオーディエンスの腕が挙がる。間奏ではモリシーのギターソロが炸裂。4人のタイトなビートとグルーヴが渦巻く演奏が止まると、フロアからは大きな歓声と拍手が湧く。
コロナの影響でしばらくライブから離れてしまった人や、そもそもライブに行った経験のない人たちが、この場に多く集まっていたように思う。そういった人たちに向けてライブの楽しみ方を教えるかのように、「ピリオド」のアウトロで身体の揺らし方やノリ方を優しく導くimase。その後も彼がさりげなくみんなをガイドする場面がたびたびあったことは、この日印象深かかった点のひとつだ。
「『POP OVER』へようこそ、imaseです!」と挨拶し、オーディエンスと会話をするimase。途中で噛むと、フロアからは「かわちい」と声が上がる。加工や偽りに疲弊しそれらを見破る感性も身につけている人たちを自然体のかっこよさで魅了するのがimaseであることと、「かわちい」という言葉を日常使いする世代から愛されていることがわかるワンシーンだった。
「メリークリスマス!」と言って雪を想起させる白や、緑と赤の照明の中で歌ったのは「Holy Light」。SNSでバズっているがライブでしか聴けない曲となっている「I say bye」を歌い終えると、ステージにベンチが持ち込まれる。「疲れちゃうのって、普段の体力作りがなってないからだなって最近思うんですよ。ということで先日フットサルに行ったわけですよ。『でもね、たまには』体力つけなくちゃなと思って」とオーディエンスから笑いを誘って、「でもね、たまには」へ。《でもね、たまには一息ついて/疲れてるなら腰掛けて》と、ベンチに座りながらラップパート以外はすべてファルセットの柔らかな声で歌う。
「このライブのためにスペシャルなものを用意してます。これまでSNSに投稿してきたショート曲をメドレーにしてきました!」とimaseが言うと、大きな歓声が上がる。「何の曲を歌うと思いますか?」と問いかけると、SNSにサビや1パートのみを投稿しているがリリースはされていない楽曲たちのタイトルがフロアから飛び交う。ここに集まっているファンたちはリリースされている楽曲だけでなく、SNSの動画からもimaseの音楽を聴く習慣があることがわかる。そして、「N1ght」「ノスタルジー」「語呂合わせ」「スーパーヒーロー」など15曲以上の楽曲をつなげた約10分のメドレーを、各曲のタイトルを映し出しながら演奏。SNSに一部を投稿しているもののフル尺は作っていない楽曲がどれだけたくさんあるのか、つまり、フル尺を完成させて正式にリリースする楽曲をいかに厳選しているのか、そして、いかに未完成なデモの破片でも躊躇せずに世に出しているかがわかるシーンでもあった。
「もうひとつ、今回特別に用意したものがあります!」とさらに盛り上げるimase。そして、サプライズゲストとしてasmiをステージに呼び込む。蔦谷好位置のプロジェクト「KERENMI」での共演にまつわる思い出話から、「蔦谷さんにおいしいところ連れていってもらいましょう」などの言葉も挟んで、「boy feat. asmi & imase」をライブ初披露。音域や声色が個性的な2人の歌声が緻密に編み込まれた楽曲であり、「少年/少女」と「成熟」の狭間にいる2人の今が生きている特別な楽曲だ。
asmiを送り出すと、「逃避行」、「Pale Rain」で会場の空気をガラッと変える。「僕らだ」で《未来は僕らだ》と歌うimaseは、目の前にいる人たちの手を握ってより自由な未来へと連れ出してくれるよう。サントリー企業広告のために書き下ろした最新曲「18」でも、コロナの影響で体育祭や修学旅行も中止になり、学校生活を顔の半分を隠した状態で過ごした世代へ、その状況をポジティブに転換しようと声をかける。デビュー曲「Have a nice day」から変わらないのは、ファルセットで歌うからこそ、歌に込める価値観やメッセージが説教くさく伝わることなく、体も心も柔らかい状態で受け取ることのできる音楽として成立させていること。その魅力がライブの空気感からもひしひしと伝わってきた。
最後は、今世界中で聴かれている「NIGHT DANCER」。アカペラで歌い出すと、フロアからは待ってましたと言わんばかりの大きな歓声が上がる。このバンドメンバーが演奏すると、タフなリズムで身体を気持ちよく弾ませてくれる強力なダンスナンバーへと変化する。この日のライブは、画面越しで音楽を聴くことが日常的である人たちに、生演奏の迫力やバンドのグルーヴを体感させるものになっていたようにも思う。
本編を締めくくると、先月、ライブや取材のために韓国へ行った際の模様をまとめたV-LOGが流れる。再びステージに登場したimaseがしゃべり始めると、まるで学校のホームルームのようにちゃちゃが飛び交うのもいい。そして、5月26日に新曲「Nagisa」をリリースすることを発表。「夏を感じるかっこいい曲になっています」と紹介すると、この場で一足先に披露してくれた。
すべての演奏を終えた後、オーディエンスと一緒に写真だけではなく動画の撮影を行ったことも、動画で世に出てきたimaseらしい。「次はツアーで会いましょう! バイバイ、ありがとう!」と言葉をかけて、imaseはこの日のステージをあとにした。10月には自身初のツアー『imase 1st Live Tour 2023』を東名阪にて開催することが決定している。
テキスト:矢島由佳子
Photo by Viola Kam (V'z Twinkle)
<公演情報>
imase 1st Live『POP OVER』追加公演
5月10日(水) 東京・LIQUIDROOM
■セットリスト
1.アナログライフ
2.あべこべ
3.ピリオド
4.Holy Light
5.I say bye
6.でもね、たまには
7.ショート曲メドレー
7-1.N1ght
7-2.ノスタルジー
7-3.あわれ
7-4.Smile
7-5.鱚
7-6.そんな話
7-7.待ち人
7-8.I think that I love you
7-9.語呂合わせ
7-10.スーパーヒーロー
7-11.楽になれたら
7-12.Cherry Blossom
7-13.ありか
7-14.ナツイアツ
7-15.Repeat
8.boy feat. asmi & imase(GUEST:asmi)
9.逃避行
10.Pale Rain
11.僕らだ
12.18
13.Have a nice day
14.NIGHT DANCER
EN1.Nagisa
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