声出し解禁の3DAYSで伝えた、「幸せな夏をすごしましょう」というメッセージ
福山雅治、8月10日、12日、13日の3日間にわたり、日本武道館にて『FUKUYAMA MASAHARU LIVE@NIPPON BUDOKAN 2023 言霊の幸わう夏』を開催!
福山雅治、8月10日、12日、13日の3日間にわたり、日本武道館にて『FUKUYAMA MASAHARU LIVE@NIPPON BUDOKAN 2023 言霊の幸わう夏』を開催!
2023/08/17
PHOTO:HAMANO KAZUSHI
福山雅治が8月10日、12日、13日の3日間にわたり、日本武道館にて『FUKUYAMA MASAHARU LIVE@NIPPON BUDOKAN 2023 言霊の幸わう夏』を開催、待望の声出し解禁ライブを行なった。自身3度目、約5年ぶりにそのステージに立つ日本武道館は、360度全方位、立ち見席を含めびっしりとファンで埋め尽くされ、オンラインによる生中継でも世界各国のファンが見守った。ライブタイトルは、柿本人麻呂が『万葉集』で詠んだ歌、「しきしまの大和の国は言霊の 幸わう国ぞ ま幸くありこそ」に福山がインスピレーションを得て命名したもの。自ら発する言葉に特別な力が宿ると信じていた日本古来の習わしに学び、「オーディエンスひとりひとりの声と出逢うこのLIVEで『幸せな夏をすごしましょう』」(※オフィシャルサイトより引用)との想いが込められているという。セットリストに多数盛り込まれた数々の夏歌だけでなく、様々なメッセージを宿した楽曲群を披露し、ファンと共に“幸せな夏”のひと時を生み出した。
客電が消え、ファン各自が装着したライトバングルがカラフルに輝く暗闇の中、バンドメンバーに続いて福山雅治が登場すると、歓喜のどよめきが響いた。1曲目の「少年」で早速、ファンとの大合唱を堪能。コロナ禍でもエンターテインメントの灯を絶やさぬよう、無観客配信を含む様々なライブ活動を繰り広げて来た福山だが、約3年にわたって失われていたライブ本来の醍醐味を取り戻した瞬間だった。「武道館!」と時折シャウトして煽りつつ、ギターを奏で歌いながら体の向きを変えていき、全方位のファンと正対。歓声と拍手に宿る想いとエネルギーを全身で受け止め、それを今度は福山が歌声に注ぎ込み、客席へと返していく。「零-ZERO-」「暗闇の中で飛べ」と畳み掛け、序盤から会場を惹き込み一体となっていった。
響き渡る「ましゃ!」と叫ぶ声を受け止め、「聴こえています。コロナの中でもずっと聴こえていました、あなたの心の声が。だけど今日は声となって聴こえています」と福山。選曲にあたり「思ったより、夏歌がありました。『意外と夏も似合うんだな』と」とコメント。甲子園100周年を祝したNHK高校野球のテーマソング「甲子園」を始め、郷里・長崎から上京してきた18歳の夏を歌った「18~eighteen〜」など、30年という長いキャリアの折々で生み出してきた夏の名曲群を連打、その時々に封じ込めた心象風景を、2023年に鮮やかに蘇らせていく。センターステージへ移動して披露した「虹」では、頭上で光の粒が様々な造形を描き出していくドットイメージ、全体の照明、レーザー光線、床面LEDに投影される映像、それらすべてが虹色に彩られて壮麗な光景を立ち上げた。
選曲にあたり、「ソングライディングにおいて意外と『夏が重要なキーワードになってるんだな』と気付きました」と言葉を加えた福山は、観客に着席を促し、引き続きセンターステージで夏のバラード3曲をしっとりと歌唱した。恋が叶わなかった“ふたりの夏”を歌う「巻き戻した夏」では白い雲が浮かぶ夏空を、そして「Squall」では雨粒が足元に生む波紋のイメージを叙情的に床面LEDに投影。セルフカバー曲「ひまわり」では、初めは一輪、やがて二輪とひまわりの花が床面に増えて行き、歌い終わるころには、まるで胸いっぱいに蘇ってきた想い出のように、床面を埋め尽くしていた。聴覚、視覚双方を刺激し、豊かなイメージを伝えていく。
セミの鳴き声が響き、ヴィジョンに出現したのは福山の幼少期の写真。ギターを手にしたのが13歳の時であること、夢を描いて上京したのは18歳の夏であったことなどが字幕と共に伝えられていく。故郷・長崎への“音”返しとして行なってきた稲佐山でのライブ映像、爆風に焼かれても生き続ける被爆樹木の保存活動をサポートする“クスノキプロジェクト”など、これまでに過ごしてきた夏の情景、そこで生まれた歌、歌ってきた心を示す写真や映像が次々と映し出されていく。そして2023年現在、ヴィジョンに映るスタジオでの創作風景と共に“あたらしい歌”が生まれたことを発表。1945年の夏を舞台とした映画の主題歌としてオファーされ書き下ろしたという、タイトルすら未定の、生まれたばかりの新曲を初披露した。叶わぬ想いと知りながら叫ぶような、哀切を帯びたファルセットが胸を締め付けるバラード。直前の字幕と福山本人のMCから読み取れたのは、曲に描かれているのは“戦地へ向かう者の心”であり、愛する人の待つ “うちへ帰りたい”という、一人の人間としての切実な本心である、披露し終えた福山は、8月のこの時期に、武道館でこの曲を歌うことを感慨深そうに語ると、<言霊の幸わう夏>というタイトルに込めた想いを改めて述べ、「言葉に傷ついたり、疲れたりする時代だけど、そういうタイトルを付けて、新しい歌を届けて……幸わう夏にできたらな、と」とコメントした。
