90年代のファンハウス在籍時代のレア楽曲を披露!
ムーンライダーズ、EBISU JAM 2023最終日に登場!
ムーンライダーズ、EBISU JAM 2023最終日に登場!
2023/10/18
ムーンライダーズが東京・恵比寿ザ・ガーデンホールにて10月6日から開催されていた「EBISU JAM 2023」のDAY4(10/9)に出演しライブ・パフォーマンスを披露した。
2020年の活動再開以降、ムーンライダーズのライブは2つのパターンがある。サブタイトルにアルバム名を冠したものと、そうでないもの。アルバム名が入ればそのアルバムの再現だったり、レコ発記念だったりとセットリストは想像が付く。ファン泣かせは後者の「そうでないもの」の方。今回はイベント参加の一環なので、後者に該当する。そうなると何を演るのか?公演前からファンは気もそぞろ。もっとも、事前にあれこれ想像を逞しくするのもムーンライダーズのライブの愉しみ方のひとつでもある。そんな事を考えている内に開演のベルが鳴り、各メンバーが所定のポジションに付き始めた。ここでファンはちょっとした異変を感じる。ライブではセンターに立つことが多い鈴木慶一が、この夜は下手後方で構える。
センターに立っているのはギタリストの白井良明だ。これだけでも、今日は何か違ったことを演るんじゃないか?と期待が高まる。ライブは鈴木慶一の『ムーンライダーズです!みんな一緒に歌ってください!』のMCのもと、アルバム「Bizarre Music For You(1996)」収録の「BEATITUDE」で幕を開けた。メンバー全員のコーラスがファンファーレのように鳴り響く、華やかなオープニングだ。この後演奏されたM02の「果実味を残せ!Vieilles Vignesってど~よ!」からM04の「窓からの景色」までは90年代に発表されたアルバム収録曲だ。今日のテーマは90年代か?と思っているところに慶一から『50年前に、初めて大勢の人の前で歌った曲やりますね』と演奏されたのは日本のフォーク&ロックの名曲中の名曲「大寒町」。歌い始められるや、客席から『待ってました!』とばかりに歓声が上がる。作詞作曲は鈴木博文だが、あがた森魚の歌唱(1974)で知られ、その後、ムーンライダーズでも度々演奏された曲だ。90年代から70年代に逆行かと思わせて、続く楽曲は「Bizarre Music For You(1996)」収録曲の3連発。M08の「ニットキャップマン外伝」では、鈴木博文がブルースハープを吹きながら、客席に降りる。そこからステージ上の鈴木慶一を招きいれ、客席内でギターとブルースハープの掛け合いを披露。
期せずして実現した鈴木慶一・博文兄弟の共演にオーディエンスも大喜び。場内の盛り上がりもヒートアップ。
そして続くMCで鈴木慶一から、この日の"種明かし"。8月に1994年から1997年まで在籍したファンハウストラスト・レーベル時代の音源を集めたBOXがリリースされたこともあって、この夜はファンハウス時代の楽曲を中心に選曲したことを明かす。バンドも近年はこの時代の楽曲は最近のコンサートで演奏する機会がなかったが、これは鈴木慶一にとっては『私の場合、全て忘れてしまってて。今日は全く新曲のような気持ちでやってます』と話し客席の笑いを誘った。続いて武川雅寛から突然のクイズ出題。1940年生まれ。イギリス・南ウェールズ出身のシンガーは?の問いに客席はぽか〜ん。答えはトム・ジョーンズ。あまりにも正解率の低さに残念がりながら、演奏したのはトム・ジョーンズが1969年に放ったヒット曲「LOVE ME TONIGHT」。カバー曲を集めた1995年リリースの「B.Y.G.」に収められた。ここでは鈴木慶一が書いた日本語詞を慶一と武川でツインボーカルを披露。カンツォーネばりの歌声を慶一が響かせる。
ファンもこの日の選曲意図を聞かされ一安堵していたら、11曲目冒頭にインプロビゼーションが繰り広げられるの見て『今度は何を演るのか?』と再び見構える。これは3月にリリースされた即興演奏で構成された「Happenings Nine Months Time Ago in June 2022」の流れだ!と気がついた頃には、メンバー全員のコーラスで始まる「smile」になだれ込む。90年代特集か!と思っていたら最新アルバムに収められた楽曲だ。1990年代から、いきなりの2022年の音への流れだが、これが地続きしているようで違和感がない。ライダーズのメロディがいかに普遍的かを改めて思い知らされる。