ライブ後半は、夏歌という括りを解き放ち、アッパーな楽曲を次々と繰り出し更に熱く盛り上がっていくゾーンへ。自身が主演を務める『ガリレオ』のテレビドラマシリーズ主題歌「KISSして」(KOH+)では、ファンに歌うことを求めたパートの声量に満足せず、「『KISSして!』って言ってよ~(笑)」と茶目っ気たっぷりにボヤき、笑いが起きた。「それがすべてさ」では、ステージの左右に設けられた花道の突端へ向かい、大歓声をあげながら手を振るファンの元へと近寄ってコミュニケーションを図った。温かなムードが最高潮に高まった直後、最新曲「妖」は一変してミステリアスに。硬派なロックナンバー「革命」のラストでは、特効が爆音とともに炸裂。「明日の☆SHOW」で再び一体感で包み込んだ後、「あの夏も 海も 空も」で本編を締め括り、深い余韻を残した。
アンコール1曲目は、コロナ禍で生まれ、3年を掛けて今やファンとの絆を象徴するアンセムとして育くまれた「光」を披露。呼吸の合ったクラップに加えて、終盤は初めての合唱が叶った。映画版ガリレオ最新作『沈黙のパレード』主題歌「ヒトツボシ」は、ミラーボールが天井に眩い星空を生み出し、作品で描かれていた、遺された者へ注ぐ死者からの眼差しを体感することができた。8月のお盆時期であることともシンクロし、生と死を見つめ、その時々の想いを歌に描き込んできた福山の、言霊に向き合う姿勢に想いを馳せるひと時でもあった。
「今回のライブの、もう一つのテーマ。この歌を3日ともやりたいなと思って」と披露したのは、「クスノキ」。先のVTRにも映し出されていた、福山が数年前から取り組んでいる、長崎県に現存する被爆樹木を保全するクスノキプロジェクトの出発点にもなった楽曲である。床面LEDには樹の葉の影が映し出され、唱歌を思わせる美しい日本語で綴られた歌詞は心に染み渡る。<葉音で歌う 生命の叫びを>という一節が示す、命の逞しさ。緑色に輝く光の柱と、その間で浮遊する木の葉のような、あるいは彷徨う魂のような光の粒の下、福山はこの8月、この場所にふさわしいメッセージを歌に宿して届けていた。
最後は一人きりでステージに残り、ギターを爪弾きながら「この曲が“武道館の最後の曲”なのかな?と」と選曲への想いを語ると、開演前に雨が降ったことから、「(外は)雨でしょ? 雨も多いんですよね、僕の歌の中には。『いいんじゃないかな?』と思って」と続けた。披露したのは、1994年の6thシングル「Dear」。始めの2、3音で曲に気付いたファンから歓喜のどよめきが沸き起こった。全方位のファンに順に身体を向けていき、終盤ではマイクを通さない生声で、思いの丈を注ぎ込んだロングトーンを響かせた。このライブの中だけでも、エンターテイナーとして様々な顔を見せて楽しませた福山の、一人の生身の人間としての等身大が伝わってくる、真摯で力強い一曲だった。
最後の挨拶で福山は、3月頃にこのライブ開催を急遽決めた経緯を詳しく明かした。30周年を記念した一連のライブ活動を終えた後「感謝の気持ちでいっぱいだった」と振り返り、だからこそ年末の『福山☆冬の大感謝祭 其の二十一』開催は既に2月の時点で発表していたわけだが、コロナ禍の規制撤廃による声出し解禁ライブが盛り上がっている世の中の空気をキャッチし、「うずうずしてしまって」と吐露。ミュージシャンとしての純粋な初期衝動が開催動機であったことをファンに伝えた。コロナ禍の影響で残念ながら延期となり中止となってしまった「稲佐山、できないの?」だとか、「どこか空いてないの?」とスタッフに尋ねたことを、自身の物真似口調でユーモラスに再現。幸運にも日本武道館が空いていて開催にこぎつけたという。ライブ中盤のファンによる「KISSして!」コールが諦めきれなかったようで、リクエストして何度もやり直し、始終武道館は大きな笑いに包まれていた。投げキッスを全方位に返してうれしそうに飛び跳ねる姿は、まるで少年のようだった。
夏歌の数々に加え、この8月という時期だからこそ届けたいメッセージもふんだんに盛り込んだ、約3時間のステージ。歌という容れ物に言霊を宿し、30年以上にわたり世に放ち続けてきた福山雅治。観客が会場で響かせる歓声、「ましゃ!」「福山!」と名を呼ぶ声にもまた、言霊が込められている。想いを宿した言霊が飛び交い、それらが混ざり合うライブとは、それ自体祈りの行為であり、空間であるように感じられた。ステージを去る福山が手を振りながら放った「冬に逢いましょう!」という言葉通り、12月には上述の『冬の大感謝祭』開催が予定されている。
TEXT:大前多恵
PHOTO:HAMANO KAZUSHI
セットリスト(8月13日公演)
少年
零-zero-
暗闇の中で飛べ
甲子園
BEAUTIFUL DAY
18 ~eighteen~
虹
巻き戻した夏
Squall
ひまわり
新曲
Revolution//Evolution
KISSして
HEAVEN
それがすべてさ
妖
革命
明日の☆SHOW
あの夏も 海も 空も
─ ENCORE ─
光
ヒトツボシ
クスノキ
─ D.ENCORE ─
Dear
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