メンバーにすら新鮮に感じさせたこの夜のセットリスト、選曲したのはギタリストの澤部渡とキーボードの佐藤優介のふたり。ファンハウス(1995)以降の楽曲縛りで選曲したそうで、演奏曲全18曲中、13曲がファンハウス時代の曲で占められた。今やすっかり準メンバーではあるが、サポート・メンバーのふたりが外から客観的に選んだというのが面白い。90年代と2000年代曲が自然に並んでいるのも納得できる。ムーンライダーズの魅力のひとつにダブル/トリプル・ヴォーカルがあるが、ここでも澤部渡は大活躍。鈴木慶一や白井良明らと共にパワフルな歌声を響かせ、コーラスワークの一員をしっかりと担っている。
ここで慶一から嬉しいお知らせが。12月27日に東京・EX THEATER ROPPONGIにて「80年代のムーンライダーズvol.1」を開催するというもの。これは本文冒頭に記した"前者"パターンでライブ内容の想像がつく。そんな期待に応えるように『マニア・マニエラからドントラ(DON'T TRUST OVER THIRTY)まで、80年代の曲を演ります!』と宣言し、客席を沸かせた。さらに昨年12月の「マニア・マニエラ+青空百景」LIVEの映像作品をライブ当日に発売することも発表された。
後半も新旧楽曲を取り混ぜて演奏。『岡田君の曲です』とラストに演奏されたのは「ぼくはタンポポを愛す」。1995年発表のシングル「HAPPY/BLUE'95」のカップリング曲だ。今夜のコンサートは全員の晴れやかなコーラス「BEATITUDE」で幕を開け、最後も全員の力強いコーラス曲で締めた。
アンコール1曲目は意表を突くカバー曲。60年代に日本で放送された米TVドラマ「名犬ロンドン物語」の日本版の主題歌だ。ムーンライダーズ版は1995年リリースのカバー集「B.Y.G.」に収められた。そしてアンコール2曲目は慶一から『ホントに最後の曲です。岡田くんの曲をやります」と演奏されたのは今年2月になくなった岡田徹が曲を書いた「黒いシェパード」。リードヴォーカルは慶一。澤部渡が担うイントロと中間部のシェパードの咆哮のような声は、岡田への哀惜が感じられた。最後の曲の演奏が終わると慶一が『We are moonriders!』と叫び、メンバーがステージから客席へ降りる。オーディエンスに揉みくちゃにされながら、ゆっくりと左右の扉から出て、2時間超に及ぶライブを終えた。振り返れば「スカーレットの誓い」や「くれない埠頭」といった定番曲の演奏はなく、最近のコンサートでは殆ど演奏機会がなかった90年代の曲を中心に構成されたコンサートだった。少々耳馴染みが薄い曲ではあったが改めて聴くと、この時代の楽曲の素晴らしさを思い知らされた。選曲した澤部渡と佐藤優介のグッジョブ!
次回のライブ「80年代のムーンライダーズvol.1」は12月27日(水)に東京・EX THEATER ROPPONGIで開催。また同日には2022年12月に行われた「マニア・マニエラ+青空百景LIVE」の映像のリリースが予定されている。
TEXT:石角隆行
<ムーンライダーズ EBISU JAM 2023 DAY4/セットリスト>
2023年10月9日(月)恵比寿ザ・ガーデンホール
(作詞・作曲者/初出アルバム/発表年度)
01.BEATITUDE (詞曲:鈴木慶一/Bizarre Music For You/1996)
02.果実味を残せ!Vieilles Vignesってど~よ! (詞曲:白井良明/MOONOVER the ROSEBUD/2006)
03.愛はただ乱調にある(詞:鈴木慶一, 曲:鈴木慶一・岡田徹/Bizarre Music For You/1996)
04.窓からの景色(詞:かしぶち哲郎、曲:武川雅寛/月面讃歌/1998)
05.大寒町(詞曲 鈴木博文/噫無情・あがた森魚/1974、B.Y.G. HIGH SCHOOL B1/1995年)
06.君に青空をあげよう(詞:サエキけんぞう、曲:岡田徹・白井良明/Bizarre Music For You/1996)
07.僕は負けそうだ(詞:鈴木博文、曲:鈴木博文・白井良明/Bizarre Music For You/1996)
08.ニットキャップマン外伝 (詞:鈴木博文、曲:白井良明・岡田徹/Bizarre Music For You/1996)
09.LOVE ME TONIGHT(日本語詞:鈴木慶一/トムジョーンズのカバー/B.Y.G. HIGH SCHOOL B1/1995年)
10.Instant Shangri-La(詞曲:鈴木慶一/ムーンライダーズの夜/1995)
11.インプロ〜smile(詞曲:鈴木博文/It’s the moooonriders/2022)
12.HAPPY/BLUE'95(詞:鈴木慶一・白井良明、曲:白井良明/ムーンライダーズの夜/1995)
13.Cool Dynamo, Right on (詞:鈴木慶一、曲:岡田徹/MOONOVER the ROSEBUD/2006)
14.Happy Life (詞:鈴木慶一、曲:白井良明/Bizarre Music For You/1996)
15.S.A.D (詞:鈴木慶一、曲:武川雅寛・夏秋文尚・佐藤優介/It’s the moooonriders/2022)
16.ぼくはタンポポを愛す(詞:鈴木博文、曲:岡田徹/Sg:HAPPY/BLUE'95のCW/1995)
ENCORE
17.名犬ロンドン物語(米TVドラマ主題歌/B.Y.G. HIGH SCHOOL B1/1995年)
18.黒いシェパード(詞:鈴木慶一、曲:岡田徹/ムーンライダーズの夜/1995)
出演:
moonriders(鈴木慶一/武川雅寛/鈴木博文/白井良明/岡田徹/夏秋文尚)
サポート:澤部渡(Skirt)/佐藤優介(カメラ=万年筆)
◆ライブ情報
<80年代のムーンライダーズvol.1/公演概要>
日時:2023年12月27日(水) 開場18:00/開演18:30
会場:東京・EX THEATER ROPPONGI
チケット価格(税込み/全席指定):S席 12,800円(お土産付)/A席 8,800円
※ドリンク代別途(500円)
チケット先行受付(抽選):2023年10月9日(月)16:30〜10月26日(木)11:59
チケット受付URL;
https://ticket.tickebo.jp/sn/moonriders2023w_hp
◆リリース情報
2023年7月26日(日)発売
「moonriders 45th anniversary ”THE SUPER MOON” LIVE」
【Blu-ray】COXA-1320 価格:¥7,700(税込)
【DVD】COBA-7346~7 価格:¥6,600(税込)
<収録楽曲>
1. 無職の男のホットドッグ
2. 蒸気でできたプレイグランド劇場で
3. 9月の海はクラゲの海
4. B TO F
5. D/P
6. Masque-Rider
7. 弱気な不良 Part-2
8. 夢が見れる機械が欲しい
9. 夏の日のオーガズム
10. 春のナヌーク
11. スパークリングジェントルメン
12. 酔いどれダンスミュージック
13. Sweet Bitter Candy
14. 涙は悲しさだけで出来てるんじゃない
15. 現代の晩年
16. HAPPY/BLUE '95
17. トラベシア
18. 岸辺のダンス
19. さよならは夜明けの夢に
20. 冷えたビールがないなんて
◆プロフィール
1976年のデビューから45年以上のキャリアを誇るロックバンド。現在のメンバーは、鈴木慶一(Vo,G)、岡田徹(Key,Cho)、武川雅寛(Violin,Trumpet)、鈴木博文(B,G)、白井良明(G)、夏秋文尚(Dr)。
70年代前半に活躍した「はちみつぱい」を母体に、1975年に結成される。1976年に鈴木慶一とムーンライダース名義でアルバム「火の玉ボーイ」でメジャーデビュー。翌1977年にムーンライダーズとして初のアルバム「MOONRIDERS」を発表し、
以降コンスタントにリリースを重ねる。1986年から約5年間にわたり活動を休止したが、1991年にアルバム「最後の晩餐」で活動を再開。つねに新しい音楽性を追求するサウンドは、同年代だけでなく数多くの後輩アーティストにも影響を与えている。
また、各メンバーが積極的にソロ活動も行い、それぞれプロデュースや楽曲提供など多方面で活躍中。
◆HP
OFFICIAL WEB
http://www.moonriders.net/
日本コロムビア HP
https://columbia.jp/moonriders/
ムーンライダーズ公式Twitter
https://twitter.com/moonriders_net
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